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2009年4月選考雑感

2009-06-06 (土) 13:36 by a-hirakawa

今月も勉強になりました。
ありがとうございました。

今月は、

3462 : 女神  右肩 ('09/04/14 05:05:34)

3437 : 春  ひろかわ文緒 ('09/04/03 22:30:46)
 
3453 : 公共交通機関  ゼッケン ('09/04/08 21:47:53)
 
3487 : ラピダ  いかいか ('09/04/30 11:49:14)

3458 : マーブル  ひろかわ文緒 ('09/04/13 01:37:08 *1)

3475 : No Title  浅井康浩 ('09/04/23 10:43:33)

3454 : 問題はない  鈴屋 ('09/04/08 23:15:34)

3469 : Je veux savoir ce que je veux  はなび ('09/04/18 21:42:27)

3436 : リビングの底  小禽 ('09/04/03 18:34:57)

3439 : 「ミドリさんがやってくるわよ!」  ミドリ ('09/04/04 16:13:48 *7)

3478 : クロリス  ゆえづ ('09/04/27 14:13:16)

以上、11作品が月間優良作品に選出されました。

3462 : 女神  右肩 ('09/04/14 05:05:34)
詩人ではない作者が二次創作的に派生させた体系・形式としての在り方を活用し作品として高めていて、距離のある詩として成立し得た興味深さが座っている、という意見がありました。まねぶことに大変優れた連の内的使用が、性的孤独に内実を置いており、そこに作者はいないため、詩的雑念がなく丁度よい具合に仕上がってしまっています。断片の綴りに2つ秀逸さがあり、それが高めています。気配だけでいけていることも成功した一つなのかもしれません。右肩さん独自の詩作品は未だ読んだことがないですが、詩の投影でここまで引き伸ばせることは面白い現象なので、読めなくても良いのかもしれません(しかし、それは詩でなくても良いということなのかもしれません。作者の空虚を確かにしてしまうことなのかもしれません)。どう読んでもあまり品は無いにもかかわらず洗練されている、視線の揺らぎとそれに伴う所作の彩りが、適度な尺を滔々と流れゆく、燃費のよい作品に感じる、という意見もありました。
また、細かいことなら、
>放ち
>過ちが
の「ち」の重なりが少し煩い感じは受ける、けれども気にならない範囲内であり、テキストが阻害されているとまでは言えない、惜しむらくは、最終連の着地で、リズム云々ではなく、いわば陶然とした世界の越境をもっと描けた筈という意味で接してしまうものがある、という意見もありました。所謂ネカマ詩の秀作なのかもしれない、という意見もありました。

3437 : 春  ひろかわ文緒 ('09/04/03 22:30:46)
詩に詳しくない読み手にも好感されるであろう空気が、作風という場所で作者の成長を際立たせている、という意見がありました。内実も充分にあるが、ちょっとバランスが頼りない側面もあるため、外観のわりに尺が長く感じる部分もある、という意見もありました。転調も個性的に跳んで、しっかりと滲みながら着地しているように思えた、浅くも深くも読める胡散臭い主張や技巧展覧会等からは隔たった静かな空気が実に魅力的である、美しくも哀しい詩情があり感情を揺さぶる、再読を重ねても錆びない不思議な味わいのある、という意見もありました。最終連がもう一歩という感触もあったが、良質であり、静謐な諦観というのはこういうことだと思わさせられた、という意見もありました。 

3453 : 公共交通機関  ゼッケン ('09/04/08 21:47:53)
まず書こうとしている内実が素晴らしく馬鹿でよいと思います。これだけどうでもよいことを書ききっている作品も珍しいです。もっとねちっこく書くことが常套なのかもしれないが、どうでも良いように感じる小ささがある、という意見がありました。地味な小品だけれども、密度や距離、情景や細やかな心象など、感じ入るものがある、やくたいもない挑戦を大袈裟に書いただけ、とも言えるが、作品のテンションと、チリチリした読後感は忘れ難い、という意見もありました。

3487 : ラピダ  いかいか ('09/04/30 11:49:14)
「まるで僕らが書く散文のようだ」このわざとのほころびが、難解すぎずよい塩梅に仕上げているように感じる、という意見がありました。質感の曖昧なものが目立っていた近作のイメージを払拭するものがあった、視線の配分、倒れては次々に立ち上がる景色の円環、音や匂いもして、再読しても無くならない(気持ちは悪いけれども)という意見もありました。作者のジャブくらいに考えるとこで傑作が生まれるのかもしれない、という意見もありました。

3458 : マーブル  ひろかわ文緒 ('09/04/13 01:37:08 *1)
鮮度と集中とテンションの持続と上塗りが尋常ではない、中身の足りなさを補えるだけの舞が素晴らしい、という意見がありました。いろいろ足りない、或いは過剰で、拙い記述もあるけれども、本作に横たわる内実の重量を感じさせない筆、これは、とりわけ重要に思える、という意見もありました。作者の意図的ではないと推測される在する救いは、リライトのやりようによっては傑作に達する片鱗を随所に散りばめている、という意見もありました。

3475 : No Title  浅井康浩 ('09/04/23 10:43:33)
文体の感解と素材を高めあわせ方が過渡に成就していて、二連の見事さが際立っている、という意見がありました。視覚ばかりか嗅覚や聴覚にまで訴えかけてくる丁寧な筆であり、予感や確信を示唆に富んだ暗喩等で捉えた記述もスマートで綺麗だけれども、素晴らしく完璧な模写を鑑賞した場合の印象のように僅かながらも馴染めなさを抱いてしまう、という意見もありました。

3454 : 問題はない  鈴屋 ('09/04/08 23:15:34)
ハードボイルドな匂いを消したそれのような印象もある、けれども丁寧なディテールを日記調に問わず語りするなげやり加減が、悪くない、結果として、それらが地味な最終連を盛り上げてはいるのだけれど、ちょいとした文学臭い演劇の冒頭部分のような凡庸さも漂うので、抑え気味の獣感をもっと解放してほしかった感も否めなかった、という意見がありました。「地図の説明」(いわゆるマップという意味ではなく)を読ませる巧さは秀逸、続篇がありそうな予感 (例えば、過去へと遡上する、ような)があり、そこも良い、という意見もありました。作者の得意な眼の威力から及ぶ感覚が先へと歩んでいて、時間という過去を手繰り寄せており、手渡す、癖、個性、は幼少期、環境も匂わせて、この作品で全てではない修羅な市民を置いている、見事だけれども、もう少しだけ期待してしまった、という意見もありました。

3469 : Je veux savoir ce que je veux  はなび ('09/04/18 21:42:27)
解りやすい使い捨てられた誰でも書く内容に、ここまで命を吹き込めたことは賞賛されてしかるべきだ、という意見がありました。作者の着想のユニークさ、チョイスするフランス語のセンス等、堅苦しくなりがちな現代詩の空気を良い意味で台無しにするようなところが素晴らしいと思う、決してアカデミックでない、雰囲気みへと導く寛容さにも魅力を感じる、肩の力を抜きながらも芯は通っている、という意見もありました。単体の作品として推すには足りない、という意見もありました。

3436 : リビングの底  小禽 ('09/04/03 18:34:57)
小さいのに巨大で、まとまりも見事、感情で流して勃起している怒号が秀逸だ、という意見がありました。作者がどこに行き、どこに形象を貫くのか見届けたい、という意見もありました。

3439 : 「ミドリさんがやってくるわよ!」  ミドリ ('09/04/04 16:13:48 *7)
見せる工夫と勇気は否定されるべきものではないのかもしれない、という意見がありました。良く出来た映画の予告編のような、中身の無さ加減とエンターテイナーな筆が程好く合致しているように感じる、軽妙なリズムと質感があり、蘊蓄がやや邪魔だけれどもペイパーバックの人気ライター然とした雰囲気を醸し出しているかのような不思議な作品だ、連作に育つと楽しそうだが、そこまで考えなくても良いのかもしれない、という意見もありました。

3478 : クロリス  ゆえづ ('09/04/27 14:13:16)
優良になりましたが、色々と首を捻る部分も多い作品でした。作者は男性の視点になると少し像が美しくあり過ぎてしまうという特徴があります(少女マンガの男性主人公が、ボーイズラブの男性が体毛を知らないように)。その特徴が内容の妙と奇妙に歪んだり合致したりした時に清冽さで、弾くのですが、今回は、もう少しあっても良いようにも感じました。
 君はエプロン姿の小さな確信犯だった
最初の一文での断定が後後に尾を引きずり、あまり上手く作用していないように思えます。二連のありふれた構成の後に引き継がれる、
 おまえも翅を休めに来たのかい
 ああ見ろよ虹だぜ
とも合わさり浮遊してしまう感触があります。酔いに飲まれず客観的に見てしまう感触です。
ただ、
 庭で摘み取ったケシの実を
といきなり空気の諧謔を軽くこなしたり、
 ヒンジの緩んだジッポで
と作品のそれまでの流れよりも勢い的な重心のあり方を大切にしたり、一文一文がいかにも作者な作品で、誰のものでもない作者の作品で、上履きの踏みつけてしまったラットガムより残るので、そこは大切な芯なのかもしれない、と思わさせられました。確か、に。

さて、次点佳作作品について触れていこうと思います。

3479 : 左巻き  がれき ('09/04/27 22:07:11)
作者は巧いです。軽妙です。一時代前なのですが、ずいぶんと器用にこなしています。今回も流麗な感覚線で音韻を操っています。ただし最後の二文が当てすぎていて、それまでを矮小にさせている点はもう少し先に行けたのかもしれないな、と思わさせられました。器用に流れるため、残していく感触が少なく読後に育つことが遠いのではないか、という意見もありました。

3441 : 八十八夜語り ー季春ー  吉井 ('09/04/04 19:43:18)
死を意識しても、爪の垢は煎じて飲めやしない、作者のいちいち上手い箇所が光っている、最終連にもう一歩必要かもしれない、という意見がありました。返信欄にある解釈の方がずっと面白い、という意見もありました。

3445 : 彼岸花  ゆえづ ('09/04/06 01:06:01)
かなりアクの強い筆だけれども、破綻しそうでいて、なんとか収斂したり拡がったり、危なっかしいながら読ませる作品だ、という意見がありました。読者を再読へと向かわせる作風でもあり、新鮮な記述の巧みさと作文的で残念な粗さが混在していて、そのアンバランスが魅力にもなっており、次回作を楽しみに待つような気持ちに素直にさせる、強く推すほどには痺れないが、落選にはなってほしくないと強く思わせるものがある、という意見もありました。今回の作品は言葉のまとまりが前半と後半につれて違い過ぎる感触を掴ませられる、という意見もありました。

3433 : 4月4日、その日の君は、  はるらん ('09/04/03 01:42:18 *1)
旬を過ぎている内容かもしれないけれども佳い作品だ、という意見がありました。ありがちな小市民たる日本人が書かれているけれども本作の醍醐味は最終連であり、形容し難い不気味なニュアンスが巧みに演出されている、少しとっちらかっている印象もあるけれども佳かった、という意見もありました。軽さが剥離された実態の無さが、現代を表層していると感じた、戦火がリアルになりきれない感触が、不安が不安になりきれない感覚が、とても文章にあっている、過去ネット難民だったり実らない愛だったり主題の現実的な部分が現実的に描けていない部分が気になっていたけれども今回はその課題を、逆転的にものにしている、という意見もありました。多大に過ぎて現実感が湧かない感覚を書いたら、作者に、ぴったりなのかもしれない、という意見もありました。

3461 : さくら。  亞川守紀 ('09/04/14 00:12:59 *1)
突っ込みどころのある美しさが柔らかい存在だ、これからが気になる、という意見がありました。

3471 : 存在証明(は今日も出来ず)  ぱぱぱ・ららら ('09/04/20 13:48:54)
存在について、というよりも存在しないものについて、そうした欠落部分の曖昧な集積のバランスのあやふやさを中世的な口語体で緩くラッピングしてみました的な作品、のように思える、辛辣な視線とコミカルなそれが交錯する事で読むほどに味の出るタイプの作品で、読み方を限定しない、そこも佳い、という意見がありました。作者は確実に新時代の書き手だ、真似しようとしたら糞ポエム以下になってしまいそうな気がする、わざとなまでにポエム的にしていて、敢えて避ける現代詩的な方向は見えていて、斜に構えながら中核を捕らえている姿は、やりつくされた後をわざとやり続ける器用さがあります。ひょっとしたら早すぎる作者なのかもしれない、という意見もありました。

3483 : 木星の春  右肩 ('09/04/29 10:44:41 *1)
作者は相変わらず構成での勝負ですね。そこに作者はいるのかどうか不思議です。演出家としてはかなりの腕前ですが内実をしぼる詩人、作家としてはいるのかいないのか分かりません。今回は、しかし、それを上回る丁寧な性で押し倒しているように感じます。演出家としての在り方も否定されるべきものではないのだろうと思います。悪くない、メタファーも光る、物語性とジャンクの集積とのバランスが魅力的だが整合性という意味では足りてない、という意見もありました。チープな秀作だけれども、作者の課題はいつも最終連にあるように感じる、ストンと落ちない、かといって、余韻が溢れるわけではない、唐突とまでは言わないが、エンドマークに戸惑う場合が多いように思う、という意見もありました。才は感じる、一人相撲的なところから抜けたら、もっと書けるように思う、という意見もありました。

3465 : ひとひら  泉ムジ ('09/04/15 09:18:07)
地味だけれども手際のよい短編であり、陳腐かもしれないが映像の描写などは掴まれる部位がある、という意見がありました。いろんな読み手を想定して作品に向かっている印象があり、本作品は、もっと練れた感もあるけれども、敢えてそのまま出したかのような、そんな勢いと気恥ずかしさが同居している、という意見もありました。共感、というの曲者を時間をテーマに上手くこなせている、という意見もありました。巧い作品だが作者のパワーダウンというか、閉じこもり始めたというか、瞬発力という魅力、文学内での裏書きしていくエンターテイメントが縮小されたように感た、ユーモアが減って代わりに盛られている感覚は良質かもしれないけれども質が違い過ぎるように思えた、という意見もありました。

3489 : 位相  はなび ('09/04/30 23:46:22)
サラサラッと書いた(かのような)筆致が魅力的であり、外観が内実を寄りきっている感触に惹かれた、という意見がありました。良質さがいま一つ介在を余儀なくさせていない、という意見もありました。作者は、タイプとしては突然変異型の珍種の書き手だろうから、亜種の溢れる詩界にあって大切にしたい、と思う、どう大切にすればいいのかは、よくわからないけれども、という意見もありました。脱力系の傑作を簡単に書いてしまいそうな才は感じる、期待してもいる、という意見もありました。

3481 : 春の下  如月 ('09/04/28 21:21:50)
作者は確かに巧くなった、基本的なスタイルが、積み上げていく形式から削っていく形式に変わった、というのもあるのかもしれない、その過程で、バランス等に配慮するあまり、やんちゃな記述が影を潜めたな、と思う点も気になる、という意見がありました。そつなくまとまってます、工夫して書いてもいる、ただ、あまり読み返したりはしないかもしれない、作品として特に破綻もなく問題は無い、しかしながら魅力にはやや乏しい、という意見もありました。どこから生まれた作品なのか、振り返ると突き刺さる言葉や綴りが過去には作者にもっともっとあったので、そこを大切にしてほしい、瓦壊に足を留めるような理性と本能のせめぎが過去作のようにあっても良いのかもしれない、という意見もありました。

3467 : 矛盾  億年筆 ('09/04/18 03:59:50)
よくここまでくだらないことを展開させていったな、と極端さに拍手してみたい、という意見がありました。

3463 : 30ページ+5分20秒  ミドリ ('09/04/15 00:56:21)
作者の筆は常に達者だが、昨今は読み手の過剰な期待には応えられていない印象が強い(そんなもんに応えようとも思ってないような飄々とした中庸さも感じるけれども。)、まずまずの小説の切れ端みたいなポエム、ベッド・シーンが演出される今までの作品の大半と同じ雰囲気がある、という意見がありました。巧い、ミサイルとあれは王道だが、外れていない、だからもっと欲しくもなる、という意見もありました。

3468 : コミュニ鶏頭  菊西夕座 ('09/04/18 09:11:53)
肩の力を抜いて読めるしかも繋がっている作品ということでは、優良でも良いかもしれない、作者が持ち合わせている言葉の反射神経を見事に発揮し昇華させている、という意見がありました。頭が良いのだろう、作者はきっと読書中に他のことがどんどん気になって文章よりも先に脳内での想像が上書きされていくに違いない、言葉遊びに過ぎないけれども、それが突っ込みが入らなくても伝わる範囲であり、深読みしようと思えば出来る箇所にあることは大きい、寒さが作品としてよい、という意見もありました。スラップスティックな流れと高座のバレ噺のような設定を電話会話に負わせた、そこそこコミカルでブラックな作品で、悪くはないが、流れが後半にやや失速している、ゆっくり始まって、やがて加速に加速して混沌が渦巻きながら大団円、とかだったら良いのだろうが、ペース配分に失敗しているのではないか、
アダージョではなくアンダンテでなくてはならない必定はないにせよ、ツカミはオッケー徐々に醒めてしまう、ちょっぴり弱いスタンド使いだ、という意見もありました。くどい、くどさをもチェシャ猫笑いにする技量が欲しい、貴重なキャラクターだけれども、それを認めたうえで、更に弾けて欲しい、アクセルとブレーキの使い方には、もっと奥がある筈だ、という意見もありました。作者のレッサーとしての技量と作者としての技量が菊と西くらいに違いがあるのではないか、という意見もありました。

3466 : 透明の息  小禽 ('09/04/15 23:21:37)
一文目二文目が完璧に意識を奪っていくけれども、三文目
  わたしの立つ地面はそうして穴だらけになりました。
から徐々にトーンダウンしている、
 まるで今までの世界は全て嘘だと言われているようです。わたしは地上にいることが随分辛いと感じるようになりました。
の凡庸さを、もう少し整えていくと、最後の透明も、もっと活きるように感じる、勿体無い、良質さがある、という意見がありました。

3448 : 言葉  ぱぱぱ・ららら ('09/04/06 05:21:42)
 僕が海と書くとき、それは海で、僕が愛と書くとき、それは愛であって欲しい。
スタートしてたどり着いていく在り方、それは指示したいかもしれない、ただ、読後の印象など、伝わるものなど、剥きだしすぎて、「詩人」の神々しさに立ち向かえないものだとも感じる、という意見がありました。

3473 : 僕のほら穴の仮面パペット人形  黒沢 ('09/04/21 23:24:48 *10)
先ず、このタイトルは失敗しているのではないだろうか、読む気勢をある程度は削ぐ狙いがたとえあったとしても、「一回りして新しい」までには足りていないような古臭さが浮かんでいる、幻想文学の範疇にありがちな空気、それの賛否は置くが、タイトルと初連でツカミは成功しているとは言い難い、マニアックに堕ちている印象、という意見がありました。ややこしく陰鬱な描写、心理的不具に寄り添う乾いた悲嘆と不意の覚醒、それに伴う惑いや静かな怒りを、地味な工夫を凝らして丹念に書いた力作、しかし読んでいて愉しくはないのがキツイ、読んで愉しいかそうでないかという単純ながら大切な問題と、例えば根源的な実存とを、いかに融和させて書くかを、求めたい、という意見もありました。「仮面パペット人形」…タイトル含めて16回は頻出過剰、作者は短めの作品の方が比較的光る感じがする、という意見もありました。過渡にしてはありふれ過ぎた比喩で、ありふれ過ぎた文章で、読ませはするけれども退屈もさせてラストに驚きもなく、蝕みもない、内省的に過ぎないようにも感じる、次の傑作への膿だしであって欲しい、という意見もありました。

惜しくも選からは漏れましたが、その他、以下に挙げる作品が注目されていました。

3464 : 彼女  んなこたーない ('09/04/15 04:08:21)
正直、わけのわからない、アホみたいな作品、かもしれないが、堅い詩にありがちのある種の「白々しさ」から解放されているが如くの空気やリズム感、そうした個性は買いたい、無駄な記述も散見される代わりに奇妙な味わいのある比喩もある、おそらくは即興に近い、自動筆記よりは速記詩的なチープでキッチュな作品なのでは、という意見がありました。

3474 : ぼくらのエチュード  草野大悟 ('09/04/23 00:39:39)
所謂「不幸自慢」に堕ちないところが良い、気の利いた小品として触ってもニンゲンの影が漂う、そのバランスが悪くない、ここから、もっと跳べそうな予感がいつもある、という意見がありました。

3430 : 無題(放熱、)  雨宮 ('09/04/01 12:43:00)
放熱、というよりは青春的所産の微熱をクールに描いた佳作、自己完結性が強いのが魅力であり欠点でもあるようにも感じる、薄い手応えのわりには奥行きがある、突出しているかどうかは疑問だ、という意見がありました。ここから、という良質な素材に思える、ここから傑作を生み出すことが可能なはず、このままでも良いけれども、それは詩よりも詩に近い感情なのでは、と思う、血が通わない作品が多い中、血だけ、のような作品に感じる、という意見もありました。

3460 : 無題(夜に沿う)  凪葉 ('09/04/13 12:26:53 *2)
いつも迷う、ややもすれば平坦、そこをどう評価するか、に思える、例えば、ギッシリと埋められた濃く難解な作品の対極にあるともいうべき、(あまり効果的とは言い難いにせよ)空白を多用しがちな作者の手癖、その熱量の稀薄さは好感にいつでも仰ぎはする、また、書き手としての性差が見極めにくい、または、そこに準拠して書いていない、なかなか狙えないところから書いている、と感じ、それは面白い部分だと思う、という意見がありました。自殺する寸前の躊躇いや回想、及び、その静かなる葛藤として読んだ、年若い読者に手渡されるものは多い作品かもしれない、という意見がありました。

3438 : 神楽火法典  フリーター ('09/04/04 01:41:32)
やや粗いながら強引に読ませていくチカラ技がある、忙しい展開も巧く描けている、配役の妙も効いている、よくよく読むと意外に深く類型的な硬いバイオレンスに収斂していない、という意見がありました。

3485" title="http://bungoku.jp/ebbs/20090429_215_3485p\">3485">bungoku.jp/ebbs/20090429_215_3485p">3485 : 浄楽寺  吉井 ('09/04/29 18:31:00)
退屈、の半歩手前だけれども味はある、あまり需要は見込めないにせよ、作者の筆には引き続き注目していきたい、最新鋭のラボではなくて、放課後の理科室で実験しているかのような詩作スタンスや安直に馴れ合わない姿勢が気になる、という意見がありました。

3444 : 詩 In C  debaser ('09/04/06 00:03:59)
知的好奇心を刺激されたり、視覚的に面白いと感じたり、そのような読み手は「謎解き」に喜んでチャレンジする筈、そんな作品に感じた、謎に答があるかどうかは別にしても退屈感もある、という意見がありました。

3456 : 現在を越えて、涙は  破片 ('09/04/10 07:11:31)
作者は、才より努力によって書いている人なので大切に見守っていきたい、本作品、悪くはないですけど、あれこれと詰め込み過ぎたあげくの冗漫さ加減がキツイ、ギリギリのアウトコースなど狙わなくても、ど真ん中に投げればいいと思う、変化球しか投げられなくなるよりは、ずっといい、違いますか? という意見がありました。

以上です。

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