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アルフ・O - 2018年分

選出作品 (投稿日時順 / 全13作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


The Wagtail Calls

  アルフ・O

 
 
(The mourning bird,)
(The wagtail calls)
(Wagtail/Mourning Dove/Turtledove)
(and more,)

黒い地平を電子音に追われて疾る
歪む音に、上から下から
1×1の縦横線と無色透明の夢
質量を持たない夢
質量を持たない羽根
三叉路の交点で繋がれた身体は
そのまま3つの無感情に分割される、
「間に合わないね、あたしら、
「傷口だ、
「魔女狩りそのもの。
「自決するにも向かない得物しかないや、
「壁を越えましょう、さぁ、
「ひかりふるまで、
「あとどれくらい動けるの、
「深く呼吸を、潜らせて。

それは、治りかけた
瘡蓋を引っ掻かれる感覚に似て
「洒落にならないからやめてね、
「あたし、してないから。
「割れた胸を晒すに値することかしらね、
「それでも、帰り路だけ明るいの、
何年経ってまた、
 亡骸を回収するために
  甘い針に刺されたとしても、
「声なら自分で抑えられる、
 構わないで。

「でもただ冷たいだけ、
「意趣返しには丁度いい夜じゃないかな。
「ねぇ、お供は要らない?

雛もランタンも自分で引き離したから
あの扉は開かないし
『ベアトリーチェも、もう二度と起きない。
何処かであたしたちの知らない
猫が、この蛇に睨まれるまで
「治癒魔法だけではままならないものね、
「それだけじゃないもん、
海のような闇のような
降り立つ術も見当たらないまま
時の隙間を歩く
「あの曲に、“未来”とか“永遠”なんて名前を
 誰がつけたっていうのさ、

(Missing,)

形を保つことがかなわない
霧の中では、
嘘だけが対価になると説かれて
「泣き虫をよくそこまで隠せたものね、
「他に方法を知らないから。
「『冗談じゃないわ。ただの嘘よ』、
いうなればハサミの刃の片割れだと思う
睡りを促すように右手を翳し
空中庭園の外に追われそのまま
蹴り倒したキャンバスの中へ幾重にも印を刻む、刻む、
「……これで、血を失わなくて済むならば、

「夜啼く鳥は、
 実在しない筈だった白い花の代わりに
 湖に次々に沈んでゆく、」
(はりつめる、
 いつからか覚醒するたびに
 頭上を1発ずつ、号砲の
 音のみが掠める理由を知るために。
 抉りだされた感情の糸を
 眼を閉じて、
(付け焼き刃の堕落論を皮膚に携えて
 傾ぎ始めた螺旋階段を這うように昇り続ける。
 武装は解かないで、お願い、

無限に殖えつづける季節にそれはよく映えて、

「Kill not the goose that lays the golden eggs,
「……要するに、
 この徒花たちは叛逆の証なのね、
(臆病な、魔法使いさん、トカゲさん。
「いつからそんな、悲しい夢を見続けているの、
「畏れるかのように、耳の輪郭をなぞられ、
 少しだけスパークして暴かれて終わる。
「もし、あたしが赦さなかったら、
 どこへ行くつもりだったの。
「受け取れないのならそれは無に等しい。

「―――次のクリスマスまで待ってて。
 灰で飾られた翼をばたつかせて
 重力を抱きしめながら、今度はあたしが
 迎えに行くから、
 シャーロット、
 
 


Bijou in a beehive

  アルフ・O

 
片眼鏡の貴女が云う
「深呼吸するには
 少しも向かない街だね、
アッシュグレイの髪を
機械のように掻き上げながら
テレパシーの混線する音が
方向感覚を今も狂わせている
やや間をおいて首肯する、
そして問い返す
「私は良いサンプルになり得たのかしら
Yes/Noで答えられる問いであれば
貴女にはより好まれることを知っていたが
返ってきたのは曖昧な微笑と
困ったような仕草だけだった

(「克服あれ、と
 叫ぶ聲を聞く
「ヤー。必ず、


中枢に届かないと知ってなお
細胞は平常通り分化して
フラスコ代わりの穴を埋めていく
左眼窩を犯されてから
一夜明けたけれど
予告どおりの惨状を
直視できるくらいには
感覚を失っているらしい
閉ざそう
ハツカネズミの本能で
足跡から根ひとつも遺せないで
群がるしかないんだって
「でも匂う闇を〓ぎ留めるに充たないよね、

(眠り方を忘れた時はいつも
  貴女は飽きるほど
   この頬を撫ぜてゆくから
  それに甘えてしまう、
心臓に繋がる鎖は
いずれ幾重にも編みこまれ
手首から離れなくなる


ゆるさない、
  」

(十字路に無数のクローンが詰め込まれ、
(疑心暗鬼の挙句、コキュートス行きの
 片道切符ツアーと
 ユーズレスペイン、
(脚はもう硬化しかけていて
 鍵を呑み込ませる喉
 目減りする復元力
 頬に血の気が戻り
 掴まった壁を壊す
 砂嵐に蟲が暴れ
 とうに摩耗した感情をカップリングして
 呼吸する度
  黒と白が踏み砕かれて循環
   針状結晶も摩擦しながら循環
 サーキュレイト
 そう サーキュレイト

 %^}
∽ 〜

(鎖を、ひっぱる、
 見開いた眼に、よく似たお互いをいっぱい映して。

これから今のままじゃ薄着過ぎるからと
徐ろに手に取ったモッズコートが
貴女のキャラをもってしてもあまりに厳つく
袖が余っていて
「逆に、少し近づきやすくならない?
滅多に見せない困り眉で
循環から鮮やかに掬い上げられる、意識
あぁもしも、私がその臍になりたいなんて
燻んで捻れきった願いが叶うならば、
「──いいんじゃない、一着くらいなら。
同時に振るいつく、
弾ける、クロエの香り、

(』》

  “【

 「ねぇ。
  闇って決めつけちゃえば、楽だと思わない?
 「あたしの汚染、消しに来てよ。
  今度は消波ブロックの先端で待ってるから、

$

ゆるさない、

(ゆるさない。「
  )ゆるさない、赦すものか
』 ゆ【るさ、】ない
ゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさない克服あれゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさない必ずゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさない償いなさいと彼女は云ったゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさない細い指とアップライトベースの嬌声ゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないFC世界の魔女を刺すことができないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさない そして このなかの かたくあつくたぎるもの ゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないどぼぢでごんなごどずるのゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさない首吊りの庭ゆるさないゆるさないゆるさないヤーファーターゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさない

(神様、知ってる?
 今、ようやくこの手の中にいるんだよ、

[◎
〓 @

(終末時計が鳴り
 克服あれと叫ぶ聲がする
((ヤー、
 
 
 
 
*Partially inspired by “EUREN SPIEGEL” , Tow Ubukata
 


Fixing you, messing me(Wilder than heaven)

  アルフ・O

 
 
 
掴めば壊れてしまう程の
細い手首
耳鳴りにもう飽きてしまった
不感症に
つける薬はないと吐き捨てる
灯りを消してみる夢と
消さずに見る夢
「まだだめよ、って
 声が連なって聴こえる」
彩度まで揺らぎ始める
平行線の上
何をすれば喜んでくれるの、

「キーワードは?
「風紀委員とかドレッサーとか、
 うーん、それくらい、
「まだあるでしょ、リンゴとか
 カボチャとかラズベリーとか。
「あと2人無視しないでね。
「逃げ回ってるだけの人に用は無いよ、
「孵化できないことにも気づかないでいる、

(懺悔は砂時計の後に。

(眠りに就くアメジスト、かしら、
溢れる淀みの中で
彼女たちの影だけが芽吹くのが解る
(浮腫む花、
 フィルムにも映されずに唄う、
(骨になっても介錯してくれるのね、
「貴女のいる地獄に
 この手は届きそうにない、
 何度繰り返したって、
そう呟く背に
含み笑いが応えた気がして
振り向くけれどその合間に
理は(貴女に)
(もしくはあたしに)
都合よく収斂され
変性されて
綻びは書き換えられてしまった
(噛み砕かれ、
残っているのはその
耳飾りだけ、

(歯車の軋みに気づかないふりをしてる、
(貴方だけね、剣を突き立ててくれたのは
(迷わないただ一つの方法は、迷い続けること、
(埒あかないね。
(あたしにその勇気がないから、

「天気予報は外れ、
「切れ端の散文が夕闇に溶けてく。
「もう誰にも読まれない、
「彼女の言うことが本当なら、
「遠くない将来、
 あたしたちもそこに回収される、
「壁の外側から
 干渉の外側から
 また聴こえた、」
(そして“もう大丈夫”と
 彼女たちは
 闇を裂き天を射抜く)
湖を揺らす音が
解いた髪とリボンを伝って
肌を断ち切るように
並べたひとりがけの椅子が
朽ちてゆくのを拒むように
 
 
 
*These words are dedicated to H.A., K.S. and...

(ねぇこの但し書き、必要?まぁいっか。)
(ずいぶん野蛮で、身勝手な楽園ですこと、)
(頼んでもいない時に限って、空は美しくなるよね。
 いっそ、いっそのこと、
 塵も残さないほど葬って欲しいのに、)
 
 

 


Flatline

  アルフ・O

 
 

(The void,

溢れない、
死なない、
そして誰からも呪われないし
蔑まれない。
彼らの捌け口になる予測を
散大した瞳で見据え返す。
「分かりやすいって?
「そうかもね。でも触らないで、
「エゴで産まれるならせめて
 飾りつけくらいちゃんとしてよね、
「中指、第二関節で刎ねとくから。

shiver,)

飽きさせない保証があるなら
影共と、森に住んでも悪くないかな、
なんて。
星みたいな髪色の彼女が
たん、たたん、たたん、と
踊るから
「だってあたしは、
 喋れば喋るほど退屈するんだもの。

gravel,)

さよなら世界、と
もがく羊に吐き棄てる
もしくは、吐き棄てられる、

(placebo,

バタークラッカーの枚数が
際限なく増えていって、
傷口を圧迫し
「結局出来上がったのが
 その形而上(ゴミ)の山。
善人凡人遍く意識を押しつぶすつもりで
Alligator installationと名付けたそれを
余さず五月雨に溶かした。

(Dear my GREAT dictator,

「ザマァないわね。
「褒めないでほしい、
 これからのあたしを、
「その名前は捨てて。
「いびつに編み込む毛先に魔法を施す、
「触れるくらいが好きなんだよね、
 噛むんじゃなくて。
「輪郭なぞるだけで満足すればいいわ。
「意図の薄れた泉に沈まないように、
「声を、出せないでいる。
 冬が終わる頃から、
「chain,
「散乱する死体の怯えた目を伏せる順序は、
「気にする価値もない。
 だってあたしたちには
 結局害しか及ぼさなかったし。
「暴動だって胸張って言える?
「chain,
「期限切れの呪文を何度繰り返せば気がすむの、
「逆立てた棘を燃やすのに必要な、
 その捻れきった意識を、こっちに寄越しな。
「空想と寝室の堂々巡り、
「自家中毒だから笑ってくれていいよ。
「宿主に振り回されて、
 もう、あたしたちは永久に
 静脈で幾度もすれ違い続け二度と
 結合しない
 
 
tacet.
 
 


Laid back ALF-O

  アルフ・O

 
 明日が今日よりいい日でありますように
 なんて祈る事しか出来ないけれどさ
  ───TRICERATOPS / GOING TO THE MOON


# b

フレッシュを入れ過ぎた
コーヒーが冷めるのを待つ
風のとても強い春の午后
「遠回りどころか
 到達もしないんじゃない?
ハニートーストが品切れになってしまって、
仕方なく時間外手当の使い道を
ガソリン代とかそれ以外で考えることにする
「体のいい逃げ口上ね、
視界をチラチラするのは
切りそびれた前髪だけじゃないんだろう
と、カフェインが効かない
(都合よくそう言い聞かせている)
身体に囁く。
やせ我慢にまた蜂蜜入りの体液を混ぜ込んで
3人掛けソファーに沈み微睡む夢を見る
「ギチギチするのはそれも貴女の
 深層心理とやらの反映?くすくす。
日向が少しも暖かくならない庭で、
どこまで肋骨を切り崩せばいいのかと
誰にともなく問う、
「肩身狭いね。自業自得だけど。
「水も食糧も嗜好品もカテゴライズが遅過ぎた。
「貴女はあたしの夜で、
 あたしの昼で、
 あたしの月。なの。
「見えない左眼、直接回線繋いじゃえば。
「断頭台の刃をそのまま得物に
 使った彼女を見習って。
「いや本人の意思じゃないでしょ。
「ほらまた老人共がアレルギー起こしてる。

いつだって、深い睡りに飛べるよ。
今でも。───多分。
「緑柱石に埋もれない限りは、ね。


# q

鍵穴を閉じる。
居着いた蟲が飛散しないように、
6帖の部屋を満たすソーダ色の香りは
貴女の細胞、身体一式に絶えず濾過され
上塗りされ
抗いようもなく、
気怠く対流している。
「あたしを呼んだのは、そのため?
「1人だと間に合わないもの、解るでしょ?
マーブル化する夢を見る、
貴女の声を聴くと、いつも。
「貴女がアポロンで、あたしがクロノス。
「微妙に対になってないんですケド、
「だって語感で選んだから。
対流しつづけ、幾千度目かの飽和を迎える
合図の紫の雨が降り
あたしたちは、一様におしゃべりをやめ
決してマーブルにはなれないと知りながら
互いに漂白を始める
「この方法しかないのかしらね。
「それ、本当にそう思ってる?
───俯く。「いじわる、

(締め出せばいい。
 なればこそ、彼等のコントロール下から、
 僅かにはみ出していればそれでいい、
叫ぶけれど貴女は応えない。
解ってる。
解ってる───。


# o


(空白)


(空白)

(空白)
 
 
   


crush the sky, pop'n'sky

  アルフ・O

 
 
黙ってないで
そらをうつ
闘わないで
そらをうつ
どうして貴様等は、足を引っ張るのばかり
得意になってしまったんだろうと、
鏡の外で真顔になる
笛吹き姉妹が見下ろしてる
「もう熟成のしようがないんだって、
crush,
ガス欠になるまで踊り続ける
隙を見せたくないから
分配され損なったキャンディも今
天井に叩きつけられ
crush,
crush!
「ねーぇー。今話題の繊細チンピラ狩りにいこーよー。
「バスソルトと吸入器大量に買っちゃったしさー。いこーよぉー。
「だーめ。後先考えずに残骸ごと飲んじゃうでしょ貴女たち。
 下弦の月まで待ちなさい、良い子だから。
「けちぃ。
「いーもんいーもん。友達にわけちゃうから。
「わけちゃうから。
crush,
crush!
crush!!
「本当に嫌いになっちゃう前に。
 フランジャーオン、
「じゃけん喉潰れるまで叫ばせ続けましょうねー、
「神聖なる裁きの場でなーにやってんのかなー?
「徘徊するだけ。汚泥を擦りつけてそれ以外何も残さない。そんな生き物。貧乏神。
 はい、心当たりのある奴は挙手、
「コンプ噛ませて、
「プロテインか硫酸ぶっかけるよ。
そして沈む
チョコレートの海に。
貴様等から意味を引き剥がして
泣き喚いて土に(もといソースコードに)
還るまで煽るのをやめない。
cruuuuuuuuuuuuuuuuuuush
cruuuuuuuuuuuuuuush
cruuuuuuuuuuush
「ステープルとピンネイラならどっちがいいかにゃー?
「そらから血を流すのはどっちが綺麗かってはなし、
笛吹き姉妹が眼を逸らす
嘲りを残しながら
「だって時間は有限だもんねー。
「ねー。


Ooze

  アルフ・O

 
(Take That, You Fiend.)


# hair


抱き寄せる、肩と
少なめのトリートメント
意に反して移ろう眼を隠す為の
ビジネスホテルのツイン、午前0時
意識を取り戻せばまた
ハニーマスタード入りのアボカドサンドを
ぱくついているのだろう
「日常だなんて大見得切っちゃってまあ。
幾何学のテンプレートに
賢くおさまった屋根は、あたしにとっては蜘蛛の糸
エセポケットコイルのソファに飛びこむ
彼女に勧められた練り香水と
ハネムーン土産のチョコレートを長期記憶に追いやりながら
「急に貴女がついてきたんだもの、
焼きすぎたスコーンにリップティントをのせてみる。
「ストロボライトみたい。
「荊の刺青は赤い糸の如く時空を超えて。
「経血に混ざったイエローダイヤモンドを舐め回している。
「悪趣味、
「他人のこと言えた義理かしらね。
「ほら、音に逃げるな。
──脱色、
2度と消さない為の。


# mouth


童貞と口走ったら
それは比喩?と混ぜかえされて
お揃いの中指と薬指にマスターボリュームを操られる
メタルフレームとセルロイドの眼鏡が
険悪そうに摩擦音を紡いでいる
「綺麗な舌ね、
「おかげさまで。
貴女はスキニージーンズを脱がない。
瘡蓋を敷き詰めたような
心に直接
この持て余した犬歯を突き立てられるのなら、
「俄雨を少しだけ細胞が受け入れるから。
「そのあとは轡を嵌めて。
 軽蔑したままで視ていられるように、


# legs


ハッピーバースデー、の葉月。
梔子を咥えて待ってたのに融けてしまった
明るい水音を立てて歩く切り傷だらけのオープントゥ
「傘は全部神様によこどりされたよ、
「双眼鏡と一緒に。
「汚い涙なんて矛盾を抱え込んだままで。
定点観測された噴水の裏にたどりつく
そして季節外れのオーナメントをひとつ
盗み出し
涼風を掬い上げて貴女は呟く
「大丈夫だよ。
 いつまで経っても言いたいことなんか
 これっぽっちもないんだから、


# membrane


「回り続けている、サウンドトラック。
泳ぐ
回帰する
強い相関を示して。
迎合しない暗がりで。
「遠心分離する、デジタルディレイ。
見守っていて、黒猫。
吐き出す溶解したモニュメントに
エーテルの底を映し出す
映し出すの、
「それは目隠しされた貴女の
 見る夢に干渉するべく、
皮肉と復讐に塗れたままの
リターン。


# throat


.


Peeping muzzle

  アルフ・O

 
 
- Sep. 16
銘柄不明のブランデーで
爪先まで記憶を殺し切った翌朝にも
貴女は体液を分けてくれという
ここ数日 決まった時刻 決まった部屋で
「その沸きあがった感情が欲しいの、
自身は其処彼処から
本来が誰のものともつかない念を漂わせて
硝煙に織り込み
繭のように纏うから
ひとときだって正気でいたことはない
あたしは泥同然となった身体を這わせ
蜜に導かれるかの如く首を絞めにいく
アルコールをたくさん染み込ませられるから
天使を独り占めした優越感に
黙りこくってお互い浸っている
唾液はおよそ秩序とは程遠い成分となり
ケミカルな色と香りを撒き散らして
ふたつのピアスの上で冷たい音を立てて
混ざった
窓の外から行進曲めいた
甲高い、スタッカートの効いた声が


“Rrrrattatataaarrrattatataata!”


- Oct. 2
幾ら勧めても
貴女はそのアンティークソファ以外は
受け付けないという
眠れないのだと
あたしはその肘掛の下で
ガスマスクをようやく外し
幸いにもまだ出番のないマシンガンを下ろし
うずくまる
湿度の低い沈黙が流れ
貴女はいつの間にかヌワラエリアの紅茶を
2人分注ぎ
肘掛にもたれて微睡んでいる

(この、双子星を、
「綺麗に断罪してくれるなら、


“Rrrrattatataaarrrattatataata!”


- Nov. 11
「投光器が根元から折れてる。
 もとより主戦場だったから生存するはずもなかったけど。
「弾薬の匂いを落とそうとするとさ、
 不意に海へ行きたくなるよね。
「“Flicker,” “I'm here,”
「……下手なんだからじっとしてなよ。
「結局最後までそんな評価なのね、
「どうせ消えるなら疎まれる幻覚も味方にして、
 離岸流で行方不明になってしまえばいいよ。
「ええ。信じて、信じないで、
 嘘も本当も半分ずつ溶かしてしまえばいい。

((そして、音も無く、))

(パワーコードに乗っかって酩酊
(ゴミみたいな流れ作業をこなせずに
(またダストシュートへ放り込む
『思春期同然の反駁ね、
『必要悪だって、強がってよ。
『スカートの七つ道具でさえもう用済み。
『今はバランスチェアにひっついてるけど、
(アンチドート、と唱えてみる
(貴女が音もなく倒れる
(それも両腕を広げたまま
(ひしゃげて飛び散って
───それでまだ私刑だって喚いてるわけ、
『いつも言ってんじゃん。
 餌をやる道理はないって、
『あーあ、また醒めてく。
『しょうがないよ、これはあたし達ふたりのために
 犠牲になってもらうための、リフレインだから。
 
 
 
 
 


Yellow?

  アルフ・O

 
 
美学を持ち寄っては時間が足りずに
瞼の下から腐って溶ける
しつこいサステインを延髄に磔て
操られたように関節を軋ませる
(ごめんね、
 種も何も出ないから寧ろ安心していいよ
互いに交わす斧は
首の皮すらまともに切り離し損ねて
意識ごと醜く脆く
折れた

逆算する感情はいつも
媚薬で埋め尽くされ
不純物を吐き出し漸く欠陥品と扱われる
挙句
悟性悟性と怒鳴り立てられ
(iconoclasm,
これは効き目のない呪文と化した
しまいには教祖まで自らを
偽物と断罪する始末

「死んだ方がいいー?
「この視線がお好みなら、幾らでも。
 もう独占はできなくなるし。
「海月を沈めた水槽を磨いて呑み干す、
「まだこんなに暑いのに何処で捕まえたの、
「生まれ変わったら絶対
 グリーンのアイシャドウが似合う人になりたい、
「拾い物だって
 消化液に浸ければ別物なのにね。
「狡賢さの集中力ロール用意、
「意外と運任せの道のりじゃないかもよ、
 演繹してこれは必然。

自分ですら
意味の読み取れない微かな笑みが漏れ落ち、

「咀嚼しないの、わざと、
「そのスイッチを押すことを、
 もう何年拒否しているの、
「……あ、もちろんミスリードだよ。
価値をよこせと喚き散らす
それはあたしらも同じか、と
悟ったところ
壊さないで
壊さないで、
その眼をそのまま
塗装の剥がれたジャズマスターの傍に棄てて
そのままそして
(意地汚くも夢を見させてもらった)と、
一方的に別れを告げる。
さぁ
その口を塞げ

行け 遣れ
血まみれで復讐を遂げろ
 
 
 
 
 


Violet pumps, stompin' the floor

  アルフ・O




(レム睡眠の内わけ、
渡り鳥とレンズフレア、
音をたてて、日向の風が凍る。
長すぎるマフラーに
貴女の声が滲んでは消え、
それに合わせて、ただ、
いつか覚えた
何処にもないことばをつぶやく
そんな、まひるのそら。

……そしてそこから12時間かけて
奈落を突き破って
ステージに叩き落とされる夢。
“Anonymous Prohibited,”
“With Blasphemy,”
「あたしたちに、そんな結論は要らない。
「認めて“あげる”側だった人間に
 そっぽ向かれる気分はどう?
──野良犬め。
 ええ、触れてみなさい、
  その指から解体してあげる。
「レーダーを探したって無駄よ。
「勝手に毒を食らって、
 勝手に絶命しては如何かと、
恩を売るなら相手が違うよ、
瓶詰のまま火口へ棄てて。
っと、いけない。
唆されるところだったわ、

煉獄からまた、暴力的な音量での通信。

(手を振る、
(其処へ落とす腐りきったリンゴ、
(今更驚くことかしらね。
“(neither) Gifted,”
「貴女の知る限りで良いから、
 魔法陣を埋めて。灰になるのを遅らせて、
(平等?
「知ったふうな口きくつもりなら、
 形にしてよ、
 あるいは無い物ねだりの片棒担ぐの?
(どれだけ抵抗を続けてきたのだろう。
(眠れる森。
 朽ちるそばから星の核まで根を延ばす、
(どこかで捨てなくて良いものを
 捨てたのは他ならぬ貴様等、
「補償する?
「なら、対価をよこしなさい。
「それがあたしの覚えている
 唯一の、ルールらしいルール。
──ねぇ、その酸素はいつ切れるの?

(……ド畜生、
(LEDで失明するくらいなら
(流砂に眼球ごとくれてやる。
忘れかけていた自分の未熟なる絶叫を誘発され、
思わず苦笑する。
「だってね、のーみそが必死に
 ダメージ拡散しようとしてんの、
 お互い解るんだもん。
「冠さえ被ってりゃ愛されるのになー。
(──切断。)
「真正面から熱を上げられる、
「それはあたしにだけ使える魔法。
(思い上がりだ、
「呑み下すカフェインの塊、
 血に混じって潮風に消えた。
「特定不能の合図。
「もう探さないでよ、むしろ。
(フォント次第で
 この声の印象も変えてしまえるのに、
「まだ手は繋がってる、って解釈しても?
(たぶん許されてる。
「……プレッシャー半端ないね、
「掻き消して、
(揃って冬眠するために。

(ジャンクを掴まされて喘ぐ冬に
 ハツカネズミは嘆く
 もはや鉄の棺を待つしかない我が身を、
「夢診断?
「そんな大層なものじゃないよ。
(そう、だから貴女でもいい。
 汚れていても血が欲しい、
「困ったなぁ。善悪の判断も人任せなのに、
“broken chord,”
「集中する神経に首輪を掛けて、
 奪い取って育ててよ。それが本望。
(際限なく吐きたくなるほどに)
「灯芯がもうすぐ絶えてしまうから、
(それであたしにはもう、
 無責任な声しか聞こえないの。
(“誰もが発言権求め 人はみな平等
 怠惰もいわく平等”──ふふ、
 その通りね、

「ユニコーンは絶対にあたしたちを襲わない。
 だって違う生き物だから。
「だから安心して股から血を流す、
“Peek-A-Boo,”
「イキってる割に“ソコ”はお粗末なんだねぇ、教祖様?くすくす。
「ほらほら、いつもの調子で唄ってみせてよ。
 声がよく通るスイッチ押したげるからさぁ、
──焼け付いた罪状が影を伝って追いかけてくる、
子宮に繋がる地下水脈を
蛍光タンパク質で染め尽くし、
呪いを薄めようと未だ足掻き続ける。
So, I'm just breeding you, murmuring
“You and me. both evil but that's all”
“We have the enemies, and also you have enemies”
「だからそいつらをぶちのめしたら、
  舞い戻ってあげるわ、
   本当の色と、 一緒に。

 
  
 
*Partially quoted from...
“AMATERRAS”(KARAKURI)
“The Crow”(a crowd of rebellion)
 
 
 
 
 
 


Evil Holy Raspberry

  アルフ・O




「今しあわせ?
「思考力失うほどには。
「浮腫む花の持つ意味も変わってしまうね、
「気にしてないよ。全部裏表だから、
「意味不明なんて知るもんか。
「沈む船からローレライ達を引きずり出して、
「笑ってよ、今くらい、
「正義の味方、残機99。もはや暴力。
「思想なんて聞く耳持たないし、
「だから認めちゃって。
  逃げる勇気もないんだって、
「予言者は錯覚を愛してやまない。
「それが彼らの言う可能性、か。
 やっぱり時間の無駄だった、
「あははっ、それじゃ出撃しよっか。
 冷却機関だけフル稼働させて、
 お揃いの刺青を対になる胸に施して、
「それが聖者の証だって嘯くのね。
「汚したくて汚そうとして未遂に終わる、
「その事実だけ槍玉に挙げられるのも
 よくあることで。
「トレブルの切られたこの声ではどうしても、
 伝えることができないのに、
 

 


2:12 AM

  アルフ・O

 
 
「飛ぶ夢をよく見るの、
「知ってる。落ちてくる貴女を
 受け止めるのは、いつもあたしだから。
 
 


Clockwork screaming kiss her kiss her

  アルフ・O

 
 
 
鳴る、
軋む、
爆ぜる。
私の中の、歯車が。
およそ誂えたとは思えない速さで
チクタクチクタクと
叫んでいる。
呼んでいる。
まだちいさな双子のように。
変わり身の、
正反対の、でも
揃わなければ朽ちてしまう
片方を呼んでいる。
くいちがい
くいちがわせ
遠ざけて
外して
それでもなお
私の壁を貫き祈るように
呼んでいる。
いつもよりも、遥かに強く圧縮する
内燃機関、
(あるいはルミネッセンス、のような)
重力を打ち消すのと同期して
私の隅々から
歯車が爆ぜる。
積み上げきった嘘とともに。

(プリンセス……否、私の愛しいキジバト、
 間に合って。どうか、どうか、
 愛と国とともに消えてしまわないで、
 どうか、どうか)

次々に爆ぜる
爆ぜる
届いて、
手を引かれて
落下する壁をかいくぐり
歯車はそれでも回り続ける
呼んでいる
叫んでいる
届いて、
(与えられた使命など、)
届いて!
白くなれ
白くなれ
離さないで、
白くなれ
白くなれ、
白くなれ!
壁を超えて
今度は貴女を
地に降りて迎えるために
──いつか、
重力に逆らわずとも
白昼の下で
並んで立っていられるように、

 
 
 
(Dedicated to Ange le Carre)
 
 
 
 

文学極道

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