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文学極道の発起人・スタッフによるブログ

9月分優良作品・次点佳作発表

2008-10-21 (火) 21:51 by 文学極道スタッフ

9月分優良作品・次点佳作発表になりました。

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8月選考雑感(平川綾真智)

2008-10-06 (月) 16:16 by a-hirakawa

今月も勉強になりました。
ありがとうございます。

文学極道のスタッフは、この場が、良い作品が読める、評価される場所になれたら、という共通した思いを持っています。「良い」というのはとても普遍的であり、それでいて流動的なものです。ひょっとしたら、こういう作品だから入選する、とかいう傾向と対策だけで書き投稿されている方がいらっしゃるかもしれません。良い作品を書きながらも、この作品は文学極道的ではないな、と思って投稿を躊躇われている方もいらっしゃるかもしれません。「世界性」を重要視している作品、反現代詩的作品、現象学を実践している作品、など様々な作品が投稿されてきています。様々な作品が評価されているように感じます。スタッフ側として、没世界的なものでも、良いものは良いと言える場でありたいと思っています。ポエムでも現代詩でも良ければ評価される場所でありたいです。そして、「良い」という基準は人それぞれに果敢無げな華奢でもあるので、自分にとって響かなかった作品はきちんと響かなかったと言える場所であれば、と思っています。様々な評をしていく、されていく、ということは自身にある詩の情感が停滞せずに多角的な視点を帯びて、新しい感動を自作に見出す可能性があります。傾向と対策だけで書いて投稿されている方は、是非、評をしたり得たり見直したりして、詩の感動とは何なのか視点を増やされて欲しいです。そして、作品を書きながらも、文学極道的ではないな、と投稿を躊躇われている方も、是非、評を付けてみて、投稿されてみて欲しいです。大罵倒されるかもしれませんが、得るものが何かあるかもしれませんし、意外と、「良い」と言われるかもしれません。今月も選考の際、委員内で多く、意見が交わされました。

月間優良賞に推挙された作品は、先鋭で明瞭であったり、視点を追求し続けていたり、拙さを帯びながらも感動させる熱気で満ちていたりと、様々な方向性でそれぞれが優れていました。
2965 : あなたのゆくえ(1〜5のうち4・5)  鈴屋 ('08/08/16 22:23:02 *2)
には、1〜5を通しては優良と言うこともできるけれども、4、5単体では、美しさを見た場合、弱いかもしれない、という意見もありました。付記しておきます。

次点佳作作品に触れていこうと思います。

2937 : きみとともに  殿岡秀秋 ('08/08/05 05:21:47)
は、小さく良い作品だけれどもタイトルや接続詞など、もっと上に行ける部位が削いでいて、情感を膨らませていくことを怠っているように感じる、という理由から、次点に留まりました。相殺しあっている言葉同士が目立っているので、もう少し慎重に大胆になってもよいような印象を受けます。書いてそのまま放した作品が作者には多くあるように感じるので、もっと推敲していっても良いのかもしれません。一方で、私詩である作者の作品はあまり趣味ではなかったが、この作品の強度は高く評価できる、という意見もありました。自分のことを自分の枠の中だけで書いているような、ここへと世界性を帯びさせる細工や地政学、歴史の中への配置などが加われば、もっと強度を増すのかもしれない、という意見もありました。

2938 : 施餓鬼  兎太郎 ('08/08/05 12:02:26)
は、興味を惹かれたけれども、宗教観に作品が飲まれてしまい、その先へと達していないように思える、という理由から、次点に留まりました。
 燈明でうるおう子宮
 そのねばつく内壁に ぼくはそっと手をふれる  
 きみとぼくとの縁はほんのいっときむすびなおされる
ここなどはとても上手いと感じます。得てして宗教の混沌は人にあるそれを餓鬼に手向けるものでありそんな傷に膿んだものなのかもしれません。感触は良いけれども、外科治療が気になったり、感嘆詞が気になったりと、もう一歩が足りないように感じる作品に思えました。ただ、確かに惹き込む不可思議さは、作者に大切にして欲しい、独自の貴重なものだと思います。

2970 : きみは国境線という概念をもたずに、それをこえていった  K,y ('08/08/18 22:09:34)
は、鮮度と痛みに長けているけれど、もう一歩踏み込み凌駕するだけの破片が足りないのではないか、という理由から、次点に留まりました。作者を主張しきってある、羅列的な中に密に過渡期が詰まっている興味深い作品でした。虚飾的言語の使い方も、不安を押し込めている内実に合っているように感じます。もっと書ける作者なのではないか、作者の作品としては程度が低い部類なのではないか、という意見もありました。

2959 : Tシャツ  ミドリ ('08/08/14 16:10:29)
は、読みやすいけれども足りなさ過ぎる印象を受ける、という理由から、次点に留まりました。文句なしに巧いが、命を感じない、今月のミドリさんは良いと思ったけれども、相変わらずの寸止め空手だ、などの意見がありました。とても読みやすいので、もう少し話を足しても良かったかもしれません。

2968 : 皿を拭う  右肩良久 ('08/08/18 14:25:36) 
は、解りやすい説明がどんどん魅力を遠ざけている、という理由から、次点に留まりました。過去作とのことでしたが、作者の長所が如実に出ていて、無機的な、あるいは有機的な極論が、しなやかに融合を見せている、という意見もありました。

2960 :  ビー玉として  殿岡秀秋 ('08/08/15 06:09:25) 
は、最終三連がとても素晴らしいけれども、事象が上手くいっていない部分があり、眩い部位を高めていないように感じる、という理由から、次点に留まりました。ビー玉というモチーフを核にしてナラティヴを展開していく良作だ、という意見もありました。一点、ラスト手前、構成に大きな難があると思う、という意見もありました。もう少し強度のある余情に溢れた作品へと仕上げられるように感じたので、細かな部位にもこれまで良作を紡ぎだしてきた作者の筆を是非とも、より先へと活かして欲しいと思いました。

2964 : en voyage 旅行中  はなび ('08/08/16 22:01:57 *1) 
は、温かで可愛らしい作品ですね。程よい描写があり、色の直接配置から作品をはじめたのも効果ありに感じた、という意見もありました。突出している圧倒的な傑作ではないかもしれませんが、良い作品だと思います。アルファべ、は実に印象的です。ただ、感触としても、もう少しかもしれません。濁点が入ると幸せは大きく読んでいてとても膨らむのだけれども。

2945 : 小夜  雨宮 ('08/08/07 08:17:31) 
は、柔らかくて素朴な素敵な作品です。薄味ではあるが、今後の期待が膨らむ作品だ、という意見がありました。地味に良く、緩やかな気持ちになった、という意見もありました。三連がもう少し動いていれば、優良でも良いのかな、と感じました。膨大な世界を小さい自己が確かに証明していて、素敵な世界観だと思います。

2984 : 給水制限の朝(Mr. チャボ、正義と友情と愛とナントカと)  Canopus (角田寿星) ('08/08/26 10:40:26)   
は、構成が展開を支え切れていない、という理由から、次点に留まりました。ちょっと長ったらしく感じた、という意見もありました。チャボは、もう多くの方が愛するシリーズなので、とてもハードルが上がっているのかもしれません。この作品、人間性は描き出せているのですが、サイドストーリーの一人歩きが過ぎるようで、まとまっていないようにも感じました。平面的な感情的で、児童的な負荷で、清潔に書かれすぎているような気もするので、もう少し惨殺な血流は拭えなくてもよいような人間くささが、あっても良いのかな、と思いました。取り合えず、チャボシリーズは大好きです。皆もそうだと思います。ファンを魅了し続けるチャボシリーズであって欲しいです。原点に戻ってもよいような。

2966 : 飛行機とポテトチップ  はるらん ('08/08/16 23:30:46 *2) 
は、構成やストーリー展開はよく、独特の力がある作品だけれども全体として表現の質が低い、という理由から、次点に留まりました。作者がこの方向性でいくのは大歓迎だけど、ちょっと洗練が足りない、という意見もありました。描く人物、キャラクターにもう少し人間くささを加味しても良いのかな、とも感じました。

2940 :  八十八夜語り ー夏嵐ー  吉井 ('08/08/05 22:32:43)  
は、悪くない作品だとは思います。しかし、強く推される魅力に溢れた作品には一歩届かないようにも思えます。「た」で毎回途切れ、並列になっていることが、惜しいと感じさせるのかもしれません。

2977 : フテクサレテモカオハマエニツイテイルノダ  はなび ('08/08/20 22:37:29) 
は、面白い作品で、気になりました。未完成な部分が、まだまだ粗削り的なところが魅力として働いている、不思議な作品だと感じました。もう少し滅茶苦茶でも良かったかもしれませんね。

惜しくも選からは漏れましたが、その他、

2976 : ヒートアイランドの娘  ともの ('08/08/20 20:02:30) 

2969 : 朝日  羅針 ('08/08/18 15:27:17)  

2944 : 秋虫の見た世界  黒沢 ('08/08/07 00:55:53 *6) 

2991 : あの夜の思い出  霞 ('08/08/29 21:15:13)

2947 : 星  こはる ('08/08/07 19:31:02 *4) 

2979 : Nemo  四宮 ('08/08/21 19:23:18 *2)

2952 : (無題)  犀樹西人 ('08/08/13 05:13:26 *1) 

2953 : 月曜日   寒月 ('08/08/13 15:44:16)  

2957 : Hallelujah   はらだまさる ('08/08/14 02:30:32 *1) 

2980 : 猫背  吉野 ('08/08/22 01:20:39)  

2975 : 花火  如月 ('08/08/20 17:31:54) 

2985 : 物思い  祝祭 ('08/08/27 02:11:41) 

2973 : 夏草や  落穂拾い ('08/08/19 13:19:48 *3) 

などが、注目されていました。

以上です。

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一次審査結果発表! 第1回 21世紀新鋭詩文学グランド・チャンピオン決定戦

2008-10-01 (水) 00:18 by 文学極道スタッフ

「第1回 21世紀新鋭詩文学グランド・チャンピオン決定戦」
一次審査通過作品名および作者名発表

月刊 未詳24・文学極道 連携企画第1弾として開催中の「第1回 21世紀新鋭詩文学グランド・チャンピオン決定戦」において、一次審査を通過した作品のタイトルおよび作者名が発表されました。

一次審査通過作品は以下の通りです。

「幽食」 ヨルノテガム
「子供のこと」 吉田群青
「こぼれおちる中にたったひとつだけ残されるものがある」 ホロウ
「六月の海」 プラスねじ
「でたらめ」 泉ムジ
「水を捨てる」 宮下倉庫
「君は害虫」 しもつき、七
「臆する」 殿岡秀秋
「ベッドタウンの印象」 宮下倉庫
「ラスト・モニュメント」 いとうかなめ
「海が見たくなった時のこと」 吉田群青
「いくつかの夜」 Ar
「蟻」 淡島
「before dark,before daylight」 いとうかなめ
「リボルバー」 万条クレ葉
「ぷかぷかうかぶ」 次松大支
「終息」 藤本哲明
「[私たちは素晴らしい箱の箱の箱の箱の箱の箱の箱の中にいる。] 」 香瀬行鵜
「マッスル・ドッグ」 七瀬俚音
「ららら」 七瀬俚音
「リハーサル」 木葉揺
「帰路」 島野律子
「六月を雨に少女の祈る」 森下ひよ子
「終わらない夏」 流川透明
「ただいま」 流川透明
「コスモポリタン」 時渡友音
「ヘルタースケルター」 he
「一杯」 イエローのこねこ
「針の風、凪の檻」 鈴川夕伽莉
「無題(1)」 たなか
「Soundscape」 はらだまさる
「オーケストラ」 水瀬史樹
「淫れ NO.1」 藤本哲明
「白昼夢」 しもつき、七
「百日紅」 中村めひて
「潮」 中村めひて
「水葬」 谷竜一
「無題(2)」 たなか
「木陰」 田崎智基
「笑うもの、嘘つくもの、帰らなかったもの」 白石アンコール
「卵を、」 ブリングル

(応募日時順、敬称略)

なお、本企画の詳細、今後の審査と発表の予定については上記リンク先のページをご参照ください。
とくに一次審査を通過された方は、注意事項等もありますので、必ずご覧の上ご確認ください。

また、審査員による選評も後日(最終審査結果の発表後)掲載される予定となっております。
そちらでは残念ながら一次審査を通過しなかった作品についても触れられるはずですので、是非そちらもご覧いただければと思います。
選評については、公開されしだいこのブログでもお知らせいたします。


# 2008年10月06日 追記(訂正とおわび)
一次審査通過作品のうち、しもつき、七さんの「白昼夢」が誤って「白日夢」と表記されていました。
訂正し、作者のしもつき、七さん、ならびに関係者、読者の皆様におわびいたします。
申し訳ありませんでした。

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