文学極道 blog

文学極道の発起人・スタッフによるブログ

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a-hirakawa
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2009年6月選考雑感

2009-08-20 (木) 23:50 by a-hirakawa

今月も勉強になりました。
ありがとうございました。

今月は、

3564 : たんぽぽ咲きみだれる野っぱらで、俺たちは  Canopus(角田寿星) ('09/06/02 22:55:29)

3614 : 真夜中の魚  mei ('09/06/29 01:23:16)

3584 : un radeau automatique et les oiseaux aux pommes  はなび ('09/06/11 09:43:34 *3)

3604 : (無題)  石黒 ('09/06/24 00:43:05)

3576 : 夢日記  いかいか ('09/06/08 00:46:08)

3616 : No Title  浅井 康浩 ('09/06/29 17:06:38)

3601 : 夜景/テイク2  蛾兆ボルカ ('09/06/22 22:41:10)

3581 : 手の鳴るほうへ  ひろかわ文緒 ('09/06/10 04:14:07)

3612 : ようすいの丘  mei ('09/06/27 20:43:38)

以上、9作品が月間優良作品に選出されました。

3564 : たんぽぽ咲きみだれる野っぱらで、俺たちは  Canopus(角田寿星) ('09/06/02 22:55:29)
「ちきしょう/明日っから仕事ができねえぞ」が強い、けれど、レッサーからの指摘のようにもうすこし、あともうすこしだけ別の角度からの生への叫びであったなら、なお良かったとも思う、という意見がありました。野卑と繊細さとが同居する魅力がある、作者は昭和の匂いのするものを書かせると味が出る、地味だけれども、この路線は急速に寂れつつあるので期待してしまう、という意見もありました。作者の悪い面が出てしまっているように思える、最後にいくにつれてトーンダウンしていて、重要な場面だけに、それは目立ってしまっているし、良質なフレーズが乱立しているため、互いに埋もれてしまい、抜きん出る部位が僅かになっている、好きな作品だけにもう少し期待してしまう、という意見もありました。

3614 : 真夜中の魚  mei ('09/06/29 01:23:16)
惜しい、無駄に長く、且つ、跳びきれていない、ボリュームの問題ではなく、酔い過ぎであり、テキスト・コントロール能力が足りていない、課題ばかりが先に目についてくる、書かれている世界は好みなので勿体無い、という意見がありました。導入が良い、もうひとつの作品「ようすいの丘」よりは格段に良いが、問題なのはこちらのほうが2年古い作品だということ、もうすこし様子をみてみたい、「運命」「神様」はという言葉は人を選ぶ言葉だとおもう(それだけ使いこなすのが難しい)ので、それ自体を重要なキーワードにするのでなければ軽々しく使わないほうがいい、という意見もありました。一連、二連、最終連とても丁寧な美がある、
 「夢というコトバが好きです
  未来にはないものですか?
  私たちはふたりの船でした

 ながされる あいされる うまれゆく いきている
 あいしてる――)
この持っていき方が個人的には早まっているように感じる、もっと書き方があるというか、狙った格言をつけすぎというか、書きすぎという感覚だった、という意見もありました。中盤だれて冗漫だけれども美がある、という意見もありました。僅かな文章を他の作品に一つだけ付けて、すぐの投稿だったので、もっと合評を大切にして欲しい、という意見もありました。

3584 : un radeau automatique et les oiseaux aux pommes  はなび ('09/06/11 09:43:34 *3)
 しほんけいざいのうた 
という余計を取ったことで良質さを放ち始めた、
 しほんけいざいのうた
がついたままでしたら、落選に強く推した、という意見がありました。幅を狭めないあり方が空気感を上げていて、異文化との反応性を醸している、という意見もありました。作者は、ふしぎな触感であり、割れる評価を確かにしている、投稿者の間にも一石を投じる書き手という感が残った、という意見もありました。

3604 : (無題)  石黒 ('09/06/24 00:43:05)
うまい具合に乾いてはいるけれども魅力には乏しい、新鮮味は感じられない、情緒的な臭みが無いところは佳かった、本気出して書いていない感覚もある、という意見がありました。こじんまりとまとまっていて古いけれども連鎖と回収が見事であり、魚という生命の初潮に帰結している部位と中間の拍動の表わし方は血が通っている、という意見もありました。

3576 : 夢日記  いかいか ('09/06/08 00:46:08)
夢の感触を模倣している作品であることがわかることから立ち上がってくる手触りが実に密やかで剥き出して来る、という意見がありました。もう少し期待してしまった、前半に比べて後半の吸引力が薄いように感じる、という意見もありました。

3616 : No Title  浅井 康浩 ('09/06/29 17:06:38)
このままでも十分、良質だと思うけれども最終連はなくても良かったように思える、もう少しまとめなくて手渡していっても良かったのでは、という意見がありました。作者の世界観で、しかし静かに氾濫を中で起こしている魅力が性的なニュアンスを伴い、先に行けているように感じる、という意見もありました。いつも丁寧に踊られている、文体も美しい、久々に良い作品だったと感じた、欠損もあるけれども再読する価値がある、という意見もありました。もともと美しく閉じている作者の表現世界のなかで、異質である七連目が成功しているのか、と問われれば成功していない、と応えるしかないように思える、自己と他者を認識し、一種の病みとともに境界が溶け、ふたたび他者を確認するという構成には砂時計のフォルムのような美しさを感じるものの、やはり七連目の意図がわからないし、わからなくてよいという気持ちにもなれない、という意見もありました。

3601 : 夜景/テイク2  蛾兆ボルカ ('09/06/22 22:41:10)
最近、読んだ作品の中で一番印象に残った、哀愁をそのまま握らされた気がした、という意見がありました。自己と他者との距離が秀逸な作品なのではないか、という意見もありました。
 やけいに綺麗だなって
など、あざとさが気になりもしたけれども滑るためには必要な技巧かもしれない、それが、その変な、あまり上手くいっていない技巧的ものがダサさを増加させ、DT臭をいつまでも残す男性像を描けているのだとすると、浄化していく感だけが残らないでもない、という意見もありました。本能や欲望を打ち消す生活への感情、燃やすことはないということは生活を蝕まない自身の尊厳の確立であり尊敬の念の確固でもある、夜を犯さない現れでもある、その位置が微妙な単語を位置を描写により、奇妙なリアルに仕立てあげてある、という意見もありました。美しさには欠けるが、詩になっている、波のある作者だけれども、この傾向のものの方が読み手に歓迎されるように思える、という意見もありました。作者の作品を初めて読んだ、後、何作品か読んでみたい、という意見もありました。

3581 : 手の鳴るほうへ  ひろかわ文緒 ('09/06/10 04:14:07)
丁寧だけれども放り込んでいるところが膨らみを持たない、もう少しつながりの中を意識しても良いのかな、と思う、という意見がありました。導入が秀逸、文章が実に巧い、父と母のエピソードの後、「生け贄を用意しろー/誰でもいい、誰でもいいやつを、連れてくるんだ、早く」に至るまでに、アメンボの連だけでなくもう数連、「私」についての描写があってもいいかなと思った、現時点でもテキストとしては充分に長いが、最終連までの傾斜具合がいささか急に感じた、という意見もありました。

3612 : ようすいの丘  mei ('09/06/27 20:43:38)
普遍的なテーマだけれども、これはずいぶんと書き込みすぎている、ボリュームはこの半分でいい、短いセンテンスで言語化と非言語化を試み、同じくらいの風景を想起させられる大胆な技量が欲しい、あとは言葉そのもののチョイス、作者なりの懸命な模索は感じられるものの、全体をとおして熟語に頼りすぎている感がある、特に「処女」や「神聖」という言葉はあからさますぎ、詩全体を一気に陳腐にしていると感じる、という意見がありました。かなりとっちらかってはいるけれども技巧がほぼゼロでこの世界観というところに一票入れたい、陳腐であるからこその魅力がある、という意見もありました。

さて、次点佳作作品について触れていこうと思います。

3591 : 川は流れた  鈴屋 ('09/06/15 00:04:19)
固有名は不要のように思われる、違和感を感じた、けれども全体としては中心から逃れながら中心の求心力の幻想を垣間見せさせる美しさがある、という意見がありました。主題がよい、「流れ/流した」のリフレインが効果を出している、しかし、この詩のなかで「戦争」という言葉は空間づくりのための一アイテムであり、言葉の意味そのものとしては死んでいる、それを良しとするか否かは同時に読み手の感覚だろうが、すくなくとも私にはひとつの大きな単語が殺されているという印象が残りつづけた、また冒頭の運びについて、「林崎久仁子」という人名とその響きにこだわりがあるのはわかるが、この登場人物紹介的な運びは詩としてはあまりに陳腐で、出だしから躓く原因になりかねない、という意見もありました。三連とても良く、そこだけでも他連を秀作へと押しあげている、けれども、
 川は上流で妊娠し
 河口で中絶し流した
この意識が活きていないこと、
 川は女だった
 川は流れた
 女は林崎久仁子と言い
このたどたどしさ、そこは意図的であったとしても断絶させるものがあり、最終連もそれゆえに中途に持っていくように思える、という意見もありました。

3586 : 隣人の空似  りす ('09/06/12 00:04:36)
縦書きにすると実に映える作品、達観して上手い方へといってしまうのは少し寂しい、また壊してもよいかもしれない、
 空想と現実の
 合い挽きは食べられない
ここの印象を出していることに比べて、「!」の部は過剰すぎるかもしれない、という意見がありました。「僕たちの黄色い道具」「戦争は死んでいる」などの表現がずば抜けている、けれど前半の緊張感と輝きが感嘆符を機に次第に薄まり、「千回目のゾンビ」以降、一気に雪崩れてしまった感がある、前半と後半で(おそらくは)異なる捕虜の、他者のなかに自己を見いだし(作者が言うところの「捕虜が捕虜を飼う」)、最終的には後者である自己がクローズアップされる構成となっているようだが、後半の“俺の人生讃歌”的なノリがその成功を妨げている、前半の高い「解像度」を保ってほしかった、という意見もありました。相変わらず巧い、くすぐりの技巧、個性的なメタファー、凡作を公開しない姿勢、まるで温厚な詐欺師のようだ、という意見もありました。

3561 : ふじさん  いかいか ('09/06/01 18:51:33)
どうにでもなれ的なポジショニングからしか書けなくなっているのは残念だ、という意見がありました。適当さが、これを書くんだ、という余計な力を抜かせていて、体臭にまみれて鼻をつまませざるを得ない中から、ほど良く出ている、という意見もありました。

3588 : 17時のヴィーナス  ゆえづ ('09/06/13 20:34:14)
展開の濃厚さとキャラクターの極端な個性が作者の世界で見事に開き、動いている、デフォルメされた部位のある感覚は意識を掴む不思議さを錯綜させる、覗いている老警備員などの濃さなどなかなか描けないはず、意外と普通のことが異国のように思え筆の圧力に魅力を感じた、ただ、えぐるものがもう少し欲しい、目先の作品よりも大切な作者があるのでそれでも良いと思う、という意見がありました。足りないものを読み手が補いきれるだけの世界はある、と掴んだ、という意見もありました。

3610 : つる子さん Mademoiselle Tsuruko  はなび ('09/06/27 15:07:31)
どうでも良さが意味ばかり主張ばかりとは達観している部分の良さを醸している変な作品、90年代レディースコミックに近い感覚があった、という意見がありました。
 小さな穴があいていますが誰もその事を知りません
で含ませていて、最後の投げ出し的書き方で、含みのなさを感じさせるところがニクく、印象を深める、という意見もありました。 こんなアホな作品に注目する意識をよく考えて欲しい、という意見もありました。

3598 : エメラルドグリーン  ミドリ ('09/06/20 16:33:38)
読みやすく丁寧、それ以上のものが少ないかもしれない、という意見がありました。よい話だ、けれど読んでも読んでも、詩としてはそれ以上の広がりを持っていっていない部分もある、という意見もありました。

3608 : god is my co-pilot  debaser ('09/06/25 14:46:31 *2)
読ませまる作品、そこから一歩が少なく感じる、という意見がありました。

3611 : さっちゃんの卵   ミドリ ('09/06/27 17:28:43)
相変わらずお話は上手い、出来が良い、という意見がありました。 上手いけれども、上手い以上のことを求められてしかるべきかもしれない、という意見もありました。

3563 : 街  如月 ('09/06/02 14:44:26)
書いてあることと書きたいこと、新しい方向へと進みたいこと、多くのことが伝わって来る、硬質さと構成の技巧で詩という概念から打ち出していくのだとすれば、 作者の良さは薄まるかもしれない、しかし、これからどうなるのか見届けたい、という意見がありました。もう少し血の通った良さと、巧さの塩梅を見極めていく必要があるのかもしれない、膨らませられるかもしれない、という意見もありました。

3560 : 夜の闇、重なり続けていくもの  なつめぐ ('09/06/01 12:53:33)
タイトル変更して欲しい、狭めていて作品を窮屈にしている、悪くないけれども、もっと二人の背後に大いなる傷があっても良いように思える、前は醸せていた部分が置き去りになっている印象を受けた、という意見がありました。いつもより書けてはいるけれども、徐々に使える色を制限されているかのような、ある種のもどかしさが読後にあった、という意見もありました。関係性を描ききっていて、抒情的な良質さが各連から漂うのだけれども、最終連に行くまでに少し先が見えて来てしまい、その通りに終わっていく、裏切りはいらないけれども美しく終わる場合は、もう少し細部に慎重になって意識を保たせないと距離を取って読んでしまう、という意見もありました。

3589 : 友人、夏にて  破片 ('09/06/13 21:25:52)
小手先、技術、書きこみ、だけで成り立つ作品が多い中で、血肉が生々しく感じられた、一貫している煙草のイメージが、中間にいてしまう感情を当てているように感じた、という意見がありました。成長を見せつけられた、これからも楽しみな作者だ、という意見もありました。

・惜しくも選からは漏れましたが、その他、以下に挙げる作品が注目されていました。

3559 : ナッシン  ゆえづ ('09/06/01 12:27:52)
設定が尋常でない場所で始まる作品とは違った、作者の生活に根ざした作品と読んだ、人間を見事に描いている、ただ関係の中で自分を100点以上に描けていて他者が見えないのは少しだけ作品を奥まらせているかもしれない、他者と関係を描き上げたら大傑作になるのでは、という意見がありました。

3566 : 晴天  丸山雅史 ('09/06/03 00:54:14 *3)  
晴れている、今月は、この作品が一番印象に残ったかもしれない、拙さが味のある詩になっている、一方で非常に読みにくいとも感じた、という意見がありました。読みにくさの否めなさを本人は気づいているのだろうか、という意見もありました。

3577 : 禁煙旅行  チャンス ('09/06/08 23:07:39)
禁煙の苦しみが描けている、お見事と思った、カレーを食べる描写がいい、最後が怒りの絡まりで破裂することは、大体予想がつくので、もっと最後は乱しまくっても良かったかもしれない、という意見がありました。最終連はあまりに投げやり、という意見もありました。ネタとしては悪くないけれども二回は読まれない作品に感じる、そこが問題だ、という意見もありました。

3562 : 道のはた拾遺 5.  鈴屋 ('09/06/01 23:34:41)
悪くはないけれども、動かされる情動の欠落と、手渡しの短絡が機能していないように感じた、という意見がありました。無難、それ以外の感想がなかった、シリーズ作のようで、ほかの作品はいい感じだけに余計に浮いて見えてしまった、という意見もありました。絵画に詩を寄せることはめずらしいことではないけれど、人物画へのオマージュには正直どう接していいかわからない、示される道が描けていないのでは、という意見もありました。

3569 : 公園で後藤が燃やされている  深田 葵 ('09/06/04 10:26:01 *6)
一文目の良さについていけていない印象を受けた、良い素材が、まだ形になりきれていない印象、このままでも面白さがあるの、そこから傑作にして欲しい、という意見がありました。

3594 : 1000年まえに  永島大輔 ('09/06/17 21:46:22)

3602 : 虹を見ていた  んなこたーない ('09/06/23 02:38:44)

3609 : べーグル  枯葉 ('09/06/25 19:30:29)

3567 : 連作 巨人鳥  黒沢 ('09/06/03 01:31:52 *1)
物語だ、と感じた、巨大鳥=世界(あるいは混沌としたもの)という図式ははやい段階でわかってしまう、しかし文章が圧倒的にまずい、巧いヘタという以前に、引き込まれるような魅力がない、また、ラスト、この結論は書かなくてはならなかったのだろうか、伊藤比呂美の「人生訓のような結論のある詩は、詩の墓場です」という言葉が頭をよぎった、という意見がありました。書くのは大変だったのではないだろうか、過剰に解りやすくして、主張を出し過ぎていて、乗れない、ただ、小学校の高学年とかの時に読んでいたら、詩に溺れるきっかけになったのでは、と思いもした、という意見もありました。読んでいて疲れる、構成に失敗はしていないのかもしれないが、成功もしていない、とりあえず読んでもらわないと話にならないので、本作に限らず導入部から再考すべき、力み過ぎ、詩人達が読んでさえ疲れる作品を、作者以外に誰が読みますか? 作品を孤児にする必要はないけれども、甘やかせてもならない、と思う、という意見もありました。

さて、また、

今月は選考の際、
投稿作品にふるさを感じた、気持ち甘めの選考になったかもしれない、“小ぶりの優良作”が多かった、傑作になりそうな次点作品が多くもどかしかった、
などの意見が出ました。
付記しておきます。

以上です。

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2008年年間選考雑感

2009-07-30 (木) 17:17 by a-hirakawa

 2008年ありがとうございました。

 文学極道は毎分毎秒更新されていきます。更新していくのは発起人・スタッフを含めた、全員です。わずかだったり甚大だったり様々な温度で詩に興味を持つ全員。皆が更新していくことの出来る、書き変えていくことの出来る、伸びしろが大きい莫大な可能性と閉鎖的危惧からの虚無的立ちすくみを抱えた場所。それが文学極道です。一年というと塗り替えきるのには充分な単位です。初期の頃と比べ、伸びてきている部分もあれば疎かになってきている部分もあります。皆で作っていきましょう。側面からの覚醒に触れる前線は、どんな時でも参加する個人個人の中核から始まります。

<文学極道創造大賞> ―― 新しい文学を創造した者、最もイマジネーションを炸裂させた者に
■受賞 黒沢

 黒沢さんは抒情と実存の両義を反映の領域へとたどり着かせた稀な方です。「ホオズキ笛」の印象と質感は時間の網の目で空間を掬いあげ、内在する純潔をひそやかに侵食する意識に立たせてあります。「迷宮体」の糸の先に結実する「星の氾濫」は巧妙な凝集するせり出しがセロトニンを流し込み、消失する危うさを豊穣に探り当てていきます。「新宿三丁目で思うこと」では人間を人間として厳密に確定できない厳密さを投射させ、むき出す体温が濃い表情を穿かせています。実存の肉厚さへ透かせる抒情性は、年間最優秀作品賞「プラタナス」で、どの境界も打ち崩し達し今なお拍動を背し続けています。黒沢さんの作品には人間を透視する線が引かれています。その線は欠けています。興味深い欠如です。完璧なものは入る隙がなく圧倒と同時に突き放しますが、黒沢さんの作品が読み手を引き寄せ光沢の在りかを伝え続けるのはこのためです。作品世界にある作者の静かなたたずまいや筆致のリズムは、コントラ氏に、この人はほんとに力あるな、と言わしめるほどでありながら燐光を決して贅に張ることはない背筋を覗かせています。
 人間の等身を踏襲する構成は、これからの伸長へも期待を握らせます。

■次点 いかいか

 負の感情から出された膿が伝承世界を反射させた時に示唆の迫真は誇示を超えます。いかいかさんは否定を突き詰めて重ねる否定の弾かれる自己に、実在の肯定の側面を見出し掌を当て続けています。その掌を自己の閉鎖的な世界ではなく伝承や歴史の中で描き出すため清澄な外界を侵食させる内界は育ち続け威力を持ちます。その威力は一過性に収まりません。年間最優秀作品賞次点に推挙された「星遊び」は圧巻としか言いようがありません。落選狙いや否定の感情が放出する位置を敢えてズラすために、作品の質は安定しませんが、だからこその放射が冴える皮肉も持ちあわせてます。投稿された欠損した部位を見つめる真面目さに過ぎる視点は生きることと質量を同じくします。傾く孤立は体温を伝えたくなります。天才とはこういうことなのかもしれません。

 選考の際、創造大賞には、泉ムジりす吉井鈴屋、各氏の名前が候補として挙げられました。

<文学極道最優秀抒情詩賞> ―― 最も美しい抒情詩を書いた者に
■受賞 泉ムジ

 積み重ねることは新たなる世界の創造とは、また異質な箇所に座ります。再構築された世界での再構築していく世界を再構築していく世界を創り出す泉ムジさんの作品は、詩という芸術をエンターテイメントに転換しました。現代詩のサザンオールスターズとも言うべき影響の良質を個人に濾過し発する在り方は、幅広く読み手の情感を、掴みます。ノらせます。プラスねじ、での使い分けがまた、遊び紙に作品を包み込み、解放の達成へと軽やかに読み手を釣り上げていきます。作品の質はそれぞれ一定以上のレベルにあるけれど、もっと深く書けるようになると思う、そのときの個性を見たい、という意見もありました。薄利の現代性を付けるライトは初心者にも掴みやすい筆で止まない、けれども後半の投稿作品はもう一歩進める、作品の完成度に幅がある、という意見もありました。

■受賞 りす

 鮮度の進行は本人の中で、常に先を予想させます。潤いが自らを引き上げていく地点は直ぐに終わりへ向き、乾燥への恐怖が僅かながらに顔を垂れ伸び下げていきます。その時に立ち止まるのは最上の湿度を保つ手段です。進み続けることは勇気がいる内面を乱す他者には触れない圧迫です。進み続ける作者の作品は、端的な綴りに越境の凝集を纏わせはじめます。他者との関係性の終わりを匂わせる作品群は確実なる読者の魅了とも合わさって、緩やかな解放と自閉への肯定を立てました。選考の際、以前には見られなかった乾燥感が面白かった、新しい文学の創造という観点からは弱いけれど、類い稀な能力の行く先には目を見張るものがあった、という意見がありました。イマジネーションの炸裂という観点では、抜群、という意見もありました。例年と比べ、無難に思えた、という意見もありました。

■次点 マキヤマ
 
 硬質と高湿な連想は沈黙の豪奢を導き出します。削ぐ中に置かれた言葉は世代を前に匂わせますが、隙間から連れて行かれる箇所は血流の感情です。反射させる醜悪の些末を魅せる自覚です。底辺に敷かれる搾る誇りを発します。一定の質を保ち続けてはいるけれども、小さく固まり過ぎている、弱い、という意見もありました。

■次点 如月

 詩はどこから来るのでしょうか。どこへと向かうのでしょうか。現代詩とは一体、どのようなものなのでしょうか。極限も先端も境界も意識せず、とにかく書くことにやみくもだった作者は、多種多様な方向に手をのばして、やがて、開きなおる僅かな強度を身につけます。何を活かすためなのか意識せず使用する技巧と慎重に選ぶ中に混じっている書けば書くほど遠ざかる場所にある綴り、それらは無意識へと読み手を漬け込み詩が詩から始まる前の根源を明らかにしていきます。仮説の検証と予期せぬ新発見からの唐突な大飛躍を実証していく作品の変化には感受性の裸身を掴まずに、居られません。特に「カナブン」は凝ることのない名作だと言えるでしょう。選考の際、まだまだ伸びて欲しい、年間各賞に集約されて評価することで圧迫してしまうだけなのではないか、という意見もありました。作者はとても正統派な作風であり、作者自身の美意識に依存するところがあるので作品を重ねても(読み手視点から)鮮度がなくなりうる、一度視点が違うところに向かないとそう遠くないうちに停滞しそうな予感がある、放っておくと旬を逃すかもしれない、評価するなら今かもしれない、という意見もありました。やみくもの中で狙い打つ合間から伸びていくということは、狙い打つ度合が高くなることにほかなりません。最初の頃の作者の綴りを大切に、その上で技巧なども交え、没個性の作品に落ち着かないよう願っています。これからも作者自身を大切にされて欲しいです。

 選考の際、抒情詩賞には、凪葉はらだまさる右肩良久紅魚桃弾丘 光平DNA5or6、各氏の名前が候補として挙げられました。

<文学極道実存大賞> ―― 人間・人生が良く描けていた者に
■受賞 鈴屋

 鈴屋さんは生と死の過程でしかない現在の生命意識を、自身と異性という他者、そして住まう場所の三つの関係性から凝集させた眼力で提示していきます。眼によって晒されるものは私たちが住まう事象を構築する膨大な残骸であり、その一瞬の必要に生み出されては死に行き始末もされない何処へも向かうことのない消えることのない情報こそが、輪郭を明確にし、取り囲まれた自身と異性の性を生殖を冷徹に抽出していきます。終わりを芽吹かせる始まりを生み出す行為へと向かうことは、人間の本能をえぐり出し、自身も終わりに近づく死への色濃さを生に塗りつけます。自身とは一体何者なのか、生と死の狭間とは何なのか。意識と混合していく肥やされる死骸は答えを出さないまま設問を多義的に手渡し、存在を掌に握らせます。「花冷え」は特に軽妙に深めている傑作です。「恋歌連祷 6(仮)」や「あなたの行方(1〜5のうち1・2・3)」「あなたのゆくえ(1〜5のうち4・5)」などの評価も高く、前近代的でありながら一過性ではない読み手の中でも育つ作品を書くことの出来る佇まいは尊敬の念を抱かずにはいられない、という意見も出されました。

■受賞 殿岡秀秋

 幼少期の記憶は経験と現在を歩く風景の中に乱立させ、その身を隠すことは、ありません。決して、と言っていいほど、それは絶対なる悲哀です。晒されている世界の断面は内界と外界をつなぐ意識にくるまれ、初めて意味を持ち始めます。その人間の成長過程の中で培われてきた疑いのない価値観は、やがて世界を肯定し、それが故に疑いを持つのです。それは根拠や証明を不要とします。小さくも目を覆いたくなるような悲劇は、いつでも日常の中にあり、一人一人にささやいている、そこを歩き続ける、意思ではない時間の観念に輪郭が浮かび上がる。殿岡さんの作品はいつでも日常風景を子供の感情の雄叫びに変えます。「声の洪水」「悲しみの小石」は特に見事です。一番魂が合ってると感じた作者だ、という意見、“一作”ではなく、“作者”に賞捧げたい、という意見、最先鋭を目指していく作品がある中で殿岡さんの存在は実に異色で安心感すらありさえした、という意見もありました。

■次点 吉井

 言語の可能性が海より深いのは言うまでもありません。海底に人類がたどり着いても言語の底にたどり着くことはないのです。その可能性の深さから自由度を上げすぎてしまい、詩という芸術は破壊の加熱を倦怠する陰鬱へと向かわせることが多々あります。吉井という作者は歴史を凝縮した上での拡張と拡散を言語に備え、結晶させつつcoolにfoolをやっちゃってます。具体音と自然音への呼応する建物を傾ける根の伸長と、笑みとの弾けるサワーを見せちゃって、獲っちゃっちゃっているんです。徹底的なバカ衝動を挟むあり方は、エロスではなく、ど助平の歴史的首位確立を具象します。傑作「さてと」に鮮烈を知った、秀作「たんぽぽ」に抒情を握った、怪作「八十八夜語り ー晩夏ー」に共存の実景を見た、などなど、さまざまな意見がありました。量産したら壊れてしまいそうな創造のあり方なので気になる、言語派に傾倒してしまいがちな点を打破して欲しい、という意見もありました。

■次点 Canopus (角田寿星)

 ヒーローを信じることが出来たから歩んで行けた時代というものは誰にでもあります。成長するにつれ、自分がヒーローにならなければならない時が来たり、ヒーローにはなれないと思いしらされたり、信じるだけの時代は終わりを迎えます。作者は等身大のヒーローの哀切を常に突き詰めていきます。それは、まだ信じている子どものままの今と、これからへの不安から真ん中の感情を小さな咀嚼させて読み手を掴み放しません。作者のスタイルは様々なジャンルで蔓延しているものですが、すきであるからこそやり続けることに凝集する魅了は確かな独自です。日本の特撮ヒーローは欠けています。正義を完全によしとしていません。何が善で何が悪か、そんなことより腹が減る、今日の生活どうしよう、な作者の世界はこれからも拡がりを見せていきそうです。
 2008年、Canopus (角田寿星)さんの投稿作品は一歩先へと進み、哀切な符号の現実に画面の饒舌が駆られる方位を探り当てました。「ムルチ(『帰ってきたウルトラマン』より)」、「狙われた街/狙われない街(メトロン星人)」の立脚と歩幅の懐疑は妙を絶します。「もいっぺん、童謡からやりなおせたら」は、人間の感情を初めて揺さぶる衝動を持った傑作といえるでしょう。

 選考の際、実存大賞には、黒沢いかいか午睡機械右肩良久、各氏の名前が候補として挙げられました。

<文学極道新人賞>
■受賞 DNA

 流れで旧弊の欺瞞が粉砕されるのはいつでも自分を突き詰める快楽です。嗜好的娯楽行為に過ぎない自己完結が他者へと開かれるときにこの快楽は創造となり得ます。作者の綴りひとつひとつは新しいものではありません。見せ方、読ませ方も今となっては全く新しくはありません。けれども錯綜する欠如と爽快に跳ねる即時的な方法論は、依り代にする言葉へとドーパミンを直結させます。それは表層的な偽善を取り払い真摯な厳格な位置の根源を見据えて、方向を曝すことにほかならないと言えます。成立された本質とも言えるでしょう。真っ向から立ち向かい、装飾のみになってしまいがちな部位を打破し続ける作者には拍手を惜しみなく送りたいです。「彼岸マデ」は隠れた名作であり、作者の構成の妙に触れやすいうねりが指してきます。やりたいことがきちんと分かっている作者だ、という将来への視点を含めた意見もありました。

 選考の際、新人賞には、鈴屋殿岡秀秋右肩良久ぱぱぱ・ららら鯨 勇魚。マキヤマ、各氏の名前が候補として挙げられました。

<文学極道エンターテイメント賞>
■受賞  該当なし

 選考の際、エンターテイメント賞には、菊西夕座香瀬ゼッケン吉井、各氏の名前が候補として挙げられました。また、菊西夕座氏のレス部分にエンターテイメント賞を与えてはどうか、という意見もありました。

<文学極道最優秀レッサー賞>
■受賞 ミドリ 宮下倉庫

 合評に助けられたことって、ありませんか。自分自身の姿勢に澄ませていても誰にも読んでもらえないかもしれない寂しさが鈍らせる時に、凄烈な意見の投射に背筋を正し沸点を握る。誰にでも、ある経験です。もう書ききったはずの作品でも、より良い結晶を抱かさせられ、伸長の引き出しに愕然とする温かさです。育まれた夢想が現実へ帰り、全容に昇華される瞬間です。温かな掌を自作へとかざすレスは双方向性のある文学極道では特別な意味を持っていることは間違いありません。踏み込み浸す閃きの客観。ミドリさんは透けている博学をセクハラからエンターテイメントまで多岐で覆いつつ作品としての意識を問いかけ続け、ベクトルの賛否を突き詰めます。宮下倉庫さんは実直に真芯を捉え続け、その上での技術を提示します。自己閉塞への装置としての機能しか果たさない危惧すらある評や安易な時間消費の現実逃避へ傾きがちな作品の表層を初めから拒否する評の並ぶ中、二人が2008年のレッサー賞に選ばれたことは必然と言えるでしょう。必然と言える、の、ですが、

・菊西夕座事件
 このレッサー賞の結果には数多くの否定的な意見が寄せられました。その意見のほぼすべては要約すると同じ内容で、つまり「菊西夕座氏がレッサー賞を受賞していないのは、おかしい。何故だ」といったものでした。選考の際、レッサー賞の候補には、ミドリさん、宮下倉庫さんの他に菊西夕座右肩良久、各氏の名前が挙げられました。菊西夕座さんのレスは、真芯を捕らえた上でのエンターテイメントだった2007年と違い、最初からエンターテイメントへとずらし込んでいる、むしろレス部位にエンターテイメント賞を与えた方がしっくりくるのではないか、という意見もあり、議論に議論を重ねた結果2008年レッサー賞の受賞には届かないという結論に至りました。しかし、年間各賞発表後、メールや発起人のブログへのコメントなどで毎日のように「レッサー賞に菊西夕座が入っていないのはおかしい」という意見をいただくこととなりました。特筆しておきます。

<選考委員特別賞>
■石畑由紀子 選 受賞  ともの
「とものさん自身、この短期間で詩のテイストが激変しており、その前半と後半のどちらを評価するかは選考委員によって違っているとはおもいますが、今後長きにわたり書き続けていきたいものが彼女のなかで固まった感があり、おそらく必要な変化だったとみています。
 ここを経ての今年への期待も込めて、拾わせてください。」

■蛍 選 受賞  鯨 勇魚。
「たった1作の、しかも優良ではなくて佳作ですが。
 私には年間最優秀作品に挙げたいほど印象的で、好きな作品でした。

 やわらかな抒情で語られている、しんと冴えた冷たさがとても印象的でした。
 なかでも3連目の『@依存』は秀逸だと思います。
 これほどまでに優しく染みてくる淋しさが胸をうち、美しいイメージとももに、
 いつまでも心に残って忘れることのできない、そんな作品です。」

■ダーザイン 選 受賞  ぱぱぱ・ららら
 その他、鯨 勇魚。ためいき(特に「幻想領域」) 、各氏を候補として挙げていらっしゃいました。

■Aya-Maidz. 選 受賞  ゆえづ
 その他、PULL.氏を候補として挙げていらっしゃいました。

■平川綾真智 選 受賞  香瀬
 香瀬さんは血としての詩は書けないのだと思います。構成や所謂「表現方法」に魅せられた形骸化の装飾部位から詩を書き始めた印象です。2008年、それを逆手に取ったようなエンターテイメント的作品群は異彩として群を抜いていました。詩人ではない芸術家として、自分と戦い破壊と創造を繰り返すなんて、そんな泥臭さに一ミリたりともいない、計算のみの世界。それは作者を押し殺した形骸を極め、極めるが故に作者を見せるという逆説を生み出します。詩への再構成を別の立ち位置から、一種荒れ果てた地平を勢いと構成のみで、造り上げる世界は情感が体温の位置にない、独特の視点になっています。「[ピーナッツ]」の、生活の場所で読み手を繋げるあり方は、形骸化だとか中身がないだとか嘆かれている詩作品の新たな方向性を示している冷静な豊穣に富んでいます。どんな方向性で書いても体温が出ない様相は誰にも真似できない諧調です。これからどうなるのか見届けたい作者だ、と思わさせられました。
 その他、木戸さんの男子臭ただようダサさが気になりました。

■望月遊馬 選 受賞  5or6
 その他、ぱぱぱ・らららPULL.soft_machineさん

■前田ふむふむ 選 受賞  疋田
 *疋田さんの「眠り(a)」は<文学極道年間最優秀作品賞>の候補に挙げられていたことを付記しておきます。

■稲村つぐ 選 受賞  右肩良久
「右肩良久さんの登場は、有難かったです。多角的に、とても勉強をさせて頂きましたし、『「姥捨山日記」抄』など突然に、びっくりするような作品を生んでくれます。」

■コントラ 選 受賞  凪葉
 *コントラさんによる選評は8月中に公開予定です。しばらくお待ちください。

■その他
 また、選考の際、裏っかえし軽谷佑子小川 葉まーろっく草野大悟fiorinasora寒月んなこたーないケンジロウ、ひふみ、各氏の名前が候補として挙げられました。付記しておきます。

 2008年は新たな中核の心音に満ちていました。これまでとは異なる方向性を提示してくださった常連投稿者の確固たる音と勢いよく駆け上がる新人投稿者の輪郭を持たせない音。どれもこれもが魅力を裏書していきました。躍進の波動は静脈を動脈に変えます。
 一方、全体の傾向として詩を深めていっていない方が多すぎるのではないか、読者を意識して無さ過ぎるのではないか、という意見も狭間に出されていました。いとうさんとAya-Maidz.さんが興味深い発言をされていたので、以下に書き出しておきます。

 (いとう)
 詩を書こうとして書いている人や、自分が何を書きたいのかわからないまま書いている人が多かった印象を受けました。詩を書くという行為は手段であって目的ではないし、詩を書く際に、自分は何を書きたいのか、その掘り下げを徹底的に行わなければ、ピントのずれたものやありきたりのものになると、個人的には思っています。

 (Aya-Maidz.)
 選考メンバーの中でおそらく私が一番ライトな志向なんだろうけど、そういうところを意識して作品を読んでると、文学極道ないし現在(飽きずに)詩を読んでる/書いてる人っていう枠の中で作品を読まれることに満足してる作品が多いなぁ、と感じます。
 言葉の使い方などが粋な作品は増えた気がしますけど、その分難読化してて、且つ読後感が難解さに見合わない作品も増えてる気がします。「これは!!」と思う作品は難解になっても読み手を離さない興味や好奇の持たせ方が上手いんだけど、全体としてはそういうところは軽んじられてるのかなぁ、と。
 これからも既存顧客だけを相手にしていくのならどんどん尖っていけばいいんだろうけど、詩の現状考えるならば空回りしてでも世界観を薄めないギリギリのところでキリギリの表現に気概を見せてくれる人が出てきて欲しいと、個人的には思っています。

 上記は本質で曲がらない印象でこれからの追及です。これから自作を含めての果敢を思わずにはいられません。
 また、以下のような意見も出されました。

 (石畑由紀子)
 年間を通して一作のみの投稿だったものの好印象、というかたが何人かいらして、
 (個人的には小川 葉さんや鯨 勇魚。さんなど)
 推挙するためにももうすこし数を読みたかったな、とおもいました。
 もちろん、単発でも充分な爪跡を残すかたもいるので、それまでと言えばそうなのですが。
 また来てほしいです。

 (稲村つぐ)
 毎年ごとに、受賞暦を無視したリフレッシュな見方で年間選考をしていきたいと考えています。
 当サイトの掲示板は、詩誌の新人作品投稿欄のように“新人賞をもらったら、その人がいなくなる”のではなく、良い作品と刺激的なレスが常に活発に行き交う、“生きた投稿掲示板”であってほしいと願っています。

■殿堂入り 一条

 最後に、殿堂入りである一条さん。2009年から殿堂入りの者でも投稿しさえすれば年間のどの賞の候補にもなり得る資格を持つ、ということになりました。重圧の中にあるかもしれません。賞を狙うという、とても曖昧な自我にはいないのかもしれません。ただ、湧かしてくれたら、と思いは止みません。

 これからの文学極道はもっと広義に解釈されていって欲しいなと思っています。されていくだろうとも思っています。皆で土壌を作っていきましょう。更新していきましょう。これからも、よろしくお願いいたします。

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2009年5月選考雑感

2009-06-25 (木) 21:26 by a-hirakawa

今月も勉強になりました。
ありがとうございました。

今月は、

3501 : 地蜘蛛  りす ('09/05/05 01:01:50)

3528 : ピーマンの午睡  りす ('09/05/18 01:00:21)

3504 : 道のはた拾遺(1.2.3)  鈴屋 ('09/05/05 20:18:16 *1)

3527 : 道のはた拾遺 4.  鈴屋 ('09/05/18 00:32:03)

3554 : Euglena  ミネタネミ ('09/05/30 15:49:56)

3532 : オレンジ  ゆえづ ('09/05/19 19:51:19)

3494 : 思い出  ミドリ ('09/05/02 11:09:30)

3541 : ポップソング  泉ムジ ('09/05/25 00:43:22)

以上、8作品が月間優良作品に選出されました。

3501 : 地蜘蛛  りす ('09/05/05 01:01:50)
 何が姿勢を支えて
 人は倒れないで
 何かを待てるのだろう
このさりげなさの重心の妙が、書き手であることを出したことによる自閉的にすぎる弊害を回避させており、最後に肩の力を抜けさせる部位が、また、集中の時間に伴い見事に働いている、という意見がありました。詩作にかかわるテキストは幾つかあるけれども、これはそうした作品にありがちなアカデミックな堅苦しさや押し付けがましい気負いのようなものが無い、先ずはそこが佳かった、重いテーマを軽く読ませる、その力量においては日本有数の書き手とも思わせられた、また、そうしたことをスルーして読んでも、秀逸な作品としての深みがある、という意見もありました。丁寧な案内は無いのだけれども、読み手の好奇心を刺激するように書かれている、その工夫にも惹かれた、よくよく練られた素朴な文体と、疑問と得心の絡み合った奥行きと、予期せず着地するオチとが、うまい具合に作用して、読んで愉しい、といった読後感を成功に手渡している、という意見もありました。

3528 : ピーマンの午睡  りす ('09/05/18 01:00:21)
ピーマンを元ネタに、よくぞここまで、と思わさせられたが、野菜詩コンテストにおいて栄冠を勝ち取るには、巧く隠し過ぎている暗喩や、文学的に長け過ぎた撹拌もあるかもしれない、という意見がありました。作者の新作を待ち続けることが生きる理由に、うっかりなってしまう人がいるかもしれないな、と思ってしまうような、そんな愉しさと哀しみと美と実存とが、ひっそりと咲いている、という意見もありました。「横書き」ならでは、の佳さも見逃せない、という意見や、鮮度で勝負できなくなってからも良質さを見つけ出している作者がこれからどこに行くのか楽しみだ、という意見もありました。

3504 : 道のはた拾遺(1.2.3)  鈴屋 ('09/05/05 20:18:16 *1)
2だけでは弱かったことを、1、3でここまで確固に出来る筆圧に圧倒された、行間ではない捉えていく視界と内界の必然性はえぐられ皮膚という固有の物象を溶かし出していき、それは確かだ、という意見がありました。写実と印象に攪拌されていく情動と現象が実存を技法として貫いていて見事、と感嘆の息が漏れた、という意見もありました。惹かれる作品だが、古いものを新たに並べ替えただけのような、いわゆる新味には乏しいかもしれない感触もある(もちろん、何を以て新しい/古いとするかは個人差に寄るところかもしれないけれども)、少し酔い過ぎな印象が逆に醒めてしまう、という意見もありました。筆はもう充分に巧い、よく練られてもいる、凡作の少ない、力のある作者だ、これからも楽しみ、という声もありました。

3527 : 道のはた拾遺 4.  鈴屋 ('09/05/18 00:32:03)
今回の作品が興味深いのは、女と男で終わらないところだ、世間を出してきた点にある、女の男の、これらの凌駕しつつある、持っていく綴りが大いなる濁点を残すと共に、三つの関係が収束されることなくまとまる、えぐれた欠損を見せつける廃退の勃長が印象的、という意見がありました。荒んだ美を描くには長けているけれども、あまりにも流暢に過ぎて、迷いを起こす、実存的に薄ら暗い作品には、僅かな破綻が却って光となり陰部全体を際立たせるのではないか、という意見もありました。内実はあるけれどもコントロールが効き過ぎている、という意見もありました。

3554 : Euglena  ミネタネミ ('09/05/30 15:49:56)
はっきりと残らない空虚さがリズムと口語だけ、行変えでつながる意識に立ち上る、あり方が上手い状態にあり、空白に詰められるものを引き出す郭線が満ちる、という意見がありました。初読では、良くも悪くも「現代詩」の匂いがして、そこでかなりの読み手を失いかねない危惧があった(再読を重ねると、さして気にはならなくなるけれども)、イメージの錯綜は、拡散してはいるが、ありがちな手に負えない似非混沌迄には堕ちておらず、豊穣な印象すら漂う、という意見もありました。なるほどヘタクソではない、ある程度の、または、かなりの勉強はしている、工夫の痕跡も随所にある、しかしながら読み手に渡されるものは、けして多くはないかもしれない、それはつまり、いくらカラオケが巧く歌えても素晴らしい楽曲が作れるわけではない、という至極まっとうな道理による、という意見もありました。

3532 : オレンジ  ゆえづ ('09/05/19 19:51:19)
初読は相変わらずな自傷的な言語の装飾に惑わされたが、何度も読む内に、つながりの見事に計算さへと目が向き、作者が感情のままに書くだけでなく、射精を待ち、構成を持てたことへの驚愕を抱いた、という意見がありました。直喩と暗喩を殺傷していく劣情が強烈で、はじまってしまったことへの嫌悪と悲しみの中での健常を見事に突いている、ただし、時間の使い方が下手、オレンジ、ともすれば夕陽と月が重なりそうな、朝まで行かなくともこの作品は完成しそうな、一つの時間で貫けそうな、という意見もありました。 よくよく潜らなくても詩情があり、それがまた結構に染みるけれども、やや冗長な記述や甘い構成が、読み手に丹念に咀嚼されることを拒んでいるパラドックス、失敗ではないにせよ、成功とは言いにくい、しかし、それでもなお「詩」になっている作者の潜在的力量には感じ入らざるを得ない、という意見もありました。

3494 : 思い出  ミドリ ('09/05/02 11:09:30)
詩の様式みたいなもので、やっていないことをやるパロディ的部分は買ってもよい、文章のまとまりも、そのベクトルでは秀でている、という意見がありました。スムーズに読める佳作、顔文字は、好き嫌いに個人差がかなりあるかもしれない、顔文字を好んで使用する世代と頻繁にメールしているかといったパーソナルな環境によって異なるのかもしれない、ロー・ティーンの自意識の発露としての顔文字は、なんだか憎めない感があり、上手い使用法というか、やったもん勝ちにしているのかもしれない、という意見もありました。思い出、ということで、断片的であり断層的でもあり、印象的な科白のみが表出しているかのようだ、出会いの場所は現在よりも少なかったはず、プールに泳ぐ為だけに行っていたわけではないにせよ、甘く苦い追憶を召喚するには、やや足りない感がある、という意見もありました。

3541 : ポップソング  泉ムジ ('09/05/25 00:43:22)
硬質な部位を故意に排除した作者のラブソング、朝の食卓に焦点を絞りつつ、良い意味で無難にまとめた印象がある、という意見ありました。過去形で書かれていることによって、その不在の、せつなさが漂う小品、トイレからキッチンへ、説明の過ぎない筆には相変わらず好感が浮かぶ、料理としてのカロリーは高く、そして既に冷えているけれども、おいしい、という意見もありました。最近の作者は調子が悪いように感じたが、この作品は、内実、技術、爽快に貫く空気への筆、どれもが一定のライン以上にあると確かに思えた、ただ、ここまで揃えるのは難しいはずなのにそこはあまり活きていないというか、そこが凄いことなのに、あっけらかんと、流れていて、少し損、に思えた、技術は凄いのに、という意見もありました。

さて、次点佳作作品について触れていこうと思います。

3508 : 看板のない女  はなび ('09/05/08 23:09:15)
キッチュでポップで中身ほぼ0な不思議な作品、選択する言葉に詩情は薄いのだけれども、大人のオンナの昭和的余裕と、奔放なようでいながら密やかな慎ましさがあり、それらをフランス語で書いたものを自動翻訳で邦訳したかのような独特の距離感が個人を掴んでいきそうだ、という意見がありました。舶来品を繋いだジャンクだとか、ガーリッシュなセンスだけで成立しているといえばそうだけれども、ちゃんと景色や心象も見える作品にはなっている、いずれにしても、小粋であり、目を引く、という意見もありました。作者は、カラッポ、だからスラスラと書ける、良い意味でホームランは打てない、が三振もしない、という意見もありました。最後の良さが作品を支えている、そこへと持って来るまでに、削いでも良いかもしれない、盛りだくさんさが最後の良質さを活かしきれていないように感じた、連作にしていって、最後を活かしても良かったかもしれない、という意見もありました。

3552 : 鉄塔に登る  右肩 ('09/05/30 09:12:40)
鉄塔から避雷針、ブラッドベリよろしく「血が熱い」、そうした若者らしい捨て身のポジティブさ、その無欲の表明には敬意を払いつつも、再読を重ねる度に薄くなっていく印象は否めない、という意見がありました。三連目からは、もっと跳べたように感じる、凡庸な流れになってしまうので惜しまれた、尺の短い作品でありながらも懐は相当にありそうな未完の小品かもしれない、という意見もありました。北園克衛の引用は、余計とまではいわないけれども、微妙、という意見もありました。悪くないのけれども、読めば読むほど作者ではなく、器用な作品に思えた、最後は不要に感じた、という意見もありました。

3551 : 粘土  田崎 ('09/05/29 22:41:45)
所謂「意味」を重視しない(軽視していない)テキストの言語態度は猜疑心の強い悪党には強烈にアピールする、実際に潜ろうとしても、斜線や薄膜が邪魔しているけれども、そこでの苛立ちと興味の配合は読み手を試しているような感触もある、意味を追いかけたり、各々に立ち上がるイメージから繋げようとして読むと、やくたいもない混沌が待っているのみで、そこで溺れるのも投げ棄てるのも許されているけれども、作品の肝は、想像力を酷使した後に始まるように感じる、という意見がありました。「わかる」ことは、詩にとって、手段であったり目的であったりする場合もあるけれども、作者にとっては埒外なのかもしれない、平易な「日本語」を使用しながら、ここまで書ける、言語の貧血だったり複雑骨折だったりするような、取り澄ました服を脱いだ言語の、または詩の、「症状」であり、その「状態」であるのかもしれない、初稿から次第に診断されていくのであろう段階を、読んでみたい(問題は、病状にあるのではないにせよ)という意見もありました。

3509 : 散文の雨(反転)  いかいか ('09/05/08 23:34:39)
即興に近いのかもしれない、点描的に配置された、過去に使役されない言葉に、開き直りの可能性すら感じた、さながら、適度に整った乱調と落丁であるが故の無いであろう筈のものを探そうとしてしまう魅力がある、という意見がありました。一見、読み手を選んでしまう作風だけれどもが、全編、女言葉で書かれていたなら、発表場所によっては、それなりに人気を得たかもしれない可能を感じた、という意見もありました。作者の近作の、余技のような軽い質量が個人的には愉しい、誤字や変換ミステイクが激減したのもまた、うれしい、という意見もありました。ジム・モリソンよりは、機嫌の悪いピート・シンフィールドが虚言症になったかのような、そんな往年の重く暗い時代と、禁止ワードの自己設定は感じるところがある、くれぐれもディシプリンの方向は目指さないでいただきたく望む、という意見もありました。
(ハツカネズミは故郷を思い出し、
    オレンジを切る手から逃げる)
この部位が特に印象的、作者の刺々しさからの寂しみを見せられているようで良かったのかもしれない、という意見もありました。

3555 : Le test de Rorschach  はなび ('09/05/30 23:17:38)
明と断定の不思議な提示の形式を発見することが出来た、という意見がありました。いろいろ考えるよりも、素っ気ないけれども光る、重苦しくなく浅くないセンスを重視したい、という意見もありました。それなりに書けていて、尚且つ、遊べる余地がかなり広い、斬新ではないにせよ、常に楽しませてくれる、という意見もありました。なんでこんな簡潔な珍しくもないあり方の作品がきっちりとした作者の空気を出していき、笑みを含んでしまう丸みを出せるのか不思議に思う、という意見もありました。これを他の誰が書いても、ただ文章で、ただ作品で終わると思うが、この作品はその後に香辛料がかけられている、それは作者から滲み出して乾燥したものにほかならない、筆致の少しの違いが非常に気になる作品、という意見もありました。

3512 : 現代詩  ぱぱぱ・ららら ('09/05/09 11:20:38)
地味だけれども、独特の質感はある、更にいろいろ欲しがるのは読み手としての悪い癖なのかもしれない、様々な意味で、惜しい、と感じる、という意見がありました。やはり「現代詩」というタイトルは、「構えて」しまいがち、解り易いとはいえない対比等の記述が、もっと他のやりようもあったようにも感じる(例えば不実と、ねっとりと絡むような)という意見もありました。爽やかで筆のあり方や作者の側面が撫でてくる、冠する中に小ささや個の大きさ、を切りつけていくありようが魅力的でもあったけれども、少しだけ物足りない面持ちもある、という意見もありました。1941年7月7日を調べたくなるだけでも成功なのでは、という意見もありました。

3497 : 飛田新地  ゆえづ ('09/05/04 02:29:23)
描き方の均されなさが相も変わらずめちゃくちゃで、それは凄いことだと思う、調子の一本化が最後の変化を少しは挙げている、という意見がありました。 今回は題材が表面だけになってしまっていて、それがどうもいただけない、という意見もありました。作者が、毎回、いかにもフィクション的舞台を選ぶのは何故なのだろうか、それが魅力なのかもしれないけれども、という意見もありました。作者の選び取る言葉は、いちいち卑俗で、まず、そこは佳いと思う、あまり技巧に長けているわけではないようだから、どうしても説明調子になってしまう、本作はそうした面が特に顕著かもしれない、ちょっと小綺麗にコントロールし過ぎた感もある、という意見もありました。演歌的な匂いすら滲む四連目などは、一息で読める凡庸さが、作品の深みを邪魔しているかのようだ、二、三、四連が無かったらもっと良くなったのではないか、という意見もありました。
>一枚の座布団だけが優しさで
惹かれるフレーズだ、 しかし作者の筆にしては他人行儀な印象が強い、という意見もありました。

3510 : 巨人  丸山雅史 ('09/05/09 00:25:32)
今までの作者の作品では一番良い、という意見がありました。最後は、どうにかならなかったのだろうか、三連のよさをもっと高める四連があるような気がする、逃げているような気がする、一連からの良さはホッとする、という意見もありました。

3496 : 永遠  丸山雅史 ('09/05/02 19:46:04 *5)
内容がベタな分、素直で、ぎこちなさと共に沿いたくなる引力ある実が光る、五連、もっと削いだ方が生きるように感じる、無言の有が映えそうだ、という意見がありました。三連を、もう少し見やすくしても打ち抜かれたかもしれない、 一連からの意味の通いが体臭にまみれた中での幻影が確かで、魅力ある作品だ、もう一歩のところまで来ているので非常に惜しいと感じる、という意見もありました。

3520 : (無題)  debaser ('09/05/13 20:42:32 *1)
絶頂の時にある言葉遊びの妙を読ませる先にあるもの、開かれた思考や体現がもう一歩欲しくも感じる、最後の断定が、どうも損だ、という意見がありました。 ポップな空気だけが白々と漂ってはいますが、口語体ポエムとしては失敗作にも思える、感情の吐露に比して、内実の空疎さは感じる、という意見もありました。「なげやり」な感は、少し気になる、過渡期なのか、「鴎」のようなものは、いくらでも書けるから二度と再び書かれないのかもしれない、けれどもニーズに、たまには応えていただけたらな、なんて科白が巷の酒席では百万回は交わされるに違いない、という意見もありました。レスレスは、面白かった、という意見もありました。

3490 : くらげ  なつめぐ ('09/05/01 07:28:19)
いつも誰だか解ってしまう書き方、それは良いことだと思う、二連目の説得と比喩のつながり、跳躍と口語、記号の使い方のあまり上手いとは言えない部分など、少し範疇に入っていて内側だけれども、その内側で放出する線は、それなりのものを持っている、という意見がありました。

3538 : ”クラッカー”  ミドリ ('09/05/23 11:06:05 *9)
文体の上手さは読みやすさに伴い、上質な欠損を張り上げているように感じる、入る先に逃げていく振り返らなさが不満を拡げる、という意見がありました。どこを見るか、だと思う、綴りとしては優良も優良の部位もある、しかし、空洞性が少し目立ちもする、メソッドの罠に喜びはまるか、そうでないかで違ってくる、という意見もありました。無駄に長く、作中キャラクターが浮きまくり、オチも弱い、飄々とした会話調の文体を頻繁に採用して、たとえ即興に近い印象のある作品でも、凡庸ではないセンスとコミカルな描写で読ませる数少ない書き手のはずなのに、これは合点がいかない、という意見もありました。

3505 : 西脇弓子  大女 ('09/05/06 00:48:55)
器用な作品だ、読み返すことはないかもしれないけれども、それなりの小作品であり、感動はないけれども、おおおんながHNなので活きている部分もある、という意見がありました。 喚起されるイメージは迷走もしくは埋没気味で、何かしらの片鱗は僅かに感じるけれども、もっと暴走した方が出鱈目であっても魅力的だったのかもしれない、賑やかな外観に比して、中身はスッカラカンに近いこのタイプの作品はインターネットに於いては食傷気味、いかに差別化を図るか、まずは、そこから、かもしれない、という意見もありました。

惜しくも選からは漏れましたが、その他、以下に挙げる作品が注目されていました。

3548 : ヒトの取引先  破片 ('09/05/28 01:35:01)
次点に推すのにほんの少しだけ足りない、作者の力みが取れてきている、この先がみたい、という意見がありました。句読点がだらしなく使われていて作品自体の繋ぎを損なっているけれども、一番、血肉を感じて空虚感や追いつかない自分の内実に向き合っている作品に感じた、ヒト、とか希薄な部位が書いてある薄さとの格闘を持ち上げていた、という意見もありました。足りないのでもなく過剰なのでもないのだけれども、スムーズさを欠いている感が否めない、様々な、わかりにくいイメージ、それらが孕んでいる景色や心情は辛うじて伝わる、追憶だとか、待っている(または待ってなどいない)ことだとか、そして、オンとオフのズレだとか、その他、どちらかといえば硬派な印象の強い筆で、ありがちな詩情を迂回して辿ろうとする事には好感が持てる、という意見もありました。まだまだジョイントやバランスに課題があるように感じる、オレオレ的なポジショニングから半歩下がって、向かうと、また違った閃きが生まれるのかもしれない、という意見もありました。

3535 : 川辺にて  Chiave ('09/05/20 17:54:14)
 ほんとうに理由もなく
などは必要ないように書いてあるような気がする、
 川は きれいに病んでいる
ここを、
 きれいに病んだ川が
と重ねるより、もう少し先の(川は肺血漿に浸される)など何か具合を重ねて引き出しても広がったかもしれない、もったいない、せっかくの描写を活かす方法がもっとあったように感じる、という意見がありました。丁寧なガイド、それ以上でも以下でもない、文学的な地力はあるようだけれども、軸足を置いているのが教師的な説明の地点にあるように感じる、という意見もありました。ヘタではないけれども、作品自体に若さ(瑞々しさ)がなく、華がなく、冒険もなく、センスもなく、謎もなく、さりとて老獪でもない、いわば習作の域にあるように感じた、こうした平坦なスタイルを惜し気もなく棄てたところから、何かしら始まる気はする、半端に巧くなっても誰にも読まれないのではないか、という意見もありました。淡々と描写していくスタイルは突き通して欲しい、角度もそのままで良いように感じる、ちょっとした切れ目をズらして入れたら強烈に惹かれたと思う、という意見もありました。

3517 : 少女。かく語りき  右肩 ('09/05/13 05:53:46)
良質さを離さない一連目があった、タイトル、最終連、あまりにも狙いすぎなコトバ、さまざまな問題を抱えているけれども、作者のスタンス的にも別にそれはそれで良いのかもしれない、という意見がありました。比較と対称、対照と作用、それらがしっくりと流れてはいるようだけれども、贅肉の欠落というよりは、寧ろ贅肉の標本により近いのではないか、B級ポエムにも届かない退屈な作品、狙いはわかるが、もっと構造そのものを俯瞰して考えないと、試みとして評価されても、肝心の作品がこれでは、と思わせられる、という意見もありました。

3550 : 火曜日  チャンス ('09/05/29 18:13:39)

3521 : 公園から見える  19 ('09/05/14 00:17:09)

3530 : 象の肌  かとり ('09/05/18 23:41:23)

3499 : 猫爬虫類の羽毛布団  フリーター ('09/05/04 19:08:41)

3525 : 月面テロル  深田 葵 ('09/05/16 17:13:02)

以上です。

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2009年4月選考雑感

2009-06-06 (土) 13:36 by a-hirakawa

今月も勉強になりました。
ありがとうございました。

今月は、

3462 : 女神  右肩 ('09/04/14 05:05:34)

3437 : 春  ひろかわ文緒 ('09/04/03 22:30:46)
 
3453 : 公共交通機関  ゼッケン ('09/04/08 21:47:53)
 
3487 : ラピダ  いかいか ('09/04/30 11:49:14)

3458 : マーブル  ひろかわ文緒 ('09/04/13 01:37:08 *1)

3475 : No Title  浅井康浩 ('09/04/23 10:43:33)

3454 : 問題はない  鈴屋 ('09/04/08 23:15:34)

3469 : Je veux savoir ce que je veux  はなび ('09/04/18 21:42:27)

3436 : リビングの底  小禽 ('09/04/03 18:34:57)

3439 : 「ミドリさんがやってくるわよ!」  ミドリ ('09/04/04 16:13:48 *7)

3478 : クロリス  ゆえづ ('09/04/27 14:13:16)

以上、11作品が月間優良作品に選出されました。

3462 : 女神  右肩 ('09/04/14 05:05:34)
詩人ではない作者が二次創作的に派生させた体系・形式としての在り方を活用し作品として高めていて、距離のある詩として成立し得た興味深さが座っている、という意見がありました。まねぶことに大変優れた連の内的使用が、性的孤独に内実を置いており、そこに作者はいないため、詩的雑念がなく丁度よい具合に仕上がってしまっています。断片の綴りに2つ秀逸さがあり、それが高めています。気配だけでいけていることも成功した一つなのかもしれません。右肩さん独自の詩作品は未だ読んだことがないですが、詩の投影でここまで引き伸ばせることは面白い現象なので、読めなくても良いのかもしれません(しかし、それは詩でなくても良いということなのかもしれません。作者の空虚を確かにしてしまうことなのかもしれません)。どう読んでもあまり品は無いにもかかわらず洗練されている、視線の揺らぎとそれに伴う所作の彩りが、適度な尺を滔々と流れゆく、燃費のよい作品に感じる、という意見もありました。
また、細かいことなら、
>放ち
>過ちが
の「ち」の重なりが少し煩い感じは受ける、けれども気にならない範囲内であり、テキストが阻害されているとまでは言えない、惜しむらくは、最終連の着地で、リズム云々ではなく、いわば陶然とした世界の越境をもっと描けた筈という意味で接してしまうものがある、という意見もありました。所謂ネカマ詩の秀作なのかもしれない、という意見もありました。

3437 : 春  ひろかわ文緒 ('09/04/03 22:30:46)
詩に詳しくない読み手にも好感されるであろう空気が、作風という場所で作者の成長を際立たせている、という意見がありました。内実も充分にあるが、ちょっとバランスが頼りない側面もあるため、外観のわりに尺が長く感じる部分もある、という意見もありました。転調も個性的に跳んで、しっかりと滲みながら着地しているように思えた、浅くも深くも読める胡散臭い主張や技巧展覧会等からは隔たった静かな空気が実に魅力的である、美しくも哀しい詩情があり感情を揺さぶる、再読を重ねても錆びない不思議な味わいのある、という意見もありました。最終連がもう一歩という感触もあったが、良質であり、静謐な諦観というのはこういうことだと思わさせられた、という意見もありました。 

3453 : 公共交通機関  ゼッケン ('09/04/08 21:47:53)
まず書こうとしている内実が素晴らしく馬鹿でよいと思います。これだけどうでもよいことを書ききっている作品も珍しいです。もっとねちっこく書くことが常套なのかもしれないが、どうでも良いように感じる小ささがある、という意見がありました。地味な小品だけれども、密度や距離、情景や細やかな心象など、感じ入るものがある、やくたいもない挑戦を大袈裟に書いただけ、とも言えるが、作品のテンションと、チリチリした読後感は忘れ難い、という意見もありました。

3487 : ラピダ  いかいか ('09/04/30 11:49:14)
「まるで僕らが書く散文のようだ」このわざとのほころびが、難解すぎずよい塩梅に仕上げているように感じる、という意見がありました。質感の曖昧なものが目立っていた近作のイメージを払拭するものがあった、視線の配分、倒れては次々に立ち上がる景色の円環、音や匂いもして、再読しても無くならない(気持ちは悪いけれども)という意見もありました。作者のジャブくらいに考えるとこで傑作が生まれるのかもしれない、という意見もありました。

3458 : マーブル  ひろかわ文緒 ('09/04/13 01:37:08 *1)
鮮度と集中とテンションの持続と上塗りが尋常ではない、中身の足りなさを補えるだけの舞が素晴らしい、という意見がありました。いろいろ足りない、或いは過剰で、拙い記述もあるけれども、本作に横たわる内実の重量を感じさせない筆、これは、とりわけ重要に思える、という意見もありました。作者の意図的ではないと推測される在する救いは、リライトのやりようによっては傑作に達する片鱗を随所に散りばめている、という意見もありました。

3475 : No Title  浅井康浩 ('09/04/23 10:43:33)
文体の感解と素材を高めあわせ方が過渡に成就していて、二連の見事さが際立っている、という意見がありました。視覚ばかりか嗅覚や聴覚にまで訴えかけてくる丁寧な筆であり、予感や確信を示唆に富んだ暗喩等で捉えた記述もスマートで綺麗だけれども、素晴らしく完璧な模写を鑑賞した場合の印象のように僅かながらも馴染めなさを抱いてしまう、という意見もありました。

3454 : 問題はない  鈴屋 ('09/04/08 23:15:34)
ハードボイルドな匂いを消したそれのような印象もある、けれども丁寧なディテールを日記調に問わず語りするなげやり加減が、悪くない、結果として、それらが地味な最終連を盛り上げてはいるのだけれど、ちょいとした文学臭い演劇の冒頭部分のような凡庸さも漂うので、抑え気味の獣感をもっと解放してほしかった感も否めなかった、という意見がありました。「地図の説明」(いわゆるマップという意味ではなく)を読ませる巧さは秀逸、続篇がありそうな予感 (例えば、過去へと遡上する、ような)があり、そこも良い、という意見もありました。作者の得意な眼の威力から及ぶ感覚が先へと歩んでいて、時間という過去を手繰り寄せており、手渡す、癖、個性、は幼少期、環境も匂わせて、この作品で全てではない修羅な市民を置いている、見事だけれども、もう少しだけ期待してしまった、という意見もありました。

3469 : Je veux savoir ce que je veux  はなび ('09/04/18 21:42:27)
解りやすい使い捨てられた誰でも書く内容に、ここまで命を吹き込めたことは賞賛されてしかるべきだ、という意見がありました。作者の着想のユニークさ、チョイスするフランス語のセンス等、堅苦しくなりがちな現代詩の空気を良い意味で台無しにするようなところが素晴らしいと思う、決してアカデミックでない、雰囲気みへと導く寛容さにも魅力を感じる、肩の力を抜きながらも芯は通っている、という意見もありました。単体の作品として推すには足りない、という意見もありました。

3436 : リビングの底  小禽 ('09/04/03 18:34:57)
小さいのに巨大で、まとまりも見事、感情で流して勃起している怒号が秀逸だ、という意見がありました。作者がどこに行き、どこに形象を貫くのか見届けたい、という意見もありました。

3439 : 「ミドリさんがやってくるわよ!」  ミドリ ('09/04/04 16:13:48 *7)
見せる工夫と勇気は否定されるべきものではないのかもしれない、という意見がありました。良く出来た映画の予告編のような、中身の無さ加減とエンターテイナーな筆が程好く合致しているように感じる、軽妙なリズムと質感があり、蘊蓄がやや邪魔だけれどもペイパーバックの人気ライター然とした雰囲気を醸し出しているかのような不思議な作品だ、連作に育つと楽しそうだが、そこまで考えなくても良いのかもしれない、という意見もありました。

3478 : クロリス  ゆえづ ('09/04/27 14:13:16)
優良になりましたが、色々と首を捻る部分も多い作品でした。作者は男性の視点になると少し像が美しくあり過ぎてしまうという特徴があります(少女マンガの男性主人公が、ボーイズラブの男性が体毛を知らないように)。その特徴が内容の妙と奇妙に歪んだり合致したりした時に清冽さで、弾くのですが、今回は、もう少しあっても良いようにも感じました。
 君はエプロン姿の小さな確信犯だった
最初の一文での断定が後後に尾を引きずり、あまり上手く作用していないように思えます。二連のありふれた構成の後に引き継がれる、
 おまえも翅を休めに来たのかい
 ああ見ろよ虹だぜ
とも合わさり浮遊してしまう感触があります。酔いに飲まれず客観的に見てしまう感触です。
ただ、
 庭で摘み取ったケシの実を
といきなり空気の諧謔を軽くこなしたり、
 ヒンジの緩んだジッポで
と作品のそれまでの流れよりも勢い的な重心のあり方を大切にしたり、一文一文がいかにも作者な作品で、誰のものでもない作者の作品で、上履きの踏みつけてしまったラットガムより残るので、そこは大切な芯なのかもしれない、と思わさせられました。確か、に。

さて、次点佳作作品について触れていこうと思います。

3479 : 左巻き  がれき ('09/04/27 22:07:11)
作者は巧いです。軽妙です。一時代前なのですが、ずいぶんと器用にこなしています。今回も流麗な感覚線で音韻を操っています。ただし最後の二文が当てすぎていて、それまでを矮小にさせている点はもう少し先に行けたのかもしれないな、と思わさせられました。器用に流れるため、残していく感触が少なく読後に育つことが遠いのではないか、という意見もありました。

3441 : 八十八夜語り ー季春ー  吉井 ('09/04/04 19:43:18)
死を意識しても、爪の垢は煎じて飲めやしない、作者のいちいち上手い箇所が光っている、最終連にもう一歩必要かもしれない、という意見がありました。返信欄にある解釈の方がずっと面白い、という意見もありました。

3445 : 彼岸花  ゆえづ ('09/04/06 01:06:01)
かなりアクの強い筆だけれども、破綻しそうでいて、なんとか収斂したり拡がったり、危なっかしいながら読ませる作品だ、という意見がありました。読者を再読へと向かわせる作風でもあり、新鮮な記述の巧みさと作文的で残念な粗さが混在していて、そのアンバランスが魅力にもなっており、次回作を楽しみに待つような気持ちに素直にさせる、強く推すほどには痺れないが、落選にはなってほしくないと強く思わせるものがある、という意見もありました。今回の作品は言葉のまとまりが前半と後半につれて違い過ぎる感触を掴ませられる、という意見もありました。

3433 : 4月4日、その日の君は、  はるらん ('09/04/03 01:42:18 *1)
旬を過ぎている内容かもしれないけれども佳い作品だ、という意見がありました。ありがちな小市民たる日本人が書かれているけれども本作の醍醐味は最終連であり、形容し難い不気味なニュアンスが巧みに演出されている、少しとっちらかっている印象もあるけれども佳かった、という意見もありました。軽さが剥離された実態の無さが、現代を表層していると感じた、戦火がリアルになりきれない感触が、不安が不安になりきれない感覚が、とても文章にあっている、過去ネット難民だったり実らない愛だったり主題の現実的な部分が現実的に描けていない部分が気になっていたけれども今回はその課題を、逆転的にものにしている、という意見もありました。多大に過ぎて現実感が湧かない感覚を書いたら、作者に、ぴったりなのかもしれない、という意見もありました。

3461 : さくら。  亞川守紀 ('09/04/14 00:12:59 *1)
突っ込みどころのある美しさが柔らかい存在だ、これからが気になる、という意見がありました。

3471 : 存在証明(は今日も出来ず)  ぱぱぱ・ららら ('09/04/20 13:48:54)
存在について、というよりも存在しないものについて、そうした欠落部分の曖昧な集積のバランスのあやふやさを中世的な口語体で緩くラッピングしてみました的な作品、のように思える、辛辣な視線とコミカルなそれが交錯する事で読むほどに味の出るタイプの作品で、読み方を限定しない、そこも佳い、という意見がありました。作者は確実に新時代の書き手だ、真似しようとしたら糞ポエム以下になってしまいそうな気がする、わざとなまでにポエム的にしていて、敢えて避ける現代詩的な方向は見えていて、斜に構えながら中核を捕らえている姿は、やりつくされた後をわざとやり続ける器用さがあります。ひょっとしたら早すぎる作者なのかもしれない、という意見もありました。

3483 : 木星の春  右肩 ('09/04/29 10:44:41 *1)
作者は相変わらず構成での勝負ですね。そこに作者はいるのかどうか不思議です。演出家としてはかなりの腕前ですが内実をしぼる詩人、作家としてはいるのかいないのか分かりません。今回は、しかし、それを上回る丁寧な性で押し倒しているように感じます。演出家としての在り方も否定されるべきものではないのだろうと思います。悪くない、メタファーも光る、物語性とジャンクの集積とのバランスが魅力的だが整合性という意味では足りてない、という意見もありました。チープな秀作だけれども、作者の課題はいつも最終連にあるように感じる、ストンと落ちない、かといって、余韻が溢れるわけではない、唐突とまでは言わないが、エンドマークに戸惑う場合が多いように思う、という意見もありました。才は感じる、一人相撲的なところから抜けたら、もっと書けるように思う、という意見もありました。

3465 : ひとひら  泉ムジ ('09/04/15 09:18:07)
地味だけれども手際のよい短編であり、陳腐かもしれないが映像の描写などは掴まれる部位がある、という意見がありました。いろんな読み手を想定して作品に向かっている印象があり、本作品は、もっと練れた感もあるけれども、敢えてそのまま出したかのような、そんな勢いと気恥ずかしさが同居している、という意見もありました。共感、というの曲者を時間をテーマに上手くこなせている、という意見もありました。巧い作品だが作者のパワーダウンというか、閉じこもり始めたというか、瞬発力という魅力、文学内での裏書きしていくエンターテイメントが縮小されたように感た、ユーモアが減って代わりに盛られている感覚は良質かもしれないけれども質が違い過ぎるように思えた、という意見もありました。

3489 : 位相  はなび ('09/04/30 23:46:22)
サラサラッと書いた(かのような)筆致が魅力的であり、外観が内実を寄りきっている感触に惹かれた、という意見がありました。良質さがいま一つ介在を余儀なくさせていない、という意見もありました。作者は、タイプとしては突然変異型の珍種の書き手だろうから、亜種の溢れる詩界にあって大切にしたい、と思う、どう大切にすればいいのかは、よくわからないけれども、という意見もありました。脱力系の傑作を簡単に書いてしまいそうな才は感じる、期待してもいる、という意見もありました。

3481 : 春の下  如月 ('09/04/28 21:21:50)
作者は確かに巧くなった、基本的なスタイルが、積み上げていく形式から削っていく形式に変わった、というのもあるのかもしれない、その過程で、バランス等に配慮するあまり、やんちゃな記述が影を潜めたな、と思う点も気になる、という意見がありました。そつなくまとまってます、工夫して書いてもいる、ただ、あまり読み返したりはしないかもしれない、作品として特に破綻もなく問題は無い、しかしながら魅力にはやや乏しい、という意見もありました。どこから生まれた作品なのか、振り返ると突き刺さる言葉や綴りが過去には作者にもっともっとあったので、そこを大切にしてほしい、瓦壊に足を留めるような理性と本能のせめぎが過去作のようにあっても良いのかもしれない、という意見もありました。

3467 : 矛盾  億年筆 ('09/04/18 03:59:50)
よくここまでくだらないことを展開させていったな、と極端さに拍手してみたい、という意見がありました。

3463 : 30ページ+5分20秒  ミドリ ('09/04/15 00:56:21)
作者の筆は常に達者だが、昨今は読み手の過剰な期待には応えられていない印象が強い(そんなもんに応えようとも思ってないような飄々とした中庸さも感じるけれども。)、まずまずの小説の切れ端みたいなポエム、ベッド・シーンが演出される今までの作品の大半と同じ雰囲気がある、という意見がありました。巧い、ミサイルとあれは王道だが、外れていない、だからもっと欲しくもなる、という意見もありました。

3468 : コミュニ鶏頭  菊西夕座 ('09/04/18 09:11:53)
肩の力を抜いて読めるしかも繋がっている作品ということでは、優良でも良いかもしれない、作者が持ち合わせている言葉の反射神経を見事に発揮し昇華させている、という意見がありました。頭が良いのだろう、作者はきっと読書中に他のことがどんどん気になって文章よりも先に脳内での想像が上書きされていくに違いない、言葉遊びに過ぎないけれども、それが突っ込みが入らなくても伝わる範囲であり、深読みしようと思えば出来る箇所にあることは大きい、寒さが作品としてよい、という意見もありました。スラップスティックな流れと高座のバレ噺のような設定を電話会話に負わせた、そこそこコミカルでブラックな作品で、悪くはないが、流れが後半にやや失速している、ゆっくり始まって、やがて加速に加速して混沌が渦巻きながら大団円、とかだったら良いのだろうが、ペース配分に失敗しているのではないか、
アダージョではなくアンダンテでなくてはならない必定はないにせよ、ツカミはオッケー徐々に醒めてしまう、ちょっぴり弱いスタンド使いだ、という意見もありました。くどい、くどさをもチェシャ猫笑いにする技量が欲しい、貴重なキャラクターだけれども、それを認めたうえで、更に弾けて欲しい、アクセルとブレーキの使い方には、もっと奥がある筈だ、という意見もありました。作者のレッサーとしての技量と作者としての技量が菊と西くらいに違いがあるのではないか、という意見もありました。

3466 : 透明の息  小禽 ('09/04/15 23:21:37)
一文目二文目が完璧に意識を奪っていくけれども、三文目
  わたしの立つ地面はそうして穴だらけになりました。
から徐々にトーンダウンしている、
 まるで今までの世界は全て嘘だと言われているようです。わたしは地上にいることが随分辛いと感じるようになりました。
の凡庸さを、もう少し整えていくと、最後の透明も、もっと活きるように感じる、勿体無い、良質さがある、という意見がありました。

3448 : 言葉  ぱぱぱ・ららら ('09/04/06 05:21:42)
 僕が海と書くとき、それは海で、僕が愛と書くとき、それは愛であって欲しい。
スタートしてたどり着いていく在り方、それは指示したいかもしれない、ただ、読後の印象など、伝わるものなど、剥きだしすぎて、「詩人」の神々しさに立ち向かえないものだとも感じる、という意見がありました。

3473 : 僕のほら穴の仮面パペット人形  黒沢 ('09/04/21 23:24:48 *10)
先ず、このタイトルは失敗しているのではないだろうか、読む気勢をある程度は削ぐ狙いがたとえあったとしても、「一回りして新しい」までには足りていないような古臭さが浮かんでいる、幻想文学の範疇にありがちな空気、それの賛否は置くが、タイトルと初連でツカミは成功しているとは言い難い、マニアックに堕ちている印象、という意見がありました。ややこしく陰鬱な描写、心理的不具に寄り添う乾いた悲嘆と不意の覚醒、それに伴う惑いや静かな怒りを、地味な工夫を凝らして丹念に書いた力作、しかし読んでいて愉しくはないのがキツイ、読んで愉しいかそうでないかという単純ながら大切な問題と、例えば根源的な実存とを、いかに融和させて書くかを、求めたい、という意見もありました。「仮面パペット人形」…タイトル含めて16回は頻出過剰、作者は短めの作品の方が比較的光る感じがする、という意見もありました。過渡にしてはありふれ過ぎた比喩で、ありふれ過ぎた文章で、読ませはするけれども退屈もさせてラストに驚きもなく、蝕みもない、内省的に過ぎないようにも感じる、次の傑作への膿だしであって欲しい、という意見もありました。

惜しくも選からは漏れましたが、その他、以下に挙げる作品が注目されていました。

3464 : 彼女  んなこたーない ('09/04/15 04:08:21)
正直、わけのわからない、アホみたいな作品、かもしれないが、堅い詩にありがちのある種の「白々しさ」から解放されているが如くの空気やリズム感、そうした個性は買いたい、無駄な記述も散見される代わりに奇妙な味わいのある比喩もある、おそらくは即興に近い、自動筆記よりは速記詩的なチープでキッチュな作品なのでは、という意見がありました。

3474 : ぼくらのエチュード  草野大悟 ('09/04/23 00:39:39)
所謂「不幸自慢」に堕ちないところが良い、気の利いた小品として触ってもニンゲンの影が漂う、そのバランスが悪くない、ここから、もっと跳べそうな予感がいつもある、という意見がありました。

3430 : 無題(放熱、)  雨宮 ('09/04/01 12:43:00)
放熱、というよりは青春的所産の微熱をクールに描いた佳作、自己完結性が強いのが魅力であり欠点でもあるようにも感じる、薄い手応えのわりには奥行きがある、突出しているかどうかは疑問だ、という意見がありました。ここから、という良質な素材に思える、ここから傑作を生み出すことが可能なはず、このままでも良いけれども、それは詩よりも詩に近い感情なのでは、と思う、血が通わない作品が多い中、血だけ、のような作品に感じる、という意見もありました。

3460 : 無題(夜に沿う)  凪葉 ('09/04/13 12:26:53 *2)
いつも迷う、ややもすれば平坦、そこをどう評価するか、に思える、例えば、ギッシリと埋められた濃く難解な作品の対極にあるともいうべき、(あまり効果的とは言い難いにせよ)空白を多用しがちな作者の手癖、その熱量の稀薄さは好感にいつでも仰ぎはする、また、書き手としての性差が見極めにくい、または、そこに準拠して書いていない、なかなか狙えないところから書いている、と感じ、それは面白い部分だと思う、という意見がありました。自殺する寸前の躊躇いや回想、及び、その静かなる葛藤として読んだ、年若い読者に手渡されるものは多い作品かもしれない、という意見がありました。

3438 : 神楽火法典  フリーター ('09/04/04 01:41:32)
やや粗いながら強引に読ませていくチカラ技がある、忙しい展開も巧く描けている、配役の妙も効いている、よくよく読むと意外に深く類型的な硬いバイオレンスに収斂していない、という意見がありました。

3485" title="http://bungoku.jp/ebbs/20090429_215_3485p\">3485">bungoku.jp/ebbs/20090429_215_3485p">3485 : 浄楽寺  吉井 ('09/04/29 18:31:00)
退屈、の半歩手前だけれども味はある、あまり需要は見込めないにせよ、作者の筆には引き続き注目していきたい、最新鋭のラボではなくて、放課後の理科室で実験しているかのような詩作スタンスや安直に馴れ合わない姿勢が気になる、という意見がありました。

3444 : 詩 In C  debaser ('09/04/06 00:03:59)
知的好奇心を刺激されたり、視覚的に面白いと感じたり、そのような読み手は「謎解き」に喜んでチャレンジする筈、そんな作品に感じた、謎に答があるかどうかは別にしても退屈感もある、という意見がありました。

3456 : 現在を越えて、涙は  破片 ('09/04/10 07:11:31)
作者は、才より努力によって書いている人なので大切に見守っていきたい、本作品、悪くはないですけど、あれこれと詰め込み過ぎたあげくの冗漫さ加減がキツイ、ギリギリのアウトコースなど狙わなくても、ど真ん中に投げればいいと思う、変化球しか投げられなくなるよりは、ずっといい、違いますか? という意見がありました。

以上です。

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2009年3月選考雑感

2009-05-02 (土) 16:12 by a-hirakawa

今月も勉強になりました。
ありがとうございました。

今月は、

3417 : マザー  宮下倉庫 ('09/03/23 21:39:07 *1)

3423 : 「一条さんがやってくるわよ」  一条 ('09/03/30 01:12:03 *2) 

3427 : 給水塔  黒沢 ('09/03/31 00:14:15 *5) 

3377 : RJ45、鈴木、  一条 ('09/03/06 18:10:07 *1)
 
3373 : 種グマのヘンドリック  ミドリ ('09/03/06 00:03:51)

3428 : 海想癖  苺蝶 梓 ('09/03/31 03:46:10 *1)

3384 : 平原II  田崎 ('09/03/12 00:17:39)

3396 : 東京オールナイトの夜  がれき ('09/03/16 21:14:06)

3390 : 「市ヶ谷物語」  吉井 ('09/03/14 01:49:48)

3395 : 駅  鈴屋 ('09/03/16 19:44:22)

3376 : アノレキシア  ゆえづ ('09/03/06 09:19:09)

3381 : 馬の死  木下 ('09/03/09 23:46:54)

以上、12作品が月間優良作品に選出されました。

3417 : マザー  宮下倉庫 ('09/03/23 21:39:07 *1)
これまでの作者の作品とはまた少し異なり、スタイリッシュでありながら実存的で、浮遊した言語様式とは対極にある手触りのある体感的情感が印象的だ、という意見がありました。きっちりと進化してきている、素晴らしい、敬意を。内面を捨てて表層を追うこと徹する作品が多い中で内面も組み込むことに成功した、今もっとも先端にある作品なのではないか、という意見もありました。

3427 : 給水塔  黒沢 ('09/03/31 00:14:15 *5) 
隙間が開き過ぎだが、力作である熱量は確かに押し込まれてくる、という意見がありました。この給水塔はもう少しまとまったのではないか、という疑問が熱量の奥からにじんで来もする、あまり上手過ぎるということがない文章それぞれが、振れ幅を大きくしていて、そこが魅力に感じられる、という意見もありました。

3377 : RJ45、鈴木、  一条 ('09/03/06 18:10:07 *1)
毎回、変えてくる手が一条様式を高めていて、読後の一文が轢いていく力の大きさが昇華を確かにしている、という意見がありました。
 
3373 : 種グマのヘンドリック  ミドリ ('09/03/06 00:03:51)
書き様によってはどうしようもない下品な話になるのだろうけれども、飄々とふざけている筆致の見事さを思わさせられた、という意見がありました。切り取り方が上手い、意識のずらし方がアッケラカンと凄絶だ、という意見もありました。

3428 : 海想癖  苺蝶 梓 ('09/03/31 03:46:10 *1)
突いてくる言葉の一つひとつが過剰でないのに吸い上げられている点が面白い、タイトルのハードルの低さも良い、身体性を重ねているところと関係性を織り込んでいることで巧い具合に客観的になっているように感じる、素晴らしい、という意見がありました。もう一歩を思わせながら伸びていく足跡の確かさは今月一番だったのではないか、という意見もありました。

3396 : 東京オールナイトの夜  がれき ('09/03/16 21:14:06)
技巧のむっつりスケベさが実に立っている、という意見がありました。作者の作品は、選考の際にかなり意見が割れています。圧倒的に推すか全く推さないか、中間がありません。それは良いことだと思います。ガンガン書かれて欲しいです。

3390 : 「市ヶ谷物語」  吉井 ('09/03/14 01:49:48)
この作者は下ネタの挟み方が芸術的で誰にも真似できない知性と下衆な本能の狭間をキッシュに描く不思議さがあります。最後も上手いですし、黄色が想起させてくることの刺激を存分にはみ出してきています。もう少し遊びがあっても良いのではないか、という意見もありました。

3395 : 駅  鈴屋 ('09/03/16 19:44:22)
進化と呼ぶべきか大いなる過渡期と呼ぶべきか躊躇われる作品だが、悪くない、という意見がありました。作者の作品としては決して良い位置にあるとは言えないが、これだけ面白いところのあるものを、完璧な物に完璧でないところがある、というのもおかしな話なのかもしれない、という意見もありました。監督ばんざいを最高傑作とする人もいれば、しない人もいます。その中間にある中間の中間の中間感覚を思わせたのも事実です。もっと感情を壊させても良いのでは、この作品はこの作品で良質なのだけれども、という意見もありました。

3376 : アノレキシア  ゆえづ ('09/03/06 09:19:09)
今ひとつ、作文として足りないのだけれども、巧稚を超えて伝わるものがある素材のこなし方だ、という意見がありました。言葉が作者なので、引きずり込まれもするけれども、最後は少し直情が過ぎ、それは寄り添いたくなる直情の書き方ではなく、言葉選びの粗を極端に出してしまっている筆致に思える、という意見もありました。優劣は別にして、作者は確かに詩を書いているので選考委員内での評価は非常に高いです。

3381 : 馬の死  木下 ('09/03/09 23:46:54)
粗いが見まごうことなき詩だ、という意見がありました。引っかかるものは確かだが、今はまだそんなに形になっていないかもしれない、という意見もありました。作者の奥からの魅力を感じさせる作品なので、何作品か続けて読んでいきたい、これからも作者の作品を読み続けたい、という意見が賑わいました。これからも是非、よろしくお願いいたします。

さて、次点佳作作品について触れていこうと思います。

3398 : 帰還  ぱぱぱ・ららら ('09/03/18 17:27:09)
目新しい言葉は帰還兵以外ないけれどもエッジの効いた良作だ、という意見がありました。優良へと推す声もありました。
 「帰還」

 還ってきた
 帰還兵の
の「還」を最初に重なり合わせていることで三連目が心もとなくなってしまったのではないか、受け取りやすい巧さがある作品だけに勿体ないのではないか、という意見もありました。

3406 : ケセランパサラン  はなび ('09/03/20 00:06:15 *1)
エロさが陰美な方向ではなく傾き通していて、軽さとリズムと勢いと読みやすさとの狭間が上手い、巧くないところがまたよい、という意見がありました。

3383 : (無題)  CGあゆみ ('09/03/11 18:18:11)
原石的な良さがある、できれば優良にしたい、という意見もありました。それぞれの言葉は特に印象的ではないけれども、魅せ方によっては良作になる可能性はなきにしもあらずな作品だ、この書き方というのはポエムポエムしていて、それはそれのよさがあるけれども、まとめすぎている部分や、この文章、綴りを見て欲しい、という部分があからさまな点などが、どうしても削いでしまうように思えた、という意見もありました。思いつきやすい比喩なので構成の妙など、または破壊的なものを吸い込んだら柔らかく良質な作品を書く方向へ作者は変貌するのかもしれない、という意見もありました。

3405 : 朝の風景  ミドリ ('09/03/19 21:33:19)
抜いた肩の力がよい方向に働いた印象を受けた、という意見がありました。今までのスカシッ屁具合や寸止めに感じられていたところから、登場する者の背後を窺わさせる断片に移行していて、その部分の切り抜き方が調度よくなってきた作品に思える、という意見もありました。

3418 : un murmure ささやき  はなび ('09/03/24 23:06:21)
こんなどうでも良い詩がどうしてきちんと読めてしまうのか、これは凄いことなのではないのか、という意見がありました。作者にしては素直すぎるが、その分、最終連の素朴さが純に届いている、という意見もありました。落選でも良い、という意見もありました。

3413 : アポロ計画、以後  こんぶ ('09/03/21 19:39:52)
は、ダサくてダサい男子のダサいままのポエム臭が非常にダサくて素敵だと思え、バカだ、と思わせる素晴らしさが人間的で良いと感じました。伝えられていて、その伝えていることはとてもくだらないことなのですが、そのくだらなさがくだらない書き方と伴って、非常にダサいよい味を出していると感じました。

3402 : 胸のあつさも  草野大悟 ('09/03/19 00:00:16)
最初二連があることで、近作の一つしか読み方がない作品とは少し異なり良い位置に行けているように思える作品だ、そして最終連が、とても良質だ、という意見がありました。最初の二連が、草野さんの近作の視点と少し異なっても良い、多様性がある点描と、最終連の単一でありながら暴とする穏やかな柔和の感触であり、近作とは違った味わいがあって、作品の純なる良さを醸し出している、という意見もありました。

3388 : なまえ  寒月 ('09/03/14 00:03:03)
悪くはないけれども中途半端な印象を受ける、それは、最後の方がおろそかになりすぎているからだと思う、
 さみしいはいつか
 かならず電話するといってひとりで帰り
 愛はおばさんと一緒に仕事をしている

 その日会う 女の人に 花を買う
 名前と誕生をそえて
 赤い薔薇を渡し
 見つけてください
 あなたを見つけたように ぼくを

 初めて 声に出し なまえを
 言う
この三連に地下鉄や掃除、赤い薔薇をだすよりも、女性に電話を掛けたりと、何か仕掛けて欲しい、作者のやり方は間違ってはいない、その上でもう一歩丁寧に仕上げて欲しい、と感じる、という意見がありました。もう一歩先にいけたのではないか、名詞、形容詞の擬人化は詩の手法としてはかなりありふれたものだ、そこを真っ向から描く作者に何かもう一歩の期待を抱いてしまったのかもしれない、抱いても良いような作品内の好感触はあった、という意見もありました。

3424 : 前夜  泉ムジ ('09/03/30 06:01:41)
悪くない、巧い、けれども「喝采」などで既に見せた側面を緩やかに見せてしまっているのでイマイチ感が漂ってしまっているのではないか、という意見がありました。カップリング作品としてはかなり良い出来になるかもしれない、スタイルは良いので、もっと期待してしまった、内実が少し低めているかもしれない、という意見もありました。作品にも鮮度がある場合がある、この作品は少し出す時期を間違えたのではないか、この作品は本当に前夜に感じてしまった、という意見もありました。作者への期待値が高いため、厳しい意見が出たのかもしれません。あまり気にせずガンガン投稿されて欲しいです。

3420 : 火曜日の水死体  フリーター ('09/03/28 02:19:45)
悪くない、改行していないと少し読み手がだれるかな、という思いはあったけれども、最後の普通に終わってくれないところも含めて、これまでの作者の中では一番良い、という意見がありました。単純なつくりなので、強めの単語が強いまま働いているんだと思う、という意見もありました。

3412 : 秋  右肩 ('09/03/21 19:36:41)
右肩さんは力作をいつも投稿されていますね。右肩さんは自己と詩への合致の中でも、既視感とトリックを重視しすぎて、ひょっとしたら、もったいない場所へと傾きすぎなのではないか、預けすぎなのではないか、と突いているような気がします。悪くない作品だ、合評部分も非常に勉強になった、しかし皆、この作品の場合は、これ、という意思を持っていて、それが故に合評が盛り上がったような気がする、つまり、過去にあったものをそのまま足さずに引かずにやっているような作品にも思えた、皆もそう思っているように感じた、という意見もありました。

3387 : せつな  右肩 ('09/03/13 01:31:03)
悪くない、最後にやっと、どういう情景なのかもわかる詩、そこまで引き連れていくだけのものがある、という意見がありました。個人的には、右肩さんの長ったらしい作為があり過ぎる作品よりも、詩的にみたてていて、やはり仕掛けがあって作為に気づかされるこっちの作品の方がよほど良いような気がしました。

3392 : 夜の深浅  凪葉 ('09/03/14 23:39:01)
悪くはないと思うけれども、作者はもっと先に行っても良いのではないか、一連からどんどんトーンダウンしているのはいただけなかった、四連目をもう少し効かすために書いておいた方がよい断片があるのではないか、六連は無難過ぎないか、悪くないけれども、もっと進める印象だ、という意見がありました。

3374 : 09/03/05 23:34  294 ('09/03/06 00:52:34)
一気に読める、舞城王太郎的というか楽しめたけれども、最後の希望があってまとまりすぎているところは、あまりに作為的なものを感じる、最後何かもう一発欲しかった、意味なんてなくてよいと思うから、という意見がありました。

惜しくも選からは漏れましたが、その他、以下に挙げる作品が注目されていました。

3368 : 黄色い自転車  カスタネットUSA ('09/03/03 01:34:17)
こういうラブポエムbno
純度をもっと高めても良かったかもしれない、句読点や改行が効果的に思えない、それよりも良い内実があったので、そこをもっとはっきりと浮き立たせるように書いても良いように思えた、よいう意見がありました。

3403 : スクラップ・ベイビー  ゆえづ ('09/03/19 01:18:50) 
 あたしたちは産廃なんだって
は印象的だったが、その前に、
 発狂した姉ちゃんは言った
を持ってくるのは強い言葉で打ち消し合っているようにも感じられる、テンションで作者の言葉を見せていくことには興味深いものがあるが、
 あたしはスクラップ・ベイビー
は少し括りに弱いかな、と感じてしまう、という意見がありました。女の子の言語化されていない内心を文章にできているところが非常に面白かったが、理詰めというか、きちんとしすぎているような気がする、少女らしい破綻があると一皮も二皮も剥けるのではないか、という意見もありました。

3416 : 想い砂  破片 ('09/03/23 14:07:10)
後半は悪くなかったけれども、前半と中盤、意識的なのかそうでないのか、全く使いこなせていない言葉が咀嚼できていないままに浮いて存在している、その部分では作品が止まってしまっている、という意見がありました。もう少し素直な破片さんの作品を読みたい、という意見もありました。

3370 : 猫  びんじょうかもめ ('09/03/04 01:00:26)
跳躍し続ける暗喩は面白いのかもしれませんが結実していない、僅かな線で結ばれているようなはみ出しているような、書きたいことを書きすぎているような気がする、という意見がありました。

3366 : 親友へ  丸山雅史 ('09/03/02 00:56:05 *3)
最終連もう少し欲しい、一連の彼女を出すとか、全く格好良くないよさというか人間味というか、妄想なら格好良い存在に背丈を合わせたりしがちだが、妄想と解りながらダサい背丈に合わせていっている視点、目線のあり方の面白さが、ある、ように感じる、という意見がありました。

3380 : マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン  丸山雅史 ('09/03/09 00:17:47)
途中までとても良いとは言えない所がとても良い、最終連は最高必須に感じる、という意見がありました。

3393 : 早春の歌  はるらん ('09/03/14 23:55:46 *3)
作者の物語にはどうしてこうも体臭がないのだろうか、この方向性でいき続けるのであればリアリティに澄ますということは必須課題のように感じる、という意見がありました。

3386 : record_090225_0030-32@jisitsu.  藻朱 ('09/03/13 01:13:10)
こういうのもありだとは思う、わけわからない作品なわけだからわけわからないということはわけがわからない評価としてわけがわからないままにわけがわからないわけのわからなさをわけもわからずにわけをわからなせていくことに優れさせていくことがいつか、わけわかるのかもしれない、という意見がありました。

3415 : 「市ヶ谷物語」  吉井 ('09/03/23 00:29:43 *2)

3365 : ゼンマイ美女と黄金狐  Anonymous ('09/03/02 00:39:52)

以上です。

・年間選考雑感しばしお待ちください。

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