文学極道 blog

文学極道の発起人・スタッフによるブログ

●「2020年・4月分選考雑感」(Staff)

2020-05-21 (木) 01:33 by 文学極道スタッフ

11846 : 日記  イロキセイゴ ('20/04/30 23:48:33)
URI: bungoku.jp/ebbs/20200430_454_11846p
(一)こういうタイプの詩はとにかく単語の選択が命だが、この作品はセンスが良く素直に不思議な感覚を楽しめた。
(一)日記から髪の毛が生えてくるという発想が面白い。

11841 : 淵  黒羽 黎斗 ('20/04/27 16:41:33)  [URL]
URI: bungoku.jp/ebbs/20200427_340_11841p
(一)頭脳と思考の深化の中での創作が輝いている。一行ごとの連も効果的に瞬いており、構成が上手い。
(一)「引力」という何気ない言葉を上手に使って、文字通り作品に強烈な引力を発生させている。最初から最後まで隙がなく、誠実に書くことの大切さを教えてくれる。安易に「無題」で済ませる投稿者は、この作品でタイトルの重要性を知ってほしい。

11827 : シャボン玉  式子 ('20/04/22 23:43:07)
URI: bungoku.jp/ebbs/20200422_067_11827p
(一)書き慣れていると感じたが、それ故に神さまの設定やオチまで発想が平凡である。最初の2行の衝撃を、その後の展開が支えきれていない。特に「三日後」という時間設定は複数の方が指摘するように蛇足であると感じた。
不思議な感覚がある。最初の方の力と後半の感覚が違うため、そこを意識して推敲しても良いのかもしれない。

11816 : ヤツメウナギ重  らどみ ('20/04/17 06:43:49)
URI: bungoku.jp/ebbs/20200417_926_11816p
(一)昔の文学極道なら削除されてもおかしくないレベル。コメントへの返信を含めてすべてが不誠実。
(一)読み飛ばしてしまいそうな文量であり、内容でもある。しかし残る。小魚の骨のように刺さり、気になる。「ヤツメウナギ重」という言葉の選択、短さ、日付が不思議に作用している。

11836 : 邪道幸福論(Theoria)  アルフ・O ('20/04/27 00:14:47)
URI: bungoku.jp/ebbs/20200427_325_11836p
(一)様々な風に受け取れる負の感情と諦観。共感を獲得できる作品。
(一)良い意味で安定した作品。作者が自らの個性を乗りこなして自在に操る境地に至っているのだと感じた。

11830 : 転ばぬ先の杖 杖は転んだ先にある  tOiLeT ('20/04/24 03:39:43 *1)
URI: bungoku.jp/ebbs/20200424_119_11830p
(一)読んでいて情景や話の展開が分かりにくい。素材は悪くないので非常に惜しい。
(一)決して上手くはない。けれども上質であり、かなりの出来である。この勢いは見習いたい。

11842 : 口ほどに蝶  NORANEKO ('20/04/27 18:42:14)
URI: bungoku.jp/ebbs/20200427_343_11842p
(一)硬さと柔らかさの配分が絶妙である。視覚的な効果も用いながら、言葉の威力を最大限まで引き出していくことに成功している。

11840 : 黒目の窓枠  陽向 ('20/04/27 15:47:33)
URI: bungoku.jp/ebbs/20200427_336_11840p
(一)最初の行以外の「窓」は不要であると感じる。その辺の削ぎ落とし方をもう少し考えると、上達は早いと感じる。
(一)言葉の重複と拡張が面白い。余白が存在しており、そこが味を付加している。

11843 : 瞳  黄葉さと ('20/04/27 21:19:26)
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(一)人間というものの読み込みが足りない。現時点で文学極道に投稿する作品ではない。
(一)「命を/いじめてる/悪い子」という部分を、どのように受け取るか。自分自身のことを大切にしない主体への言葉として受け取ったが、その部分を加味しても救済があり過ぎるのかもしれない。もっと素直に、理想ではなく書いても良いのかもしれない。もっと作品を色々と読んでいきたい作者だと思った。

11844 : あるいは薬のように  鈴木歯車 ('20/04/28 01:12:04)
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(一)自分自身の弱さや欠点だと思われる部分、気にしている部分、それを大切な存在を決して美しく素描しないことで愛へと昇華している不思議な作品。暗さが目立っておかしくないはずなのに、ユーモラスで陽気ですらある筆致と文体が秀逸。
(一)RCサクセションの「ぼくの好きな先生」を連想させる作品。深い人間観察の結晶のような輝きが美しい。正直、この作品が読めるくらいでないと文学極道での優良は難しいだろう。

11839 : げおすみんの匂い  三浦果実 ('20/04/27 15:14:46)
URI: bungoku.jp/ebbs/20200427_334_11839p
(一)何年も詩と向き合ってきた人間が書くレベルではない。作者は自分を卑下して逃げ回るのをやめて、そろそろ本気で詩というものときちんと向かい合うべきではないのか。
(一)最初の方に惹きつけられるものがあった。次第に、緊張感がなくなっている。集中力が書いているうちに持たなくなってしまったのではないだろうか。妥協せずに最後まで何度も推敲することが大切だと思える。最初の面白さを引き出し続けていたら、秀作となったように思えた。

11838 : 予定調和  鷹枕可 ('20/04/27 14:36:55)
URI: bungoku.jp/ebbs/20200427_333_11838p
(一)タイトルの発出が上質である。作品世界が作者の中でも、また変わって来ており進んでいくことにも感銘を受ける。少しずつ変えていく工夫は、非常に難しいことである。それを成し遂げている。
(一)ライプニッツの哲学的概念や聖書など、作者の深い知識が活かされた詩。これからも、この作風を極めていってほしい。

11834 : (無題)  つぐみや ('20/04/24 20:56:44)
URI: bungoku.jp/ebbs/20200424_173_11834p
(一)行数を揃えることより言葉の選択のセンスを磨くのが先ではないか。今回もタイトルがないが、それもまた作者の力量不足の表れであると感じる。最終行のフレーズが書けるのだから、もっと良い作品を作れるはずである。
(一)音の流れや視覚的な効果それらが、比喩の怒涛を押し広げていく。

11815 : (無題)  つぐみや ('20/04/16 22:03:13)
URI: bungoku.jp/ebbs/20200416_915_11815p
(一)言葉選びと接続のセンスに疑問を感じる。タイトルがないのも、この内容では致命的。
(一)言語の跳躍がバランスよりも勢いを獲得して、強度をむしり取っている。短いために集中力も続く。タイトルは付けた方が良い作品に思える。

11826 : Chocolate  鴉 ('20/04/22 17:53:55)
URI: bungoku.jp/ebbs/20200422_038_11826p
(一)難解な言語の跳躍が甘やかに固められている。短い中での密度は、広大である。

11821 : 詩ば書きたい  三浦果実 ('20/04/21 04:21:52)
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(一)「詩」に拘ることが作品内からは伝えることが出来ていない。ただし「詩」の言葉を出さなくても十分に面白さがあった。真っ直ぐに向き合いたいけど、向き合えずにズラしたり笑いをワザと入れてしまったりする在り方が興味深い。「詩」を出さないと更なる実存が生み出せたのではないだろうか。

11799 : ・『在りし日の歌』 ― 各論  アンダンテ ('20/04/06 00:25:16 *1)
URI: bungoku.jp/ebbs/20200406_747_11799p
(一)「・」によって引用に新たな息が吹き込まれた。作品の構成が一段階上へと進んでいる。
(一)前作と同様に作者の深い知識と丹念な考察によって展開される作品論。中也を知る上で参考になる。

11824 : 一月  パーク ('20/04/22 10:23:37 *1)
URI: bungoku.jp/ebbs/20200422_021_11824p
(一)上手いのだけれども、説明になってしまっている部分が勿体ないと思う。

11817 : パーティ  ネン ('20/04/17 22:43:06 *1)
URI: bungoku.jp/ebbs/20200417_933_11817p
(一)物事や行為を料理に例える手法は歌などでも用いられてきた。そういう意味で斬新さはないが表現力は安定している。ただ最終連での転調が裏目に出てしまっている。

11809 : まほろば  kale ('20/04/13 06:55:21)
URI: bungoku.jp/ebbs/20200413_824_11809p
(一)タイトルとは裏腹に、描かれる光景は日野日出志の「幻色の孤島」のように強烈な色彩が支配する悪夢のようである。人間が存在できない環境における究極の美の世界。

11814 : 水槽の底で  左部右人 ('20/04/15 12:08:06)
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(一)表現力は評価できるのだが、物語が少し分かりにくい。小判鮫に関する部分もピンと来ない。それでも全体的な完成度は高い。
(一)構成と視覚効果が映えている。切れと言うか文末の語調には違和感を覚える部分があった。

11788 : 詩の日めくり 二〇一八年一月一日─三十一日  田中宏輔 ('20/04/01 00:00:48 *1)
URI: bungoku.jp/ebbs/20200401_645_11788p
(一)作品と作者の呼応関係、詩情の引き出し方が上手い。生活も思考も全てが詩になると実証している作者の卓越した境地。
(一)作者の個性的な作品は、その圧倒的な読書量によって成立しているということがよくわかる。日記がそのまま詩になってしまう詩人は、そう何人もいないだろう。

11805 : 桜並木をあるく日に  キリン堂 ('20/04/10 13:29:39)
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(一)イメージが曖昧で読み手に伝わってこない。もう少し表現方法を工夫すれば面白い作品になると思うのだが。
(一)十分、気になる作品。手足、頭のバラバラと組み立て、他者との関係。螺子は頭の中身のことを思わせる。上手いが、手ぬぐいの説明部分が余計に感じた。

11807 : みなしごガアコ  かわせみ ('20/04/10 20:30:14)  [Mail]
URI: bungoku.jp/ebbs/20200410_801_11807p
(一)物語として綴られていく在り方の中で、序盤と中盤が弱い。逆に、そこの強化があると作品が上質になると思う。

11811 : 檸檬のはなし  キリン堂 ('20/04/14 21:00:42)
URI: bungoku.jp/ebbs/20200414_847_11811p
(一)檸檬の連呼がくどい。梶井基次郎の「檸檬」を意識していることは誰でも分かるので、いっそのこと「梶井の檸檬に火をつけて」から始めるくらいでないと驚きがない。
(一)リズムが心地よい。梶井の檸檬を基底素材として置きながら、自分の世界を拡げようとしている。まだ書き始めの感が否めないため、書き続けて欲しいと思った。

11808 : あかるみ  北 ('20/04/11 03:29:19)
URI: bungoku.jp/ebbs/20200411_808_11808p
(一)爽やかな綴りの中に滲み出てくる毒とでもいう気持ち。それらが作品の骨子と肉を強くしていっている。
(一)ひとつひとつの言葉が、まるで詩として生まれてくることを運命づけられていたかのように詩人の口から溢れ出している。イメージの豊かさと発想の自由奔放な飛躍が素晴らしい。最後の選考でこの詩を優良に推すことができたのは幸運である。

11793 : 書く  田中恭平 ('20/04/02 16:48:24)
URI: bungoku.jp/ebbs/20200402_687_11793p
(一)詩人としての自分を見つめ直し、次の次元へ進もうとする語り手の決意がしっかりと伝わってくる。単なる日記ではなく、詩作品として成立している。

11798 : 詩の日めくり 二〇一八年二月一日─三十一日  田中宏輔 ('20/04/06 00:01:01 *6)
URI: bungoku.jp/ebbs/20200406_746_11798p
(一)日常生活が活き活きと描き出されている。詩人の生活が詩として輝く見事さがある。
構成も、見事。いつまでも読める。
(一)相変わらず読み物として面白いし、同時に詩としても成立している。

11791 : 昼下がりのドラッグ  陽向 ('20/04/01 11:41:36)
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(一)一行ごとのフレーズは魅力的なものが多いのだが、もう少しだけきちんと接続した方が良い。
(一)気怠く生きていく意味を探してしまう感覚が光っている。二行目、三行目を、もう少しだけ推敲すると傑作になると思う。

11812 : Eve  アルフ・O ('20/04/14 23:08:19)
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(一)タイトルや「子宮」という言葉を重要なポジションにおいている姿勢などが、逆に読み手の想像力に制限をかけている気がする。「何処にいたって剥がれ落ちる組織」は的確で良いのだが。
(一)怨念めいた作品から冷静な距離が見えて来ており、良い作用を生み出しているように思えた。構造が上手い。

11802 : 核  黒羽 黎斗 ('20/04/07 01:48:00)  [URL]
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(一)勢いと集中力の、どちらもが秀でている。難解さへの希求が見える。一行への重心など、全体像を掴む在り方が今後の可能性も示している。

11806 : 生活  田中恭平 ('20/04/10 18:06:59)
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(一)生活の中に詩を出す際は、十分に気を付ける必要がある。工夫が、もう少しだけ必要。

11797 : コロナウィルス  北 ('20/04/04 22:35:17)
URI: bungoku.jp/ebbs/20200404_722_11797p
(一)忌野清志郎が生きていたら、こんな歌を作っていたかも知れないという妄想が膨らんだ。「だからみんな/隠れて咳してるんだぜー」からラストまでの流れが特に良い。
(一)最後の二行は面白い。エンタメとして読むべき価値ある作品だった。

11804 : 天気雨、俄か雨  白犬 ('20/04/07 20:12:16)
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(一)カタカナ書きの部位などが人間の平常ではいられない現状を指していて、読み込んでしまう。後一歩、構成の妙が欲しい。
(一)凛として天気雨、凛として俄か雨。作者は詩人として確実に成長し続けている。心の奥底から絞り出された感情が言葉の洪水となって押し寄せてくるのを感じた。

11796 : 信仰  ネン ('20/04/04 15:26:29)
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(一)小さな社会に陥りがちな罠を、比喩で描き切っていると思います。センテンスや音の区切りが、揃えすぎているのではないかと感じます。

11801 : 三角共通点  藤本大輝 ('20/04/06 21:24:09)
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(一)距離感を持って突き放し、書いている在り方が面白い。三連それぞれが独立しているが、呼応がある。三連目が、最終連として機能しているのか気になった。

11789 : 『在りし日の歌』 ― 各論  アンダンテ ('20/04/01 00:55:49 *5)
URI: bungoku.jp/ebbs/20200401_649_11789p
(一)視覚的効果も大きく作用し、詩の歴史を更新していく姿が内容と共に迫ってくる。
(一)中原中也の「在りし日の歌」を読み解こうとする中で様々な詩を紹介していく。そのユニークな試みが面白い。

11792 : 言葉に汚れて  武下愛 ('20/04/02 07:32:33)
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(一)分かりやすく綴られているが、それだけのように思えた。言語の汚れを逆説的に獲得しているフラットな作品。

11794 : 首のとれた赤いバラ  らどみ ('20/04/02 23:37:50)
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(一)劇場型の呼応が印象的な作品。けれども、その部位がメインではないはずである。一行目と二行目の比重を大切にしているように思えるが、しかし選択した「赤いバラ」などの言葉が平易であり更なる先へと進めていないように思える。もっと独自の言葉を探して良いと思う。

11795 : 楽園追放  鷹枕可 ('20/04/04 08:03:17)
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(一)今回も作者の個性が遺憾なく発揮されている。しかし、この作風はテーマに変化をつけないとマンネリ化しやすい。タイトルを含めて、もう一工夫ほしい。
(一)振り切った漢字の乱舞が気持ちいい。楽園が崩壊してしまった現在と併せて読むことが出来、深度を増していく作品だと思った。

11787 : 彫刻刀  湯煙 ('20/04/01 00:00:14 *3)
URI: bungoku.jp/ebbs/20200401_644_11787p
(一)実体験であろう初連は緊張感に満ちていてとても良いのだが、最終連にたどり着くまでの過程が少々乱暴すぎるように感じる。
(一)二連目の強さが際立っている。最終連の余韻が上手いため、タイトルの象徴的な描写も含めて、もっと良くなる作品に思える。

11790 : 悟り  kei ('20/04/01 10:08:51)
URI: bungoku.jp/ebbs/20200401_659_11790p
(一)今の時代にこういう文体を選びきちんと書ける技量は評価するが、内容はもっと工夫が必要だと感じた。
(一)書きたい内容も分かりやすく、きちんと伝わってくる。説明してしまっている内容であることが気になる。比喩として読み込ませることが出来る内容にも思えた。

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●「2020年4月分月間優良作品・次点佳作」発表

2020-05-18 (月) 02:03 by 文学極道スタッフ

2020年4月分月間優良作品・次点佳作発表になりました。

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