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丘 光平 - 2008年分

選出作品 (投稿日時順 / 全4作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


アゲハ蝶

  丘 光平



あなたは目を閉じていた
なにかの償いのように
剥がれてゆく絆さえ
 食まれてゆく傷みにまかせて


 散りつもるあなたは
やわらかな土になった

そしてもうあなたが見えぬほど
 夏は生い茂り


 渇いたのどを
風で潤す野ばらを噛んで
飛びたってゆくアゲハ蝶


 ぬぐい落とせぬ蜜のように
暮れてゆく夏空で
しずかに燃えています―


とんぼ

  丘 光平


あなたの庭から
昨日が
 あそびにきます

わたしは 少し
赤くなって
 ことばをたたむと

昨日は
とんぼのように
 飛んでゆきます―


流れ星のうた

  丘 光平



たとえば
一筆の白が
つみかさねてきた黒を
燃やしつくしてしまう そのように

のこり香もなく身投げした夜
あなたは 
あなたを辞めたのではなかったのだと


ひとつはふたりに分かれ
ふたつがひとりに帰らぬまま
なにが起こらなかった
なにが聞こえなかった


 かわいた夜半の
しずかな皮膚のした
張りつめた水のように
あなたは流れていた


朝の路傍で

  丘 光平



朝の路傍で
ことりは眼をつむる、
ことりから飛びたった羽音は 
もどってこない

空は黙っていた
空がみたものをことづけるには
まだ
秋が若すぎるからだ

走りさる車や 
行きすぎる学生たちの 
影をつまびく朝の路傍で

 ことりは眼をつむる、雨降るように
おまえをついばむ明るみが 
しずかに鳴いている

文学極道

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