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「2018年・年間選考経過(1)」(Staff)

2019-06-18 (火) 18:06 by 文学極道スタッフ

「2018年・年間選考経過」

2018年 年間各賞

 文学極道『2018年間各賞』は2018年に『文学極道詩投稿掲示板』へと投稿された作品のうち月間優良作品・次点佳作に選出された327作品、82名の作者を対象として、委員スタッフによって1月25日から4月7日の期間に選考会を開催し審議の結果、上記ページの通り決定いたしました。本年度の選考(月間選考と年間選考)はスタッフである平川綾真智、瀧村鴉樹、清水らくは、夢沢那智、みよおじ愛已、石畑由起子、麻田あつき、石原綾、芦野夕狩(現在退任)、熊谷にどね(現在退任)に創設スタッフの本野ややや氏を加えた計11名で行いました。
 創造大賞には選考推薦として挙がった『アルフ・O』『ゼンメツ』『完備』『遊凪』各氏の内、最終選考対象となった『アルフ・O』『ゼンメツ』各氏について議論が深められ『アルフ・O』『ゼンメツ』各氏の受賞が決定いたしました。アルフ・O氏の作品へは、独自性を追求し成功している作品を今年、一番投稿していた作者である、一作一作の形態の在り方が次世代の詩作品を切り開きながら獲得していっている、独自の世界を質量ともに高次元で成した、という意見などがあり創造大賞受賞決定となりました。選考委員からは次のような意見が挙げられました。《同性同士の愛が輝く瞬間が詩情へと力動を働かせており、多言語との折り合いとも見事な様相を見せている。『Ooze』などは未来でも評価されるのではないだろうか。毒を持っており、自己自身のことという共振と背徳を持たされてしまう怖さすら感じる》、《詩の形態をブラッシュアップしながら高めた言語を紡いでいく。力強さと繊細さの共存》、《もう一歩の工夫が必要だと思いもする。しかし、それ以上に総体として良質》、《最後の要素も含めて独自のスタイルに磨きをかけていっており鋭気を感じさせます。綴り方が美しく強度に満ちています》、《すでに個性が確立されているが、それが飽きることにつながらない。元ネタを知らなくても詩作品としてきちんと成立している》、《『Bijou in a beehive』はSFの要素を基盤に、人間の脳へ疑問を投げかける良作だが、ファンタジックな世界観が強すぎて、詩的情感の中でリアリティが薄れてしまった気がする》、《独自のスタイルに磨きをかけていっており鋭気を感じさせます。綴り方が美しく強度に満ちています》、《作者の描く女の子は甘くてかわいくて、毒がある》、《『Lynn, Lucky 13』は少し読み込んでみましたが、あまり良い印象がないです。読み解くためのヒントみたいなものをもう少し散りばめてくだされば、この詩を楽しめそうです。題名にそういうヒントがあれば、、と思いました》、《読んで浮かぶイメージは綺麗なのですが、それが読み手の想像力に委ねすぎているという評も成り立ってしまうような気がしている》、 《『crush the sky, pop'n'sky』は音で作られた作品。視覚面でも効果的。ポップさとライトさの中で芯が通っている》、《読んで浮かぶイメージは綺麗なのですが、それが読み手の想像力に委ねすぎているという評も成り立ってしまうような気がしている》、《皮肉や揶揄が上手く、最後まで読ませ続ける力を感じます》、《『crush the sky, pop'n'sky』は音で作られた作品。視覚面でも効果的。ポップさとライトさの中で芯が通っている》、《読んで浮かぶイメージは綺麗なのですが、それが読み手の想像力に委ねすぎているという評も成り立ってしまうような気がしている》、《皮肉や揶揄が上手く、最後まで読ませ続ける力を感じます》、《詩的構造の中で女性言葉になる部位などがあり映えており、更なる発展を見せていきます》、《『Violet pumps, stompin' the floor』は安定飛行と思われるいつものスタイルなのだが、なぜか読んでいて説明できないもやもや感があった。作者自身を作品から完全に切り離せていないような、そんな感覚がつきまとう》、《『2:12 AM』はア・フォーリズム。省き切った蛇足。核心中の核心。詩で個展をすることがあるなら、入り口に大きく飾りたくなるような詩のコピー》。ゼンメツ氏の作品へは、現代口語体を主軸にすることは非常に危険な側面を持つと思うのだが筆者の鮮やかな切り口が帰って爽やかさすら感じる、毎の分量に歪さがあるが主張に共感しか感じえない、という意見などがあり創造大賞受賞決定となりました。選考委員からは次のような意見が挙げられました。《怒りと焦燥感の中で日々を生きていく感覚がリアルに描き出されている。リーダビリティに富んでおり読みやすく作者の内面に近い部位で書かれている。投げやりな部分も効果的に働いていると思う。部分部分、更に発展させられなかったのか気になった。このリーダビリティと詩情は、まぐれなのかコンスタントに書けるのか今後の作品で見極めていきたい。もっと作者の作品を読みたいと思わさせられた》、《『(無題)』は最後にかけてのありきたりな死への思いをそのまま吐き出す作品であって良いのだろうか。悪くない作品だ。(無題)であることも含めて見直せる部分がある。詩への本気をもっとぶつけて欲しい》、《『事情』は荒唐無稽かつ不謹慎な内容にも関わらず、違和感なく一気に最後まで読ませる力量はすばらしい。ラストの二行によって読者は語り手と同化する》、《全体的に圧がありますが、短絡的な部分もわざとかもしれませんが、あります。これはタイトルにまでなっている事情の部分がごっそり抜けても詩になるのではないかとも思いますが、必要だったとも感じられます。全体のバランスを見ると意識のバラツキが如実になってしまっている箇所もあります》、《シーンの設定も文中の口調もイメージの構築にきちんと役立っています。絶望的な状態が表されていますが、理性が働きすぎているのか、文章に状況を受容しているような表現が多いためか、どこか遠い印象があって、読み手を冷静にさせてしまいます》、《『メイソンジャー』は、今まで作者の作品は最終的に、そのままの言葉を出し綴っていくことが多かったのですが本作品は比喩に昇華されています。構造も上手く詩としての作用が上質です》、《さり気ない会話の中に、男女の倦んだ愛が垣間見える。保存では無く朽ちていくことを選んだ彼女の小悪魔ぶりが実に魅力的》、《非常に繊細な世界を、読むときに思わず息を止めてしまうような緊張感の中で描いている。セロファンの薄さで分解された情景は泥と月といった極端な存在によって、それぞれを互いに際立たせていると感じる》、《磨き抜かれたセンテンスがキラキラと輝いている。平仮名と漢字のバランスのとり方が視覚的な美しさと柔らかさを生み出している》、《『アンタなんかしなない』は、四畳半フォークの世界を無理なく現代に置き換えたような印象。それが成立するのは、時代が変わっても愛し合うことで感じる孤独というものは変わらないからかも知れない。最後の自らを突き放したような一行が良い》。また受賞には到りませんでしたが、游凪氏に関しては次のような意見が挙げられました。《綴りの一つひとつが出色の出来栄えであり息を飲む。ダダ、シュルレアリスムを経ていき現代詩が辿る変遷を示している粘性の生を感じる。《『野菜を食べる』は異色作であり日常生活に密着している情景が浮かび上がる意欲作》、《一年ほどの投稿の中でも心象ヴィジョンで殴られるような作品が多かった。また、その筆力の高さと、言葉の実存性。獲得している優良の数から考えても、何かしら賞を与えられてしかるべき逸材と考えている》。
 最優秀抒情詩賞には選考推薦として挙がった『完備』『山人』『朝顔』『田中修子』『本田憲嵩』『岡田直樹』各氏の内、最終選考対象となった『完備』『山人』『朝顔』『田中修子』各氏について議論が深められ『完備』『山人』各氏の受賞が決定いたしました。完備氏に関しては、作品が平易な言葉の中で構成されており再読性に耐えるだけの強度を持っており日常に隠れている詩情を発見させてくれる稀有な作品群、様々なHNを使いながらであるが実力と作品の確かさは一貫している、という意見などがあり最優秀抒情詩賞受賞決定となりました。《『angle』は、第一連で取りました。名づけはよくあるテーマですが、肯定的にとらえる言葉は読んでいて期待感を持たせるものです。第二連から少し散漫で、薄味になっていると感じます》、《リアリティに溢れている。一見すると絶望と虚無の様にも見えるが、筆者の生々しい生への希求が節々から一斉に芽吹いて、手当たり次第に喰らおうとしている》、《『位相(イスラム国)』は、主張しすぎない穏やかな視覚的イメージが良い。自然界の事象をさり気なく組み込んでいるところも技術的なレベルの高さを感じた》、《『うすく(イスラム国)』は、言葉は詩的で情緒もありますが、イメージを想起するのが全体的に難しい詩となっています》、《『plastic』は、全体のバランスは良いと思います。虚しさが全体から滲み出ています。一連の字数のリズムが引っかかります。パンチは弱め》、《『symbol』は、短い中に上手くまとめてあるのだが、「奇妙」という言葉が余計に感じた。最終連の素晴らしさが、逆に作品の過剰な技巧性を意識させてしまっている》、《正直、ここまできっちり書かれると「大変よくできました」的なことしか言えない。本当に美味いものは「美味い!」しか言えない的な。決して選者の語彙力の問題ではない。そういうことにしておいてください》、《『unconfessed』は、一番良かった箇所は、大阪湾という固有名詞をこのタイミングで入れた一連。最初に、>踏み切りのむこう平凡な交差点に海を探していると海を出しておいて、後になってそれが大阪湾だと読者に認識させることで、読み手は一気に抽象的な概念から現実的な場所に意識が飛びます。ここの読み手に対する意識の動かし方は上手いなあと思いました》。山人氏に関しては、作品への接近の仕方が勉強になる言葉とは何かが生活の中から膨らんでくる、などの意見があり4年ぶり2回目の本賞受賞決定となりました。選考委員からは次のような意見が挙げられました。《『欠片』は、美しさと儚さが混然一体となる虚無感。虫の隊列は使い古された比喩に思えるが、敢えて古典的比喩を使った事で効果的だったと思う》、《皮肉であり自戒でもある感情と中傷の綴りに力を見出します。最後の方が中途半端になっていないかどうか。読後感が悪くても極端に傾けても良いのかもしれません》、《『蜘蛛』は、「きちがい」という強い単語の繰り返しの短さは再考しても良いのかもしれない。描写が非常に心地よいので、もう少しだけ分量を読んでみたいという思いがある》、《『山林にて』は、始まりが説明的であり、その部位を別の方向に持っていっても良いと思った》、《『一月』は、詩の中で詩を出していきことの難しさを改めて考えさせられる。他の情景描写や苦悩は非常に良いので詩の更なる踏み込みが必要かもしれない》、《『20世紀少年』は、前半と後半の部位に更なる伏線と落差が欲しいと思った。非常に勿体ないと思う。一歩、前に進むと傑作だと思う》、《『夏のどこかで』は、指示語によってイメージが散漫になってしまう箇所があり、詩の内容の優しさや切なさにブレーキをかけているような気がします》、《『雪原の記憶』は、「私は警察署に来ていた。」の一文を無くしても良いと思う。その部位を無くすと文中世界に、すんなりと入れたような気がする。しかし、そのことを考えても漁と生死の根源、銃返還に関わる多くのことや人間の心の傷を正面から書いた大作。この熱量は讃えられて良いと思う》、《『雪原の記憶』は、実際に狩猟をやってきた者だけが描けるリアルな世界。生き物の命を奪うという行為を、実体験の生々しさで描ききっている。ただ推敲が不十分であると感じる》、《面白い。過去が一番生々しく、現在と思わしき部分はふわふわしていて最初と最後が浮いてる。それが意図してのことなのか分からないから評価が難しい》、《情報量が非常に多いにもかかわらず、読み易く興味を惹き続けることに成功しています。最後に全て引っ繰り返すまで懇切丁寧に緻密に文章が仕上げてあり、熱量を感じます》、《『冬にむかう 三篇』は、情景を描くことで自らの心情を表現しようとする手法は成功しているが、初連が少しくどく感じる。もう少し整えられるのではないだろうか》。
 実存大賞には選考推薦として挙がった『該当者なし』『朝顔』『鷹枕可』『ゼンメツ』『アルフ・O』『泥棒』『いかいか』各氏の内、最終選考対象となった『朝顔』『鷹枕可』各氏について議論が深められ各氏の受賞が決定いたしました。朝顔氏に関しては、視覚的な効果と作品世界の整合性が上質、上質な感情がダイレクトに心に突き刺さって来ます、という意見などがあり2年連続2回目の本賞受賞が決定いたしました。選考委員からは次のような意見が挙げられました。《『朝の街灯』は、これこそ、女性にしか書けない美しい抒情詩だと思います。丁寧語で書かれている、いわゆる回顧録のような独白が、秀逸な修辞で際立っていると感じました。描くべき対象を、極度にわかりにくくする必要はなく、リアルをつかみ取ってこそイメージは実体を持つのだと感じました》、《『詩五篇』は、関連性を持たせるタイトルを付けるなどして遊びがあるともっと面白いものになったのではないかという期待があります。夕方という詩篇全体と、教育という詩編の終わりは筆者の視線の鋭さが表れていると感じられるフレーズです》。《意図的に行内の文字数を制限し、箱に収めている。この箱の中で、意識がぎゅうぎゅう詰めになっている。言葉の配列が視覚をもって体を成している》、《『収穫祭』は、きれいにまとめると作品になるかもしれないけど、表現したいものはそんなお手盛りのカタルシスなのか疑問が出てしまう。「おやを殺した」部分こそ作者特有の体験で心象風景で書くべき部分だと。人生は思い描いた通りにならなかった、ピリオドが打てないものの連続だって思います》、《『約束』は、一つの文章をただ細かい改行で区切って詩っぽく見える箇所があります。両親や母が出てくるところでこうなっているのは、説明的になっているのでしょう。詩の持つメッセージの方向性は素敵だと思います》。鷹枕可氏に関しては、手法を信じて、やり続けていく姿勢が見事なまでに詩人である手法から先の展開を獲得している、などの意見があり実存大賞受賞決定となりました。選考委員からは次のような意見が挙げられました。《狙いすぎてどうにもわざとらしさが抜けない》、《言語の硬さが強度として上へと伸びあがっていきます。作品世界の短さなどが上手く作用しています》、《一見すると読者に難しい印象を与えそうですが、内容は至ってキャッチーで、この詩に関しては良いバランスで収まっているのではないかと感じます。 内容も核心を突こうとする目論見が感じられて、好印象です》、《言語世界を構築していく中で自分の作品の方向性を確固として打ち出していきます。長さなどが丁度よく詩情の立て方を上手く作用させていっています》、《この詩人も独特の美意識によって構築された文体が、強烈な個性を発揮している。ただし読み手を選ぶ》、《『死の糧』は、タイトルと死に直接纏わるフレーズには死生観を反映させる強目の表現が生きていますが、最終的な視点と構成が手垢の付いた表現に落ち着いてしまった感が否めません》、《一見すると古風に思えるが、実際は古いスタイルを参考にしながら新しい個性を獲得している。内容から、美術の素養が付け焼き刃でないことがわかる》、《『ルイーニの印象』は、作品を見て作者が分かる稀有な作り。どんどんと上手くなっており、詩作品の信念を発していることが分かる。最近、良作続きであり勉強になる》、《漢字ばかりの字面だと内容との塩梅が難しい》、《『腐敗した手鏡』は、この美意識は支持していきたい。「水底教会」というフレーズはメキシコでダムの渇水によって16世紀の教会が姿を見せたという数年前のニュースや、伝説都市イスを連想させる》、《わざわざ読み難くしている文体で印象的な単語を所々に配置し、政治的メッセージを匂わせ、イメージを展開させている。一連めもきちんと役割を果たしていて脈絡があります。難解な漢字の羅列に子どもらしさのようなものを感じ取ることができれば愉しめたりもしますが、どんな方向へ進むのでしょう》、《更なるブラッシュアップが、かかった作者の最新の形式。圧倒的な美である》、《『吸血蝶を呑む』は、印象的な造語も含め、作者が独特のスタイルと美学を手に入れたことを確信させる作品。個人の生死にとどまらず、模造された歴史の中での国家と戦争の記録ではないかという気がしてならない》。
新人賞には該当者12名の中から『あおい』『田中修子』各氏について議論が深められ『あおい』『田中修子』各氏の受賞が決定いたしました。あおい氏に関しては、抜群に上手く言語の連なりの脱臼具合が勉強になり驚いた、などの意見が挙げられ受賞が決定いたしました。また選考委員から次のような意見が挙げられました。《『ふたつの魂(こころ)』は、詩の形態など整っている。作品に、もっと比喩として高め昇華できそうな部位が多々ある》、《『実母』は、「夜になると彼女は、液体により人格を変える」がよいですね。重たく、攻撃的になりがちなテーマを、落ち着いて料理できています》、《『机上』は、最終連が惜しい》、《無駄な装飾が無く、シンプルでいて奥深い。詩を発見する瞬間という上質な抒情詩と感じた》、《恐ろしさをサラッと書く手腕に戦慄を覚えます》、《『わらいの口』は、言葉に力があり、面白さもある作品でした。前半はあえて流すような感じなのでしょうか。後半でぐらぐらと揺り動かされるような展開があり、良かったです》、《新鮮なヴィジョン。口元にクローズアップし、また唇を「わらい」という表現で強化することで、シュルレアリスム的な映像が浮かぶ》、《『月の花』は、視覚的にも音的にも美しい世界を創造出来ている。平易な言葉を用いて強度のある作品に仕上がっている》、書き慣れたかたとお見受けしました、文体が確立されています。今後作風がどのような変化を遂げるにしても矢尻を研ぎ続けるのみでよいかたでしょう(よいかたでしょう、と断言してしまうのも暴力的ですが)》。田中修子氏に関しては、明るさと暗さの共存が抜群に上手く筆致が滑らかに作品世界を浮き上がらせてくる、などの意見が挙げられ受賞が決定いたしました。また選考委員から次のような意見が挙げられました。《『卵化石』は、圧巻の面白さ。作者自身が作品世界と詩を楽しみ創作に勢力をささげていることも伝わってくる。比喩も上手く詩との向き合い方を考えさせられもした》、《『夕暮れシャッター』は、部屋で原稿を書く人の想像の世界と時折窓から見える鴉、それさえも想像の世界へと歪んでいき、結局筆者も鴉になってしまったみたいな感覚に陥っている、そんな世界なのかなあと思いました。意味不明な、言葉の羅列友受け取れそうなのにどこか規則性があるような意味を知りたくなるほどに魅力的、気になる詩です》、《『野いばらの丘』は、比喩表現の単語が扱いの難しいものなのに見事に作品化されています。方向性として上手すぎる詩人》、
《『少年少女絵空事活劇』は、大変、上手い作品です。ただしタイトルを含めて枠組みを拡げていけそう》、《『』は、》、《作者自身が向き合いにくい事象に向き合い魂から削り出した作品であるように思えた。作品の中での比喩の用い方と熱量が見事に実存的世界を構築している。過去からのもの親子関係、宗教観、さまざまな文学的哲学、そこから縛られた自分との闘いと脱出する過程にある時間。圧巻》、《『揺り籠』は、筆力があり、最後まで読ませることの出来る作品ではありました。描写に怨念のようなものが籠り過ぎており、バランスを欠いているのが一つの魅力とも言えるのかもしれませんが、台詞の部分の方が詩的であったり、グロテスクな部分については、この筆者はもっと読者に吐き気を与える程の表現が出来るのではないかと感じました》、《『ばらの蛇と少女』は、全体的にイメージというもので纏められた、絵画のような詩です。死のイメージ以外にも何か感じたいものがあるのですが、上手く感じることが出来ず、非常に美しくはあるのですが、額縁の外にはみ出てくれるような言葉を探してしまいました》、《作品内で使用されている比喩の単語が、これまで多く使用されてきたものであるためハードルが上がってしまっている。その上で見事に綴られている》、《『にがい いたみ』は、非常に上質な言語世界と危うさを孕んだ情感が読み手を先へと連れていきます。作者は何故こんなにも作品に人間を反映できるのか》、《『ともし火』は、作者の凝縮された人生の背景が発されている作品。「詩」の中で「詩」を語ることは作品を小さなものにすることがあるが、この作品は必然性のある大きさを持っている。実験性もある》、《『hyouka-ga-hara』は、色遣いが良い方に効いています。「彼」のキャラクター設定とその説明部分が熱を帯びていて面白い。文章が「彼」から離れたところでペースダウンしますが、落ちの切なさは綺麗に纏まっています》、《宮沢賢治のような幻想混じりの文章で楽しく読ませていただきました。情緒的で直感的な文章は、世界を理解しようとする読み手には好まれるかもしれませんが、論理的な思考を持ち、社会を理解しようとする人には敬遠されるかもしれません。言い方を悪くすれば、意味がわからないといった感想をもたれてしまうかもしれません》、《修辞の美しさがまず先に際立ち、読者をぐっと引き込む。興味を引く言葉とイメージの向こう側で、筆者の悲痛なメッセージが立ち上がっている。美しい》、《小説的な背景の作り方と作者の内面を、そのまま発露したような作品の中での軋みが上質な世界観とヒリヒリする構造を生んでいた》。
 エンターテイメント賞には選考推薦として挙がった『該当者なし』『植草四郎』『渡辺八畳@祝儀敷』『中田満帆』『ゼンメツ』『泥棒』各氏の内、最終選考対象となった『植草四郎』『渡辺八畳@祝儀敷』『泥棒』各氏について議論が深められ『植草四郎』『渡辺八畳@祝儀敷』氏の受賞ならびに『泥棒』氏の次点受賞が決定いたしました。植草四郎氏に関しては、独特な比喩とユーモアが深い感情の部位にまで届いて唯一無二の存在であるという意見があり、受賞が決定いたしました。また選考委員から次のような意見が挙げられました。《『5才の満月』は、一行目を詩文として一つも無駄がなくユーモラスに比喩と言語の連鎖世界が展開していきます。童心に帰るような世界観。度肝を抜かれました》、《『(無題)』は、生物を創造していく過程と、創造の身勝手さへと声を上げる様子がユーモラスに詩へ昇華されています。こんな作品、読んだことがないです》。渡辺八畳@祝儀敷氏に関しては、エンタメ作品として作りこまれていて真剣に作られており迫力が伝わってくる、などの意見があり受賞が決定いたしました。また選考委員から次のような意見が挙げられました。《『ワタシのきもち (エルサポエム)』は、やりたいことは分かる。消費財として強度があるのか、どうか。もっと進めそうでもある》、《『』は、短いセンテンスの中で、猫を通した命の在り方が立ち上がる。哀愁を含みつつ、客観性を忘れない見事な筆致》、《『兵器少女とシティロマンス』は、多彩な元ネタとシリアスと装飾により無毒化されがちな現代性を示しています。シリアスをつたえきる努力を、もう少しだけ求めたいです。その課題は、ありながらも良い作品です》、《『ラブ・ラプソディ』は、相手に環境を指定するのは好ましくない、と個人的に思います》、《『サバンナの光と液』は、作品強度が非常に高い。作法と技術に関してのことが飛び抜けている》、《『天と地』は、薄くアプロぷリエーションとキャッチ―な言葉の断定とを加工している興味深い作品です。タイトルの重厚さと作品内容の軽さが対比性を生んでいて良い方向へと進んでいます》、《『空を貫いたぜ。(変態糞詩人)』は、単語の発する効果を最大限利用して、何度も同じ単語をリフレインし、強烈な印象と嫌味なく意味の押し付けに成功していると感じられる面白い詩でした》、《『殺させてくれたのに』は、作者は以前から「非現実的キャラ」の虐待について強い関心を示していたが、この作品は同様のテーマをさらに掘り下げている。架空の存在を殺したことについての罪悪感。それを否定されることは、語り手の存在や行動がなかったことにされることでもある。これまでマスコミが取りあげてきた「現実とバーチャルの区別が付かない若者」という薄っぺらい語り口とは一線を画した作品と言える》、《心の中に抱えた小さな残虐さが伝わってくる。フィクションの世界であるということを鮮明に打ち出していることが上手い作用をもたらしている》、《『わが子』は、SF漫画の一つのシーンのような情景と物語が短い詩文で表されている。よくあるような言葉を見つけますが、印象としてはその方がこの詩の「感じ取り易さ」に繋がっていると思います》、《二次創作は読む人を選ぶが、それを詩のジャンルとして確立しようという姿勢を評価したい》、《『貧乳が添えられている』は、一読して佐伯俊男のエロティックなイラスト(セーラー服の女子高生が舌の長い男の生首が入った箱を持ち帰るやつ)を連想したのだが、内容はそれぞれが欠けている男女の哀しく残酷な物語。これを何の喩えと解釈するかによって評価は大きく分かれるかも知れないが、自分のことのように受け取ってしまう人もいるのではないだろうか。相変わらず読み手を挑発して語らせるのが上手い》。泥棒氏に関しては、ユーモアが想定内だが巧さは抜群、などの意見があり受賞が決定いたしました。また選考委員から次のような意見が挙げられました。《勢いがあります。面白味もあるのですが、それで乗り切るには長すぎます》、《『人格攻撃の詩。』は、1〜2連までの美しい隠喩から一転、第三連での急激な提示にはっとさせられる。人格攻撃とタイトルで示しつつ、最後の連では愛を提示する。抜群に上手い》、《『鉄拳制裁の詩。』は、ユーモアに満ちた批評性を獲得していく詩作品です。サティ作品を思わせる実験性に富みながらも現状に満足できない自身や他者に対する怒りなどメッセージもあり、作品自体で現時点を表現していく上手い詩です》、《『暴言を吐いて炎上させる奴の髪型について、』は、自己分析と共に冷徹に完遂していく愛に溢れた反芻がメッセージ性を帯びてきます。自分が当事者であるからこそ詩情を獲得してしまう不思議さ》、《『深い意味はないけれど、、、、、、、、、、。』は、メッセージ性がエンタメとして前に出れているかどうか疑問に思いました》、《『友達の友達の友達の友達の友達の友達の友達』は、純粋な心の痛みを表現することに成功した詩であると感じました。実際に読者として思い起こさせられる痛みがあり、そうした痛みを想起させることができる力のあるテキストであるのだと実感して、評価します》、《斬新なフレーズがあり刺激になる。意図的なものかも知れないが、各連のまとまりが弱いためにトータルでの強度に不満を感じる》、《比喩的に集団というものを捉えていきアウトプットしていく。もう一歩、踏み込むことが必要なのではないでしょうか》、《『五分後の羊』は、内輪向けの詩作品に思える。比喩に昇華しきれているか疑問だ》、《『ポテトチップスが奥歯にはさまっている、夜。』は、文章のメッセージやイメージを読むに、これはもっと野性味ある組み立て方にしていただいて良いのではないかと感じました。「静」の感触が強く、改行の仕方によるのかなど、考えるところがあります》、《猫や犬の描写が必要とは思えない。それ以外の部分は読んでいて心地よいので残念》、《『DVDVDVDVDVDVDVDVDVDVDVDVD』は、皮肉も効いている。日常、働く人間の抜け殻感、芸術に憧れる人間のどうしてもミーハーなところ。難しくないことばで綴られていますが、あからさまにすると稚拙になるところをうまい具合でメッセージに変換できています》、《『Lapse』は、長い空白の溜めの後の「めっさ深くて」で笑ってしまった。その後に続く連が少し硬さを感じてしまったので惜しい。「めっさ」がポップな口語体だと感じたので、軽い言葉で静謐さを纏めてほしかった》、《『風の谷の崖の上の右の横の丘の下の変なおばさん』は、鋭い人間観察とユーモラスだが毒のある筆致。リアルでもネットでも確かにこういう人っているなと思わせると同時に、自分もそうではないかと考えさせられる。ただ余白の使い方が大雑把に思える。ここまで空ける必要があるか疑問》、《変わった方を誇張して書いている。寂しさを感じるエンタメ作品》、《『ドラキュラ』は、途中まで傑作だと思った。最終連が更なる飛躍を持てそう》。 
 レッサー賞には選考推薦として挙がった『該当者なし』『ゼンメツ』『アルフ・O』『atsuchan69』『鷹枕可』各氏の内、最終選考対象となった『ゼンメツ』『アルフ・O』『atsuchan69』各氏について議論が深められ『ゼンメツ』『アルフ・O』各氏の受賞が決定いたしました。ゼンメツ氏に関しては、次のような意見がありました。《空回りしてることもよくありますが、「俺は真剣によんでいるぞ」というのを第三者に伝えるのが巧いので、説得力があります。基本的に「作者のやりたいこと」をくみ取る能力が高い印象ですが、前置き無しで話し始めるのでなぜ氏がその読解に至ったかの経緯が省かれることが少しもったいない。他の二人と比べると量的に圧倒》。アルフ・O氏に関しては、次のような意見がありました。《ご自身が結構メインストリームから外れた作品を書かれているので、同じような作品に対する理解だとか、読みが深いな、と思います。ただ同時に所謂「詩作品」と呼ばれるものに対して、極めて冷静な意見を言っているのがよくあって、わりと納得することは多かったです。ただ、(これは僕の個人的な意見ですが)批評って作品の価値を何倍にも引き上げるくらいの力があると思うのですが、氏に関しては、そういうポジティブな意味でのレスというのは少なかったのかな、という印象(あっても褒めるときはなぜかふわふわした感じなんですよね)》。そして受賞には到りませんでしたがatsuchan69氏に関しては、次のような意見がありました。《レスをしている数は少ないですがエンターテナー的なレスを今一番文極でうまくなさるのはこの方だろうな、という印象です。「感想」ってもちろん作者に自分が作品を読んでどう感じたのかを伝えるものだと思うのですが、それ以上に、その「感想」を読んだ第三者に与える影響を考えながら書ける人だと思います。
ただ、削除報告のトピックにも一度報告しましたが、個人を揶揄するようなレスもたまになさるので、そこをどうとらえるか、という感じもします》。また受賞には到りませんでしたが鷹枕可氏に関しては、次のような意見がありました。《レスも独自の世界観を放出している熱量のあるものである。それぞれの作品へと向けられていく眼差しが作品世界との差異を生み出していて、抜群に面白かった》。
 
(2に続きます。)

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