文学極道 blog

文学極道の発起人・スタッフによるブログ

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9月選考雑感(平川綾真智)

2008-11-06 (木) 12:42 by a-hirakawa

今月も勉強になりました。
ありがとうございます。

皆、それぞれの詩というものがあると思います。読み物としての刹那的な面白さを持った詩、何度も何度も味わえる表現に富んだもの、感情の連なりから産まれていく現象、などなど、それぞれの方がそれぞれの譲れないものを持っていると思います。文学極道でその譲れないものを抱えながら、それが読み手にどれだけ通用するのか、客観的にはどうなのか、側面を持ちながら臨んでいただけると多くの徳が生まれるかもしれません。また、譲れないものを未だ持っていない方もいらっしゃるかもしれません。その方が、この場に投稿し、合評していくことによって、何か見つけていただけたら、それは私たちスタッフにとってもとても嬉しいことです。もしも大罵倒されたとしても、出来るだけ続けて欲しいです。共に伸びあっていけたら、といつも思っております。

さて、今回は、次点佳作作品だけでなく、優良作品、その他注目されていた作品にも触れていこうと思います。

3047 : 赤い鶴  胎 ('08/09/29 22:09:01)
は、文章のうまさではなく、力尽くで読み手を惹きつける強度のある作品だ、という理由から優良へと推挙されました。凄絶を孕んだ問題作です。うまくはないけれども、直情を傍観の凄惨さに負けることなく勝つことなく描き出し、見事な作品世界を創っている、という意見がありました。比喩として結ぶ先天性障害と健常介護者と、その合間での綺麗ごとでは済まされない問題を極めて冷徹に書いている力強い作品だ、という意見もありました。拙い部分がまた強烈さを出している稀有な作品です。

3040 : 流れ星のうた  丘 光平 ('08/09/22 23:36:49)  
は、綴りのうねりが秀逸です。寓意の長けた、文字にしていない中に書かれているありようの充満は、もう見事としか言いようがありません。古風ですが、時間と感情の変化や性的な痛々しさと寂しさ、屹立している存在の凍えが全てに敷かれて一つのくどさをも落とすことなく燃やしています。特に最後の連が秀逸だ、例えばこの綴りがなんの比喩でもなく本当に流れ星の消えゆくすがたの情景だと思って読んだとしても余韻に胸が震える、という意見もありました。 古風ですが、古風な強さが圧倒に在している作品です。

3022 : (無題)  fiorina ('08/09/15 13:28:59)  
は、美しい文章が内実を倍加させています。綺麗とは対極にすら、ある、感情とそこから切り離された意識ある肉塊。環境を印象的風景に輪郭を溶かし描いていくことで詩の中は抽象的具象になり鮮明な光明があますことなく包みあげていきます。投稿作品の中で、いちばん美しい文体をもっている作者だ、それを感じさせる作品だ、という意見がありました。

3033 : もいっぺん、童謡からやりなおせたら  Canopus (角田寿星) ('08/09/19 23:10:47)  は、名作だと思います。何度読んでも褪せることなく感動させられます。この作者の良いところが出ている作品だ、ふんわりとした作風の中にこめられた思いは、とても小さく、とても強いもののように感じる、という意見がありました。

3038 : 勝手に埋めろ、人生  DNA ('08/09/22 09:36:11)  
は、悲しみが薄く薄くつもってゆくようで印象的だった、という意見があり、優良に推挙されました。いい詩だと思います。一方、読んでみたらいい詩だったけれども、このタイトルでぜんぜん読む気がしなかった、タイトルが内実に不釣合いで高められていないのではないか、などの意見もありました。少し雑なところもありますが、それも魅力と転じられるような不思議な熱量がある作品です。
DNAさんは、いくらでも書ける方なのかな、と感じています。制限しなければ、月に2、30作品は投稿してくるような。そんな背後を匂わせる行間がありました。

3042 : 胎動  如月 ('08/09/26 16:14:30 *1)
は、推敲後、高まり強度を増し、優良へと推挙されました。羊水=海、というイメージに新しさはないけれど、穏やかに満ちていく生命とその記憶のような憧れのような、そんなものが、しっとりとしたやわらかさで描かれている、という意見がありました。

!選考中に推敲された場合、推敲前の段階で選考が進んでしまう場合があります。そうなると推敲後、良くなっても(あるいは悪くなったとしても)作品があまり読まれない可能性が出てきてしまいます。皆さん、推敲された場合、返信欄に解り易く、何日に推敲した、と書いていただけると非常に嬉しいです。如月さんの「胎動」は推敲前は次点に推挙されるかどうかも危ないところでした。推敲しました、と書いてあったので、選考しなおして、優良に推挙されました。付記しておきます。

3020 : とんぼ  丘 光平 ('08/09/15 02:39:43)
は、時間の経過に伴う精神からの芽吹きを見事に描き出しています。幼い少年でしょうか。無邪気だった昨日が今日は少し色を帯びている。昨日まではなかった性的なものが短いつづりの中に濃縮されています。古典的つくりの強さを証明しながら、作者を押し出している見事な作品です。

3000 :  八十八夜語り ー晩夏ー  吉井 ('08/09/03 23:50:16)  
は、とても馬鹿で素晴らしい作品だ、ということで優良へと推挙されました。おそらくかなり時間を掛けて書いてある点と、くだらなさが見事な差異を出しています。知性と理性も垣間見える真剣なドアホウは拭いとれない印象を放ち続けます。

続いて、次点佳作作品についてです。

2993 : 祈り  Tora ('08/09/01 02:50:57)  
は、勢いがあり、軸と輪郭の強さで読ませていく良い作品です。細部に加味していって欲しい、もっと膨らんでいけるだけの背景が粗さを際立てて一歩だけ逆剥かせてしまった、という理由から、次点に留まりました。優良へと推す意見もありました。寓意の断定しきる振り返らない言い切る強さと速度は秀逸なので、埋もれてしまった良質なはずの細部を陰影をもう少し使って、面白さの一歩先、を描いてもよかったのかもしれません。

3003 : 彼岸マデ  DNA ('08/09/04 19:24:50)  
は、おまえ、が如何様にも取れることで詩の幅が出ており、優れた箇所にまで高められている作品です。この世に生まれて母胎に帰ることもない世で泳いで、違和感がいつまでも胃で騒ぐこともあるのでしょう。卓越している部分が多いです。しかし、リズムも良く一気に読ませられる面白さもあるが、それ以上の感想を持てない、読後育っていかない作品なのではないか、などの理由から次点に留まりました。良い作品なのは間違いありません。作者の毎回毎回、一定の位置以上で書いている筆のあり方はとても気になります。

3002 : 喪失の仮面  四宮 ('08/09/04 12:20:45 *1)  
は、良質であるけれども、もう一歩踏み込める箇所で凝っていて詩情が止まっている部分が僅かにあるのではないか、という理由から次点に留まりました。とても素直な表現の中に作者なりの創作でもがいた足裏があったりもして、完成されていない中から埋めていきたくなるだけの空気感が漂い、しみじみとした良さが立っている作品でもあります。最後から二連目は、もう少し上質になれた気がします。説明しながら流さなくても惹きつけられる文章のような気がするので、もう少しだけ、ほんの小さな行間があってもよいのかもしれません。

3030 : 思い事  雨宮 ('08/09/18 15:14:45)
は、小さくも良質さがまぶされている作品です。しかし良質な予感が予感で止まってしまいそうな粗さも抱え込んでいる、という理由から次点に留まりました。壮大なものへと自身のひりひりとした小ささが上手く濁点を打てそう、なのですが、それぞれの大きさと小ささとがまとまっているので、対照が近い、という感触で、コントラストが上手くいっていないと感じます。もう少し良い作品になったような気がします。

3051 : 八十八夜語り ー風舞ー  吉井 ('08/09/30 23:56:47 *1)
は、面白くなりそうな予感、配置、アイデア、素材、多くのものが揃っている作品です。しかしそれらがまだ昇華しきれていない印象を受ける、という理由から、次点に留まりました。ひょっとして、と思って音読もしてみたのですが、発音しても美しさやくだらなさは増していかなかったので、何か全体的な強度がもう一つ必要なのかもしれません。

2998 : 折り鶴  緋維 ('08/09/03 00:10:54)
は、全体的な雰囲気は素晴らしく、富んでいると思います。解りやすくも奥を見させられるような空気です。それだからこそ最終連や阻害する「大切」の連呼が気になる、という理由で次点に留まりました。「窓の外に広がるのが、どうか青空でありますように」は名文かもしれません。

3035 : わたしが歩いていく  鈴屋 ('08/09/22 00:04:31 *1)
は、読ませる作品ではあるけれども混沌の後、切り口を与えていないような感触を覚える、という理由から次点に留まりました。それぞれの素材が活かされなかった感があり、少し悪い意味での足りなさがあるように思えました。

3012 : プラハの午後  佐藤洋平 ('08/09/09 05:20:34)
は、雰囲気の良い作品です。「心の最も美しい欠片が」など、もう少し深められそうな言葉がそのまま書かれてある点が難だ、という理由から次点に留まりました。

3004 : ぬくもり  榊 一威 ('08/09/05 12:59:39)
には、柔らかく、優良に推すのは難しいけれども、良い作品だ、という意見がありました。作者が現代詩だかなんだか解らない得体の知れないものから等身大の表現へと移行していく過程が見られて非常に興味深かった、という意見もありました。作文として、至らないところは多々あるけれども、今回の人のぬくもりをストレートに求める作品は作者の根が伝わってくる良さがあった、と多くの意見が寄せられていました。

3034 : みんなあげちゃうモノガタリ  右肩良久 ('08/09/20 04:24:29)
は、良質な部分もあり、吸引力があるのですが、そこへ意図的な軽さが何か先立つ作為と共に匂ってきている、という理由から次点に留まりました。

3026 : 四角い朝  はらだまさる ('08/09/15 22:03:16 *2) 
は、それなりに面白くはあり熱量も感じられるけれども、それ以上でも以下でもない、ある意味、収まってしまった拡大しようもない作品に感じられる、という理由から次点に留まりました。

3009 : 踝  祝祭 ('08/09/08 22:16:45) 
は、黎明から盛り、衰退への寓意が魅力的に働く可能性を持った作品です。

2999 : 夏のパレード  はるらん ('08/09/03 03:36:10 *1)  
は、風景の明るさが、はっきりとは書かない悲哀を浮かべていて、人間に魅力を加味させている良質な部分を持つ作品です。ただ、引き込み方や陰影をもう少し工夫してもよいのでは、という理由から次点に留まりました。
個人的には、
 今日はじめて
 じいちゃんから
 娘と呼ばれました
 私が嫁いでから
 はじめてのことでした
ここの「はじめて」二回目とは意味が違ってきている言葉として、かすかな鮮明を持っても良いのかな、と感じました。
 夏のパレードは
 いまを盛りと
 銀のシンバル打ち鳴らし
 白い入道雲が湧きあがります
最後は全く同じではなく少しだけ展開させて欲しかった、そのことによって作品内の時間を共有できるのではないか、という意見もありました。

3006 : ロッキー山脈  ミドリ ('08/09/05 17:35:41 *1)  
は、咀嚼していく中で振り返らせていくだけの味がいま一つ足りないのではないか、という理由から次点に留まりました。上手い作品ではあります。人生の山はいつまでも越えられないで積雪も溶けてくれない、解りやす過ぎる中にそれが書かれていてクマという入りやすさで綴りが見事にまとめられている、という意見もありました。巧い作品ではありますが、その上へと向かう広がりがあっても良かったのかもしれません。

3041 : 闇の子供たち  5or6 ('08/09/25 21:04:04)
は、不思議な引力がある作品です。研ぎ澄まされた言葉とは程遠いのですが、荒々しさの強さに飲み込まれるには十分なうねりがあるように感じます。下手にも思える点が、感情を揺らすだけの力を持ち、幼い叫び声の劈く方向へと導いているようにも感じます。作品だと思います。思いの強い作品であり逆に言えば作者の強い感情だけが描かれているようで子供たちの感情がぜんぜん描かれていないのが残念に思える、という意見もありました。「闇の子供たち」というタイトルなのに肝心の子供たちの存在感が薄すぎるように感じる、終盤の
 それをつぶらな瞳で見上げる子供たち
 白い瞳で
 それをつぶらな瞳で見上げる子供たち
 白い瞳で
 それをつぶらな瞳で見上げる子供たち
 白い瞳で
 それをつぶらな瞳で見上げる子供たち
 白い瞳で
この繰り返しは、インパクトは少しはあるけれど心に響いてはこないので、こういう繰り返しよりも1〜2行でもいいから子供たちの静かな悲しみが滲み出ているような描写があったなら、もっと良い作品になったのではないか、という意見もありました。別の作品も読んでみたいです。そう思わせるだけの作者が見える作品に感じました。

3048 : 鉄輪  右肩良久 ('08/09/29 22:09:46)
は、おもしろいお話ではあったのだけれども詩作品としては平坦で少しくどい印象を受ける、という理由から次点に留まりました。ホラーめいた狂気とか、この種のお話は特に珍しくはないし悪くはないと思うけれども発表するのならもう少し美しさ(綺麗な言葉や表現、という意味ではなく)を意識して書いても良かったのではないか、という意見がありました。たとえば、暗示にかけられた女の子の本来の意思の美しさ……といったもの、そういう対比があったなら、かけられた暗示にどうしょうもなく流されていく悲しさなどといったものも感じられて全体にメリハリも出てくるのではないか、という意見もありました。アイデア先行でも良いと思うのですが、そこから作者が匂いたって来るものを加味するともっと良くなるのかもしれません。器用な作品なので、もう一歩先へと行って欲しいと、どうしても感じてしまうのかもしれません。

惜しくも選からは漏れましたが、その他、以下に挙げる作品が注目されていました。

2997 : 幻想即興曲  まおん ('08/09/02 18:45:22)
全体的にそんなに悪くはないけれども一連でのゆっくりとした入りに上記の発声が少し邪魔をして諦観的運びが後にあまり上手くは回っていないように感じる、という意見がありました。

3025 : クシャミ  殿岡秀秋 ('08/09/15 21:14:54)
作者の良さはあるものの四・五連の幅の狭さが作品をわざわざ貶めているように感じてしまう、という意見がありました。

3001 : mail train  寒月 ('08/09/04 10:35:39)
依存と距離を取ろうとする乖離が、不安として焦燥として、他人の責任とする我侭さを含めて、よく書かれてはいる作品であるとは思う、という意見がありました。タイトルが今ひとつであり甘さが甘いままで通っていることが気になる、もっと素直に書いても良かったのかもしれない、返信にある「それらがたとえ今夜、全世界に及んでもやはり何一つ癒されることは無いと思います。眠ることが出来るのなら眠りたい。つかめるものは藁ひと束でも。それがはっきり分かった夜を一人で過ごしていたわけです。絶望すら中途半端で。何も食べ物を受けつけなかったのに、三日目にはジュースを飲み始めた自分に気がつきました。」この言葉の方が、ひょっとしたら詩のいくつかの綴りより、ひりひりとした内実に近いのかもしれない、という意見もありました。

3018 : missionary position  寒月 ('08/09/13 07:10:59)
は、結構良いけれども主題のハードルを越えられていないのではないか、という意見がありました。

3023 : 唯の夢 その六  菊西夕座 ('08/09/15 14:19:52)
 唯はそこで夢の排卵を終えました
この部位が儚くて良いな、とは思うけれども、他の部分の跳躍があまり上手くいっていないように思える、いきなり逸脱してからの世界展開なので、それが心地よく転がれば良いかもしれないが、なかなか上手く回っていっていない印象を受ける、という意見がありました。

3024 : 悲しい女  ぱぱぱ・ららら ('08/09/15 15:43:31) 
面白くなりそう、で終わっている印象であり、この先とは言わないけれども細部を少しだけ書いたら、もっと面白くなったのではないか、二個の「悲しい女」が同じではない面白さが匂い立ちそうで留まってしまった印象を受ける、という意見がありました。

以上です。

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8月選考雑感(平川綾真智)

2008-10-06 (月) 16:16 by a-hirakawa

今月も勉強になりました。
ありがとうございます。

文学極道のスタッフは、この場が、良い作品が読める、評価される場所になれたら、という共通した思いを持っています。「良い」というのはとても普遍的であり、それでいて流動的なものです。ひょっとしたら、こういう作品だから入選する、とかいう傾向と対策だけで書き投稿されている方がいらっしゃるかもしれません。良い作品を書きながらも、この作品は文学極道的ではないな、と思って投稿を躊躇われている方もいらっしゃるかもしれません。「世界性」を重要視している作品、反現代詩的作品、現象学を実践している作品、など様々な作品が投稿されてきています。様々な作品が評価されているように感じます。スタッフ側として、没世界的なものでも、良いものは良いと言える場でありたいと思っています。ポエムでも現代詩でも良ければ評価される場所でありたいです。そして、「良い」という基準は人それぞれに果敢無げな華奢でもあるので、自分にとって響かなかった作品はきちんと響かなかったと言える場所であれば、と思っています。様々な評をしていく、されていく、ということは自身にある詩の情感が停滞せずに多角的な視点を帯びて、新しい感動を自作に見出す可能性があります。傾向と対策だけで書いて投稿されている方は、是非、評をしたり得たり見直したりして、詩の感動とは何なのか視点を増やされて欲しいです。そして、作品を書きながらも、文学極道的ではないな、と投稿を躊躇われている方も、是非、評を付けてみて、投稿されてみて欲しいです。大罵倒されるかもしれませんが、得るものが何かあるかもしれませんし、意外と、「良い」と言われるかもしれません。今月も選考の際、委員内で多く、意見が交わされました。

月間優良賞に推挙された作品は、先鋭で明瞭であったり、視点を追求し続けていたり、拙さを帯びながらも感動させる熱気で満ちていたりと、様々な方向性でそれぞれが優れていました。
2965 : あなたのゆくえ(1〜5のうち4・5)  鈴屋 ('08/08/16 22:23:02 *2)
には、1〜5を通しては優良と言うこともできるけれども、4、5単体では、美しさを見た場合、弱いかもしれない、という意見もありました。付記しておきます。

次点佳作作品に触れていこうと思います。

2937 : きみとともに  殿岡秀秋 ('08/08/05 05:21:47)
は、小さく良い作品だけれどもタイトルや接続詞など、もっと上に行ける部位が削いでいて、情感を膨らませていくことを怠っているように感じる、という理由から、次点に留まりました。相殺しあっている言葉同士が目立っているので、もう少し慎重に大胆になってもよいような印象を受けます。書いてそのまま放した作品が作者には多くあるように感じるので、もっと推敲していっても良いのかもしれません。一方で、私詩である作者の作品はあまり趣味ではなかったが、この作品の強度は高く評価できる、という意見もありました。自分のことを自分の枠の中だけで書いているような、ここへと世界性を帯びさせる細工や地政学、歴史の中への配置などが加われば、もっと強度を増すのかもしれない、という意見もありました。

2938 : 施餓鬼  兎太郎 ('08/08/05 12:02:26)
は、興味を惹かれたけれども、宗教観に作品が飲まれてしまい、その先へと達していないように思える、という理由から、次点に留まりました。
 燈明でうるおう子宮
 そのねばつく内壁に ぼくはそっと手をふれる  
 きみとぼくとの縁はほんのいっときむすびなおされる
ここなどはとても上手いと感じます。得てして宗教の混沌は人にあるそれを餓鬼に手向けるものでありそんな傷に膿んだものなのかもしれません。感触は良いけれども、外科治療が気になったり、感嘆詞が気になったりと、もう一歩が足りないように感じる作品に思えました。ただ、確かに惹き込む不可思議さは、作者に大切にして欲しい、独自の貴重なものだと思います。

2970 : きみは国境線という概念をもたずに、それをこえていった  K,y ('08/08/18 22:09:34)
は、鮮度と痛みに長けているけれど、もう一歩踏み込み凌駕するだけの破片が足りないのではないか、という理由から、次点に留まりました。作者を主張しきってある、羅列的な中に密に過渡期が詰まっている興味深い作品でした。虚飾的言語の使い方も、不安を押し込めている内実に合っているように感じます。もっと書ける作者なのではないか、作者の作品としては程度が低い部類なのではないか、という意見もありました。

2959 : Tシャツ  ミドリ ('08/08/14 16:10:29)
は、読みやすいけれども足りなさ過ぎる印象を受ける、という理由から、次点に留まりました。文句なしに巧いが、命を感じない、今月のミドリさんは良いと思ったけれども、相変わらずの寸止め空手だ、などの意見がありました。とても読みやすいので、もう少し話を足しても良かったかもしれません。

2968 : 皿を拭う  右肩良久 ('08/08/18 14:25:36) 
は、解りやすい説明がどんどん魅力を遠ざけている、という理由から、次点に留まりました。過去作とのことでしたが、作者の長所が如実に出ていて、無機的な、あるいは有機的な極論が、しなやかに融合を見せている、という意見もありました。

2960 :  ビー玉として  殿岡秀秋 ('08/08/15 06:09:25) 
は、最終三連がとても素晴らしいけれども、事象が上手くいっていない部分があり、眩い部位を高めていないように感じる、という理由から、次点に留まりました。ビー玉というモチーフを核にしてナラティヴを展開していく良作だ、という意見もありました。一点、ラスト手前、構成に大きな難があると思う、という意見もありました。もう少し強度のある余情に溢れた作品へと仕上げられるように感じたので、細かな部位にもこれまで良作を紡ぎだしてきた作者の筆を是非とも、より先へと活かして欲しいと思いました。

2964 : en voyage 旅行中  はなび ('08/08/16 22:01:57 *1) 
は、温かで可愛らしい作品ですね。程よい描写があり、色の直接配置から作品をはじめたのも効果ありに感じた、という意見もありました。突出している圧倒的な傑作ではないかもしれませんが、良い作品だと思います。アルファべ、は実に印象的です。ただ、感触としても、もう少しかもしれません。濁点が入ると幸せは大きく読んでいてとても膨らむのだけれども。

2945 : 小夜  雨宮 ('08/08/07 08:17:31) 
は、柔らかくて素朴な素敵な作品です。薄味ではあるが、今後の期待が膨らむ作品だ、という意見がありました。地味に良く、緩やかな気持ちになった、という意見もありました。三連がもう少し動いていれば、優良でも良いのかな、と感じました。膨大な世界を小さい自己が確かに証明していて、素敵な世界観だと思います。

2984 : 給水制限の朝(Mr. チャボ、正義と友情と愛とナントカと)  Canopus (角田寿星) ('08/08/26 10:40:26)   
は、構成が展開を支え切れていない、という理由から、次点に留まりました。ちょっと長ったらしく感じた、という意見もありました。チャボは、もう多くの方が愛するシリーズなので、とてもハードルが上がっているのかもしれません。この作品、人間性は描き出せているのですが、サイドストーリーの一人歩きが過ぎるようで、まとまっていないようにも感じました。平面的な感情的で、児童的な負荷で、清潔に書かれすぎているような気もするので、もう少し惨殺な血流は拭えなくてもよいような人間くささが、あっても良いのかな、と思いました。取り合えず、チャボシリーズは大好きです。皆もそうだと思います。ファンを魅了し続けるチャボシリーズであって欲しいです。原点に戻ってもよいような。

2966 : 飛行機とポテトチップ  はるらん ('08/08/16 23:30:46 *2) 
は、構成やストーリー展開はよく、独特の力がある作品だけれども全体として表現の質が低い、という理由から、次点に留まりました。作者がこの方向性でいくのは大歓迎だけど、ちょっと洗練が足りない、という意見もありました。描く人物、キャラクターにもう少し人間くささを加味しても良いのかな、とも感じました。

2940 :  八十八夜語り ー夏嵐ー  吉井 ('08/08/05 22:32:43)  
は、悪くない作品だとは思います。しかし、強く推される魅力に溢れた作品には一歩届かないようにも思えます。「た」で毎回途切れ、並列になっていることが、惜しいと感じさせるのかもしれません。

2977 : フテクサレテモカオハマエニツイテイルノダ  はなび ('08/08/20 22:37:29) 
は、面白い作品で、気になりました。未完成な部分が、まだまだ粗削り的なところが魅力として働いている、不思議な作品だと感じました。もう少し滅茶苦茶でも良かったかもしれませんね。

惜しくも選からは漏れましたが、その他、

2976 : ヒートアイランドの娘  ともの ('08/08/20 20:02:30) 

2969 : 朝日  羅針 ('08/08/18 15:27:17)  

2944 : 秋虫の見た世界  黒沢 ('08/08/07 00:55:53 *6) 

2991 : あの夜の思い出  霞 ('08/08/29 21:15:13)

2947 : 星  こはる ('08/08/07 19:31:02 *4) 

2979 : Nemo  四宮 ('08/08/21 19:23:18 *2)

2952 : (無題)  犀樹西人 ('08/08/13 05:13:26 *1) 

2953 : 月曜日   寒月 ('08/08/13 15:44:16)  

2957 : Hallelujah   はらだまさる ('08/08/14 02:30:32 *1) 

2980 : 猫背  吉野 ('08/08/22 01:20:39)  

2975 : 花火  如月 ('08/08/20 17:31:54) 

2985 : 物思い  祝祭 ('08/08/27 02:11:41) 

2973 : 夏草や  落穂拾い ('08/08/19 13:19:48 *3) 

などが、注目されていました。

以上です。

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7月選考雑感(平川綾真智)

2008-09-12 (金) 15:55 by a-hirakawa

今月の選考も勉強になりました。
ありがとうございます。

選考の際、様々な意見が交わされます。それは、それぞれの投稿作品単品に関してに限らず、投稿されて来ている作品の偏り方や選考委員の自戒など多岐に渡ります。今月、良い作品はもちろん多くあるのですが、選考にあたり再読を要したり判断を保留する作品が少なく感じた、という意見も出ていました。作品に臨むにあたり良い意味での悩ましさが減り、過去に入選歴があっても今月まったく拾えない作品を書いているかたが何人もいて少々戸惑ってしまった、という意見もありました。また、巷には優れた抒情詩・情景詩を書く人がたくさんいるのに、なかなか文学極道には出てきてくれない現状がある、これは、やわらかい良詩を文学極道の選者はまったく評価しない傾向が高いからではないか、という意見もありました。なんでもかんでも書き込めば偉いわけではなく、淡さの美も存在し、ありきたりでも、独創性がなくても、巷に山ほどあるようなものでも、良いものはもっと良いと評価されるべきであり、胸を打つものや、人様に伝える人間力のあるもの、書かずにはおられない何かを持っている作品をもっと大事にしていくべきではないか、という意見もありました。選考の度に毎回、意見は交わされ議論に発展していきます。それぞれの作品の芯に凝縮された濁点に応えるためにも、選考の場がより伸びやかで活気ある場であれば、と思っています。これからもよろしくお願い致します。

さて今月、月間優良賞に推挙された作品の中でも、特に、
2875 : プラタナス  黒沢 ('08/07/04 00:50:57) は、飛び抜けた点数を叩き出していました。プラタナスという、使い古された題材をうまく消化していて、『こころの弱い妻』の言葉とその扱いについては賛否あるかもしれないが、この作品が『妻のこころの弱さ』について語るものではなく『こころの弱い妻に宣告する男』についての詩である限りは、この言葉と扱いは間違っていない、など、手放しではないものの、とかく絶賛されていました。作者の苦心に添えれば、と思います。

次点佳作作品に触れていこうと思います

2912 : ミンミ十字路で、ぼくらは微笑んだ  Canopus (角田寿星) ('08/07/23 07:31:00)
は、テーマと言葉の温度はうまく噛み合っていて良いと思うが、淡さが結実しておらず、もっと多くを求めてしまう、という理由から次点に留まりました。しみじみと奥の方が伝わって来る緩やかさが作品として、確かにあるのですが、膨らませられる情感を留まらせてしまっている印象を、個人的には受けました。前に進むための過程が見えてしまうようで、文章が少しのめり込ませてくれなかったような感覚です。しみじみと良い部分が確かに存在しているので、そこへともっと誘って欲しかったのかもしれません。

2890 : 八十八夜語り  吉井 ('08/07/11 23:56:37)
は、最後まで丁寧だけれども、そこへと意識を向かわせる工夫がもう一歩必要に思える、という理由から次点に留まりました。下手ではないけれども、読み返す気に全くならない、という意見もありました。読み返すだけの魅力、そこが課題になってきているのだと思います。現代俳句的なものを感じたりもしたのですが、それは明治時代においての全く新しい感覚としての現代俳句的な感覚であり、この作品はそう考えると、停滞した詩情の中にあるようにも感じました。もっと先に行ってもよいのではないでしょうか。
2913 :  八十八夜語り ー盛夏ー  吉井 ('08/07/25 00:02:46)
も、注目されていましたが、端的に面白くなく、気になるけれどもそれだけに留まっている、という理由で選からは漏れてしまいました。丁寧に書かれているので、もっと魅力を纏っても良いはずです。いつか最先端の大傑作へと全てが昇華されることを願っています。

2895 : 唯の夢 その四  菊西夕座 ('08/07/12 22:21:02)
は、すべての連が過不足なくまとまっていて、言葉の結晶度が高くイメージの連鎖が空間を造り出せているけれども、作品構造として、二連の無駄さ、四連、五連の事象並列が奥まらせており、素晴らしい最終連を削いでしまっている、という理由から、次点に留まりました。優良へと強く推す声もありました。立派なシュールレアル系の作品であり、たとえばキリコとかミロとかの絵を文章にしたらこんな感じになるような印象を受けた。文体に無駄がなく端正で、2、3、4、5連は、それぞれがバラエティ豊かな空間を造っていて、6連目ではこの作者には珍しく、堅固な「空間」を造ることに成功している。7、8連は、リズムもイメージ伝達も擬音表現ばっちり決まっている、という大絶賛の声もありました。個人的には、この作品、最終連だけが凛と輝いていて、他の部位は、そこを持て余しているように感じました。「幻想という世界にとらわれているとき/唯の外界はかたい卵のように/友好的でおそろしく/嘘つきな自衛のかたまりだった」ここは真に輝いている気がします。一連での表出が、三連で高まるはずなのだけれども二連が足を引き、展開の平坦さへと繋がり、最終連まで持ってこれていないように思えました。しかし、作者の超越しきっている感覚には本当、脱帽するばかりです。

2872 : 日没  鯨 勇魚。 ('08/07/03 20:17:27)
は、センスが漂っており、優良作品より美しいとさえ思える部位もあるけれども、目立つ拙さが気になる、という理由から次点に留まりました。『@依存』は、特に印象的だ、という声もありました。ともすればありがちすぎる場所へと着地してしまいがちな内容を、イメージの共有を意識しやわらかさを保ちながらも独自のことば展開で構築を試みているところに好感が持てる、など好意的な意見が多かったです。一方、「人間との関係に似ている」「能動と受動が遊泳している」など、もっと言葉選びが出来た場が大きく魅力を損ねてどっちつかずの印象を受ける、十二分に獲得している市民権ともいうべき詩的イメージに寄りかかりすぎていて中身がない印象だ、という声もありました。自己と非自己の境界をうたい、融合を切望する、という作品は最近とても多いようです。一歩先で咲いて欲しい、作者なら先を咲かせてくれるのではないか、という期待を確かに感じる作品なので、これからの作品も楽しみにさせていてください。

2877 : 屋根の上のマノウさん  Canopus (角田寿星) ('08/07/05 08:10:36)  
は、導入部分のふくらみが素晴らしいけれども、後半にかけてしぼんでいき、そこに難がどうしても見えてしまう、という理由から次点に留まりました。この作品は、今月最も美しい詩情を描き表している、という声もあり、優良に推す声もありました。全体の静かな詩情を壊すほど悪くはないけれども陳述が唐突に感じられたり、少し詩を意識しすぎているように感じられたり、少しの引っ掛かりがふくよかさの足を止めている印象があったので、細部までもっと惹き込んでもらえると、傑作としてより包んでくれたのかもしれません。

2927 : 風底  DNA ('08/07/30 02:26:46)   
は、十二分に巧いけれども、読み手を説得する要素がなく、単なるモノローグに留まっている、という理由から次点に留まりました。内容と書き方が調和はしています。情感も確固としてあります。ここから雪崩れ込んでくる内実が少し滑りが悪く、それが効果的ではない気がしてもどかしい印象を持ったのかもしれません。

2870 : アカリ  みつとみ ('08/07/02 22:35:34 *7)
は、選考委員全員が点数を入れている作品でした。しかし、優良へと推す声はありませんでした。描写は相変わらず秀逸で、推敲後、確かに作品強度を増した素晴らしい作品だと思います。弱っていく狼や倒れている青年の俯瞰な描写の手触りは作者独自のものが確かに醸しだされているのですが、「この魅力は詩全体の構成のなかで目立つ結果になっていない、それが難点」という声がありました。初め「一作品」としては弱いと感じたが、推敲後は、強さを獲得しかけるところまで来ているような気がした、という意見もありました。連作でこそ真価が発揮されるだろうことは承知だが、単体でも充分魅力に溢れている作品だ、という声もありました。選考委員全員が、もっと上へと確かに行ける作品であり、そこへと到達させることが出来る作者である、ということをこの作品から感じ、もっと多くを求めたようです。改稿版、読みたくて読みたくてたまりません。

2876 : コントラスト・サンダーマン  ぱぱぱ・ららら('08/07/04 17:15:53)
は、巧いけれども、冷めてしまう薄さが気になる、という理由から、次点に留まりました。アイデアも平凡なので、もう少し情感や距離を活かしていって欲しいです。

2915 : (無題)  マキヤマ ('08/07/25 12:10:04 *1)
は、器用だけれども、他の作品の、こじんまりとした真似事のような印象を受ける、という理由から、次点に留まりました。詩作品としてはありきたりなものですが、それなりの情感はあると思います。何かこの作品ならではのものが一つで良いので欲しいような感覚に包まれました。

2917 : 海と天ぷら。  おっさん ('08/07/26 17:12:18)
は、ダサい良い味わいを出しているけれども、変な行分けや決して巧くはない部分が気にはなる、という理由から次点に留まりました。個人的には、作者から素直に出てきている詩、だという点に魅力を感じました。苦しみからの解放を決して望んでおらず、一人になっても苦しいままであるところを書いてある部分や、幸せが天ぷら程度っていうところも、ダサくてよいな、と感じました。深読みすれば、意外と現代社会を痛烈に書いてある作品にも思えます。考えすぎなのでしょうが。

2869 : 月影の出口  殿岡秀秋 ('08/07/02 22:10:15) 
は、五連の切断が勿体無く、成功していない、という理由から次点に留まりました。それぞれ良さそうな文章が膜の上で漂っているだけに止まっていることが気になります。もっと惹きつけることが出来るはずの作品に思えます。

惜しくも選からは漏れましたが、その他、

2868 : 本家にて  祝祭 ('08/07/02 07:50:28 *1)    

2888 : 焚書坑儒ネオ  宮下倉庫 ('08/07/11 20:56:26 *1)  

2891 : ロックスクリーマー  黄色い花 ('08/07/12 01:21:12) 

2866 : 星は巡る  ミドリ ('08/07/01 14:04:24) 

2925 : 木乃伊の人魚姫  右肩良久 ('08/07/28 20:59:48)  

2880 : 赤城 君 Apres quoi...  はなび ('08/07/07 14:25:47)  

2864 : 野球の規則  DNA ('08/07/01 02:35:37)  

2885 : 下呂袋  蒲田のお狼 ('08/07/09 22:03:09)

2903 : モンスターハンター  蒲田のお狼 ('08/07/16 08:29:10 *1) 

2914 : 豚汁  ともの ('08/07/25 11:34:54 *1) 

2902 : 朝のしくみ  凪葉 ('08/07/15 15:14:37)

2919 : 食事  田崎 ('08/07/26 23:13:45)

2886 : 「ハンプティダンプティ」  桐ヶ谷忍 ('08/07/10 17:24:47) 

2911 : 帰路  犀樹西人 ('08/07/22 15:32:05)  

2924 : 島原  no problem  寒月 ('08/07/28 18:42:10) 

2918 : 唯の夢 その五  菊西夕座 ('08/07/26 21:58:43) 

2897 : 芝刈り男  ハント ('08/07/14 00:04:53 *2) 

2909 : 三番目の小さな月  ぱぱぱ・ららら ('08/07/19 04:44:30) 

2908 : 重要な岩  りす ('08/07/18 23:37:44) 

2910 : お父さん  カノン ('08/07/19 07:34:05 *1)

などが注目されていました。

以上です。

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6月選考雑感(平川綾真智)

2008-08-13 (水) 16:57 by a-hirakawa

今月もとても勉強になりました。
ありがとうございます。

選考過程で、技巧的に優れていることも必要条件かもしれないが詩として強くひきつける魅力がある勝れた詩かどうか、ということが毎回、命題として立ち憚ります。技術のある人が技術通りに書いた作品も評価されることはありますが、その一方で、愛嬌というか、綻びの妙、というところが見られる作品が評価されることもあります。上手でも面白くない作品は評価されないということもあります。
今回、優良になった作品でも評が割れた作品は多くありました。
2838 : Allergie  はらだまさる ('08/06/16 22:54:04)は、解りやすく、掴みやすい技術を持った作品です。しかし、人工的なキャラ芝居が細部までを包んでいることが気になる、という意見もありました。この詩は大事な何かが不足しているので、作為的に多くのことをやっているけれども上手くない、という意見もあり、一方で、一所懸命に詩に向っている姿勢が伝わってくる確かな作品だ、という意見もありました。優良に推挙されましたが、内面も、対外的にも、もっと強くなれるのではないか、という思いが残される作品なのかもしれません。
2862 : 空ばかり見ていた  はるらん ('08/06/30 02:14:19)は、平易な文章の中に詩情がきちんと匂い立っている作品です。しかし、詩情を出すよりも物語をただ単に作ってみたかっただけの作品に見える、という意見や、バランスを崩すことを恐れていて全く踏み込めていない作品に感じる、という意見もありました。優良に推される一方で、こういう文体は一つの世界を確かに映すのだが、そこから別の広がりというものはなかなか生み出せない、という意見も挙げられていました。詩の難しい所なのかもしれませんが、はるらんさんが飛躍するには、ここからどうするかなのかもしれません。詩の裾野を広げる視点を持つと作品強度は格段に上がるのかもしれません。

投稿作品に関して、技巧だけ身につけてみたせいで、なんだかよくわからないジャンクになりさがっているという作品が多くなっている、という意見もありました。自戒も込めて記しておきます。

次点佳作作品に触れていこうと思います。

2819 : 憂欝な週末の夜  ぱぱぱ・ららら ('08/06/06 19:03:58)
は、スタイルとしてはいいけれども、ヴィジョンのつたなさがところどころ表現として顔を覗かせてしまっているという理由から次点に留まりました。投げやりに感じられるという意見もありました。優良に推す方もいましたが、「一」の面白さがどんどんと萎んでいっていったように感じられます。「一」を作品内で越えていくことが、作品によりよい魅力を与えたかもしれません。

2837 : 漂流する箱  右肩良久 ('08/06/16 21:49:31)
は、良い作品なのですが、最後と箱が全くもって活きていない、と理由から次点に留まりました。やたら説明口調の文章が多い、という意見や、書ける人だということがよくわかったけれども、この作品では結実していない、という意見もありました。方法論も面白いものを持っているように思えるけれども、この作品では炸裂していない、という意見もありました。個人的には、このような種類の作品はどちらかというと好きなので、もう少し整えて欲しいな、と感じました。あるいはもっと粗くても面白かったのかもしれません。

2806 : アフリカの匂いがする  ミドリ ('08/06/03 17:38:02) 
は、安心して読めるのですが、突出してよいところもない、文脈の深みがない、という理由から次点に留まりました。ミドリさんに関しては選考の際、皆が悩んでいるようです。詩なんか読まない人が面白いと思う作品を書き、そしてそれが成功していることも解ります。例えば、携帯小説しか読んだことがない、とある人が文学極道の月間優良賞に選出された作品などの多くを三行も読んでくれないことに対して、ミドリさんの最近のヘタウマな詩を「これ面白い!」と素直に楽しんでいたりします。ミドリさんについては実存大賞を取ったときの完璧な流麗さが頭にあるので近年の作品はいいかげんに作られた物に見えますが、「文学」という偏見の無い者、堪え性を持って文章を読んでくれる人ではない人たちに開かれる可能性、現実における可読性の高さは測り知れないものがあるかもしれない、という意見など、選考の際多くの議論がなされました。

2845 : 無題  マキヤマ ('08/06/18 23:39:22)
は、古風な抒情があり、端麗で流美だけれども、そこ止まりの感で、過去の優れた作品のごく表面的な模倣にさえ見えてしまう、という理由から、次点に留まりました。遍く存在者に付きまとう無の顔、存在は死にくるまれている感覚が描き出されていて、死者達の痕跡と共にある命の連鎖、此処と此処ではないどこか、或いは此処と彼岸をも接続するイメージが見事だ、という意見もありました。一方で、器用なだけで作者の創意は疑わしい、という意見もありました。もっと突き詰めて書いてもよかったのかもしれません。

2811 : 日々のささくれとやさぐれと春一番  eug ('08/06/04 16:42:43)
は、最初の2行の出だしが鮮烈だったが、とてもオリジナルを感じたが、後が続いていない、という理由から次点に留まりました。私は、この作品、どうでも良い魅力が、格好悪く漂っていて、結構良いと思いました。変に忘れられない作品ではあると思います。

2832 : エデン(改)  はらだまさる ('08/06/14 23:58:25 *2) 
は、それなりに出来はよいのですが大した作品ではない、という理由から次点に留まりました。この投稿は、過去作の再認識、とのことでしたが、このくらいにしておいて、今の、はらださんの力をぶつけてほしいという願望を得た、という意見もありました。サーカスに行けば足りることや、テレビを付ければ済ませられることを追い求めることも面白い作品を産み出すかもしれませんが、もっとその前に大切なものがあるのかもしれません。毎回の力作、その姿勢は素晴らしいと思います。

2822 : グロウズの祝祭  田崎 ('08/06/09 07:19:03)
は、最後の連だけとても美しいのが救いだけれども作品独自の魅力や面白さに欠ける、という理由から次点に留まりました。病的な光を持ち出すなど、とある本の影響があまりに露骨に出ているように思える、という意見もありました。平易な作品か難解な作品かで言えば難解な方の作品であり、どんな難解な詩でも切り込む場所というものを持っていると、そこからイメージが膨らんできて読めてくるのだけれども、この詩には、それがないように思える、という意見もありました。

2843 : 無題  プラスねじ ('08/06/18 06:52:42)
は、意図してのチープさが可愛らしく面白いのですが、残るものが無さ過ぎる、という理由から次点に留まりました。私は、紙に書かれてしまって全てを表せる自分という存在を見事に表せていて、消費されてもそれはそれで良い作品なのかな、と思います。びっくりするくらいに点数が悪かったのですが、優良でも良いという意見もありました。

2854 : はらり (改)  ともの ('08/06/23 15:13:53 *1)
は、作者が書いている以上の情感が間違いなく出てしまっているけれども言葉がこなれておらず下手である、という理由から次点に留まりました。四連を変えれば秀作になるかもしれません。文章自体からオーラを感じ取れそうな可能性は感じるけれども、そこに留まっているに過ぎないという意見もありました。作品内で作者が織り込もうとしていること以上のものが放出されているようにも感じましたが、作者が言葉や文章の流れに振り回されているだけかもしれません。どんどん書いていって欲しいですが、その度に立ち止まって見つめなおしていって欲しいと感じます。長く詩を書いていくであろう作者ですから。

2861 : 夢をかなえる  軽谷佑子 ('08/06/28 10:33:45)  
は、イメージとして分るが削ぎ落としすぎで、題材のわりに迫ってくるものが薄まってしまっている、という理由から次点に留まりました。この作品は選考委員のほぼ全員が点数を入れてました。しかし優良には推す者は一人も居らず、優良へと推さない理由が「軽谷さんはもっと魅力ある作品が書ける」というもので統一されていたように感じます。「夢をかなえる」とても引力があるなかなか書けないタイトルで進み始めているので、一定以上ではあるのですが、近寄り、覗きたくなる緊張感と脆さが共生している作者の作品として、もっと多くを望んでしまったのかもしれません。あるいは、辿りつけなかったのかもしれません。雰囲気の良さは、やはり素晴らしいです。

2825 : よそ見  ともの ('08/06/10 22:15:18)  
は、場面と文脈の織り込み方はなかなかいいけれども、まだまだ工夫が足りない、という理由から次点に留まりました。上手くはないけれども、それなりの情感はある、詩がある作者なのかもしれない、工夫する楽しさが作家にとって良い方向に成長させてくれるものになればと思う、など、実に様々な意見が出ました。個人的に1、2、3、5、6、7連はなかなか感情と理性の境が溶けていて惹きこまれました。しかし「やがて水槽に蓋がかぶされて、/世界が真っ暗になる。//もう、逃げられないね。/もう、逃げられないよ。」こんなところで落ち着かないで欲しい作品ですし、最後の一行ももう少し考える必要があるのではないか、と思います。ただ、皆なにか漠然とした期待を作者に対して持っているようです。

2835 : ネズミの上司  はるらん ('08/06/16 05:31:23 *1)
は、ストーリーとしては面白いけれど、細部に技術が届いていない、という理由から次点に留まりました。それなりに出来は良いとは思います。しかし、もう少し自身の情感と作品内で対峙しても良いのでは、とも思います。モチーフをもっと確かに握ることが出来るのではないか、巧さが出てきた分バランスに気を配りすぎる、そんなぎこちなさも出てきてしまっている、という意見もありました。はるらんさんの、このところの進捗状況には、目覚しいものがあると感じている、という意見もありました。後、もう少しなのかもしれません。

2817 : 夜の空になる  結城森士 ('08/06/05 22:28:48)
は、ストーリーテラーとしての力が確かにあり、イメージの流れも可能性を感じさせるけれども、ところどころの文章が下手さが損なってしまっている、という理由から次点に留まりました。個人的に、作者の投稿作品の中では初めて詩があったように感じます。一連、二連、十連、十一連は難ありに思えます。時間の使い方と惹きこみ方が上手くいっていない印象です。粗削りな部分がそれなりに働いていて作品の魅力をそれなりにまとめてはいるのですが、それが筆の腕で出ることにこれから期待します。

2804 : 八十八夜語り ー晩春ー  吉井 ('08/06/02 01:04:38)  
は、きっちり作りこんであるけれど、形式的に過ぎるのが難点で、作者のオリジナリティやビジョンの投影という線でみるとやや弱い、という理由から次点に留まりました。私は、七夜だけを作品にもう少し膨らませて単独で投稿したら、間違いなく優良になったように感じました。「が」などの助詞にもう一工夫いるかもしれません。人間の滑稽さとそれでも現存する世界が混ざりあうことはなく、しかし互いに寄り添いながら進むしかない感情を描いてある奇作です。ただ、もう少し魅力が欲しいです。

2805 : 河川  DNA ('08/06/03 01:52:28)   
は、右側の文章はかなり美麗だけれども、レイアウトが効果的ではなさすぎる、むしろ作品を潰している、という理由から次点に留まりました。それぞれの残骸がそれなりに働いていて、岡崎京子の視点をきちんと広げられてはいる、とは思います。

2808 : かえらない  草野大悟 ('08/06/03 23:11:03)   
は、エッセンスとしての強烈な力があるが、文字の効果が読む前に遠ざける部分がある、という理由から次点に留まりました。読み取る人、取らない人、分かれてくる作品だと思う、という意見が印象的でした。

2841 : 赤い酒  soft_machine ('08/06/17 01:31:13)  
は、それなりに出来はよいけれども、仕込みが甘い、という理由から次点に留まりました。石ノ森さん自体がパロディーの天才で、このような作品を既に自身で作っているので、それを超えることは大変なことなのかもしれません。

惜しくも選からは漏れましたが、その他、

2844 : (無題)  犀樹西人 ('08/06/18 17:14:02)  

2813 : よみがえれ  殿岡秀秋 ('08/06/04 23:04:28)  

2821 : テクノポップ・ナイト  ハント ('08/06/09 00:43:41 *10)   

2826 : 昼下がりの午後  ぽこ珍 ('08/06/11 08:56:44)  

2856 : 初夏の夜  やす ('08/06/23 16:44:13)  

2823 : 朝の方から  DNA ('08/06/09 09:47:23)   

2860 : 早春の雲が流れる  右肩良久 ('08/06/27 22:07:56)   

2831 : ワイヤードの庭 7 Garden of wired・・・Club Michelangelo  shiryu ('08/06/14 16:38:42)  

2858 : ……し、  午睡機械 ('08/06/26 15:23:44)

2847 : ちちつちくさりて  藻朱 ('08/06/19 23:16:48)

2815 : 桃  犀樹西人 ('08/06/05 03:57:54 *2)  

2833 : [ふたつがひとつとひとつに vol.1.02]  香瀬 ('08/06/16 00:01:40)

2850 : zero G  吉井 ('08/06/21 21:33:08)

などが注目されていました。

以上です。

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5月選考雑感(平川綾真智)

2008-07-12 (土) 15:55 by a-hirakawa

5月は素晴らしい作品が揃っていたとの声が多かったです。
勉強になりました。ありがとうございます。

詩が本人にある方とない方がいるような気がします。詩が本人にある方は、出さざるを得ない情感を自分という輪郭からはみ出させて、読み手の輪郭も溶かし、攪拌して言葉の綴り以上の位置へ達する時があります。詩が本人にない方は、どうも隙がない、減点出来ない、形式的ものを創り出し、新たな場所で大きく伸び上がる方法を取る傾向にあるような気がします。
優良に達した作品にも全く詩が本人にないのではないか、と議論対象になった作品がいくつかありました。直球に見せかけた変化球で、優良に達しているとは言え、もう少し先に行けるのではないか、と思える作品が多いという意見もありました。減点出来ないに過ぎない作品は、そのうち形骸化され、何度でも眼球を脳髄を吸う魅力から離れてしまうので、是非気を付けて欲しいです。
詩がなくても面白い方向性というのも確実にあるので、隙がない、だけではない場所を少し意識されてもいいのかな、と感じます。
様々なことを考えさせられる月でした。

次点佳作作品に触れていこうと思います。

2786 : 赤い川  田崎 ('08/05/26 00:47:07)
は、私は優良に達していると思いましたが、分析に長けた過去にあるものを敷いている印象であり、二次創作の域を出ていないような感覚を覚えさせるという理由から、次点に留まりました。削られた詩情は少し目立つものの、立脚してはいると思います。後もう一歩の魅惑が必要なのかもしれません。

2773 : 星の氾濫  黒沢 ('08/05/20 00:25:23 *3)
は、私は優良に達していると思いましたが、突く想起的ヒダの生物的なぬめり方を三連のリフレインと最終行の僅かな怠りが小さく留めさせている、という理由から、次点に留まりました。丁寧で、技巧に優れた名作だと思う、という意見もありました。しかし、モチーフがこの作品に収まっていない、という意見もありました。私は、三行目のリフレインが無かったら優良に是が非でも推し続けたと思います。短く濃い中では僅かな怠りが致命的となってしまいがちなので、もう少しだけ最終連でも言葉を探す必要があったのかもしれません。

2741 : 「 ムーフールー。 」  PULL. ('08/05/06 18:38:59)
は、独創性がなく、作品が始まりに立った地点で終わってしまい先へと向かえていない、という理由から次点に留まりました。作り自体はシンプルで裏切りもほぼないので、それだけに素直にきちんと残る作品ではあります。丁寧な作品ではあるので、ほぼ借り物にしか思える詩情が気になります。 もう少し放出される情感に独自があっても良いかもしれません。

2784 : カンガルーのポケット  ミドリ ('08/05/24 15:24:01)
は、安心して読めるけれども、それ以上のものへと昇華させるものが足りない、という理由から次点に留まりました。とても良く書けてるのですが、その分欠けているものも欲してしまい、上手い以上のものが作者には求められているのかもしれません。もっとめちゃくちゃでも良いのかもしれません。

2762 : (無題)  んなこたーない ('08/05/12 18:21:18)
は、よい部分もたくさんあるけれども、それを削いでいる部位がしつこく脳裏を覆ってくる、という理由から次点に留まりました。思い込みを謳歌しきる力を持っていて、リズムもいい、という意見もありました。ただ、もっとそれぞれのよい部位をもっと前へと押し出していく方法はあったように思えます。

2780 : あやまち多き人生ですけど  ちんぽけーす ('08/05/22 22:58:57) 
は、良いエンターテインメントではあったけれど書き方の選択次第のぎりぎりの箇所を見誤り、惜しさを感じさせてしまっている、という理由から次点に留まりました。 それなりに楽しめ、悪意との混同的な文末もなかなか面白くはありました。飛びぬけて残る点がないので、あと一工夫必要だったのかもしれません。

2791 : 新婚生活 (ラフ=テフ外伝 パート2)  ミドリ ('08/05/27 23:27:26) 
は、詰めが甘い、という理由から次点に留まりました。力を抜いて書かれていて、力を抜いて読めました。この短さになったのは正解ですね。四コマ漫画を読むような意識で、使い捨てられてしまう感が気になるのですが、優良ではないけれど良い小作品だと思います。傑作を書いて欲しいという思いもありますが。

2739 : プリムローズ  榊 一威 ('08/05/05 17:04:42 *1) 
は、最終連があまりにおろそかだ、という理由から次点に留まりました。最後の綺麗の連発には胸焼けがした、書かずに書ける部分を全部書いてしまっている、など様々な意見がありました。当初、ラストの展開が書けていないと思ったが、たった一文の推敲で大きく変わった、との意見もありました。いずれにしても、もう少し投稿前に練ることが出来た作品に感じられます。

2737 : 砂浜で  まーろっく ('08/05/05 10:40:14) 
は、とても古く冗長すぎる部分が上手く作用していない、という理由から次点に留まりました。力作であることは解りますし、魅了された方がいるこtも事実なので、もう少し整えても良いように思えます。

2774 : 夜を歩く  ともの ('08/05/20 11:58:53 *1)
は、決して巧くはないけれど深度と情感の可能性を感じさせる、という理由から次点に留まりました。軸からズレていかないことと、ほんわかとした誰もが抱えた詩情を今更ながらですが、突いていくのはそれなりのものがあると思います。「拳がひとつ落ちていた。蛙だ。」この辺、は巧妙です。二、三連が良くないのですが、四連のつなぎ方が上手いので、それなりの印象を受けたんだと思います。詩がある方だと思います。これからしばらく伸び悩むと思いますが、書き続けて欲しいな、ということを感じさせられる作品でした。

2755 : お茶を飲む  ともの ('08/05/09 21:02:08)
は、決して良い作品ではないけれども、詩の原点的なものを思い返させる貴重な作品だ、という理由から次点に留まりました。「自分はひとりなんだ、と思う。/人はみんなひとりなのか否か、」など、書かなくても伝わる部位を書きすぎな点が気になるものの、情感がしっかり作者から出されていて、大切にしていきたい過程を上手く見せた作品だと感じます。

2735 : 哀しみの首  草野大悟 ('08/05/03 12:16:14)
は、しみじみと良い小作品だ、という理由から次点に留まりました。優良に達してはいないものの、多くの情感を孕んでいるとは思います。

2745 : 五月 断片  如月 ('08/05/07 11:03:46)
は、原石の強さがあるものの、そこに覗く手慣れてきたところの綻びが気になる、という理由から次点に留まりました。ただ、重力がそれぞれにある良い目線だと思います。語彙の重なりで意味合いを出していく、そこは昔からのものですが、作者へと引っ張っていくそれなりはあると思います。

2801 : 扉のあった空間から見た赤い土地  右肩良久 ('08/05/31 13:01:40)
は、古いコラージュに過ぎないのではないか、という理由から次点に留まりました。硬質なのではなく、ただ硬いことが気になり、それは連鎖が成功していないからで、配列に成り下がりかねない、という意見もありました。「その脂分の致命的甘味。」などなどそれぞれの並べは面白いので、それを活かすだけの作品としての単体を考えなければならないのでは、という意見もありました。「レム睡眠」以外のやりようがあったはず、との意見もあり、もう少し考えても良い作品に思えます。

惜しくも選からは漏れましたが、その他、

2797 : 彼の歌  緋維 ('08/05/29 20:59:55)

2734 : バイバイカフェ  ゼッケン ('08/05/03 11:48:37)

2752 : いちに…  吉井 ('08/05/08 22:01:40 *1)

2789 : 明るい忌み言葉  祝祭 ('08/05/27 16:47:05)

2744 : 暗い夜の道程  ぱぱぱ・ららら ('08/05/07 05:30:09)

2769 : 椅子  鈴屋 ('08/05/17 21:49:05 *11)

2776 : 世界、  凪葉 ('08/05/21 12:46:58)

2766 : 終電まで  ゼッケン ('08/05/14 22:58:52)

などが注目されていました。他にも良い作品、多くありました。

以上です。

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