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「『あばら家』、ですか」「『あばら家』、です」「ええと、これはつまり、この場にふさわしい詩として投稿した、いとうさんの渾身の一作 即ち本物のオムレツとして考えていいわけですね?確かめておきますが」「……(笑)」「また笑ってごまかすう(笑)。ではいただきます」「どうぞ、御遠慮なく」「うーん、笙野頼子の『ニ百回忌』を彷佛とさせる舞台だなあ。2連めは何だかもったらし てるぞ。夢の中の世界のようにぐーるぐる回って、揺らぐ自由の根っこが生えてて、やっ ぱり留まってるのかな…」「ヒジついて食うのはやめなよ、行儀わりいなあ(苦笑)」「もういいや、ご馳走さま」「どしたんだい、まだ半分も食べてないじゃないか」「だって、これは読んでても楽しくないんですよ、世界の謎解きばかりで。いや、世界が謎 でも一向に構わないんだけど、その世界に読者がうまく乗っかれるような配慮もないし、 だいたい作者がどのような意図で『自由』ということばを遣ったのか、うかがえません」「……」「これが本物のオムレツだとしたら、こんなオムレツ、ぼくは食べたくありません」「……」「……」「……」「い、いとうさん、む、無言のままぼくの首しめるのはやめて下さいよウ…」ああ、こわかった。
壁にも 空いた、うすぐらい あることに気づかれず 探せば見つけ出すことができる 半ズボンが壁から抜け出してくる 小学校のひび割 ...
はがれた爪のように 水面に言の葉を散らしていきます 白い光の底として たゆたう ...
そのうしろ背の壁に 白い顔が浮かびあがっている まっすぐ見ている眸に 群れのひとたちの歩き出しに くすむ羽をすぼめている 行 ...
とかげの足音を拾っていくと 「かげろう」と呼ばれる庭で行き詰まった 兄さん あれは生き別れの兄さん いいえ 姉さんだった ...
― 楽あれば苦あり 苦あれば楽あり そう呟いて生活を、な 描き続けた。ずっと、ずっと。 まぁ、はっきりと解ったんだ ...
悪魔の子どもが生まれたって、言わないで欲しいんだ。カシミールで毛皮を売っている彼の、その柔らかい頬に浮かんだ笑顔みたいな、そ ...
こんにちは こんにちは いつのまにか そう いつのまにか わたくしは しろい光の表にて 目覚めるようになっていた なまえは 知 ...
ちぎった耳のような暦の頁があり 「もう自分は大丈夫、と 微笑むけれども 通り過ぎる風の縁に ふれると 沈黙してしまうのは 「ま ...
放棄された埋立地を 一体の透き通った者と 連れ添って歩く 雑草に覆われはじめた アスファルト面のそこここに 立ち昇る無の陥没 ...
シルビアは恋人の兄のマルコスに「デブだ」とからかわれても、黙って 顔をそむけるだけだった。雨上がりの日曜日。表通りのアスフ ...
風の強い夜だ 下弦の月のまわりに 虹色の光の輪を作っていた薄雲が通り過ぎる 窓辺に焼きついた油色の日々が ガラス板から流れ落ち ...
はじめに くらやみがあって (ここまでくるのにながい夜をくぐってきた 一枚いちまい重ねられていく 生まれるまえは まったくの ...