2014年5月分月間選考寸評
【優良】
8.7448 : 六月三十一日 飯沼ふるい ('14/05/13 12:55:30)
URI: bungoku.jp/ebbs/20140513_921_7448p
(1)
圧倒的に面白い。
飛行機の白い航路という象徴が群像劇的なこの詩の連関をより強固にし、深い味わいを出しているように思えます。洪水のような荒々しさでもって最終連へと至る過程に作者の底力をも見たような気がいたします。
(2)
前田さんの作品とは対照的に「芸がある」作品。力作だと思います。詩語も私語も死語も自らの内に取り込んで
相対化していく「作業」ともいえる作者の言語的な営みが見えてくる作品でした。
(3)
シュールとベタがこう絡み合って、ところどころ叫びたくなるくらいダサく、そして別のところではびっくりするくらいスタイリッシュ。
勉強になりました。
9.7460 : 三つのユーモラスな詩 患者M.Tの症例 前田ふむふむ ('14/05/20 09:07:20 *3)
URI: bungoku.jp/ebbs/20140520_029_7460p
(1)
全ての主観が第三者達や客体たちと事象について確かめあうことなく進んでいく。
佐藤君は、うんこを漏らしていないかもしれないとも思いました。けれども異臭は確かで線を結んでいく。
未来を一生を絶望すること。
二篇目では些細なことへ過去の全てを背負うこと。
ユーモラスという冠にハードルを感じましたが恐怖に近い、
現実に近い神経症的例示の生々しさがあり、
上手く機能していることに驚きをもちます。
(2)
安定感。言葉を「作品」として仕上げようとする意志の強さにおいて、他の投稿者よりも
数段上を行っているように感じます。ネット詩の刹那を嘆きつつも迎合している多くの書き手たちの中に
あって、前田さんだけは屹立しています。
14.7461 : you 村田麻衣子 ('14/05/20 21:07:27)
URI: bungoku.jp/ebbs/20140520_032_7461p
(1)
読めて良かった。
(2)
新しい感じの村田麻衣子。様々な感情があえて整理されずに散らばっているのに静謐な感じがするのは何故だろうかと
不思議に思いました。
2.7469 : 廃船――夜明けのとき 前田ふむふむ ('14/05/27 01:00:21 *3)
URI: bungoku.jp/ebbs/20140527_078_7469p
(1)
追憶と幻視。前田さんにはこの詩のようにレトリックを多用した作品がいくつかありますが、テーマが
わかりにくいものが多いように思います。映像の喚起を促すには言葉が「文学的」すぎるように感じ、
修辞を魅せるには、芸(欲)が無さ過ぎるように感じます。それは作者の真面目さゆえ、なのだと思いますが、
たとえばこの作品の場合、「廃船」というモチーフによって葬られているのは何なのか、という点だけでも
わかりやすく提示すれば、多くの読者が読める作品になると思います。
13.7434 : 建設中のふたり、と海 深街ゆか ('14/05/05 01:47:52 *1)
URI: bungoku.jp/ebbs/20140505_830_7434p
(1)
「ふにゃふにゃになったからだじゅうの関節を砂浜に埋め」と作品中にあるように、この詩を包んでいる「ふにゃふにゃ感」が、
「あたしと君」の関係性を象徴しているようで、それを「建設中」という称するのはユーモラスでもあるし、「ふたり」という
建築物は永遠に落成しないのではないか、という不安も窺えます。
(2)
比喩に溺れすぎています。
29.7439 : 今日を、捧ぐ エルク ('14/05/06 22:28:32 *1)
URI: bungoku.jp/ebbs/20140506_863_7439p
(1)
水滴のいっぱい付いた傘をくるくる回している時のような快感が読んでいてありました。
36.7429 : 玉虫色のしおり お化け ('14/05/01 21:30:12 *3)
URI: bungoku.jp/ebbs/20140501_723_7429p
(1)
語る、という点ではお化けさんは非常に高いレベルを誇っていると思います。だらだらと書き連ねているようでいて、
実はとても読みやすく、たいして魅力的なテーマとも思えないのに、読まされてしまう、かなりの文章家です。
「皮膚を持たずに心が外出することは精神医学的には公然猥褻罪だった。」といったような、出鱈目なんだけれど、
はっとするような一文をさらりと紛れ込ませる機知、面白いと思います。そして、なぜかいつも、そこはかとない
悲しみが暗渠のように流れている、それがお化けさんの魅力だと思います。
3.7472 : 夏の横断歩道 山人 ('14/05/30 18:19:41 *1)
URI: bungoku.jp/ebbs/20140530_092_7472p
(1)
作者の作品としては珍しく行間が一定していて奥行きに臨みたくなります。
最終行もう一工夫あってもよかったかもしれません。
最終行は終わらせなくても終わることがあります。終わらせようという作為が見えてしまうことのみ気になります。
作者は最終連が苦手なのかもしれません。
ただ、それを補うだけの作品だったと思います。
(2)
歌会なんかではよく「つきすぎ」という事が批判の対象になります。
ニュアンスとしては「イメージが付き過ぎている」ということです。
この夏の親子連れのイメージ、蛍の墓、母さん、僕の帽子どうしたでせうね? 繰り返し繰り返し使われてきたモチーフですから、ハードルがかなり高いです。
【次点佳作】
21.7449 : カップヌードル式 リンネ ('14/05/14 00:53:18 *3)
URI: bungoku.jp/ebbs/20140514_923_7449p
(1)
脱字が一か所あるけれども、それが更に深みを出している不思議さ。
6.7470 : 正対する空白のための分割和音(重奏からなる) 破片 ('14/05/27 03:18:35)
URI: bungoku.jp/ebbs/20140527_080_7470p
(1)
>火の点いた煙草をあげるよ
>いずれ燃え尽きたら
>その骸に火が移るように
この一節に妙にどきっとしました
(2)
何度も読み返したくなる、っていうと違うのですが、見過ごせない何かを感じる作品でした。
17.7459 : みずのなかのおとうさんへ 破片 ('14/05/20 03:24:54)
URI: bungoku.jp/ebbs/20140520_027_7459p
(1)
やはり、破片さんは、散文よりも行分け詩のほうが良いと思いました。破片さんの散文はどうしても物語化する傾向にあり、
語りすぎる書きすぎることによって粗さと甘さが見えてしまうのですが、行分けして言葉を削ることによって、破片さんの、
いまどき珍しい無垢さ、という貴重な資質が光ってくるように思います。
28.7445 : 夜食 uki ('14/05/10 09:39:09 *1)
URI: bungoku.jp/ebbs/20140510_900_7445p
(1)
自由な発想ですね。
上手くなってしまうと出来なくなってしまう詩の上手さがあります。
(2)
振り子のようなリズムの勝利という感じはしますが、好きですね。
【落選】
10.7468 : 壊れた 大丈夫 ('14/05/26 01:26:29) [URL]
URI: bungoku.jp/ebbs/20140526_072_7468p
(1)
作者の作品としてみた場合とても上達してきています。
書かざるを得なかった感情を大切にして比喩を絡めようとしている努力も見ることが出来ます。
比喩がありきたりなものでなくなっていくと、よりよい向上が見込めるのかもしれませんね。
(2)
ただ、よくなっている気はします。
(3)
いつもと雰囲気が少し変わって、おって思いました。
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