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いかいか (New order) - 2013年分

選出作品 (投稿日時順 / 全1作)

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雪の思想 裏面

  New order

雪のように、
やさしく、
溶けていく、
白い、思考の中で、

血のように、凍らない、
冷たい、思想が、
生まれて来る

この、二椀の、
雪が、早く雨に変わりますように、
と、祈る、声が、する、
そう、この土地では、
雪ですらも、砂にかわるのだから、
飲み込まれたばかりの、
家々から、漏れる、静けさも、
どこもかしこも、
浅いばかりで、
手は、ひび割れた、ばかり、
それを埋めるように、
砂が、混ざって、
赤くなるのを、
見ては、振り払う、
手の、
多さばかりが、
やっぱり、降る、

「凄く芸術的なあなたの尿道から」
とか、
とにかく、
「凄く、芸術的な」
なにか、が秘められているなら、
この、土地の、風土を、
今すぐ終わらせるような、
言葉をくれてやってほしい、
もし、「すごく文学的な」
でも、「すごく芸術的な」な
でも、なんでもかんでも、
「すごく」なさけない、
現実を、埋め合わせるためだけに、
降るような、雪なら、
早く溶けてしまえ、
そして、剥き出しの、
地面で、横たわった、
なさけない、体に、
優しく花が咲くのなら、
それを、微笑みながら
摘んであげる、

骨は、雪、で出来ているわけじゃないから、
この、寒さの中でも、
音がならない、
肺を、この土地の、
砂に、砂の混ざった、風に、
あった、肺を、
そして、声を、
探している、外では、
やっぱり、砂嵐が
続いていて、

その、向こうには、
歯並び、
の、悪い、一人の、
男でも、女でもいいから、
突っ立っていて、
風に飛ばされないように、
身をかがめながら、
何も考えていないなら
その人も、さらって行ってほしい、

これは、裏面だから、
何書いてもいいよね、
いいよね、って、
子供をあやすように、
遠くで、未だ、
終わっていない、
雨が降っても、
風がつよくても、
もう、思い出さない、
記憶だけが、あって、
それでも、皆生きている、
の、一言で、まとまるような、
冷たい、思想だけが、
風の中で、吹き荒れている、

冷たい、思想が、
体に宿っていくのを、
日に日に感じるよ、
誰もかれもが、
でも、あの、大雪の日だけは、
違ったみたいだよね、
皆、口ぐちに、あの、
日のことを語っていた、

あの、日、語った、言葉は、
あの日の、言葉でしかなくて、
今ここには、もうないんだよね、
そうかわかった、
だから、皆、冷たい思想の中で、
やっぱり、この、
二椀の雪が、早く、雨に変わるように、
祈っているんだね、

(おまへが たべる この ふたわんの ゆきに
わたくしは いま こころから いのる
どうか これが兜率(とそつ)の 天の食(じき)に 変わって
やがては おまへとみんなとに 聖い資糧を もたらすことを
わたくしの すべての さいはひを かけて ねがふ )

俺は、すべての、災いを、かけて、願うよ、
お前たちが食べる、この、二椀の、
雨が、この、土地の、砂を、
じべたに、はいつくばらせたまま、
もう二度と、舞い上がって、
僕らを、押し潰さないように、
飲み込まないように、
私は、今、こころから祈るよ、

(わたくしの すべての さいはひを かけて ねがふ )

今、詩を、書いている途中にも、揺れたよ、
動物たちが騒いでいる、
そして、すぐに、静かになる、
冷たい、砂のように、舞い上がって、
すぐに、消えてなくなる、
この風土にも、

あの、二椀の、雪にもられたはずの、
雪が降る、
それが、早く、雨に変わるように、
僕の、すべての、修羅よ、
雨を、呼べ、
砂も、雪も、
溶かして、消し去ってしまう、
雨を、

文学極道

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