文学極道 blog

文学極道の発起人・スタッフによるブログ

昭和二十年八月 右肩

2009-09-29 (火) 10:28 by 天才詩人

昭和二十年八月

返信でも書いたように、右肩氏のこの作品はまずタイトルで萎えてしまうのだが、作品それ自体の空間構成力や、原子爆弾というオートマティックな装置が空中へ放たれていく描写は精巧で弛みがない。もともと右肩氏は叙情よりも、概念的な言葉をつなぎあわせて詩的表現に持っていくのを得意とする書き手である。序盤で「僕」の主体性を複数の視点から解体していく。そこからウランがあたかも宮崎駿作品の小さな生物のように踊りながら増殖していくところ。光り輝く夏をメタリックな機体のむこうに仰ぎ見る場面。いずれも臨場感は強くないものの詩的作文として、じゅうぶん洗練されているし、作品の質が低下している目下の状況では優良作品に推されてもおかしくはない。
終盤の

言葉がうち抜かれた

という一行。読み手はここでいったん立ち止まり,考えさせられる。この時点で、右肩氏が、まだ作品を紙上に書いている(PCスクリーンに打ち込んでいる)と想定するならば、言葉を書きつらねると同時に、それがうち抜かれることは可能なのだろうか。

平成二十一年八月の
 僕は菩薩ではないし、ましてや如来でもない
 カラの籠を抱えて
 スーパーのレジの列に並び
 けげんそうな目で見られている男だ
 フルーツオブザルームのタグの付いた
 Tシャツを着ている

 何の根拠もなく
 着ている

最後の二つの連では、戦後日本の「日常」をからめた問題意識が前面にでてくる。駅ビルの書店に平積みになっている本の議論をくりかえすつもりはないが、日本語が「撃ち抜かれた」というのはすくなくとも私の経験から言って、決定的なことであり、文極の掲示板に出入りしている諸氏のうち、どれだけがその現実を自覚することができているだろうか。菩薩や如来は長い間に秘仏となり、檜の匂いがする寺院の奥に閉じ込められる。8月の京都盆地は自動車の流れが四方の通りをただ緩慢に動いてゆき、エアコンの室外機にさらされたコンクリートの表面は赤褐色の微熱を帯び。僕らは市電の近くの薄暗いスーパーで、棚の間を物色しながら、しばし一服する。不思議なことに朝から何も食べていないのに、棚には食べたいものがなにもない。手ににぎられた籠はいぜんカラのままで、僕らはあふれる物資を前にして飢える。たとえ何かを手にできたとしても、僕らはレジを待つ絶望的に長い列のいちばんうしろで、「終わらない日常」を、どこまでも生き続けねばならないのだ。

最後に断っておきますが、コントラは選考委員には加わっておりません。

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8月分月間優良作品・次点佳作発表

2009-09-24 (木) 20:56 by 文学極道スタッフ

8月分月間優良作品・次点佳作発表になりました。

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掲示板使用規程の修正について

2009-09-14 (月) 08:09 by 天才詩人

投稿掲示板の使用規程を若干変更します。投稿掲示板で作品の本題とは無関係な糞の投げ合いがはじまり、それが他の投稿者の迷惑になる場合、容赦なく削除します。反対意見などいろいろとあるかと思いますが、それら含め様子をみながら試行的に実施していく予定です。

快適な作品投稿と質の高い批評活動確保のために、常連の方々もその他のかたも、どうぞご協力お願いいたします。また、この取り組みについてなにかご意見がありましたら、フォーラムにスレッドを立てていただければと思います。

また現在フォーラムにおいて、文極の方向性について議論がなされておりますが、こちらにも是非ご参加ください。

こんごともよろしくお願いいたします。

文学極道スタッフ

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書籍「文学極道No.2」

2009-09-12 (土) 14:55 by a-hirakawa

「文学極道No.2」が、
瀬崎祐さんのブログで取り上げられました。
「文学極道  2号  (2009/07)」
軽谷佑子さん「土底浜で」に触れてあります。

また、
「文学極道No.2」が、
poeniqueの4wheelsで北爪満喜さんに取り上げられました。
「オープン・エンド性は明るく」

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阿部嘉昭さんを発起人にお迎えしました

2009-09-08 (火) 20:40 by 文学極道スタッフ

阿部嘉昭さんを発起人にお迎えしました。よろしくお願いいたします。

阿部嘉昭ファンサイト
ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ
評論家、詩人
立教大特任教授(サブカル論)

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