文学極道 blog

文学極道の発起人・スタッフによるブログ

2009年5月選考雑感

2009-06-25 (木) 21:26 by a-hirakawa

今月も勉強になりました。
ありがとうございました。

今月は、

3501 : 地蜘蛛  りす ('09/05/05 01:01:50)

3528 : ピーマンの午睡  りす ('09/05/18 01:00:21)

3504 : 道のはた拾遺(1.2.3)  鈴屋 ('09/05/05 20:18:16 *1)

3527 : 道のはた拾遺 4.  鈴屋 ('09/05/18 00:32:03)

3554 : Euglena  ミネタネミ ('09/05/30 15:49:56)

3532 : オレンジ  ゆえづ ('09/05/19 19:51:19)

3494 : 思い出  ミドリ ('09/05/02 11:09:30)

3541 : ポップソング  泉ムジ ('09/05/25 00:43:22)

以上、8作品が月間優良作品に選出されました。

3501 : 地蜘蛛  りす ('09/05/05 01:01:50)
 何が姿勢を支えて
 人は倒れないで
 何かを待てるのだろう
このさりげなさの重心の妙が、書き手であることを出したことによる自閉的にすぎる弊害を回避させており、最後に肩の力を抜けさせる部位が、また、集中の時間に伴い見事に働いている、という意見がありました。詩作にかかわるテキストは幾つかあるけれども、これはそうした作品にありがちなアカデミックな堅苦しさや押し付けがましい気負いのようなものが無い、先ずはそこが佳かった、重いテーマを軽く読ませる、その力量においては日本有数の書き手とも思わせられた、また、そうしたことをスルーして読んでも、秀逸な作品としての深みがある、という意見もありました。丁寧な案内は無いのだけれども、読み手の好奇心を刺激するように書かれている、その工夫にも惹かれた、よくよく練られた素朴な文体と、疑問と得心の絡み合った奥行きと、予期せず着地するオチとが、うまい具合に作用して、読んで愉しい、といった読後感を成功に手渡している、という意見もありました。

3528 : ピーマンの午睡  りす ('09/05/18 01:00:21)
ピーマンを元ネタに、よくぞここまで、と思わさせられたが、野菜詩コンテストにおいて栄冠を勝ち取るには、巧く隠し過ぎている暗喩や、文学的に長け過ぎた撹拌もあるかもしれない、という意見がありました。作者の新作を待ち続けることが生きる理由に、うっかりなってしまう人がいるかもしれないな、と思ってしまうような、そんな愉しさと哀しみと美と実存とが、ひっそりと咲いている、という意見もありました。「横書き」ならでは、の佳さも見逃せない、という意見や、鮮度で勝負できなくなってからも良質さを見つけ出している作者がこれからどこに行くのか楽しみだ、という意見もありました。

3504 : 道のはた拾遺(1.2.3)  鈴屋 ('09/05/05 20:18:16 *1)
2だけでは弱かったことを、1、3でここまで確固に出来る筆圧に圧倒された、行間ではない捉えていく視界と内界の必然性はえぐられ皮膚という固有の物象を溶かし出していき、それは確かだ、という意見がありました。写実と印象に攪拌されていく情動と現象が実存を技法として貫いていて見事、と感嘆の息が漏れた、という意見もありました。惹かれる作品だが、古いものを新たに並べ替えただけのような、いわゆる新味には乏しいかもしれない感触もある(もちろん、何を以て新しい/古いとするかは個人差に寄るところかもしれないけれども)、少し酔い過ぎな印象が逆に醒めてしまう、という意見もありました。筆はもう充分に巧い、よく練られてもいる、凡作の少ない、力のある作者だ、これからも楽しみ、という声もありました。

3527 : 道のはた拾遺 4.  鈴屋 ('09/05/18 00:32:03)
今回の作品が興味深いのは、女と男で終わらないところだ、世間を出してきた点にある、女の男の、これらの凌駕しつつある、持っていく綴りが大いなる濁点を残すと共に、三つの関係が収束されることなくまとまる、えぐれた欠損を見せつける廃退の勃長が印象的、という意見がありました。荒んだ美を描くには長けているけれども、あまりにも流暢に過ぎて、迷いを起こす、実存的に薄ら暗い作品には、僅かな破綻が却って光となり陰部全体を際立たせるのではないか、という意見もありました。内実はあるけれどもコントロールが効き過ぎている、という意見もありました。

3554 : Euglena  ミネタネミ ('09/05/30 15:49:56)
はっきりと残らない空虚さがリズムと口語だけ、行変えでつながる意識に立ち上る、あり方が上手い状態にあり、空白に詰められるものを引き出す郭線が満ちる、という意見がありました。初読では、良くも悪くも「現代詩」の匂いがして、そこでかなりの読み手を失いかねない危惧があった(再読を重ねると、さして気にはならなくなるけれども)、イメージの錯綜は、拡散してはいるが、ありがちな手に負えない似非混沌迄には堕ちておらず、豊穣な印象すら漂う、という意見もありました。なるほどヘタクソではない、ある程度の、または、かなりの勉強はしている、工夫の痕跡も随所にある、しかしながら読み手に渡されるものは、けして多くはないかもしれない、それはつまり、いくらカラオケが巧く歌えても素晴らしい楽曲が作れるわけではない、という至極まっとうな道理による、という意見もありました。

3532 : オレンジ  ゆえづ ('09/05/19 19:51:19)
初読は相変わらずな自傷的な言語の装飾に惑わされたが、何度も読む内に、つながりの見事に計算さへと目が向き、作者が感情のままに書くだけでなく、射精を待ち、構成を持てたことへの驚愕を抱いた、という意見がありました。直喩と暗喩を殺傷していく劣情が強烈で、はじまってしまったことへの嫌悪と悲しみの中での健常を見事に突いている、ただし、時間の使い方が下手、オレンジ、ともすれば夕陽と月が重なりそうな、朝まで行かなくともこの作品は完成しそうな、一つの時間で貫けそうな、という意見もありました。 よくよく潜らなくても詩情があり、それがまた結構に染みるけれども、やや冗長な記述や甘い構成が、読み手に丹念に咀嚼されることを拒んでいるパラドックス、失敗ではないにせよ、成功とは言いにくい、しかし、それでもなお「詩」になっている作者の潜在的力量には感じ入らざるを得ない、という意見もありました。

3494 : 思い出  ミドリ ('09/05/02 11:09:30)
詩の様式みたいなもので、やっていないことをやるパロディ的部分は買ってもよい、文章のまとまりも、そのベクトルでは秀でている、という意見がありました。スムーズに読める佳作、顔文字は、好き嫌いに個人差がかなりあるかもしれない、顔文字を好んで使用する世代と頻繁にメールしているかといったパーソナルな環境によって異なるのかもしれない、ロー・ティーンの自意識の発露としての顔文字は、なんだか憎めない感があり、上手い使用法というか、やったもん勝ちにしているのかもしれない、という意見もありました。思い出、ということで、断片的であり断層的でもあり、印象的な科白のみが表出しているかのようだ、出会いの場所は現在よりも少なかったはず、プールに泳ぐ為だけに行っていたわけではないにせよ、甘く苦い追憶を召喚するには、やや足りない感がある、という意見もありました。

3541 : ポップソング  泉ムジ ('09/05/25 00:43:22)
硬質な部位を故意に排除した作者のラブソング、朝の食卓に焦点を絞りつつ、良い意味で無難にまとめた印象がある、という意見ありました。過去形で書かれていることによって、その不在の、せつなさが漂う小品、トイレからキッチンへ、説明の過ぎない筆には相変わらず好感が浮かぶ、料理としてのカロリーは高く、そして既に冷えているけれども、おいしい、という意見もありました。最近の作者は調子が悪いように感じたが、この作品は、内実、技術、爽快に貫く空気への筆、どれもが一定のライン以上にあると確かに思えた、ただ、ここまで揃えるのは難しいはずなのにそこはあまり活きていないというか、そこが凄いことなのに、あっけらかんと、流れていて、少し損、に思えた、技術は凄いのに、という意見もありました。

さて、次点佳作作品について触れていこうと思います。

3508 : 看板のない女  はなび ('09/05/08 23:09:15)
キッチュでポップで中身ほぼ0な不思議な作品、選択する言葉に詩情は薄いのだけれども、大人のオンナの昭和的余裕と、奔放なようでいながら密やかな慎ましさがあり、それらをフランス語で書いたものを自動翻訳で邦訳したかのような独特の距離感が個人を掴んでいきそうだ、という意見がありました。舶来品を繋いだジャンクだとか、ガーリッシュなセンスだけで成立しているといえばそうだけれども、ちゃんと景色や心象も見える作品にはなっている、いずれにしても、小粋であり、目を引く、という意見もありました。作者は、カラッポ、だからスラスラと書ける、良い意味でホームランは打てない、が三振もしない、という意見もありました。最後の良さが作品を支えている、そこへと持って来るまでに、削いでも良いかもしれない、盛りだくさんさが最後の良質さを活かしきれていないように感じた、連作にしていって、最後を活かしても良かったかもしれない、という意見もありました。

3552 : 鉄塔に登る  右肩 ('09/05/30 09:12:40)
鉄塔から避雷針、ブラッドベリよろしく「血が熱い」、そうした若者らしい捨て身のポジティブさ、その無欲の表明には敬意を払いつつも、再読を重ねる度に薄くなっていく印象は否めない、という意見がありました。三連目からは、もっと跳べたように感じる、凡庸な流れになってしまうので惜しまれた、尺の短い作品でありながらも懐は相当にありそうな未完の小品かもしれない、という意見もありました。北園克衛の引用は、余計とまではいわないけれども、微妙、という意見もありました。悪くないのけれども、読めば読むほど作者ではなく、器用な作品に思えた、最後は不要に感じた、という意見もありました。

3551 : 粘土  田崎 ('09/05/29 22:41:45)
所謂「意味」を重視しない(軽視していない)テキストの言語態度は猜疑心の強い悪党には強烈にアピールする、実際に潜ろうとしても、斜線や薄膜が邪魔しているけれども、そこでの苛立ちと興味の配合は読み手を試しているような感触もある、意味を追いかけたり、各々に立ち上がるイメージから繋げようとして読むと、やくたいもない混沌が待っているのみで、そこで溺れるのも投げ棄てるのも許されているけれども、作品の肝は、想像力を酷使した後に始まるように感じる、という意見がありました。「わかる」ことは、詩にとって、手段であったり目的であったりする場合もあるけれども、作者にとっては埒外なのかもしれない、平易な「日本語」を使用しながら、ここまで書ける、言語の貧血だったり複雑骨折だったりするような、取り澄ました服を脱いだ言語の、または詩の、「症状」であり、その「状態」であるのかもしれない、初稿から次第に診断されていくのであろう段階を、読んでみたい(問題は、病状にあるのではないにせよ)という意見もありました。

3509 : 散文の雨(反転)  いかいか ('09/05/08 23:34:39)
即興に近いのかもしれない、点描的に配置された、過去に使役されない言葉に、開き直りの可能性すら感じた、さながら、適度に整った乱調と落丁であるが故の無いであろう筈のものを探そうとしてしまう魅力がある、という意見がありました。一見、読み手を選んでしまう作風だけれどもが、全編、女言葉で書かれていたなら、発表場所によっては、それなりに人気を得たかもしれない可能を感じた、という意見もありました。作者の近作の、余技のような軽い質量が個人的には愉しい、誤字や変換ミステイクが激減したのもまた、うれしい、という意見もありました。ジム・モリソンよりは、機嫌の悪いピート・シンフィールドが虚言症になったかのような、そんな往年の重く暗い時代と、禁止ワードの自己設定は感じるところがある、くれぐれもディシプリンの方向は目指さないでいただきたく望む、という意見もありました。
(ハツカネズミは故郷を思い出し、
    オレンジを切る手から逃げる)
この部位が特に印象的、作者の刺々しさからの寂しみを見せられているようで良かったのかもしれない、という意見もありました。

3555 : Le test de Rorschach  はなび ('09/05/30 23:17:38)
明と断定の不思議な提示の形式を発見することが出来た、という意見がありました。いろいろ考えるよりも、素っ気ないけれども光る、重苦しくなく浅くないセンスを重視したい、という意見もありました。それなりに書けていて、尚且つ、遊べる余地がかなり広い、斬新ではないにせよ、常に楽しませてくれる、という意見もありました。なんでこんな簡潔な珍しくもないあり方の作品がきっちりとした作者の空気を出していき、笑みを含んでしまう丸みを出せるのか不思議に思う、という意見もありました。これを他の誰が書いても、ただ文章で、ただ作品で終わると思うが、この作品はその後に香辛料がかけられている、それは作者から滲み出して乾燥したものにほかならない、筆致の少しの違いが非常に気になる作品、という意見もありました。

3512 : 現代詩  ぱぱぱ・ららら ('09/05/09 11:20:38)
地味だけれども、独特の質感はある、更にいろいろ欲しがるのは読み手としての悪い癖なのかもしれない、様々な意味で、惜しい、と感じる、という意見がありました。やはり「現代詩」というタイトルは、「構えて」しまいがち、解り易いとはいえない対比等の記述が、もっと他のやりようもあったようにも感じる(例えば不実と、ねっとりと絡むような)という意見もありました。爽やかで筆のあり方や作者の側面が撫でてくる、冠する中に小ささや個の大きさ、を切りつけていくありようが魅力的でもあったけれども、少しだけ物足りない面持ちもある、という意見もありました。1941年7月7日を調べたくなるだけでも成功なのでは、という意見もありました。

3497 : 飛田新地  ゆえづ ('09/05/04 02:29:23)
描き方の均されなさが相も変わらずめちゃくちゃで、それは凄いことだと思う、調子の一本化が最後の変化を少しは挙げている、という意見がありました。 今回は題材が表面だけになってしまっていて、それがどうもいただけない、という意見もありました。作者が、毎回、いかにもフィクション的舞台を選ぶのは何故なのだろうか、それが魅力なのかもしれないけれども、という意見もありました。作者の選び取る言葉は、いちいち卑俗で、まず、そこは佳いと思う、あまり技巧に長けているわけではないようだから、どうしても説明調子になってしまう、本作はそうした面が特に顕著かもしれない、ちょっと小綺麗にコントロールし過ぎた感もある、という意見もありました。演歌的な匂いすら滲む四連目などは、一息で読める凡庸さが、作品の深みを邪魔しているかのようだ、二、三、四連が無かったらもっと良くなったのではないか、という意見もありました。
>一枚の座布団だけが優しさで
惹かれるフレーズだ、 しかし作者の筆にしては他人行儀な印象が強い、という意見もありました。

3510 : 巨人  丸山雅史 ('09/05/09 00:25:32)
今までの作者の作品では一番良い、という意見がありました。最後は、どうにかならなかったのだろうか、三連のよさをもっと高める四連があるような気がする、逃げているような気がする、一連からの良さはホッとする、という意見もありました。

3496 : 永遠  丸山雅史 ('09/05/02 19:46:04 *5)
内容がベタな分、素直で、ぎこちなさと共に沿いたくなる引力ある実が光る、五連、もっと削いだ方が生きるように感じる、無言の有が映えそうだ、という意見がありました。三連を、もう少し見やすくしても打ち抜かれたかもしれない、 一連からの意味の通いが体臭にまみれた中での幻影が確かで、魅力ある作品だ、もう一歩のところまで来ているので非常に惜しいと感じる、という意見もありました。

3520 : (無題)  debaser ('09/05/13 20:42:32 *1)
絶頂の時にある言葉遊びの妙を読ませる先にあるもの、開かれた思考や体現がもう一歩欲しくも感じる、最後の断定が、どうも損だ、という意見がありました。 ポップな空気だけが白々と漂ってはいますが、口語体ポエムとしては失敗作にも思える、感情の吐露に比して、内実の空疎さは感じる、という意見もありました。「なげやり」な感は、少し気になる、過渡期なのか、「鴎」のようなものは、いくらでも書けるから二度と再び書かれないのかもしれない、けれどもニーズに、たまには応えていただけたらな、なんて科白が巷の酒席では百万回は交わされるに違いない、という意見もありました。レスレスは、面白かった、という意見もありました。

3490 : くらげ  なつめぐ ('09/05/01 07:28:19)
いつも誰だか解ってしまう書き方、それは良いことだと思う、二連目の説得と比喩のつながり、跳躍と口語、記号の使い方のあまり上手いとは言えない部分など、少し範疇に入っていて内側だけれども、その内側で放出する線は、それなりのものを持っている、という意見がありました。

3538 : ”クラッカー”  ミドリ ('09/05/23 11:06:05 *9)
文体の上手さは読みやすさに伴い、上質な欠損を張り上げているように感じる、入る先に逃げていく振り返らなさが不満を拡げる、という意見がありました。どこを見るか、だと思う、綴りとしては優良も優良の部位もある、しかし、空洞性が少し目立ちもする、メソッドの罠に喜びはまるか、そうでないかで違ってくる、という意見もありました。無駄に長く、作中キャラクターが浮きまくり、オチも弱い、飄々とした会話調の文体を頻繁に採用して、たとえ即興に近い印象のある作品でも、凡庸ではないセンスとコミカルな描写で読ませる数少ない書き手のはずなのに、これは合点がいかない、という意見もありました。

3505 : 西脇弓子  大女 ('09/05/06 00:48:55)
器用な作品だ、読み返すことはないかもしれないけれども、それなりの小作品であり、感動はないけれども、おおおんながHNなので活きている部分もある、という意見がありました。 喚起されるイメージは迷走もしくは埋没気味で、何かしらの片鱗は僅かに感じるけれども、もっと暴走した方が出鱈目であっても魅力的だったのかもしれない、賑やかな外観に比して、中身はスッカラカンに近いこのタイプの作品はインターネットに於いては食傷気味、いかに差別化を図るか、まずは、そこから、かもしれない、という意見もありました。

惜しくも選からは漏れましたが、その他、以下に挙げる作品が注目されていました。

3548 : ヒトの取引先  破片 ('09/05/28 01:35:01)
次点に推すのにほんの少しだけ足りない、作者の力みが取れてきている、この先がみたい、という意見がありました。句読点がだらしなく使われていて作品自体の繋ぎを損なっているけれども、一番、血肉を感じて空虚感や追いつかない自分の内実に向き合っている作品に感じた、ヒト、とか希薄な部位が書いてある薄さとの格闘を持ち上げていた、という意見もありました。足りないのでもなく過剰なのでもないのだけれども、スムーズさを欠いている感が否めない、様々な、わかりにくいイメージ、それらが孕んでいる景色や心情は辛うじて伝わる、追憶だとか、待っている(または待ってなどいない)ことだとか、そして、オンとオフのズレだとか、その他、どちらかといえば硬派な印象の強い筆で、ありがちな詩情を迂回して辿ろうとする事には好感が持てる、という意見もありました。まだまだジョイントやバランスに課題があるように感じる、オレオレ的なポジショニングから半歩下がって、向かうと、また違った閃きが生まれるのかもしれない、という意見もありました。

3535 : 川辺にて  Chiave ('09/05/20 17:54:14)
 ほんとうに理由もなく
などは必要ないように書いてあるような気がする、
 川は きれいに病んでいる
ここを、
 きれいに病んだ川が
と重ねるより、もう少し先の(川は肺血漿に浸される)など何か具合を重ねて引き出しても広がったかもしれない、もったいない、せっかくの描写を活かす方法がもっとあったように感じる、という意見がありました。丁寧なガイド、それ以上でも以下でもない、文学的な地力はあるようだけれども、軸足を置いているのが教師的な説明の地点にあるように感じる、という意見もありました。ヘタではないけれども、作品自体に若さ(瑞々しさ)がなく、華がなく、冒険もなく、センスもなく、謎もなく、さりとて老獪でもない、いわば習作の域にあるように感じた、こうした平坦なスタイルを惜し気もなく棄てたところから、何かしら始まる気はする、半端に巧くなっても誰にも読まれないのではないか、という意見もありました。淡々と描写していくスタイルは突き通して欲しい、角度もそのままで良いように感じる、ちょっとした切れ目をズらして入れたら強烈に惹かれたと思う、という意見もありました。

3517 : 少女。かく語りき  右肩 ('09/05/13 05:53:46)
良質さを離さない一連目があった、タイトル、最終連、あまりにも狙いすぎなコトバ、さまざまな問題を抱えているけれども、作者のスタンス的にも別にそれはそれで良いのかもしれない、という意見がありました。比較と対称、対照と作用、それらがしっくりと流れてはいるようだけれども、贅肉の欠落というよりは、寧ろ贅肉の標本により近いのではないか、B級ポエムにも届かない退屈な作品、狙いはわかるが、もっと構造そのものを俯瞰して考えないと、試みとして評価されても、肝心の作品がこれでは、と思わせられる、という意見もありました。

3550 : 火曜日  チャンス ('09/05/29 18:13:39)

3521 : 公園から見える  19 ('09/05/14 00:17:09)

3530 : 象の肌  かとり ('09/05/18 23:41:23)

3499 : 猫爬虫類の羽毛布団  フリーター ('09/05/04 19:08:41)

3525 : 月面テロル  深田 葵 ('09/05/16 17:13:02)

以上です。

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ダーザインの不在について (復帰)

2009-06-22 (月) 23:40 by Bungoku.JP

# 現在は復帰しています (2009年07月11日 追記)


数日前より、ダーザインがパソコンを使用できない状況になっています。
PC内のデータはすべて失われたとのこと、復帰時期についても未定です。
ダーザインの不在およびPCの障害による、サイト運営やポエケットへの影響はとくにありませんが、個人的にダーザインとメールのやりとりなどをされていた方は、このような状況にありますこと、どうかご承知ください。

なお、ポエケットで販売される本の当日購入・受け取りのご予約(store@bungoku.jp 宛)や、管理者およびサポート窓口へのご連絡(webmaster@bungoku.jp 宛)については、普段どおりお受けしております。
ただ上述のとおり、いただいたメールをダーザインが読むことはできませんので、個人的な連絡については電話や手紙でお願いいたします。

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5月分月間優良作品・次点佳作発表

2009-06-21 (日) 21:01 by 文学極道スタッフ

5月分月間優良作品・次点佳作 発表になりました。

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ポエケット出展のお知らせ/本の予約受付(ご来場の方へ)

2009-06-14 (日) 17:10 by Bungoku.JP

来る7月12日、両国・江戸東京博物館にて開催される「TOKYOポエケット」に、文学極道として出展します。

会場の文学極道ブースでは、長らくお待たせしておりました、2006年・2007年年間各賞受賞者の作品とコラムをあつめた本、「文学極道 No.2」を販売する予定です。
また、品切れにより入手不可となっておりました「狼13号・文学極道特集」(内容は2005年分にあたります)も、ごく少部数ですが増刷しましたので、並べて販売します。

当日は代表のダーザイン(北海道在住)をはじめ、発起人・スタッフの一部も会場へ参ります。
また、上記本の企画・制作でお世話になっている狼編集室、連携して企画・活動を展開中の月刊 未詳24からも出展が決まっており、多くの受賞者や常連の方たちも来場される予定です。
ご興味のある方はぜひ会場まで足をお運びいただき、各ブースへお越しいただければ幸いです。

開催日時・場所・内容等、詳しい情報は「TOKYOポエケット」のサイトでご確認ください。
http://www.poeket.com/

文学極道ブースで販売する本(予定):

  • 「文学極道 No.2」 ―― 1,600円
    ソフトカバー(カバー・帯つき)、約220ページ
  • 「狼13号・文学極道特集」 ―― 800円(増刷にあたり価格改定)

その他、発起人や受賞者の方の詩集についても(希望があれば)販売・請負を検討中です。


ポエケット出展に先立ち、上記の本「文学極道 No.2」「狼13号・文学極道特集」について、当日ご来場のうえ購入なさりたいという方のご予約を、メールにて受け付けます。

どちらも少部数の販売となりますので、当日はすぐに売り切れてしまう可能性があります。
前もってご予約いただければ、その分はこちらで取り置いて、当日ご来場いただいた際に確実にお渡しできます。
ただし、販売可能部数を超えてしまった場合にはご予約をお断りすることもありますので、お早めにお申し込みいただければと思います。

ご予約は store@bungoku.jp 宛に、次の項目を明記してお申し込みください。

  • 件名 「ポエケット予約」
  • 1. お名前(紛らわしくなければ筆名・ハンドルネームでもかまいません)
  • 2. 希望される本のタイトル(「文学極道 No.2」「狼13号・文学極道特集」のいずれか、または両方)
  • 3. 希望部数
  • 4. メールアドレス

こちらでお申し込みの内容を確認して、(4のメールアドレス宛に)ご予約完了のメールをお送りします。
代金は当日いただきますので、事前にお支払いいただくようなことはありません。

〜 ご注意 〜

当日来られなくなった場合のキャンセル連絡等はとくに必要ありませんが、早いうちにわかっている場合にはその旨お知らせいただけると助かります。
なお、申し訳ありませんが、通信販売についてはポエケット後にあらためて申し込みをお受けするように予定しておりますので(部数もあまり多くは用意していませんので)、公平性のため、当日来られなかった方の分は単純にキャンセルとなり、優先的に通信販売の扱いにするということはいたしません。ご了承ください。

「文学極道 No.2」は現在印刷所での作業工程にあり、刷り上がりを待っている状態です。
しかしながら、何らかのトラブルにより納品が遅れ、ポエケット当日に間に合わないという可能性もあります。
その場合には納品後に発送する形での販売となってしまいますが、ご来場いただいた方には優先的にご購入いただけるようにいたします。
どうかご理解、ご了承ください。

また「文学極道 No.2」については、受賞者つまり著者の皆様へはこちらからあらかじめお聞きしているご住所宛に完成した本をお送りいたしますが、ポエケットへのご来場を予定されている方で、当日お受け取りになりたいという方がいらっしゃいましたら、同様に上記アドレスまでメールにてお伝えいただけますよう、よろしくお願いいたします。

繰り返しになりますが、今回のご予約は通信販売ではなく、ポエケット当日にご購入・お受け取りを希望される方に前もってお伝えいただくということですので、お間違いのないようご注意ください。

ご質問、当日の出展内容についてのご希望等(この本も販売してほしい、など)ありましたら、上記アドレスまでお気軽にお伝えください。
よろしくお願いいたします。

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2009年4月選考雑感

2009-06-06 (土) 13:36 by a-hirakawa

今月も勉強になりました。
ありがとうございました。

今月は、

3462 : 女神  右肩 ('09/04/14 05:05:34)

3437 : 春  ひろかわ文緒 ('09/04/03 22:30:46)
 
3453 : 公共交通機関  ゼッケン ('09/04/08 21:47:53)
 
3487 : ラピダ  いかいか ('09/04/30 11:49:14)

3458 : マーブル  ひろかわ文緒 ('09/04/13 01:37:08 *1)

3475 : No Title  浅井康浩 ('09/04/23 10:43:33)

3454 : 問題はない  鈴屋 ('09/04/08 23:15:34)

3469 : Je veux savoir ce que je veux  はなび ('09/04/18 21:42:27)

3436 : リビングの底  小禽 ('09/04/03 18:34:57)

3439 : 「ミドリさんがやってくるわよ!」  ミドリ ('09/04/04 16:13:48 *7)

3478 : クロリス  ゆえづ ('09/04/27 14:13:16)

以上、11作品が月間優良作品に選出されました。

3462 : 女神  右肩 ('09/04/14 05:05:34)
詩人ではない作者が二次創作的に派生させた体系・形式としての在り方を活用し作品として高めていて、距離のある詩として成立し得た興味深さが座っている、という意見がありました。まねぶことに大変優れた連の内的使用が、性的孤独に内実を置いており、そこに作者はいないため、詩的雑念がなく丁度よい具合に仕上がってしまっています。断片の綴りに2つ秀逸さがあり、それが高めています。気配だけでいけていることも成功した一つなのかもしれません。右肩さん独自の詩作品は未だ読んだことがないですが、詩の投影でここまで引き伸ばせることは面白い現象なので、読めなくても良いのかもしれません(しかし、それは詩でなくても良いということなのかもしれません。作者の空虚を確かにしてしまうことなのかもしれません)。どう読んでもあまり品は無いにもかかわらず洗練されている、視線の揺らぎとそれに伴う所作の彩りが、適度な尺を滔々と流れゆく、燃費のよい作品に感じる、という意見もありました。
また、細かいことなら、
>放ち
>過ちが
の「ち」の重なりが少し煩い感じは受ける、けれども気にならない範囲内であり、テキストが阻害されているとまでは言えない、惜しむらくは、最終連の着地で、リズム云々ではなく、いわば陶然とした世界の越境をもっと描けた筈という意味で接してしまうものがある、という意見もありました。所謂ネカマ詩の秀作なのかもしれない、という意見もありました。

3437 : 春  ひろかわ文緒 ('09/04/03 22:30:46)
詩に詳しくない読み手にも好感されるであろう空気が、作風という場所で作者の成長を際立たせている、という意見がありました。内実も充分にあるが、ちょっとバランスが頼りない側面もあるため、外観のわりに尺が長く感じる部分もある、という意見もありました。転調も個性的に跳んで、しっかりと滲みながら着地しているように思えた、浅くも深くも読める胡散臭い主張や技巧展覧会等からは隔たった静かな空気が実に魅力的である、美しくも哀しい詩情があり感情を揺さぶる、再読を重ねても錆びない不思議な味わいのある、という意見もありました。最終連がもう一歩という感触もあったが、良質であり、静謐な諦観というのはこういうことだと思わさせられた、という意見もありました。 

3453 : 公共交通機関  ゼッケン ('09/04/08 21:47:53)
まず書こうとしている内実が素晴らしく馬鹿でよいと思います。これだけどうでもよいことを書ききっている作品も珍しいです。もっとねちっこく書くことが常套なのかもしれないが、どうでも良いように感じる小ささがある、という意見がありました。地味な小品だけれども、密度や距離、情景や細やかな心象など、感じ入るものがある、やくたいもない挑戦を大袈裟に書いただけ、とも言えるが、作品のテンションと、チリチリした読後感は忘れ難い、という意見もありました。

3487 : ラピダ  いかいか ('09/04/30 11:49:14)
「まるで僕らが書く散文のようだ」このわざとのほころびが、難解すぎずよい塩梅に仕上げているように感じる、という意見がありました。質感の曖昧なものが目立っていた近作のイメージを払拭するものがあった、視線の配分、倒れては次々に立ち上がる景色の円環、音や匂いもして、再読しても無くならない(気持ちは悪いけれども)という意見もありました。作者のジャブくらいに考えるとこで傑作が生まれるのかもしれない、という意見もありました。

3458 : マーブル  ひろかわ文緒 ('09/04/13 01:37:08 *1)
鮮度と集中とテンションの持続と上塗りが尋常ではない、中身の足りなさを補えるだけの舞が素晴らしい、という意見がありました。いろいろ足りない、或いは過剰で、拙い記述もあるけれども、本作に横たわる内実の重量を感じさせない筆、これは、とりわけ重要に思える、という意見もありました。作者の意図的ではないと推測される在する救いは、リライトのやりようによっては傑作に達する片鱗を随所に散りばめている、という意見もありました。

3475 : No Title  浅井康浩 ('09/04/23 10:43:33)
文体の感解と素材を高めあわせ方が過渡に成就していて、二連の見事さが際立っている、という意見がありました。視覚ばかりか嗅覚や聴覚にまで訴えかけてくる丁寧な筆であり、予感や確信を示唆に富んだ暗喩等で捉えた記述もスマートで綺麗だけれども、素晴らしく完璧な模写を鑑賞した場合の印象のように僅かながらも馴染めなさを抱いてしまう、という意見もありました。

3454 : 問題はない  鈴屋 ('09/04/08 23:15:34)
ハードボイルドな匂いを消したそれのような印象もある、けれども丁寧なディテールを日記調に問わず語りするなげやり加減が、悪くない、結果として、それらが地味な最終連を盛り上げてはいるのだけれど、ちょいとした文学臭い演劇の冒頭部分のような凡庸さも漂うので、抑え気味の獣感をもっと解放してほしかった感も否めなかった、という意見がありました。「地図の説明」(いわゆるマップという意味ではなく)を読ませる巧さは秀逸、続篇がありそうな予感 (例えば、過去へと遡上する、ような)があり、そこも良い、という意見もありました。作者の得意な眼の威力から及ぶ感覚が先へと歩んでいて、時間という過去を手繰り寄せており、手渡す、癖、個性、は幼少期、環境も匂わせて、この作品で全てではない修羅な市民を置いている、見事だけれども、もう少しだけ期待してしまった、という意見もありました。

3469 : Je veux savoir ce que je veux  はなび ('09/04/18 21:42:27)
解りやすい使い捨てられた誰でも書く内容に、ここまで命を吹き込めたことは賞賛されてしかるべきだ、という意見がありました。作者の着想のユニークさ、チョイスするフランス語のセンス等、堅苦しくなりがちな現代詩の空気を良い意味で台無しにするようなところが素晴らしいと思う、決してアカデミックでない、雰囲気みへと導く寛容さにも魅力を感じる、肩の力を抜きながらも芯は通っている、という意見もありました。単体の作品として推すには足りない、という意見もありました。

3436 : リビングの底  小禽 ('09/04/03 18:34:57)
小さいのに巨大で、まとまりも見事、感情で流して勃起している怒号が秀逸だ、という意見がありました。作者がどこに行き、どこに形象を貫くのか見届けたい、という意見もありました。

3439 : 「ミドリさんがやってくるわよ!」  ミドリ ('09/04/04 16:13:48 *7)
見せる工夫と勇気は否定されるべきものではないのかもしれない、という意見がありました。良く出来た映画の予告編のような、中身の無さ加減とエンターテイナーな筆が程好く合致しているように感じる、軽妙なリズムと質感があり、蘊蓄がやや邪魔だけれどもペイパーバックの人気ライター然とした雰囲気を醸し出しているかのような不思議な作品だ、連作に育つと楽しそうだが、そこまで考えなくても良いのかもしれない、という意見もありました。

3478 : クロリス  ゆえづ ('09/04/27 14:13:16)
優良になりましたが、色々と首を捻る部分も多い作品でした。作者は男性の視点になると少し像が美しくあり過ぎてしまうという特徴があります(少女マンガの男性主人公が、ボーイズラブの男性が体毛を知らないように)。その特徴が内容の妙と奇妙に歪んだり合致したりした時に清冽さで、弾くのですが、今回は、もう少しあっても良いようにも感じました。
 君はエプロン姿の小さな確信犯だった
最初の一文での断定が後後に尾を引きずり、あまり上手く作用していないように思えます。二連のありふれた構成の後に引き継がれる、
 おまえも翅を休めに来たのかい
 ああ見ろよ虹だぜ
とも合わさり浮遊してしまう感触があります。酔いに飲まれず客観的に見てしまう感触です。
ただ、
 庭で摘み取ったケシの実を
といきなり空気の諧謔を軽くこなしたり、
 ヒンジの緩んだジッポで
と作品のそれまでの流れよりも勢い的な重心のあり方を大切にしたり、一文一文がいかにも作者な作品で、誰のものでもない作者の作品で、上履きの踏みつけてしまったラットガムより残るので、そこは大切な芯なのかもしれない、と思わさせられました。確か、に。

さて、次点佳作作品について触れていこうと思います。

3479 : 左巻き  がれき ('09/04/27 22:07:11)
作者は巧いです。軽妙です。一時代前なのですが、ずいぶんと器用にこなしています。今回も流麗な感覚線で音韻を操っています。ただし最後の二文が当てすぎていて、それまでを矮小にさせている点はもう少し先に行けたのかもしれないな、と思わさせられました。器用に流れるため、残していく感触が少なく読後に育つことが遠いのではないか、という意見もありました。

3441 : 八十八夜語り ー季春ー  吉井 ('09/04/04 19:43:18)
死を意識しても、爪の垢は煎じて飲めやしない、作者のいちいち上手い箇所が光っている、最終連にもう一歩必要かもしれない、という意見がありました。返信欄にある解釈の方がずっと面白い、という意見もありました。

3445 : 彼岸花  ゆえづ ('09/04/06 01:06:01)
かなりアクの強い筆だけれども、破綻しそうでいて、なんとか収斂したり拡がったり、危なっかしいながら読ませる作品だ、という意見がありました。読者を再読へと向かわせる作風でもあり、新鮮な記述の巧みさと作文的で残念な粗さが混在していて、そのアンバランスが魅力にもなっており、次回作を楽しみに待つような気持ちに素直にさせる、強く推すほどには痺れないが、落選にはなってほしくないと強く思わせるものがある、という意見もありました。今回の作品は言葉のまとまりが前半と後半につれて違い過ぎる感触を掴ませられる、という意見もありました。

3433 : 4月4日、その日の君は、  はるらん ('09/04/03 01:42:18 *1)
旬を過ぎている内容かもしれないけれども佳い作品だ、という意見がありました。ありがちな小市民たる日本人が書かれているけれども本作の醍醐味は最終連であり、形容し難い不気味なニュアンスが巧みに演出されている、少しとっちらかっている印象もあるけれども佳かった、という意見もありました。軽さが剥離された実態の無さが、現代を表層していると感じた、戦火がリアルになりきれない感触が、不安が不安になりきれない感覚が、とても文章にあっている、過去ネット難民だったり実らない愛だったり主題の現実的な部分が現実的に描けていない部分が気になっていたけれども今回はその課題を、逆転的にものにしている、という意見もありました。多大に過ぎて現実感が湧かない感覚を書いたら、作者に、ぴったりなのかもしれない、という意見もありました。

3461 : さくら。  亞川守紀 ('09/04/14 00:12:59 *1)
突っ込みどころのある美しさが柔らかい存在だ、これからが気になる、という意見がありました。

3471 : 存在証明(は今日も出来ず)  ぱぱぱ・ららら ('09/04/20 13:48:54)
存在について、というよりも存在しないものについて、そうした欠落部分の曖昧な集積のバランスのあやふやさを中世的な口語体で緩くラッピングしてみました的な作品、のように思える、辛辣な視線とコミカルなそれが交錯する事で読むほどに味の出るタイプの作品で、読み方を限定しない、そこも佳い、という意見がありました。作者は確実に新時代の書き手だ、真似しようとしたら糞ポエム以下になってしまいそうな気がする、わざとなまでにポエム的にしていて、敢えて避ける現代詩的な方向は見えていて、斜に構えながら中核を捕らえている姿は、やりつくされた後をわざとやり続ける器用さがあります。ひょっとしたら早すぎる作者なのかもしれない、という意見もありました。

3483 : 木星の春  右肩 ('09/04/29 10:44:41 *1)
作者は相変わらず構成での勝負ですね。そこに作者はいるのかどうか不思議です。演出家としてはかなりの腕前ですが内実をしぼる詩人、作家としてはいるのかいないのか分かりません。今回は、しかし、それを上回る丁寧な性で押し倒しているように感じます。演出家としての在り方も否定されるべきものではないのだろうと思います。悪くない、メタファーも光る、物語性とジャンクの集積とのバランスが魅力的だが整合性という意味では足りてない、という意見もありました。チープな秀作だけれども、作者の課題はいつも最終連にあるように感じる、ストンと落ちない、かといって、余韻が溢れるわけではない、唐突とまでは言わないが、エンドマークに戸惑う場合が多いように思う、という意見もありました。才は感じる、一人相撲的なところから抜けたら、もっと書けるように思う、という意見もありました。

3465 : ひとひら  泉ムジ ('09/04/15 09:18:07)
地味だけれども手際のよい短編であり、陳腐かもしれないが映像の描写などは掴まれる部位がある、という意見がありました。いろんな読み手を想定して作品に向かっている印象があり、本作品は、もっと練れた感もあるけれども、敢えてそのまま出したかのような、そんな勢いと気恥ずかしさが同居している、という意見もありました。共感、というの曲者を時間をテーマに上手くこなせている、という意見もありました。巧い作品だが作者のパワーダウンというか、閉じこもり始めたというか、瞬発力という魅力、文学内での裏書きしていくエンターテイメントが縮小されたように感た、ユーモアが減って代わりに盛られている感覚は良質かもしれないけれども質が違い過ぎるように思えた、という意見もありました。

3489 : 位相  はなび ('09/04/30 23:46:22)
サラサラッと書いた(かのような)筆致が魅力的であり、外観が内実を寄りきっている感触に惹かれた、という意見がありました。良質さがいま一つ介在を余儀なくさせていない、という意見もありました。作者は、タイプとしては突然変異型の珍種の書き手だろうから、亜種の溢れる詩界にあって大切にしたい、と思う、どう大切にすればいいのかは、よくわからないけれども、という意見もありました。脱力系の傑作を簡単に書いてしまいそうな才は感じる、期待してもいる、という意見もありました。

3481 : 春の下  如月 ('09/04/28 21:21:50)
作者は確かに巧くなった、基本的なスタイルが、積み上げていく形式から削っていく形式に変わった、というのもあるのかもしれない、その過程で、バランス等に配慮するあまり、やんちゃな記述が影を潜めたな、と思う点も気になる、という意見がありました。そつなくまとまってます、工夫して書いてもいる、ただ、あまり読み返したりはしないかもしれない、作品として特に破綻もなく問題は無い、しかしながら魅力にはやや乏しい、という意見もありました。どこから生まれた作品なのか、振り返ると突き刺さる言葉や綴りが過去には作者にもっともっとあったので、そこを大切にしてほしい、瓦壊に足を留めるような理性と本能のせめぎが過去作のようにあっても良いのかもしれない、という意見もありました。

3467 : 矛盾  億年筆 ('09/04/18 03:59:50)
よくここまでくだらないことを展開させていったな、と極端さに拍手してみたい、という意見がありました。

3463 : 30ページ+5分20秒  ミドリ ('09/04/15 00:56:21)
作者の筆は常に達者だが、昨今は読み手の過剰な期待には応えられていない印象が強い(そんなもんに応えようとも思ってないような飄々とした中庸さも感じるけれども。)、まずまずの小説の切れ端みたいなポエム、ベッド・シーンが演出される今までの作品の大半と同じ雰囲気がある、という意見がありました。巧い、ミサイルとあれは王道だが、外れていない、だからもっと欲しくもなる、という意見もありました。

3468 : コミュニ鶏頭  菊西夕座 ('09/04/18 09:11:53)
肩の力を抜いて読めるしかも繋がっている作品ということでは、優良でも良いかもしれない、作者が持ち合わせている言葉の反射神経を見事に発揮し昇華させている、という意見がありました。頭が良いのだろう、作者はきっと読書中に他のことがどんどん気になって文章よりも先に脳内での想像が上書きされていくに違いない、言葉遊びに過ぎないけれども、それが突っ込みが入らなくても伝わる範囲であり、深読みしようと思えば出来る箇所にあることは大きい、寒さが作品としてよい、という意見もありました。スラップスティックな流れと高座のバレ噺のような設定を電話会話に負わせた、そこそこコミカルでブラックな作品で、悪くはないが、流れが後半にやや失速している、ゆっくり始まって、やがて加速に加速して混沌が渦巻きながら大団円、とかだったら良いのだろうが、ペース配分に失敗しているのではないか、
アダージョではなくアンダンテでなくてはならない必定はないにせよ、ツカミはオッケー徐々に醒めてしまう、ちょっぴり弱いスタンド使いだ、という意見もありました。くどい、くどさをもチェシャ猫笑いにする技量が欲しい、貴重なキャラクターだけれども、それを認めたうえで、更に弾けて欲しい、アクセルとブレーキの使い方には、もっと奥がある筈だ、という意見もありました。作者のレッサーとしての技量と作者としての技量が菊と西くらいに違いがあるのではないか、という意見もありました。

3466 : 透明の息  小禽 ('09/04/15 23:21:37)
一文目二文目が完璧に意識を奪っていくけれども、三文目
  わたしの立つ地面はそうして穴だらけになりました。
から徐々にトーンダウンしている、
 まるで今までの世界は全て嘘だと言われているようです。わたしは地上にいることが随分辛いと感じるようになりました。
の凡庸さを、もう少し整えていくと、最後の透明も、もっと活きるように感じる、勿体無い、良質さがある、という意見がありました。

3448 : 言葉  ぱぱぱ・ららら ('09/04/06 05:21:42)
 僕が海と書くとき、それは海で、僕が愛と書くとき、それは愛であって欲しい。
スタートしてたどり着いていく在り方、それは指示したいかもしれない、ただ、読後の印象など、伝わるものなど、剥きだしすぎて、「詩人」の神々しさに立ち向かえないものだとも感じる、という意見がありました。

3473 : 僕のほら穴の仮面パペット人形  黒沢 ('09/04/21 23:24:48 *10)
先ず、このタイトルは失敗しているのではないだろうか、読む気勢をある程度は削ぐ狙いがたとえあったとしても、「一回りして新しい」までには足りていないような古臭さが浮かんでいる、幻想文学の範疇にありがちな空気、それの賛否は置くが、タイトルと初連でツカミは成功しているとは言い難い、マニアックに堕ちている印象、という意見がありました。ややこしく陰鬱な描写、心理的不具に寄り添う乾いた悲嘆と不意の覚醒、それに伴う惑いや静かな怒りを、地味な工夫を凝らして丹念に書いた力作、しかし読んでいて愉しくはないのがキツイ、読んで愉しいかそうでないかという単純ながら大切な問題と、例えば根源的な実存とを、いかに融和させて書くかを、求めたい、という意見もありました。「仮面パペット人形」…タイトル含めて16回は頻出過剰、作者は短めの作品の方が比較的光る感じがする、という意見もありました。過渡にしてはありふれ過ぎた比喩で、ありふれ過ぎた文章で、読ませはするけれども退屈もさせてラストに驚きもなく、蝕みもない、内省的に過ぎないようにも感じる、次の傑作への膿だしであって欲しい、という意見もありました。

惜しくも選からは漏れましたが、その他、以下に挙げる作品が注目されていました。

3464 : 彼女  んなこたーない ('09/04/15 04:08:21)
正直、わけのわからない、アホみたいな作品、かもしれないが、堅い詩にありがちのある種の「白々しさ」から解放されているが如くの空気やリズム感、そうした個性は買いたい、無駄な記述も散見される代わりに奇妙な味わいのある比喩もある、おそらくは即興に近い、自動筆記よりは速記詩的なチープでキッチュな作品なのでは、という意見がありました。

3474 : ぼくらのエチュード  草野大悟 ('09/04/23 00:39:39)
所謂「不幸自慢」に堕ちないところが良い、気の利いた小品として触ってもニンゲンの影が漂う、そのバランスが悪くない、ここから、もっと跳べそうな予感がいつもある、という意見がありました。

3430 : 無題(放熱、)  雨宮 ('09/04/01 12:43:00)
放熱、というよりは青春的所産の微熱をクールに描いた佳作、自己完結性が強いのが魅力であり欠点でもあるようにも感じる、薄い手応えのわりには奥行きがある、突出しているかどうかは疑問だ、という意見がありました。ここから、という良質な素材に思える、ここから傑作を生み出すことが可能なはず、このままでも良いけれども、それは詩よりも詩に近い感情なのでは、と思う、血が通わない作品が多い中、血だけ、のような作品に感じる、という意見もありました。

3460 : 無題(夜に沿う)  凪葉 ('09/04/13 12:26:53 *2)
いつも迷う、ややもすれば平坦、そこをどう評価するか、に思える、例えば、ギッシリと埋められた濃く難解な作品の対極にあるともいうべき、(あまり効果的とは言い難いにせよ)空白を多用しがちな作者の手癖、その熱量の稀薄さは好感にいつでも仰ぎはする、また、書き手としての性差が見極めにくい、または、そこに準拠して書いていない、なかなか狙えないところから書いている、と感じ、それは面白い部分だと思う、という意見がありました。自殺する寸前の躊躇いや回想、及び、その静かなる葛藤として読んだ、年若い読者に手渡されるものは多い作品かもしれない、という意見がありました。

3438 : 神楽火法典  フリーター ('09/04/04 01:41:32)
やや粗いながら強引に読ませていくチカラ技がある、忙しい展開も巧く描けている、配役の妙も効いている、よくよく読むと意外に深く類型的な硬いバイオレンスに収斂していない、という意見がありました。

3485" title="http://bungoku.jp/ebbs/20090429_215_3485p\">3485">bungoku.jp/ebbs/20090429_215_3485p">3485 : 浄楽寺  吉井 ('09/04/29 18:31:00)
退屈、の半歩手前だけれども味はある、あまり需要は見込めないにせよ、作者の筆には引き続き注目していきたい、最新鋭のラボではなくて、放課後の理科室で実験しているかのような詩作スタンスや安直に馴れ合わない姿勢が気になる、という意見がありました。

3444 : 詩 In C  debaser ('09/04/06 00:03:59)
知的好奇心を刺激されたり、視覚的に面白いと感じたり、そのような読み手は「謎解き」に喜んでチャレンジする筈、そんな作品に感じた、謎に答があるかどうかは別にしても退屈感もある、という意見がありました。

3456 : 現在を越えて、涙は  破片 ('09/04/10 07:11:31)
作者は、才より努力によって書いている人なので大切に見守っていきたい、本作品、悪くはないですけど、あれこれと詰め込み過ぎたあげくの冗漫さ加減がキツイ、ギリギリのアウトコースなど狙わなくても、ど真ん中に投げればいいと思う、変化球しか投げられなくなるよりは、ずっといい、違いますか? という意見がありました。

以上です。

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