文学極道 blog

文学極道の発起人・スタッフによるブログ

雑感(前田ふむふむ)

2007-08-01 (水) 22:44 by humuhumu

2007年6月度。
今月を総括すれば、概して、優れた作品に恵まれなかった月間では、
なかっただろうか。と思いました。
安定した筆力をもって書いていられる方々が、やはり一定の方に、
限られて仕舞っているからでしょうか。そういう月間優秀作品常連の方が、何名か、今回は投稿を見送ったようです。今回では、一条さん、宮下倉庫さん、りすさんが名を連ねていますが、
あまり多くはなかったようです。
まあ、そんなところが理由かもしれません。
地道に投稿される多くの常連の方でも、時々、月間優秀作品、佳作に選ばれる方もいますが、どうも安定感がないようです。
良い作品もあれば、完全にはずれている作品もあるので、
はやく、常に一定のレベルの詩を書けるような、安定した筆力とセンスを身につけてほしいと、切に思っています。
  
今月、私が◎を付けて、優秀作品候補に選んだものが、下記の二作品です。
「きみが生まれるずっと前から、ぼくはその国境線を知っていた」 - 葛西佑也 さん
「キャベツ畑」- 辻 さん 
「きみが生まれるずっと前から、ぼくはその国境線を知っていた」
は、閉塞した心境を、特徴ある繰り返しのフレーズや、たどたどしい言い回しを、
効果的に使って、叫びようなこころのうねりを見事に描き出しています。
けれども、言葉は、良い意味で、決して重々しくなく、
逆に、軽いくらい心地よいテンポで読めてゆけます。
筆者のまなざしも、凛として前を向いている、
良い詩だと思います。
「キャベツ畑」
は、文学極道に初投稿の詩だそうですが、この方は、詩をグイグイと読ませる筆力があります。
また、ゆったりとした非凡な文章力、安定感は、
久しぶりに「当たり」の方であるようです。私のなかでは、とても注目の方です。
一発屋でないことを願っています。
次作が、とても楽しみです。
それと、月間優秀作品のなかで、私が推したのは、上記二作品のほかに、
「Red 」   ふるる さん
「5 」    宮下倉庫 さん
「悪書 」   りす さん
「Station 」  いかいか さん
でした。
若干難点もあり、色々と指摘した、
「雪の交信」 田崎さん
「夏の骨」今唯ケンタロウさん
わたしは、優秀作品候補に入れましたが、
及ばなかったのは、少し残念でした。

次回も、月間優秀作品に選ばれた、また選ばれなかった、皆さんの、
野心作を期待しています。

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雑感(平川綾真智)

2007-07-22 (日) 23:58 by a-hirakawa

選考の雑感です。
常連の方の作品は、首をかしげる点も多くありましたが、読んで得るものがありました。ありがとうございました。
辻さんの次回作がとても気になります。素晴らしい作品であることを望んでいます。

選に漏れた作品の中で、
 凪葉さんの「窓の向こう。」
が気になりました。
初投稿作からここまで成長したということに、感慨深いものを感じずにはいられませんでした。
このまま伸びていって欲しいと思います。
 シンジロウさんの「無題」
も心に残りました。次回、期待しています。

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2007.06 雑感(蛍)

2007-07-21 (土) 20:42 by hotaru

6月の選考を終えての雑感、です。
選に漏れてしまって残念に思った作品はいくつかあるのですが、そのなかでも特に印象に残ったものをひとつだけ挙げるのなら、yayaさんの「鳥の雑木林」でしょうか。

連ごとに現在と思い出が交互する構成は破綻なくうまく繋がれていたと私は思います。
寝そびれてしまったので、ベランダで夜が明けていくのを眺めながら、その風景にかさねて昔を思い出している。というだけの何でもない内容なのですけれど、語り手の静かな心持ちが伝わってくる作品でした。
表現や言い回しなどに、かなり推敲できそうな余地があるように思いますが、そのわりには読んでいて、もたつきのようなものをあまり感じませんでした。
それはリズムの良さによるものだと思います。
良いリズムは詩に美しい流れを作るものですから。

ここで私が言っている「リズム」とは、七五調であったり、擬音・記号を使ったりして意識的に作られたリズムのことではなくて、書き手の身体から自然に生まれ出るリズム、いわば体内リズムのことです。
いま文学極道でこの体内リズムの感覚が特に優れていると私が感じるのは、一条さん・軽谷祐子さん、あたりでしょうか。
yayaさんのこの「鳥の雑木林」にも良い流れがあります。
使う言葉や言い回しなどにもっと神経をつかって表現を研ぎ澄ましていかれれば、優れた作品になるのではないかと思いました。
今後、どんな作品が投稿されるのか、とても楽しみな書き手さんです。

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2007.06雑感(ダーザイン)

2007-07-19 (木) 21:57 by ダーザイン

気になったこと。

圧倒的な筆力で四天王の一角に入れるだろう宮下倉庫さんが一条化したりコントラ化したりしていること。天才的な連中が似通うのはしょうがないのかもわからんが(リルケもトラークルもツェランもヘルダーリンと似たようなもんだよな)。
詩情を否定すると宣言したり、色々試みておられるのだろうが、 先ず上等な文章が書ける人だし、
「Million miles away」にも、「スカンジナビア」にも、宮下さんの作品には詩情がありますよ?
昔の現代詩人みたいなこと言われてもね。個体発生は系統発生を繰り返すものだが、現代詩病なんぞにかかっても痰つぼにはまり込むだけ。
何年か前、詩のボクシングの全国大会のテレビ中継で、端麗に美しくリリカルな詩を読んだ人を「今時抒情詩ですか?」とあざ笑ったのがねじめだったか誰だか忘れたが、糞みたいな詩を書いている現代詩人さんだ。その、ねじめだか誰だかを、俺は殴りつけてやりたい衝動にかられた。
宮下さんには独自のファッショナブルな文章をありのままに、こだわらず、追求して欲しい。

黒船さん「鶏鳴」エリ、エリ、レバクッタカ(エリ エリ サバタクニ)
この前の風の谷のナウシカネタの時も推したが、この人には独自のセンスがある。この人、ネガティブではない人間面白く書けてる数少ない詩人の一人だよ。上手ではないかもしれないけれどもね。ナウシカネタのが次点にかからなかったとき、僕はとてもがっかりした「鳥になった少女」

はじめさん。べたでまだまだだが、良い方向に進んでいるし、書き続けてくれれば上等な文章を書く人になると思う。5月度の海で桃缶を冷やす話など、惜しかったと思う「港にて」。丁寧で緻密な描写、それから、べた であることからの脱出を期待する。

田崎さん「雪の交信」。意味など無くとも、ただ圧倒的に美しければそれで良い。この作品はラストの交信する機械で、J・G・バラードの掌編のような荘厳な美を演出した。
ただ、平仮名の多様に必然性が感じられず、即ち美しくなかったのでこういう結果になったと俺的には思う。こういうのには完璧さが求められると思う。水晶に罅。その罅に味わいなし。 バーミリオン・サンズへの道は険しい。

原口さんの「途中まで」 。端麗で儚い美しさで素晴らしいが、物足りないとも感じた。
もうちょっと上等なものを出して欲しい。書ける人なのに、くだらない現代詩や、
このようなちょろっと書いたようなものばかり出されると頭に来る。

りすさんの「箱」はもう少し親切な方が良いのじゃないかと思った。
両作とも優良作品になったが、りすさんにしては雑かなと思った。

一条さんの「ポエムとyumica」選者の一部でもレス付けている人からも不評だが、何故不評なのかまったく私には理解できない。真に受けるべきナイーブな文章じゃないですよ、「ポエムとyumica」は。

葛西裕也さんきみが生まれるずっと前から、ぼくはその国境線を知っていた
母体回帰願望とか、変執狂じみた文章を物凄い迫力で書いているが、その迫力と、いのちを描いたその手腕を高く評価したい。

辻さんキャベツ畑
俺は罵倒したが、他の選考委員の評価は高かった。次、どんなものを出してくれるかに注目(7月度は既に傑作を出しているもよう)。

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