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「2014年・年間選考経過」

2015-05-06 (水) 23:53 by 文学極道スタッフ

「2014年・年間選考経過」

2014年 年間各賞

 文学極道「2014年間各賞」は2014年に「文学極道詩投稿掲示板」へと投稿された作品のうち月間優良作品に選出された117作品・次点佳作に選出された136作品、71名の作者を対象として、委員スタッフによって1月26日から3月31日の期間に選考会を開催し審議の結果、上記ページの通り決定いたしました。
 創造大賞には選考推薦として挙がった「該当者なし」「田中宏輔」「zero」「阿ト理恵」各氏の内、最終選考対象となった「田中宏輔」「zero」「阿ト理恵」各氏について議論が深められ「田中宏輔」氏の受賞ならびに「zero」「阿ト理恵」各氏の次点が決定いたしました。田中宏輔氏の作品へは、文学史おおげさに言うと人類の歴史に触れさせられると同時に作者の人生を併走する読書と言葉に触れさせられ読者への問いかけも見事であり圧倒的という意見、昨年と比較し新しい「何か」を創造したとは言い難いという厳しい意見、本質的に抱える「作品」を描く操作性の展開が批評性を自ら纏い新たな境地へとなど達しているなど賛否両論が寄せられました。田中氏は作品「IN THE DEAD OF NIGHT。──闇の詩学/余白論─序章─」 への文学とは言葉とは何かという究極の問いに可視化された共有財産とディノテ―ションの再生出を通し詩論作品へ顔貌を見出していく拡張性に感嘆以上の感動が駆動しているという意見や、作品「ATOM HEART MOTHER。──韻律と、それを破壊するもの/詩歌の技法と、私詩史を通して」への自作と過去から形づくられた先人の綴りや自己の人生を極めて冷徹に眼差していくと共に枠組みを示し纏ってしまう批評を解読し新たなる詩情へ昇華していくことが発見として立ち上がり傑作として姿を現しているという意見、作品「陽の埋葬」(1月投稿分)への三島と飛行船のラストで少し弱まっていった感が否めないが前半から中盤にかけての気持ち悪いほどの凄味は驚愕させられたとの意見、作品「HELLO IT’S ME。」への作者それぞれ個々の生が逆説的に迫ってくる作品であり2014年に投稿された私詩史の英語タイトルと日本語タイトルの技法を合体をさせた一連の作品群が思考を辿っていったときに引用部分の作者たちが咀嚼され消化され吸収されていることと対応関係にある傑出が往還している/読解とは何かということに関して自己へと問いかけられた気がしたという意見などから最終的に5年連続5回目の創造大賞受賞が決定いたしました。また「5年連続5回目の創造大賞受賞」ということについて議論が深められ、氏の「殿堂入り」が決定いたしました。今後、田中宏輔氏が投稿した作品は月間選考を経た上で「一条」氏と共に「殿堂入り」として年間大賞に掲載されることになります。また今後の年間選考では「殿堂入り」の作者二人に関しては創造大賞など各賞の選考対象とはなりませんが、各投稿作品は「年間最優秀作品賞」の選考対象にはなり得ることが決定いたしました。zero氏、阿ト理恵氏に関しても強く創造大賞へと推す声が寄せられたこと、次点というのは苦渋の決断であったこと、また来年度以降の創造大賞を獲得するに違いない声があったこと、それらを含め選考内で賛否が入り乱れたことを付記しておきます。
最優秀抒情詩賞には選考推薦として挙がった「zero」「前田ふむふむ」「はなび」「紅月」「村田麻衣子」「sample」「Migikata」各氏の内、最終選考対象となった「zero」「はなび」「村田麻衣子」各氏について議論が深められ「zero」「はなび」各氏の受賞が決定いたしました。zero氏には、古風だからこそ作者の現代が描かれていく構造になっており歴史を繋げ先端で展開されていく生活上を詩という営為に実践する見事さと美があるという意見などが寄せられ、作品「」「」の評価が高かったことから、はなび氏は作品「水色のお弁当箱」などの評価が高かったことから、それぞれ受賞決定となりました。
 実存大賞には選考推薦として挙がった「田中宏輔」「村田麻衣子」「前田ふむふむ」「島中 充」「zero」「new order」「山人」各氏の内、最終選考対象となった「村田麻衣子」「前田ふむふむ」「島中 充」各氏について議論が深められ「村田麻衣子」「前田ふむふむ」各氏の受賞が決定いたしました。村田麻衣子氏には、節を産みだしていくポートレート化と精神のボーダーレス化が昇華を見せており天才なのかもしれないと思ったという意見などが寄せられ、作品「street#tube」の乾き方や作品「籠のない日」の評価が高かったことから、前田ふむふむ氏には、自分独自の作風を切磋琢磨して追究し成功している数少ない作者の一人であり一作一作が現代詩のレベルを引き上げているという意見や、完成された世界観で重厚な綴りが展開されていく中で四という構成の発展を用いるなど冒険もしており内部世界を外界に転じる創世が見習いたくなるほどの筆力で行われているという意見、本来ならば「創造大賞」に推すべきなのかもしれないが前年の圧倒に比べると質的に少し弱いと思ってしまったという厳しい意見などが寄せられ、作品「静かな氾濫をこえて―四つの断章」や「廃船――夜明けのとき」の評価が非常に高かったことから、それぞれ受賞決定となりました。
新人賞には該当者6名の中から「阿ト理恵」「島中 充」「MANITOU」「エルク」各氏について議論が深められ「阿ト理恵」「島中 充」各氏の受賞ならびに「MANITOU」「エルク」各氏の次点が決定いたしました。阿ト理恵氏には、日本語とは何か言語とはいったいなんなのか音韻とは単語とは詩とはなんなのかという問いに日本語の枠組みを捉え直し解体し再生していく在り方で答えており非常に解りやすい言葉で書かれているからこそ認知された言語と意味が攪拌されていく素晴らしさがあるという意見、童謡や言葉あそびの新たな歴史となる重要な作者だという意見などが寄せられ、作品「ちょっとちがうとだいぶちがう」「はじまらないと」の評価が高かったことから、島中 充氏には、古風な作法の作品が提示していく直喩と対称性のあり方などが現代においても未だ作用可能性を抱いていることに多くを教えられたという意見が寄せられ、作品「ピーコ」「白鱗」の評価が高かったことから、それぞれ受賞決定となりました。MANITOU氏には、カメレオン文学とでも言えるような徹底的に自己ではない同化を取り入れていくことで作品に表層的深度を纏わせておりポップとも違う独特の第三次展開を引き起こしているという意見などが寄せられ、作品「 グラウンド・ゼロ」の評価が高かったことから、エルク氏には、作品完成度が非常に高く作品をもっともっと読みたいと思わさせられる勉強になる作者である、という意見が寄せられ、作品「今日を、捧ぐ」の評価が高かったことから、それぞれ次点決定となりました。
 エンターテイメント賞には選考推薦として挙がった「該当者なし」「はかいし」「ヌンチャク」「お化け」「MANITOU」「アラガイ」各氏の内、最終選考対象となった「該当者なし」「はかいし」「ヌンチャク」「お化け」各氏について議論が深められ「はかいし」氏の受賞ならびに「ヌンチャク」氏の次点が決定いたしました。はかいし氏には、作品への情熱が確かに存在しているが未だ自作の確固たる作風を確立することに対し模索中である姿勢を逆手に取り作風の往還を提示することで現時点での自己と作品との共生と共鳴を可能にしているという意見が寄せられ、作品「ハンドジャンプ」「大洪水」「祝祭」の評価が高かったことから受賞決定となり、ヌンチャク氏は投稿者に迷惑をかけてトラブルを起こし続けていたりアルコールに飲まれ酔っぱらって書き込みを続ける愚行が大変多く見受けられるもののエンターテイメントに関し自覚ある作者として作品と書き込みの方向性が一貫されていたことの評価がそれなりに高かったことから次点決定となりました。
 レッサー賞には選考推薦として挙がった「zero」「前田ふむふむ」「case」「水野英一」各氏の内、最終選考対象となった「case」「水野 英一」各氏について議論が深められ「case」「水野 英一」各氏の受賞が決定いたしました。case氏には、ジャンルによって読み解く得意・不得意が顕著であり作品自体にある良さではない部分に焦点を当て作品個体の良さを見えにくくさせる傾向が時折見られるものの様々な作品へと多く向き合い一定以上の構造を読み説いていることは大きな意味があるという意見、作者には作品も投稿して欲しいという意見などがあり、水野 英一氏には、レッサーとして飛びぬけた存在であり真摯に読み物として学術的にも向き合えるだけの評論を心掛けている点が非常に素晴らしい一作いっさくへのレスが間に合わなかったりレス数も極端に少なくなってしまっているが少なさに見合った質のレスを入れているという意見、フォーラムなどを活用してログに流れてしまった作品への評も是非書いていって欲しい存在であるという意見などがあり、それぞれ受賞が決定いたしました。
 文学極道年間最優秀作品賞には選考推薦として挙がった数作品の中から特に「no title」(紅月)、「HELLO IT'S ME」(田中宏輔)、「シャルロットの庭*」(fiorina)、「あなたの春の一日」(鈴屋)、「陽の埋葬」(田中宏輔)、「ATOM HEART MOTHER。──韻律と、それを破壊するもの/詩歌の技法と、私詩史を通して」(田中宏輔)、「IN THE DEAD OF NIGHT。──闇の詩学/余白論─序章─」(田中宏輔) 、「お化けになりたい女の子のはなし」(熊谷)、「籠のない日」(村田麻衣子) 、「花は甚だしい」  (明日花ちゃん)について議論が深められ、「no title」(紅月)「HELLO IT'S ME」(田中宏輔)「シャルロットの庭*」(fiorina)各作品の受賞ならびに「あなたの春の一日」(鈴屋)「ATOM HEART MOTHER。──韻律と、それを破壊するもの/詩歌の技法と、私詩史を通して」(田中宏輔)各作品の次点が決定いたしました。受賞した三作品に関しては「美」について数多くの意見が交わされ各種のアプローチ方法に関しても多くの讃美の意見が寄せられました。また「no title」(紅月)には構造を見ていくシミュラークル作品として高い位置にあるという意見などが寄せられました。
 最後に本賞受賞には至らなかったけれども十二分な磁場を示した作品と作者を各選考委員それぞれが推薦し選考委員特別賞が決定いたしました。本賞受賞者などの選考を進めていく際、いずれの作者も自身の作風を持ち推し進め深めていて議論対象となるだけの強度を作品で示しており文学極道の選考がなくとも評価が伴わなくとも自作を究めていくだろうと思わせられたことが印象的でした。「sample」氏には、 文字のコラージュのように体温なく遂行していき相反する感情が裂け目のように浮き上がっていく構造への意見などが寄せられ、 「熊谷」氏には、流用の詩学を体現していると清々しさへの意見が寄せられ、「山人」氏には、 作品ごとの出来にムラがあるが方向性をきちんと見出している数少ない作者という意見が寄せられ、「破片」氏には、一作いっさくが力作であり多彩な作風を使いこなしていて器用さを見せつけられる一方スタイルや作者自身の独自性が見えにくいがそこを提示した時には誰をも寄せ付けない抜きんでた存在となるように思うという意見などが寄せられ、「やなりり」氏には、使いふるされているはずの比喩素材と古風な作風が今現在においても有用であることを証明している作品に驚かされた作者の作風は決して新しいと言えず埋もれてしまいがちかもしれないがだからこそ力量が見え確かな力に支えられ現代を包み込ものではないか、という意見などが寄せられました。選考委員一同、大変勉強させていただきました。素晴らしい作品の投稿に感謝いたします。

スタッフ一同

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