文学極道 blog

文学極道の発起人・スタッフによるブログ

黒沢氏の年間総評(黒沢氏=2008年創造大賞受賞者)

2010-04-06 (火) 00:56 by 文学極道スタッフ

わざと上から目線で、w。

年間賞ですが、ひろかわ文緒さんが、頭三つくらい抜きんでていたと思います。才能を感じるし、作品を仕上げる生真面目さも兼ね備えているし、この先のびていく逸材ですね。このひとは、詩をやめない限り、相当なレベルで大成するんじゃないかな。テーマの彫りこみ、くっきりした陰影の切り取りとか、まだまだ若いなあってところもあるんですが、いずれ克服する人でしょう。なによりいいのは、言葉が伸びやかなのに、ちゃんと緊張感も備えているところですね。これは、努力ではなかなか身に付かないものです。

鈴屋さんは、いったん今の詩風を破壊的にたたき壊してしまって、再構成する時期じゃないでしょうかね。特定の語の用法、語の余韻といったものに、寄りかかりすぎているのが気になります。現状、完成度は非常に高く、作品そのものに特に文句をつけるところはないんですが。なんだか、いまいち自由な飛翔、意外な「ぶつかり」のようなものが、ない。用例に流れている、印象。いいすぎかもしれないけど、つい高いものを、求めてしまう。それと昨年も思っていましたが、実存賞よりは抒情賞の書き手だと思います。

いかいかさんは、今のままではだめですね。賞をあげるべきではありません。そのレベルの作品を、書いてもいません。なかのひとも、書かれた言葉も、素材だけです。その素材だけというところが、自他共にブランド化している奇妙な倒錯状況。ぼくにはただ、書き手の業/臆病な矜持が、すけて見えるだけ。ああいった逃げ道を用意した書き方は、意外に模倣可能です。詰将棋をつめるまえに止めちゃって、それらしい余韻さえ残せばいいんだから。八方破れに見えて、絶対に敗北しない、自暴自棄的・安全運転。といえば、さすがに公平じゃない酷評なんだろうけど。

草野さんの今年の詩は、だめです。まったく成長していないのが、問題です。このひとはこの先、のびないんじゃないかと、心配です。わざと厳しく言いますが、切り捨てたくない書き手だけれど、いまのままじゃ、だめ。

泉さんも、今年はだめだな。精彩なし。気合いいれろ。 書き手のモチベーションが、作品に、言葉に、のっていない印象。期待しているから、きびしく言うよ。

りすさんの詩は、老獪といいたくなるような、堂に入ってきた印象があるけど、まだ過渡期なんじゃないかな。いまのままなら、昔の詩のほうがいい。ただしこの先、もっと時間が深まっていくと、すごい粋な詩を書ける人だと思う。いまは、詩の言葉が持つべき実体/強度と、全体の器となる語法との間に、アンバランスを感じます。

はなびさんは、まだ判断保留だな。大きな賞を与える気持になれない。なかのひとが、書かれた言葉に追い付いていない印象があります。言葉だけが成熟を装っていて、全体としてはとっちゃん坊やっぽい。女性なんだろうけど。ただし、間違いなく一番の成長株だし、数年後が非常に楽しみで、気になってしまう存在ですね。

右肩さんについては、公正で、とてもバランスのいい批評が書ける人です。読み口にインテリの嫌味さがないのが、なおいい。解読と観賞のあいだを、すんなり越境しながら作品が読めている。読む頭が、硬化していない。文句なしにレッサー賞ですね。ダーザインさんへの注文ですが、もっと彼の力を評価すべきだと思いますよ。それと、彼の最近の作品には、Break Throughを感じますね。もともと言葉の強さに課題のある書き手だと見ていましたが、それが最近、目立たないように思えてきたし、独特の素材感といのちが、言葉に表れてきたようにおもえるのは、方法論と書かれた内実の間に、幸福な和解が生まれるつつあるからかもしれません。

debaserさんは、今年はあまり目立たなかった印象。超初期の作品に感じられた言葉の不思議な粘度/強さのようなものも、「milk cow blues」のときの軽やかな凄みも、なんだかイマイチ感じられない。悪い意味で、うまくなっちゃたのだろうか。もうひと花、ふた花、咲かせることのできる、書き手だと思う。

最近の浅井康浩さんの詩は、全くだめだ。ぼくには理解できない。ぼくが読めていないだけなのかな。ひと言で言うと、信用できない。

凪葉さんは、しばらくスランプかなあ。ぼくはダーザインさんや平川さんたちの意見と違って、凪葉さんは、背後に大きなものを持ってくるような仕掛け、そうした構造で作品を書くのは、向いていないと思う。まず、作品に意味をあたえるまえに、その意味を疑ってほしい。次に、「いいえ、意味を与えているつもりはないです」というのがもし書き手側の反論なら、作品から徹底的に意味の痕跡を消しつくすくらいの気構えを持ちなさいと、いいたい。まだ、世界とか、そういう大きなものを作品に実体化/定着するのにふさわしい、時期じゃないんだと思う。身の回りのちいさなものを、へんな意味(/安っぽく見られてしまうかもしれない物語)が混入しないよう細心の注意を払いながら、丁寧にそのまま書くのがいいと思う。

田中智章さんの作品は、もっと評価されるべきだとぼくは思う。

頭に思いつくままに書いちゃっているので、もっといいひと、話題にするべき人を、取りこぼしちゃってるでしょうね。ああ、それと、直接、掲示板でやり取りをしたことのある人に、つい思い入れがあるので、わりと古参の方に偏ってコメントをしちゃっているのも、認めます。ぼくは、ふつうの人間だから。

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