文学極道 blog

文学極道の発起人・スタッフによるブログ

2015年2月分月間優良作品・次点佳作発表

2015-03-24 (火) 22:45 by 文学極道スタッフ

2015年2月分月間優良作品・次点佳作発表になりました。

*2014年・年間各賞は4月上旬に発表予定です。
 年間選考経過は5月上旬に発表予定です。

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2015年1月分月間選考雑感(スタッフ)

2015-03-17 (火) 22:59 by 文学極道スタッフ

2.7880 : 湯豆腐  イロキセイゴ ('15/01/31 23:52:52)
URI: bungoku.jp/ebbs/20150131_862_7880p
 とても面白い事をなさっています。
 枡野浩一という歌人が、映画を短歌化するという企画をしていたことがありました。その作業はいわば凝縮、ということですが俳句の詩への置換ははたして拡散なのか? 注目しています。
 今回の作品は自縛をみているよう。三題噺ともいいますし、まず三句から、エッセンスだけ取り出したようなものも見てみたいなー、等と。

3.7841 : 雲の遠近法  田能村 ('15/01/12 01:49:25)
URI: bungoku.jp/ebbs/20150112_556_7841p
 二連目まで坂田靖子のような、宮沢賢治のような世界観で読んでいたのですが水晶刀というのではてな? に。黄金刀から察するに光の比喩かと察したのですが、時間が流れないとは?? わかりませんでした。風はあるようなのにね。
 雲が雲の隙間から飛行船を持って帰ってくるなんてかわいらしい。
 それと、「あんなに」という言葉に惑わされて「雲が低すぎる」という言葉を素通りしていましたが、頭より雲が下にあるとしたら、と考えて読むとやっぱりかわいらしい詩として読めました。

5.7860 : 無言電話  ヌンチャク ('15/01/19 07:09:06)
URI: bungoku.jp/ebbs/20150119_705_7860p
 寓話的な詩です。
 世界、そして自分への問いかけというのは非常に文学的ですが、ありきたりとも言えるわけです。
 表現の産みの苦しみを大島弓子が『暗闇で一筋の光をたよりに闇雲に身体を使って扉を開ける』という表現で表していたと思いますが、この作品の中では携帯電話が使用されています。自分の表と裏を繋ぐもの、あるいは自分と世界を繋ぐもの。表現する事というのは、もっと身体的なものなのでは。

6.7876 : 古い本  れたすたれす ('15/01/28 09:43:53 *1)
URI: bungoku.jp/ebbs/20150128_807_7876p
 >ナイフで
 >本を開けました
 私にとって本はひらく、と発音するもので(あける、でも正しいのですが)ぱっと背表紙を切り取られた本が浮かんできました。ここの部分はおもしろかった。
 内容は、と言えば思わせぶりですが取りつく島がありませんでした。

7.7862 : 星を注ぐ  草野大悟 ('15/01/21 22:11:12)
URI: bungoku.jp/ebbs/20150121_732_7862p
 絵画的で素敵です。
 しかし三連目が唐突すぎました。『星の声』が『祈り』なのかと読むとしっくりきましたが、書き込みが少ないかもしれません。

8.7879 : (not even) intron  逢江 ('15/01/28 22:51:38)
URI: bungoku.jp/ebbs/20150128_821_7879p
 タロットカードの説明を並べたみたいでシャッフルしたくなります。

9.7877 : みんな死んでください  泥棒 ('15/01/28 18:48:28)
URI: bungoku.jp/ebbs/20150128_815_7877p  
 混沌とした詩ですね。
 『処女膜を論破されたい』で川端でしたでしょうか、『月よ、僕の童貞をあげよう』を思い出しました。男性の女性化を危険視する声はいつの時代にも聞こえてきたものですが、現代日本は境目のない灰色の時代。揺れる思春期と定まる青年期にもはや境目もなく、受ける人には受ける感覚なのか。
 ぜんたい、最果タヒに影響を受けすぎていると感じました。

10.7864 : 波  北 ('15/01/22 03:36:52)
URI: bungoku.jp/ebbs/20150122_735_7864p
 海と波の使い分けが出来る人が波を連れて帰れなんて言わないでしょう。

11.7873 : 処刑  zero ('15/01/27 00:20:26)
URI: bungoku.jp/ebbs/20150127_788_7873p
 アウシュヴィッツやポゴ・ハラムの現実に太刀打ちできるものが読みたいです。

16.7872 : Re: Fairy Tale  静夜 ('15/01/26 21:05:55)
URI: bungoku.jp/ebbs/20150126_786_7872p
 おとぎ話というのはそれこそ共同体であって、その中に自分がいるという感覚を持っていなくては破壊も創造も出来ないのではないでしょうか。
 この作品は怒りの羅列にすぎないし、装飾も比喩もいかにも思わせぶりで評価できませんでした。

20.7866 : 鬼霧  AGAPE ('15/01/23 07:53:35 *1)
URI: bungoku.jp/ebbs/20150123_747_7866p
 鬼霧という気象用語があるのかと思い調べましたが、特にないようです。造語だとしたらセンスが良いです。霧の中で鬼ごっこしたら怖そうですもんね。
 全体的に持って回った言い方が多く、読んでいて疲れます。

21.7849 : 空想の果て  はかいし ('15/01/13 23:27:46)
URI: bungoku.jp/ebbs/20150113_601_7849p
 わー、曼荼羅の様! 一見してギブアップ。
 なんとか読みましたが、一行を辿りながら読みました。
 ライフログは詩たり得るのでしょうか。音楽を止めて静寂を求めたくなる詩でした。山へ行きます。

23.7868 : 世界が燃える  水鳥魚男 ('15/01/24 13:19:02 *1)
URI: bungoku.jp/ebbs/20150124_758_7868p
 朗読していると日本語ラップのようになりそうです。平坦。内容もラップっぽい故か。
 ちょこちょこ入るユーモアじみたところ、効果に疑問を感じます。

26.7853 : の死、そして、「しき」だけがなく  Ceremony ('15/01/15 20:21:56)
URI: bungoku.jp/ebbs/20150115_639_7853p
 漢字の開き方、句読点や段落分け、書かれている内容、どこから手をつけていいのか、触れられないようでもどかしい読後感でした。

30.7854 : メンマ・シンドローム  リンネ ('15/01/16 03:50:24 *5)
URI: bungoku.jp/ebbs/20150116_647_7854p
 少しでたらめが過ぎますね。

32.7836 : 心はいえない  織田和彦 ('15/01/06 23:06:37 *1)
URI: bungoku.jp/ebbs/20150106_496_7836p
 ラストが無理矢理過ぎます。

35.7846 : 彼女はうぶ  お化け ('15/01/13 05:21:08)
URI: bungoku.jp/ebbs/20150113_577_7846p
 イノセンスについての詩だとは思うのですが、観念に閉じ込められてなにがなんだか。

36.7835 : 魚は日本海を嫌った  水鳥魚男 ('15/01/05 21:42:51 *8)
URI: bungoku.jp/ebbs/20150105_480_7835p
 タイトルがおもしろかったです。
 ワーグナーのところの『ナチスドイツい加担』は『に』のタイプミスかと。

40.7834 : いたみ  陽向 ('15/01/05 17:31:17)
URI: bungoku.jp/ebbs/20150105_474_7834p
上っ面は見たくないんですよ、このご時世ネットに溢れています。
 これをフェイスブックに書けばイイネって押されてシェアされるんだと思いますよ。
 消費して次の瞬間に忘れてご飯食べてトイレに行ってお風呂に入って寝るようなそういうのは感動って言わないんです。

42.7839 : ギギギギギギギギギギギギギギギギギ  泥棒 ('15/01/08 15:58:45)
URI: bungoku.jp/ebbs/20150108_520_7839p
 テクノを聞いていると、言葉の意味が分解して分からなくなって音になってゆくのが楽しいんですが、この作品にはその楽しさの片鱗を見たような気がしました。 同時に照れのようなものも。悪ふざけに勢いと下ネタに走るの、まだ若いのかなって思います。

45.7829 : 映画館  織田和彦 ('15/01/02 00:42:19)
URI: bungoku.jp/ebbs/20150102_401_7829p
 主体をトカゲにしたのはただのフックなんでしょうか? 照れ?

7875 : ツララ  山人 ('15/01/27 16:31:34)
URI: bungoku.jp/ebbs/20150127_796_7875p
 つららの中のオレンジ、作業小屋のストーブの赤(のイメージ)スマホの画面のより近代的な無機質な色。絵画的ですね。
 二連目の視線の持ち主が分からずにいます。

43.7844 : くろひげききいっぱつ  ヌンチャク ('15/01/12 17:23:59) URI: bungoku.jp/ebbs/20150112_560_7844p
 なんだろう、見るべきところが多いのですが、なんとなく人の家のアルバム(もしくはビデオ?)を講釈付きで見せられている気になってしまうのです。

24.7867 : 四季  末露 ('15/01/23 13:17:21)
URI: bungoku.jp/ebbs/20150123_749_7867p
 路に落ちている枯れ葉を想像し、焼き芋を想像し、雪が降っているところを想像したら陽の光があるという事は積雪なのだ、そして家路という事は夕陽なのか、と一行ずつ読むごとに状況が変わっていくのが面白かったです。四季は言い過ぎかもしれません。

27.7863 : 昇進  zero ('15/01/22 02:15:23)
URI: bungoku.jp/ebbs/20150122_733_7863p
 出だしがとても良かった。続く部分、そしてラストは『地位が人を作る』という言葉がありますが、その定型をなぞったような。

29.7859 : でくのぼーの祈り  お化け ('15/01/19 00:43:52)
URI: bungoku.jp/ebbs/20150119_704_7859p
 すごく好きな雰囲気を持った作品です。雰囲気のいい、っていうことを詩を読む時に自分は大事にしているのですが、もう少し捻れるかもしれない、という思いがぬぐえずにいます。

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『本田憲嵩「罅」(2013年・年間選考・選考委員特別賞)』についての雑感(平川綾真智)

22:49 by a-hirakawa

『本田憲嵩「罅」(2013年・年間選考・選考委員特別賞)』についての雑感

 本田憲嵩さんの作品「罅」は、同質性・均質性への強迫観念に追われていく自己肉塊が僅かな社会変容を断絶として体感し、悲哀と共に社会存在を反芻しています。概念化された社会を同じく生きているということの膿汁にも似た苦痛は鏡体化し読み手の基臓へと迫って来ます。

 部屋に戻って
 机の上で履歴書を書いた
 履歴書はいつも嫌いだ
 本当に書きたいことは
 なにひとつとして書けはしない
 たった一文字だって
 間違えることなんて許されてはいない

履歴書上の自分は概念化社会を解読し出力されたものです。本当の自分を抱えつつも読み説いた概念に合わせ自己を文字化していく作業は、自らを屠殺していく作業に相似しています。証明写真は屠殺後の自分を暗示させるようで、既に屠殺されているのかもしれない自分を予感させるもので、後ろ向きな内省が絶えることなく湧出する「オレ」は理想との乖離に足場も無く立たされるしかありません。文字を書くために丸めた拳は暴力を持って変化させた過去の瞬間を思い出し、変化した途上にある今を肉体に、ただ置いていくのです。平易な比喩「罅」の下あまりにも率直な言葉だからこそ率直に響き呼応する実存の詩が、そこには拡げられています。前に進むときに後から後から掴み押し倒す過去領域への思いは極点のない孤独を眼前に脊柱に突き付け続けます。
 連ごとの構成が、行間の凝集性を更なる密へと機能させたことで、この「履歴書を書く」場面は一歩進んだ詩として昇華されているように思えます。二連目の過去に労働していた場所と自己との邂逅、それに続く古ぼけた駅と自己との対比は、幼い頃に眺めていた輝きが失効する暴虐に自己そのものが失効する逼迫を潰れる汗腺内に伝播させていきます。その二連を導いてくる「赤トンボたち」「青空」「木々」の生々しくも率直な描写は一連目が、詩を、どれだけ詩にするか、側枝的息吹を婚姻させ結実させていくかのようです。「円環する」ため時間が経ることを避けられない私たちは肉体を引きずるしかありません。その行為の途上にあり何度でも自己は自己と出会っていきます。自己が、どれだけ醜悪な自己だとしても出会っていくしかないのです。
 本作品「罅」は空虚な人間の生きていく脂勢が細部履歴を備え提示されています。このような日々の一コマへ焦点化し見事、作品化させた筆力は作者にしかないものです。次なる意識の予兆と胎動は詩領域の一つの回答を示していると言えるのかもしれません。                  (平川綾真智)

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