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コントラさん疵がなく、とても美しい散文ですね。コントラさんの中でも、随一の良作ではないでしょうか。真向からのダメ出しは、ぼくには出来ないです。あえて二点、論点のみ残しておきます。糜爛しかけた文明のゆくえを、惜しむような眼差しが印象的です。が、ガルシア・マルケス、バルカス・リョサ、他にも好きな南米文学の書き手はいますが、彼らなら、決してこうは書かないし、このような視点は、持ち得ないのではないかと、そんな気がします。彼らであれば、このような糜爛を、さらにうわ塗りしていくような性急さ、貪欲さのようなもの、いってみれば「ガサツな手つき」で、彼らなりの価値を組み上げていくのでしょうね。そうした進化/更新を中断したまま、この作品の書き手の眼差し、立ち止まるような、いつくしむような視線の優しさは、ああ、日本人のそれだなあ(或いは、老いた先進国のそれだ)と、少しだけ、物足りなく思ったのも事実です。それと、言葉の問題ですね。南米文学を、原書で読むほどの教養がぼくにはないので、以下のコメントはひどく恥ずかしくすらあるのですが、この詩の日本語は申し分なく美しいし、精確なのだけど、寄る辺のない感じが、やはりしてしまいます。「バウンドケーキ」、「日本車のセダン」、そして「シルビア」。歴史、地霊、そのようなものの地下水脈から、いのちを汲みあげることのできない言葉の佇まいに、ふっとうろたえてしまう、という奇妙な読後感がありました。この詩が、非常に優れた散文であるがゆえに、それを感じたのでしょう。これは、作者であるコントラさん個人の責任でないのは勿論ですが。雑談的にいうと、今の日本語では、ある程度の長文でもって、構造の力でねじ伏せてしまう、そういう書き方でしか、本当の強度が得られないのではないか、という疑念が、個人的に最近、つよくなってきていますので。それと付け足しですが、推敲後のこれのほうが、ぼくはよいと思いました。
壁にも 空いた、うすぐらい あることに気づかれず 探せば見つけ出すことができる 半ズボンが壁から抜け出してくる 小学校のひび割 ...
はがれた爪のように 水面に言の葉を散らしていきます 白い光の底として たゆたう ...
そのうしろ背の壁に 白い顔が浮かびあがっている まっすぐ見ている眸に 群れのひとたちの歩き出しに くすむ羽をすぼめている 行 ...
とかげの足音を拾っていくと 「かげろう」と呼ばれる庭で行き詰まった 兄さん あれは生き別れの兄さん いいえ 姉さんだった ...
― 楽あれば苦あり 苦あれば楽あり そう呟いて生活を、な 描き続けた。ずっと、ずっと。 まぁ、はっきりと解ったんだ ...
悪魔の子どもが生まれたって、言わないで欲しいんだ。カシミールで毛皮を売っている彼の、その柔らかい頬に浮かんだ笑顔みたいな、そ ...
こんにちは こんにちは いつのまにか そう いつのまにか わたくしは しろい光の表にて 目覚めるようになっていた なまえは 知 ...
ちぎった耳のような暦の頁があり 「もう自分は大丈夫、と 微笑むけれども 通り過ぎる風の縁に ふれると 沈黙してしまうのは 「ま ...
放棄された埋立地を 一体の透き通った者と 連れ添って歩く 雑草に覆われはじめた アスファルト面のそこここに 立ち昇る無の陥没 ...
シルビアは恋人の兄のマルコスに「デブだ」とからかわれても、黙って 顔をそむけるだけだった。雨上がりの日曜日。表通りのアスフ ...
風の強い夜だ 下弦の月のまわりに 虹色の光の輪を作っていた薄雲が通り過ぎる 窓辺に焼きついた油色の日々が ガラス板から流れ落ち ...
はじめに くらやみがあって (ここまでくるのにながい夜をくぐってきた 一枚いちまい重ねられていく 生まれるまえは まったくの ...