文学極道 blog

文学極道の発起人・スタッフによるブログ

Nickname
a-hirakawa
URL
http://we.magma.jp/~ayamati/

(No description)

2009年9月選考雑感

2009-10-31 (土) 16:53 by a-hirakawa

今月も勉強になりました。
ありがとうございました。

今月は、

3807 : 魚骨  リリィ ('09/09/21 19:28:33) 

3821 : 夜歩き  鈴屋 ('09/09/29 01:36:24)

3797 : 道のはた拾遺 6.  鈴屋 ('09/09/17 00:25:31)

3776 : 衣替え  りす ('09/09/10 00:31:18)

3817 : 鉄のきりん  草野大悟 ('09/09/28 00:18:48)

3760 : 祝祭前夜  残念さん ('09/09/02 20:23:56)

3806 : アルビノ  朝倉ユライ ('09/09/21 01:43:29)

以上、7作品が月間優良作品に選出されました。

3807 : 魚骨  リリィ ('09/09/21 19:28:33) 
今月、選考委員全員が優良へと推挙した唯一の作品でした。
ていねいに書かれていて良い、「父の骨を抜ければ〜」に至るまでにあとすこし、父の描写とそれを見る話者の描写を、と欲が出た、という意見がありました。あさりの結実は見事、このオノマトペをほかの投稿者も見習って欲しい(今月は特にsnowworksさんにそれを望む)、という意見もありました。細かい部分だが「3時」のアラビア数字が半角、どんなレイアウトでも違和感を起こさないためにもここは全角の漢数字が好ましいのでは、という意見もありました。凡庸な記述や揃いきれていない技巧はあるにせよ、それらが、けしてマイナスには作用していない、深読みを許容する懐もあり、ベタなテーマだけれども卑近に堕ちず、瑞々しい大衆性をも持ち得ている、新人ではないのかもしれないけれども、未熟な筆であるが故の魅力に惹かれる、という意見もありました。
 枕元に羽虫が付いていた。  
まで現実世界が続き、
 夢を見た。空中をさまよって紐を引く。  
の一行で夢に転じ、
 壁に目をやると3時を過ぎていた。    
この一行で目を覚まし、以降の現実世界へと続けているように読んだ、展開の錯綜の際、「夢を見た。」は、夢の部位を長めるような意識を引き寄せるような気がするので、もう少し言葉を探せたかもしれない、という意見もありました。

3821 : 夜歩き  鈴屋 ('09/09/29 01:36:24)
毎回こればっかり言っているような気がするが、作者は巧い、課題は最終着地にあると、これまた毎回ながらに感じる、もっと練れた印象もある、道具立てに注文はないけれども僅かな破れ目が気になって、せっかくの空気も白けるのではないだろうか、という意見がありました。梶井基次郎の「闇の絵巻」を思いながら読んだ、ただ、その先入観があっても淡々と味わえる作品だと思う、異性の存在を忘れました、と言うあたり(実際はまだ忘却ではなく“忘れました” という意思なのだろう)、おそらく話者は闇の恍惚、孤独の真意を感じているが、その痺れまでには言及しておらず、淡々と読ませることのほうに重きを置いた印象、そこはもっと作者がガツガツとして良いところだと感じた、痺れているさまを、闇の恍惚を見せてくれと、その点で一歩損をしているように感じる、という意見もありました。最初、諸星大二郎の「壁男」を思いながら読み始めた(「壁男」は「箱男」という凄まじい元ネタがあるにも関わらず、見事な世界を構築している)が、これは、だんだんと引きこもり的なことを言い当てている作品なのではないか、と感じた、世捨て人の話であり、夜毎に壁という部屋から出て来て目立たない場所を歩く、そういった作品世界だと考えていくと、どうってこともない流れを極端に書くことで詩文の秀でている部位は目立たせ、一貫性のなかでの揺らぎを際立たせている、非常に面白い読み物として立ち上がってくる、
 このころになれば、このあてない一夜の旅を、何の意志か何の慰めかも問わず、
は不要に思える、という意見もありました。
 私は複数を生きています
は、別の位置にいる自分と同じ存在(同じような引きこもり)か、過去 の自分が歩くほどに思考に出てくることを言い当てているようにも感じられる、作者はなんだかこう、隙があるからこそ、 秀逸を目立たせる不思議な存在だ、という意見もありました。

3797 : 道のはた拾遺 6.  鈴屋 ('09/09/17 00:25:31)
恋でのすれ違いを情景と脳内での心理的実景の中から見出していっている、
 衛星歯車
として捉えられていくものは言葉でもあるし、それは感情に直結している、悲しさは少し別の方へとふらついてしまう心理の終着でもある、自分の感情も、思いも回り、「あなた」の感情も回り、それは住まう場所が自転しているから仕方のないことなのかもしれない、
 警笛を湛える湖、
は気になった、僅かな感情の交錯が垣間見える中で、警笛は別の寓意を引き出してしまいそうで、それがあまりに合致するので、別れへと気持ちがほどかれていきそうな曖昧の美に芯を入れ過ぎてしまっているように感じた、けれども素晴らしい作品、という意見がありました。いつも思うことだが、連作の一節のみが投稿されその一節だけをどのように評価していいか悩む、良いと思うが連作は連作で読みたい、という意見もありました。遊ぶなら遊ぶで、もっと羽目を外して欲しい、という意見もありました。

3776 : 衣替え  りす ('09/09/10 00:31:18)
季節を身体的に捉えている、言葉に力がある、筆力が安定している、という意見がありました。読ませる手腕はさすがだけれども、いつもの冴えは無くて残念に感じた、地味だからどうこうではなく謎の呈示やリズムのスムーズさには足りないものを感じた、という意見もありました。

3817 : 鉄のきりん  草野大悟 ('09/09/28 00:18:48)
今までの作者を凝縮したようだ、冷静に読めない内容だけれども、この作品の良質さは際立っている、という意見がありました。鉄のきりん、とは点滴機器の付いた車椅子だろうか、或いは介護用の機器の具現だろうか、見せ方の問題なのかもしれないが、鉄のきりん、若干あざとさの方が勝るかもしれない、愛妻への情が矮小化されて読まれかねないところが難、もっと赤裸々なところから書けると感じる、そうすべき書き手ではないか、と感じる、小ネタは要らないのかもしれない、という意見もありました。

3760 : 祝祭前夜  残念さん ('09/09/02 20:23:56)
三日目、四日目はもう少しだけ先に行けそうな気もしたが、負の力でここまでいける作者もめずらしい、ここまで力を発揮する作品も珍しいと感じる、という意見がありました。かなりとっちらかっている印象だが、やはり筆力がある、痛く堅く寒い部分もあるように感じもした、という意見もありました。

3806 : アルビノ  朝倉ユライ ('09/09/21 01:43:29)
冒頭で魅力を使い果たしてしまった、あとはひたすら手法が古く、散漫、素質は充分に持っていると思うので注目していきたい、という意見がありました。ツカミはばっちりだと感じた、寒くガチガチ書く人には見習ってほしいとさえ思った、イメージの錯綜する呪文系であり、いまや絶滅しつつある携帯詩界隈では常套的に使われていた手法の一つでもある、月2投稿の縛りでどこまでいけるかを見てみたい、という意見もありました。悪くない、ジャンクフードのような勢いと錯覚があって良いと思う、連結部のものに音楽用語はありきたりかもしれない、DoorはDurの方が面白くなったかもしれない、という意見もありました。

* 

さて、次点佳作作品について触れていこうと思います。

3824 : 無題  ハレルヤ ('09/09/30 19:24:39)
まだデッサンという感覚を持った、言葉のセンスはあると思う、完成形を強く意識して書きつづけてみて欲しい、という意見がありました。ちょっとバラけ過ぎに感じる、わけがわからない煮込みの塩梅みたいであり感覚は悪くないとは思えるが、現状、ジャンク的な謗りは免れない、工夫を凝らせば格段に開花しそうな作品に感じる、という意見もありました。この作品は読み解く楽しさがあり、 解った! と叫ばさせられる部位が多々あった、多分、誤読だろうけれども嬉しさが勝る、一連:現在の日常風景、二連:亡くした母との思い出、三連:お彼岸の様子、三連での浄化が見事、悲哀を浮き立たせる一連もまた見事かもしれない、「拇指を浮かせてみる」ことから今はなき日々を自然と引き出してきている、二連、懐古的にゆがませた単語拾いが不思議さを増している、三連、
  朝方
 碧い牡丹の刺青をした毒雲が太陽を叱っている
朝方、に、太陽は少し印象が強いようにも思える、という意見もありました。惜しいと思ったのは、こんなに密集しながら隙間を大切にした作品なのに、冠したものは「無題」、引き締める何かが、あるのではないだろうか、という意見もありました。

3781 : 庭園  かとり ('09/09/11 04:06:05 *4)
巧くなってきている、ヘタではないが魅力には乏しい、という意見がありました。良いのは一連の感触、上手くなった、そこからどう作品を拡げていくか、課題かもしれない、という意見がありました。二連目、三連目と回収の仕方も上手い、もしも男女の別れが、ここにあるとすれば、それはひどくつまらないものに思える、そうでないなら解らない、それぞれの寓意は確立の高いものなので惹かれる、という意見もありました。

3787 : (無題)  bananamellow ('09/09/12 14:02:48)
 「白過ぎた。あまりに・・
    だから、濁っている」
ここは他の綴りに比べて位が低く感じる、だが悪くない作品、という意見がありました。化けるタイプだと思う、ただ一歩進んで欲しい、という意見もありました。背骨なり脊椎なりに憑依させた作品は幾つか読んだ記憶があるけれども、これ、なかなか悪くない、苦笑する痛さもグンと減っている、ただ相変わらず堅く、メタファの射程も遠い、先ずは命中せずとも着弾を狙わないと、良くも悪くも趣味の世界、期待はしている、基本、書ける人なのだと思う、という意見もありました。

3771 : ぱんつ  寒月 ('09/09/08 06:56:38) 
作者の作品群は、優良だとかそうでないとかで評価される(されない)ものとは違うような気もしないではない、ストレンジな味わいはある、しかし、この作者にしては「書き過ぎ」な印象もある、個人的には、大好きだけれども、それって嗜好の問題でしかないのかもしれない、という意見がありました。「ぱんつ」は、お花畑を渡る、なるほど、確かに、そうかもしれない、いや、そのとおりだ、
 こなたは荒野
というのも良い、荒れ果てているからこそ、あなたが、ぱんつがうれしい、
 明日にひるがえるぱんつ
そう考えると、ここまでの希望を表せた綴りは昨今の奇跡に思える、
 きくは昨日
「きく」は男性的な女性性にも捉えられる、そう読んでいくと、その後の中盤は、凡庸というか、もう少し先にいけた感がある、
 蜩
の行は特に、そう思った、
 ぱんつはぱんつを脱がない
 脱げないとももちろん 言う
最後は抜群に感じる、中盤の言葉遊びを、もう少し性のない性と他人を探し当てることによって確立する自我に深めていっても良かったのかな、と感じる、風は明日にひるがえしている重要な役割なわけだから、そこから必要なのは、多分、蜩の抜け殻ではなくて、脱皮している場合ではなくて、という意見もありました。

3769 : 口紅  ミドリ ('09/09/08 00:27:24 *1)
確信犯なのだろうけれども、この作品は作者でなくてもいいわけで、そのあたり本人は割り切っているにせよ、やっつけ仕事だなぁ、と感じもする、評価は意に介さないタイプの書き手なのだろうけれど巷の評価は赤丸付きで急降下する一方に思える、という意見がありました。とても解りやすく、詩作という行為を疑いたくなる、解りやすいし読まれるのかもしれない、けれども、電話、でんわ、など、もう少し気を付けてもよいのかもしれない、という意見がありました。

3804 : La maison anonyme  はなび ('09/09/18 17:41:15)
「価値」という言葉は失敗だと思う、説明に逃げないこと、悪くはないが、詩でなにをしようとしているのか、なにを伝えようとしているのかを考えたとき、まだ浅い、という意見がありました。北風よりも太陽の方が読まれやすい、題材にかかわらずチャーミングな筆は、お得かもしれない、という意見もありました。役どころを弁えつつ好き勝手にポエムを書く、それが拍手と笑顔で迎えられるであろう数少ない作家だと思える、という意見もありました。ここまではっきりと書かれる、もったいないと感じてしまう、という意見もありました。

3811 : どこへ行きますか  右肩 ('09/09/23 20:58:52)
「ヒロシマ」という言葉の失敗、ただそれを作者も充分に解っている様子だ、という意見がありました。冒険はしていると思う、が、バランスその他よろしくない、という意見もありました。作者は、相変わらず巧い、詩を上手に作っていっている、作っているな、と感じてしまうのが毎回毎回なのは悲しいことなのかもしれない、ヒロシマで作るとなおさら、悲しい気持ちになる、下手なヒロシマの方がよほど力を持つのではないだろうか、という意見もありました。

3765 : 夢機械  熊尾英治 ('09/09/04 21:08:25) 
この作者は今まであったものをいつまでも小さくついばんでいる気がする、それが作品に表れてしまっている、という意見がありました。

3792 : 無伴奏組曲  浅井康浩 ('09/09/15 17:44:09)  
タイトルに全く入れなかった、空気感は見事、綴りも見事、その先を書いていかなければならない求められている作者を思うと胸が痛いけれども、
 それほど、しんそこだいすきでした。
この、はっきりとした一文は、この位置ではないと思うし、もっと探れたと思う、という意見がありました。このやわらかさ、中性的な文体こそが作者の魅力の中枢、レスの一部で、そこに苦言を呈するものがあったがこれがなくなると作者ではなくなる、自身の横ばいには本人が一番気づいているだろう、という意見もありました。作者の筆の綺麗さが映える、ただ、いつもよりは洗練されきっていない印象、堅くないのは良いけれども、装飾を施すよりも他にやれたことはあるだろうに、と感じた、もったいなく酔いきれない作品に感じる、という意見もありました。

3809 : いん ざ びゅーてぃふる わーるど  葛西佑也 ('09/09/23 02:07:22 *1)
以前より感傷がうすれ、冷静に言葉を置きにきている、各連のギリギリの関連性、「/」での装飾はよいが一行内のスペース空けはどうだろう、という意見がありました。個人的に面白いかそうでないか、と問われたら、全く面白くはないと感じた、正直、紙媒体の現代詩同様、再読する気にはなれなかった、タイトルが英語変換平仮名なのも相当に痛々しいように感じた、ただ、詩的言語の新しい咀嚼にチャレンジし続ける作者の意識や姿勢には一票を入れたい、痛いともとれる言語で如何にして読み手に寄り添うか、また、そのハードルを越えんとする事が、この作者のエンジンなのかな、と思える、という意見もありました。作者はいつも独自を眺めていて、見られることを意識していて、良いと思う、「/」を一番使いこなせている作者の新作は、まだまだ拙い部分があるけれども、そこが魅力となり完成していないところに非常に惹かれる、作者のコンプレックスと、そこを中心に思考が回るというのは新しいことではないけれども、何故か葛西佑也がやると可能性が生まれるような気がする、不思議、という意見もありました。

3825 : Cadenza  はなび ('09/09/30 22:11:33)
洒落ている、適度な品の良さと深みもある、リズムもキュート、タイトルとのリンクに、やや当惑するけれども、あまり気にしなくてよいのかもしれない、レスは少ないけれども、作者の作品は嫌われにくいように感じている、これは意外と大切なんじゃないか、とも思える、という意見もありました。音楽用語の踏襲があまりに見事で良質、どんなアドリブをやっても許される作品の型なので、ここまで跳ねていることに嬉しさすら感じた、
 みんな黒くなる
 青と赤と黄色がまざって黒くなる
ここの、
 青と赤と黄色がまざって黒くなる
は、必要なのだろうか、楽典的には、
 青と赤と黄色
がしつこくても3回あるのは正解だ、黒が2回になっているのは考えるべきかもしれない、
 奥の
の3回も正解だと思うけれども、それだけにもう一工夫欲しい、という意見もありました。

3822 : 森の言説  黒沢 ('09/09/29 21:22:26)
不安と怒りに取り囲まれたテキストに、ややウンザリしながらも、例えば、爆発と樹と脳髄と進化論の枝葉図とのアナロジーから収穫した果実の苦さに、惹かれる、作者の久々のヒットなのではないか、という意見がありました。こういう作品を書きたくなることって、ある、それは良く解る、作者は書いてとても気持ち良かったのでは、と思う、「巨人鳥」など、読み手のためなのか自分のためなのか、ブレてどちらにも行けなかったりした作品よりは、成功したのかもしれない、爽快感もあるかもしれません、年間賞を獲った時は、丁度、書いてみていっている時期と読み手との距離の塩梅が奇跡的に合致していたのかもしれない、詩は技術だけでは語れない、が、作者はとにかく技術をどうにかしようという地平で戦っている、
 戦時のそらの様に懼れる。

 幹と葉とが電撃されるのに合わせ

 たえ難い悲しみの余り、闇の只中で私は、瞳を、花の様に開いた。

 その不可視の残照を受け、私が…、私の物でない前頭葉が、独りでに帯電していく。
などが特に、もっと上に行けるのではないかと思わさせられたりした、中途半端で達しきれていない様相を持った、という意見もありました。この作品はこの作品で、感覚と世界観をきちんとまとめていると思う、戦時さえ巻き込まなければ、もう少しなんとかなったと思う、思想の栞が不用意に挟み込まれていて、そこが邪魔に感じる、という意見もありました。

3790 : 千の雷魚  DNA ('09/09/14 00:32:52)
上手くみえるが巧いのかどうか判断に苦しむ、こうしてこの作者も、このまま凡庸になっていってしまうのだろうか、危惧、という意見がありました。毎回、この作者の作品は後からくる、この作品もそうなのかもしれないが、今回は選ばれている言葉に肥大していくものを感じなかった、凡庸な大袈裟という感覚を持った、しかし、その大袈裟は良質だ、という意見もありました。

・惜しくも選からは漏れましたが、その他、以下に挙げる作品が注目されていました。

3788 : 箱  蛾兆ボルカ ('09/09/12 15:27:44) 
2連目、意図であればやはり足りない、そこを書けるようになるまで寝かせてもいい、という意見がありました。解りやすい寓意として、またわかりやすい比喩としての箱、それを愛する「僕」のあり方は特定コンビが面を立方体に高めたあり方に似ているかもしれない、解りやすい、ありふれた比喩なのに、何故かいままでよりも新たな力を感じるのは何故だろう、過去形の連続から導く場面展開と現在形での余韻のおき方がうまく作用しているからかもしれない、二連目は、「*」をどうにかして欲しいと思う、説明に割いて押し付けようとして引き寄せてくれない愚かな詩文を、逆説的に使用する、説明のあり方は、作者のよい部分なのかもしれないとも感じる、説明から遠ざけて、ただの爪あとになるものを入れてもよかったかもしれない、作品というよりも、作者の漂い方が個性的で、できそうでできないことを平然とやっていて、そっちの方が気になる、という意見もありました。

3758 : アレジオンコースト  mei ('09/09/02 11:04:27)
惰力が強く、無駄にくどい、という意見がありました。全体的に悪くはない、また何かの二次創作的ものだったら、何故、詩を書くのか疑わしく思えたりする、という意見もありました。

3754 : あなたに  んなこたーない ('09/09/01 00:01:26 *1) 
書きやすい作品なので、ひとつひとつの結びつきや比喩への跳躍がもっと望まれる、下敷きがある場合、わずかな跳躍では新たなるものとしての作品成立は難しいのかもしれない、という意見がありました。

3796 : オオムラサキの幼虫  蛾兆ボルカ ('09/09/17 00:08:25)
ダサい(素敵だ)、興味深く感じたのは、怖さからか詩文を説明に寄せていき情感を削ぐ作品が多い中で、一連、詩文なんて気にせず説明に特化したことだ、馬鹿な詩の書き方だけれども、心臓の強さというか何も考えていないと言うか、だから結局、なんで良さが抽出されるのか、よくわからないのだけれどもわかる部分が良い、という意見がありました。誰も書かないあり方が実によいと思う、ただ、優良にまで突き抜けていかない、少し偏った思想を盛り込んだり、もっと徹した馬鹿さ深めていくと次の段階へ達するような気がする、という意見もありました。

3759 : ききて  破片 ('09/09/02 19:01:58) 
作者の、この成長力には驚かされる、作品としての出来も、かなり良い、合評での意見を大切にして突き抜けていって欲しい、という意見がありました。優良に推挙しようか迷った、という意見もありました。

3816 : MRI  snowworks ('09/09/26 21:58:57)
若い作者なのだろう、優れているわけではないけれども、この素直な作品は素直な良質さを残していて、抒情が人間がある、という意見がありました。成長過程がある、これからが気になる、とにかく読んで書いてを繰り返して欲しい、という意見がありました。

3793 : 女子、唯と彼氏、Y  菊西夕座 ('09/09/15 21:18:44)
作者の作品のなかでは割におもしろいと思う、セリフだけで構築する連というのもアリだとはおもったが、20がトゥエンティー、のところまで読んで、先の長さがのしかかってきた、という意見がありました。高橋源一郎を愛読していた20年前の自身であったなら、もっと楽しく読めたのかもしれない、そう思った、という意見もありました。かなり頑張っているにもかかわらず、駄洒落が驚くほどに活きていない、この方面では、競馬用語で「相手なり」のような書き手だ、自分でレースなりゲームなりを作れるようになって初めて、文学極道のエンターテイナーと呼ばせていただきたい所存だ、永遠なる前座で良いのか、と苦言を呈したい、という意見もありました。作者は悲哀があるとグッとよくなる、全部、悲しみや辛さをごまかしていくしかない、そんな悲しさ、それが綴りのくだらなさと相まって、高まっていく、Yがイマイチ解らなかったが、二股だと解り、前が開けた、中盤にもう少し展開が欲しかったな、という気持ちもある、悪くはない、という意見もありました。

3756 : 八月のひかり  凪葉 ('09/09/01 07:44:03)
飽きられつつある作者の筆、そこの自覚と、それをどうクリアしていくかが課題に思えた、という意見がありました。改行や「、」についてもう少しなんとかなりそうな気はするものの、(二連で語彙が少ないのでは、と思いもしたけれども)三連まで興味深く読めた、四連以降の展開と言葉と空気感がついていけていないように思え、これは大きく足を引っ張るのには十分な要素に感じた、三連、「腐った」があるので、四連にある過呼吸は出さなくてよかったのかもしれない、要素が重なり崩れたのかもしれない、という意見もありました。

3801 : やさしみ  相田 九龍 ('09/09/18 00:27:35)
「やさしみ」、は実際のところ本当に代替えが利かない表現だろうか、そんなことはないと思う、すでに2年以上も前に『poenique』での即興詩コーナーでタイトルとして使われたこともあり、個人的にはわりと見る言葉なので、やさしみについて語るべき言葉を作者が持っていないのだと受けとれもする、という意見がありました。行あけに疑問を覚えるが、繰り返しが薄皮一枚で繋がっている、良質さは、以前よりずと上に来ている、という意見もありました。

3755 : 当て馬  丸山雅史 ('09/09/01 01:08:09 *1)  
知識は間違っているのかもしれないが、偏った性癖が面白くはある、作者は、いつも勿体無い印象を受ける、向こう側へ行こうとして行ききれていない印象、一連目の説明のような部は外して、二連三連の変態部と死だけをネチッコク書いても良かったのかな、と思う、という意見がありました。

3814 : イソノ  ゼッケン ('09/09/26 17:53:19)
返歌というか返詩というかイチャモンなのかもしれない、これはこれで単体としても楽しめる、いろいろ壊しながらリーディングする人向きのテキストだ、という意見がありました。作者は波がある、面白い部分は面白いと感じる作品、しかし、この作品を再読しようという気は起こらなかった、という意見もありました。
 
3813 : 欠落  破片 ('09/09/24 20:47:20)
らしさが失われつつあり、それが良いのか悪いのかを判断しかねる。過渡期なのだろうか、という意見がありました。

3782 : きよしろーは生きている  こんぺい ('09/09/11 13:18:52) 
結構きちんとしたつくりの作品だったので驚いた、カオリは話者だろうか、どうでも良い作品だけれども話の不可思議さが印象的、ただし、ここから始まってほしかったという意識が粒立つ、という意見がありました。

3773 : 雪の女王  右肩 ('09/09/09 01:17:49)
作者はいつも奥がない、表面での勝負で、その表面がどうしても躓きもせず新しくもないものであると、突出することは難しそうだ、という意見がありました。

3774 : リストランテ「貝の触手」  プリーター ('09/09/09 15:08:29) 
歯切れが良い、悪くない、もう一歩進めそうだ、という意見がありました。

3778 : 未来  榊 一威 ('09/09/10 18:06:16)
作品としてはまだまだかもしれないが、作者の心理が剥き出しになっていて、それは悲しいくらいに本当で、素直な小さい姿を抱きしめたくなった、という意見がありました。

3820 : 祭り、花火、姉と紅い夢  結城森士 ('09/09/28 16:50:54)  
よいと思う、金魚をうまく使っている、効果的な装飾とそうでないものが混在しているので、もうすこし無駄を省いて良いのでは、特に三点リーダーは不要、という意見がありました。大分、うまくなってきている、前半、後半、甘い個所が特に目立つ、惜しい、という意見もありました。

3786 : 無題(冬)  緋維 ('09/09/12 09:42:37)
丁寧に推敲を繰り返した跡は窺える、もう一歩、という意見がありました。

3819 : 焼肉  はかいし ('09/09/28 02:28:04)  
エスキスのままむりやり完成形をとってしまった印象、かなしみと言いながらそのかなしみについて自分自身も漠然としているため読み手に提示しうるものがない、詩のなかでまで詩を書こうとしないこと、ここに焼肉を出してくるならもっとエグく書くつもり(覚悟)で、という意見がありました。

3768 : アナフラニール  mei ('09/09/07 10:54:33)
アレジオンコースト同様に読み易いお経のようなリズムが辛い、無駄に冗長、中身が無いのはいいとしても、劣悪な言葉を並べ立てても足りないものを感じてしまう、という意見がありました。下手ではない、二次創作の域を超えていない感覚を得る、作者の作品を読むと、ぱぱぱ・らららさんの形骸の極地でわざと編み、強烈な個性にするという凄さに、改めて驚きを得る、という意見もありました。

3783 : H氏の日記(検閲および推敲済み)  んなこたーない ('09/09/11 17:11:10 *1)
 これでぼくも今朝のように間違って他人の孵卵器のなかで目を覚ます心配がなくなった。

 しかし、ときどき宇宙からのコンタクトがあるようで、そのぶんだけ地球上でのコミュニケーションに支障がでるらしい。会話が妙なところで頓挫する。その仕草があまりに自然なため、これは自己訓練の結果ではないか、とかえってぼくは疑ってしまったほどだ。一方、ベル・ボーイは硬質で複雑な陰影を表情に宿した白人の畸形児である。おそらく両親のどちらかがキュビストであったのだろう。

読んでいくと、「おそらく両親のどちらかがキュビストであったのだろう。」など、ドキッとさせられる部分があり、妙に納得させられる、奥にある表面とでも言うべき整合がところどころ意識を弾き合わせている、中間部分、盛り上がりに欠け、たんたんと続きすぎている、後半三行で少し盛り返すけれども、この長さを考えるとあまりにコントラストが平坦、削っていって集中的に書き込んで、もっと部分をはっきりと打ち出していったほうがよいような気がする、という意見がありました。

3818 : (無題)  マキヤマ ('09/09/28 00:50:58 *3)
わざとピンボケの写真を撮っているのか、文字どおり「眠っている」、来るなら本気で来いと言いたい、という意見がありました。空気はある、と思う、いろいろ惜しい、という意見もありました。相変わらずな負の力、彼女達やあなたは置き換えられるし、狭い範囲内に向けて書かれたものだとも取れる、上から硬骨に言っているような作品に思えた、負の力で、それが別の方向へ、新たな音韻を探り出していけたらよいのかもしれないが、今回は幅を持たせられず、成功しているようには思えない、という意見もありました。

3789 : 無題  ハレルヤ ('09/09/14 00:13:29) 
60年から70年の頃の、青春抒情みたいだ、平易な情景が浮んできて、底が浅い詩情を感じてしまう、
もう少し、工夫があれば、もっと味わいのある、違ったものになったかもしれない、という意見がありました。悪くないと思う、一連はいらないのではないだろうか、また、最終連も、もう少し進めそうだ、という意見もありました。

3812 : 眠り  凪葉 ('09/09/24 20:37:41 *3)
書きたいものを書くための方向性を誤った感がある、イメージを煮詰めて煮詰めて、削り出した結晶がこれらの語句なのなら、あまりに凡庸であり個体差がない、という意見がありました。もっと整理できたように感じる、惜しい、という意見もありました。悪くないけれども、平板、眠りと冠して、すぐ眠りと出てくることから、どうかな、と感じてしまう、という意見もありました。

3799 : いっぱいや!  ミドリ ('09/09/17 19:47:17 *1)
青春的所産のところで踏み留まる、といいますか、そこから半歩たりとも動かないぜ的なスタンスは、潔いといえば、そうかもしれない、もったいない、とも言える、という意見がありました。作者だと思わないで読んでも作者だと解ってしまう部位は面白いのかもしれない、初期ウルフルズのような書きたいことは取りあえず恥ずかしいから変なオブラートで包み、別の部位を際立たせているような感覚がある、という意見もありました。コメントがたくさん、ついているということは、好き嫌いではなく、読みやすいということなのだろう、ただ、詩としての評価は別にしなくても、よい作品のように感じる、という意見もありました。

3785 : 東京駅で君をみた  snowworks ('09/09/12 02:03:08)
作者のいう「実際の生活での感動をそのまま詩にできないか」でこのアプローチだとするなら、詩の言葉に込められたものをなんだとおもって読み、書いているのだろう、なにか根本が違う気がする、という意見がありました。

以上です。

Posted in 月間選考, 雑記 | Print | No Comments » | URL

2009年8月選考雑感

2009-10-03 (土) 11:13 by a-hirakawa

今月も勉強になりました。
ありがとうございました。

今月は、

3684 : 夏にうまれる  ひろかわ文緒 ('09/08/04 12:23:34 *2) 

3712 : 桃  鈴屋 ('09/08/13 17:54:04)

3698 : SUMMERHEAT  軽谷佑子 ('09/08/08 14:39:09)

3720 : Brownbear(暮らし)  ひろかわ文緒 ('09/08/15 14:53:33)

以上、4作品が月間優良作品に選出されました。

3684 : 夏にうまれる  ひろかわ文緒 ('09/08/04 12:23:34 *2) 
とても素直な作品、だからこその体温がある、という意見がありました。 「Brownbear(暮らし)」と比べても読み手の視点の制御が上手く行ってると感じる作品だ、という意見もありました。透過していくのは読み手である自分の心のようだ、しかし、「まきあがる真砂に」の連は、ぐっと濃く入ったところで少しだけ息苦しかった、もう少しスマートに書いてもいいのでは、という意見もありました。やや纏まりには欠けるが、たどたどしい筆運びとは逆に柔らかな詩情が揺れる作品だ、丁寧に書こうとする意識や姿勢もいつもよりは感じる、夏向きな開き具合も悪くない、多くの書き手が大衆に背を向けがちな時代にあって読み手に寄り添おうとする貴重な作品であり、読み手に受け入れられる作品だと確信する、という意見もありました。

3712 : 桃  鈴屋 ('09/08/13 17:54:04)
相変わらずのレベルで過渡期も入っている、乱れが緊張と濃縮を目立たせて良質に仕上がっている、という意見がありました。桃は単純すぎるだけに試される、部分的にも勝っている部位がある時点で見事と言いたい、という意見もありました。読んで得する作品だ、五感を巧く刺激しながら、無理なく、肩こりもなく読め、後味の残し方も良い、再読に再読を誘う、という意見もありました。作者は巧い、ただ、「動めいて」は「蠢いて」または「うごめいて」の方がノイズレスでスムーズな印象があり、「プテラノドン」云々は些かやり過ぎの痛さもあるように思う、向こう側と此方とのシンクロナイズの妙を、もう少し練れた感がある、という意見もありました。桃に対して、ただ甘いだけではないところの魅力にも深い着眼が欲しかった、という意見もありました。最後が安易とまではいかなくても、予測の範囲内であったので少し惜しまれる、しかしながら、とっちらかってはいるけれどもユニークな構成、手数を出し過ぎて崩れそうなテキストをなんとかまとめる手腕(無謀とも思える跳躍の連続の末に辿り着く無難な着地、等々)は、評価されて然るべきだ、という意見がありました。

3698 : SUMMERHEAT  軽谷佑子 ('09/08/08 14:39:09)
読めば読むほどに裏にある人間関係を推察させる力もあり、読み手の中で育っていく作品に思える、という意見がありました。過剰なものからは距離を置こうとする、しかし、外的なものと内的なものとの繋がりには殊更に敏感な、そのようなところから書かれているように感じる、よって、ありがちな仙人的諦念には向かわない、そこも良質、という意見もありました。「こびりついた詩句」は、「食べて」いるのではなく、恥ずかしいので懸命にしかしそれと悟られまいと「隠している」のではないか、とは思う、筆致は多少変わったけれども、フォーカスを絞りきることのない淡々とした筆による寒々とした心象に胸がチクチクする、例えば、いくら謝罪しても取り戻せないものがある、というのも裏テーマのワン・ノブのような気もする、という意見もありました。作者の作品群は「未完」の印象も少なからずあるが、それ以上に、忘れ難いものばかりだ、ただ消費されていくだけではない詩を書ける人であり、そうした書き手は両手に余る現況だ、という意見もありました。

3720 : Brownbear(暮らし)  ひろかわ文緒 ('09/08/15 14:53:33)
男性目線になると、どうも毛穴のようなものは遠ざかりますが、その分、詩情が剥き出しに立ってくる、最終連の構成へとつなぐためにもう一段階あっても良いのかな、と思ったけれども、たどり着きたくなるだけのものを持った作品に感じる、という意見がありました。この作品の情報の移ろい方は少々とまどう、けれども群を抜いて書けてるのは分かる、という意見もありました。絶賛しか思い浮かばない、という意見もありました。

さて、次点佳作作品について触れていこうと思います。

3739 : 護岸  bananamellow ('09/08/25 01:05:41)
この作品は評価が真っ二つに割れました。現代詩の爽やかさが立ちながら魅せるという立場と音接の立場の両義を未完成なままに成り立たせている、という意見がありました。評価はされそうだが、内実以前に外観があまりよろしくない、若い人には、まず読まれない痛い空気が満ちている、という意見もありました。何にも響いてこないけれども鉱物質の鋭利な美しさは評価したい、ただ、言葉が固すぎ、上手だとは言い切れない、という意見もありました。かなりの、相当な力があるのは伝わるけれども、この作品はあまり良いとは思えない、部分的にロマンチックな筆致サービスが、この作品の中では、逆にシラけてしまう位置にあり惜しい、「灯台守〜三通の封書」とか、確かにわかるけど、過ぎた使い方に感じる、という意見もありました。

3696 : はばたきのうた  ゆえづ ('09/08/07 22:57:21)
作品舞台がもう一つイメージできない描写の曖昧さが気になるけれどもシンプルで優しさに満ちたところが魅力的だ、という意見がありました。独特の言葉の流し方はとても良質、ただ、最後の二文で削ってしまっていることは否めない、という意見もありました。
 どんぐり あげるよ
に痛切な哀感がある、この作品に要らない部分はない、という意見もありました。ドキッとさせられる書き方、「さようならしかないのに なんでこんにちはしちゃうんだろう わたしたち」、使い回されたような言葉だけれども見事な言葉選び、という意見もありました。

3742 : 八十八夜語り ー 、ー  吉井 ('09/08/27 00:53:47 *2)
「れてて」以前に戻って作者は久しい、後退なのか、我が道を進んでいるのか、この作品だけでは力が不足しているように思えた、という意見がありました。セラミック、は安易だけれども、ラストの2行は良質、とても良い、という意見もありました。

3747 : つぐみ  森のめぐみ ('09/08/29 16:41:06)
面白いとは思う、今回読んだ作品の中では、それなりに印象に残った作品なので、全然ダメってわけでもないと思う、という意見がありました。もう一歩先に進めそうなまま留まっている印象だ、という意見もありました。一方で、非常に高い評価もありました。

3702 : 太陽の沈んで行く公園で、彼女は話続けている  ぱぱぱ・ららら ('09/08/10 02:57:44) 
上手い、行き来も見事、方向性としてきちんと成立している、吸引力がある強力な部が欲しいとも思う、という意見がありました。撰者の評価が割れる作者だけれども、この人の脱力具合がとても好きだ、脱力しているのに実存の切れ味があるのは作者ならではの文体だと思う、という意見もありました。

3736 : cosmos  凪葉 ('09/08/24 07:43:54 *2)
悪くない作品、良質な関係、ただし読みやすさばかりを追究して、大切なものをいくつか落としていっている不安感や不満感がいつも以上に残る、という意見がありました。体験談を書けとは言わないけれども綺麗に過ぎ血流が足りない、という意見もありました。悪くない、良い作品、けれども、もっと型を壊しても良いのかもしれない、そこまで巧くないところが、しかし魅力になっている、という意見もありました。
悪くはないんだけれど、優良なり次点を与えるほどかと言われると考える、この作品はそっと評価されるべき、という意見もありました。読みやすい文章を書いているけれども、彫り込みが浅過ぎる、という意見もありました。

3677 : 01  いかいか ('09/08/01 08:32:04) 
濃密で作者は辛いのでは、と裏を思わせてくる端々の切れ目が魅力的だった、という意見がありました。自分の筆を確かめながら、書けることを意識しながら書いた、集中力がなくなって止めた、それだけの作品に思えた、という意見もありました。後半、スターバックスからラストは良い、前半は文章が練られておらず粗だらけで難あり、作者の期待値からもこれで良いはずがない、という意見もありました。

*この作品への右肩氏のレス、破片氏のレスに関して、高い評価がありました。付記しておきます。

3691 : 暴虐!怪人ホウセンカ男(Mr.チャボ、怒りの鉄拳)  Canopus(角田寿星) ('09/08/05 18:23:04 *1)  
途中から普段どおりのチャボの哀愁が前面に出て一気に面白くなる、けれども
 怒っている
 しめった風の吹く夕方
 私鉄沿線最寄り駅前「鳥凡」の店先に坐りこんで
 怪人ホウセンカ男が
 怒っている
 風鈴の音色は不快にやかましく
 日もまだ暮れないうちから
 すっかり酔っぱらって
 上半身は裸で 怪人ホウセンカ男が
 怒っている
この一連、導入としてあまりうまく機能していないように感じる、掴むものを引きずり込むものをもたせるためにも、一呼吸で終える断続の文章で書かないほうが良かったように感じる、中盤まで持っていけていないように感じる、最後も疑問、切れのよさ、とまでは言わないけれども、哀愁の残響は、もう書かれているため継ぎ足さないほうがよいような感覚を持った、という意見がありました。相変わらず書けてるが、最近のこのシリーズはちと冗長な気がしないでもない、その冗長な言い回しが、本来あるべきと想像されるこの作品の方向性とは食い違ってるような印象を受ける、という意見もありました。まがい物に託した懐古趣味の空話だと思っていたが見当違いだった、人間がにじみ出ている、しかし背中の哀感を感じろとか、演歌みたいに後ろ向きで、前を向いて倒れたい読み手にとっては、きつすぎるかもしれない、という意見もありました。これは良い、ユーモアもうるさくなくてちょうどいい、けれど身につまされる、というところで、ちょうどスタンダードに収まってしまうところが、却って弱みかもしれない、という意見もありました。チャボ作品に関しては書きたいものがはっきりしていて良さを感じる、「あなたたちはなにを書くのか」を他の投稿者に問うてみたい気持ちにさせられる、という意見もありました。

3675 : はだかバスに乗って  蛾兆ボルカ ('09/08/01 03:45:52)
もう少し対照を意識すると良いのかもしれない、疲れをめいっぱい一連で書くなど、緩急を際立たせても良かったのかもしれない、しかし、この作品はこの作品でなおしようがなく書きたいことを十二分に伝えきっている、不思議さが立っている、という意見がありました。余剰がもう少しあれば、もっと良かったかもしれない、シュールな状況描写が前面にたちすぎたかもしれない、それが作品の核心を必要以上にぼやかせてしまった感じになり「だから何?」みたいな読後感に落ち着いてしまう勿体無さがある、という意見もありました。とても面白かったのに、「はだかバスに乗って、僕は君に、会いに行くよ。/セックスをしようよ。」落ちが良くない、「君」ははだかバスの外部にいるので、得体の知れないネタから、古女房みたいな現実に引き戻されるみたいだ、誰でも良いから、手当たりしだい、見ず知らずのはだかバス乗車の美女・美少女とエッチしたいという妄想で締めくくられた方がマシかもしれない、という意見もありました。

3701 : 果の石像  シンジロウ ('09/08/08 21:58:19)
作者の作品は格好悪さをきちんと見つめていて素晴らしい、この作品も裾があるためいくらでもとりようがあり、そこが良い、素直になれない俺は性を通し感情の存在をみつめるのだろうか、見られていることから逃げないそこに石化を望む、最大の自身の内省がある、という意見がありました。
しみじみと良い、優良となると少し厳しいかもしれない、優劣を競う作品なのではないかもしれない、この作品を多くの人に読んでみて欲しいという気持ちは残った、という意見もありました。自分が後生大事に抱えてきたイデーを、突き放して立ちんぼにする、単にコメディーにするのではなくて、得体の知れないものとして、再配置し、もう一度、失われたイデーを生きること、興味深い作品だ、という意見もありました。

3741 : クマのヘンドリック、ラーメン屋さんでアルバイトをするの巻!  ミドリ ('09/08/26 23:04:38) 
悪くはないのだけれども、だからといってなんだという感覚もある、もう少し情けない擬人化を望んだのかもしれない、という意見がありました。第 17連の会話は、行空けした方が読みやすい、適当に作っている場合が多い作者だけれども(レスポンスで推敲しないのを信条とするとか、言い放っている)、今回も(顔文字を除いて)、ほぼ問題のない文章だと思う、(あくまでもミドリ節の範囲内での話)、という意見もありました。実存大賞を取った後、作者はガラッとスタイルを変えましたが、読者の受けは良いのに、撰者の評価は低いのかもしれない、という意見もありました。純文学という名の偏見で、ファッション雑誌のショートコラムを評するようなことをしているのかもしれない、興味深くはある、という意見もありました。作者が持つある種のあざとさにベールをかぶせるとこんな感じになる、という作品で方向としては「Yes!」よりも成功しているように思える、けれども「優良」とか「次点佳作」とかの基準で評価される作品ではないように思う、という意見もありました。

3717 : 夢みればいつも  草野大悟 ('09/08/14 23:32:57)
現代詩とは、ほど遠い、奇妙な安心感がある、立原道造をもっと少年にしたような色合い、という意見がありました。この作者の良いところが出ているような気がする、命に裏打ちされた言葉たちが光る、という意見がありました。

3689 : (無題)  水 ('09/08/05 08:41:20)
気になる作品だった、性的に惹きつけ体感させる語彙でまさぐり、錯奏の中から物語も見えてくる、という意見もありました。この作品はどこに視点を置いて読めば良いのかというところから分からない、という意見もありました。第4連が不明瞭だが、面白いし、奇麗だとすら思う、という意見もありました。

3743 : Je ne sais pas 知らない  はなび ('09/08/27 21:08:53)
三連目までとても良かった、けれども四連目以降なし崩し的にメッセージ性が現れて足をひっぱっている、五連目六連目は結論を安易に手渡しすぎに感じた、という意見がありました。一連二連三連と素敵な部分を大切に拡げてほしい、という意見もありました。

3681 : メークレイン  破片 ('09/08/03 02:30:41 *1) 
「憂いは同調するのに、/思惑が、次元を分かつ、」ここが消化されていたら優良に推したかもしれない、瑞々しいものを読ませていただいて感謝している、という意見がありました。一時期のやわいファンタジーライトノベル的文体が嘘のようだ、作者はこういった書き方があっているのかもしれない、しかし、非常に惜しい、と思う、それぞれ良いのだけれども連結が上手くいっておらず、そのためダマのようになり、なじんでいない、また、選び抜かれたとは言い難い部分も目につく、という意見もありました。場面を切り取って、何作品かに分けていった方が、その上で作品にまとめていった方が良かったかもしれない、作者には期待している、という意見もありました。

・惜しくも選からは漏れましたが、その他、以下に挙げる作品が注目されていました。

3745 : 砂の上の植物群  かとり ('09/08/28 20:26:09)
作者の成長にまず感動した、酷いとも思えたこれまでの作品から抜け出て方向性を掴んだように感じた、それを排除しても良質さがあり詩情を大切にしている作品に思える、という意見がありました。作者は短く書いていく連作から見出していく方向がぴったりなのかもしれない、という意見もありました。何も書いていないのに等しいが、美しければそれでいい、美しければそれでいいといって評価を出すには、足りない、という意見もありました。良くもない作品だけれども、この作者は伸びるかもしれない、という意見もありました。

3715 : おいらんの瓶  プリーター ('09/08/14 17:57:56) 
最初、あまり残らなかったけれども、何度も読むうちに魅力に取りつかれた、
 ふりかけ
性的な印象の残される中で、この比喩が探り当てたものは図り知れない、という意見がありました。良質な小品、食品添加物はやり過ぎかもしれない、という意見もありました。

3705 : 球形の果実  はなび ('09/08/10 12:25:33)
 そんなイメージの絵画のような
でガックリしてしまった、一連はとても良いように思える、膨らましていくと、または点にしていくともっと良かったのかもしれない、二連三連のどんどんパワーダウンしていく感覚が呼んでいて、勿体無さを芽吹かせる、という意見がありました。読むところ一切なし、この人はまともな作文を書くことからやり直してくれないと、 読むに値しないものとして作者イメージが固定されてしまうのではないか、という意見もありました。

3718 : 昭和二十年八月  右肩 ('09/08/15 10:12:20)
 言葉が打ち抜かれた
は、もう少し暗的に書かれても良いかもしれない、いつも思うのだが巧いし解りやすすぎるけれども、そこに作者はいるのか、と問いたくなる、技巧の極地のみで、感情がないのでは、と疑いたくもなる、という意見がありました。解りやすいので読めるが、底にあるもの(詩として汲み取る、読むもの)が全くない、という意見もありました。エネルギーが空回りしている、次点に入られるかどうかの戦いをしているような印象を抱いた、という意見もありました。

3731 : SSDD  debaser ('09/08/22 04:14:37) 
うまい、相変わらずだ、これまでの作品を下回っているのは、魅力の半減に他ならない、という意見がありました。最後の3行が了解不能だった、さっぱりわけが解らないのに納得させられてしまう一条節は今回は不発のような感覚だった、という意見もありました。

3686 : 水位の上昇  mei ('09/08/04 14:22:32) 
拙い、という意見がありました。何も書いていないが、するすると読めるので下手ではない、だが、書くことがないのならば、書かなければいい、という意見もありました。

3704 : まごころを君に  mei ('09/08/10 07:24:07) 
悪くはない、終わり方が下手、という意見がありました。問題外作品、「まごころを君に」をエヴァンゲリオン10年前の傑作劇場版から取ってきたのだとしたら、 程度の低い作文に上等な名前を冠するのはやめていただきたいと思う、という意見もありました。

30.3725 : メークブライト  破片 ('09/08/19 04:01:11)  
第6連目が再読してもつかめなかったが、他は概ねイメージが連鎖しており、作者にしてはずいぶん上手、或いは上手になったな、と感じた、越境と青のイメージがある、「おどろう」は著しくいただけない、イメージの流麗な連鎖を損ねている、という意見がありました。全体として、まっとうな文章ではないが、独自性なのか、まだまだなのか解らない、スタート地点には立ったと思う、という意見もありました。

3728 : Yes!  ミドリ ('09/08/20 22:58:04 *1)
最後のYes!だけ、書きようが悪かった、という意見がありました。ある意味で言葉やシチュエーションが持つインパクトの利用の仕方が上手いなと思う、けれども、こういうのはテレビドラマやゴシップ誌で 十分すぎるくらいに事足りてないか、と安直に思う、という意見もありました。

3753 : 夏のゴールド  チャンス ('09/08/31 23:57:32)
どうということはないが奇麗だ、こういうのは様式美に至るまで練磨してもらいたい、という意見がありました。

3744 : 祈り  イモコ ('09/08/28 00:37:17) 
率直に言うと素材(作者の世界観)のまま皿に盛られて出てきた、という印象が強い、調理しても盛りつけにこだわっても小さくなるだけのようだけれども、ホントに小さくなっておしまいなのだろうか、というのは確かに気になる、という意見がありました。散漫で、何を伝えたいのか、何を語っているつもりなのか、それぞれの連はほぼさっぱり分からないのに、作品を貫く情感、祈りはちゃんと伝わってくる、ただ下手だと切り捨てられない不思議な人、という意見もありました。

3729 : コンクリートの壁をゆっくりと滴り落ちるハチミツ  鈴木妙 ('09/08/21 15:06:54)  
面白い部分もあったけれども、これだけ書いていたら部分があっても当然だ、読み終わって、見合う満足や育ちがないのは勿体無い、これだけ長いのだから全体が魅惑的であるよう、意識する必要があるのでは、という意見がありました。

3710 : 無題 (1)  如月 ('09/08/13 10:45:03)
作者らしさがあるけれども、作者の作風から更に奇麗さを追求すると、どうも作り物臭さを感じる、という意見がありました。一連から、とても良質、それを最後まで続けられていない、この方向性の作品は、粗が少しでもあると目立ってしまうから気をつける必要があるのでは、という意見もありました。第6 連までとてもよかったのだが、本の喩になってから著しく失速した、という意見もありました。

3697 : 鳥男  蛾兆ボルカ ('09/08/08 02:05:02)
悪くないどころか面白いのに、寸足らずで終わってしまった、もっと堪え性を持って弄り続けてほしい、短い文章の中に修辞上の粗も目立つ(〜のように、〜のような、など)、「夏だと言うのに長い黒いコートを着込んだ老婆」などは、簡潔な日本語にして欲しい、という意見がありました。

3727 : 真夏の犬  貝吹明 ('09/08/20 16:27:39)  

3714 : 真夜中散歩  イモコ ('09/08/14 14:48:41 *2) 

以上です。

Posted in 月間選考 | Print | No Comments » | URL

書籍「文学極道No.2」

2009-09-12 (土) 14:55 by a-hirakawa

「文学極道No.2」が、
瀬崎祐さんのブログで取り上げられました。
「文学極道  2号  (2009/07)」
軽谷佑子さん「土底浜で」に触れてあります。

また、
「文学極道No.2」が、
poeniqueの4wheelsで北爪満喜さんに取り上げられました。
「オープン・エンド性は明るく」

Posted in 本・出版, お知らせ | Print | No Comments » | URL

2009年7月選考雑感

2009-08-29 (土) 16:35 by a-hirakawa

今月も勉強になりました。
ありがとうございました。

今月は発起人であるコントラさんの投稿がありました。
3649 : マナグア  コントラ ('09/07/15 06:16:23) 

さて今月は、

3656 : 野球の規則(改)  DNA ('09/07/20 21:12:59)  

3662 : 臍の緒  はなび ('09/07/22 20:34:21)

3629 : 侘び住まい・六月  鈴屋 ('09/07/04 12:39:18 *6)  

3653 : 屋根の上のマノウさん(改訂版)  Canopus(角田寿星) ('09/07/18 22:53:58)

3623 : スカシカシパン  草野大悟 ('09/07/02 01:15:17)

3625 : 偽物の猿の目は黒い(前編)  ぱぱぱ・ららら ('09/07/03 01:05:04)

3630 : グッドバイ  チャンス ('09/07/04 15:54:04 *26)

以上、7作品が月間優良作品に選出されました。

3656 : 野球の規則(改)  DNA ('09/07/20 21:12:59)  
言葉の行間に潜む、抒情性が伝わってくる、読ませる良い詩だ、という意見がありました。上手い、作者は毎回変えているけれども病にない、健全な屈強な弱さが魅力として作品を見事に導き出している、という意見もありました。ただ冒頭の「水星の前輪と金星の後輪」だけ浮いてしまったように感じる、子盗りだけでなく最終連で拾って欲しかったとも感じる、という意見もありました。ユニークな筆が映えている面白さだ、という意見もありました。

3662 : 臍の緒  はなび ('09/07/22 20:34:21)
イメージの実体の発芽よりも、その羅列から生まれる感触の方が興味深い、良くも悪くも「昭和」、男性や若い人には書けないであろう迂回具合にも惹かれる、という意見がありました。冷静にギリギリな話者の様子が伝わってきてよい、合評内での指摘どおり、「天ぷら〜」を最終連の食事描写に繋げられたならよかったと思う(ただ、一連目は一連目で必要な導入なので削らないほうがいい)、「ながい、ながい」以外のところどころのフレーズ連呼はいま一度見直しを、という意見もありました。言葉が、自由に発せられていて、その言葉が、多様に広がりを持っていて、魅力的な詩となっている、失語的な語法も、大変、独創的で良い、という意見もありました。

3629 : 侘び住まい・六月  鈴屋 ('09/07/04 12:39:18 *6)  
 雑貨屋があるのは町の東
 ディーゼル機関車は西へ西へ
など、憂感をうまく使いこなしている、という意見がありました。新しい方向を模索している作者が伝わって来た、方向性の成功はすでに在しているので、そこからのものがもう一歩欲しい、という意見もありました。一人の侘しい暮らしから果てなく時間を空間を超えて世界が構成されている、
 平野では河が溢れ、湿地帯に草が茂り樹が茂り
 やがて石炭が出来る
は秀逸、この生活の中にこれを入れるとは見事であり凄い、ただ、一連目が上手くいっていないように思える、二連からの動に対して、一連目は模索させ過ぎているように感じる、という意見もありました。こころに汽笛と車窓からの風景を抱いて生きる孤独、必要以上にセンチメンタルにしないところも好感触、中盤以降、最終連に向けた言葉の波があってもいいかなと思ったのも正直なところだが、最終行「石炭」、ここでこれを持ってこれることに嬉しい驚愕、よい、という意見もありました。無難なく纏めている、よくある設定の詩であり、特別の良さを感じないが、比喩の表現方法が、巧みだ、という意見もありました。作者は巧い、文学的な佇まいも好感を持たれそう、ただ、どうだろう、レトリックの妙とその配置だけで成立している感もあり、オチも含め、何かしら「はぐらかされている」感もある、そこ狙いなのかもしれないが、馴染めなさ加減が半端な印象が拭えない、作者のベクトルは回顧に向かいがちな感じを受ける、いろいろ諦めるのは構わないにせよ、匠な書き手として落ち着いてほしくはない、とても好きな筆なので、という意見もありました。

3653 : 屋根の上のマノウさん(改訂版)  Canopus(角田寿星) ('09/07/18 22:53:58)
マノウさんは何ものだろう、その不思議さ、メルヘン風で、とても新鮮、詩に透明感がある、という意見がありました。童話調(でもないか)の在り方が印象的、しんみりとした読後感、暑い夜に、ひんやりとした気持ちにさせてくれる、という意見もありました。巧いけれども、清涼だけれども、マノウさんに魅力が欠けているように感じた、もう一歩、連発するマノウさんに重ねるものが欲しい、解りやすい作品だからこそ細部や端をもう少し広げて欲しい、という意見もありました。作者にしては珍しく、主要人物の魅力がうすい、作者の中には充分にあるんだってことはもちろん感じるのだけど、サラリとやりすぎていてマノウさんを見上げたいと思わせる稜線をしっかり引けていない印象、という意見もありました。

3623 : スカシカシパン  草野大悟 ('09/07/02 01:15:17)
幼児性は跳ね、悲哀もある、感情の作品として爽快な部位が多い、という意見がありました。なにかポンとひとつ抜けた印象(モチーフのことじゃなく、高飛びの記録更新、みたいな感覚)最後数行の言葉運びには言いたいことが何もない訳じゃないのだけれもど、部分部分のわからなさも、わからなさのまま全体が細い糸で繋がっている、軽めかなとも思うけど、よい、という意見もありました。この味は好き嫌いに、かなり幅がありそう、という意見もありました。随分と使い古された手法で、書いているけれども、読んでいて面白く、また、読ませる詩であり、悩ましい、また、やや、食い足りないというところもある、という意見もありました。

3625 : 偽物の猿の目は黒い(前編)  ぱぱぱ・ららら ('09/07/03 01:05:04)
惹き付けつけるだけで終わったのは前編として書かれた役割からだろうと思う、この内容の無さで一文一文に期待を裏打ちさせるように書いていくテクニックは、さりげなくて、そこはすごいと思う、という意見がありました。一つの詩作品として、(前編)はつけなくても良かったかもしれない、(前編)となくても十分にこれで面白いし書けている部分が詩として補っていっている、わざとなのだるけれども、もう少し彼女とのベッドシーンなど、淡白過ぎる部分を切り出していっても良いのかな、とも感じる、最初の連と最後の連の使い方は絶妙、という意見もありました。題材は、とてもユニークで、良いけれども、説明的過ぎる、良質な詩とは、少し違うような気がする、という意見もありました。前編と銘打っている以上、後編(若しくは中編なり何なり)を拝読するまで保留したい、という意見もありました。

3630 : グッドバイ  チャンス ('09/07/04 15:54:04 *26)
平仮名表記から零れる詩情は散見されてしまう、もったいない、という意見がありました。
 ポテトだって食いたくはないのだが
 明日を生き抜くために言うのだ

 いっぽん、くれ、と
ここへの重量は持っていかれるものがあった、その後、安室さんの歌と混ざる部位はそこまで成功していなく、足を引っ張っている様相さえ見えた、もう少し別の展開のほうが面白く広げられたかもしれない、
 ぽて、、と、
ここは、もっと効いてもよいのかもしれない、全力でスベッても良いのかもしれない、と思いもした、という意見もありました。3656 : 野球の規則(改)  DNA ('09/07/20 21:12:59) と共に、今月頭ひとつ分とびでていた印象を持った、変なのだ、という意見もありました。

さて、次点佳作作品について触れていこうと思います。

3647 : AIR  mei ('09/07/14 02:49:35)
ライトノベル的な読みやすさと展開がある、この詩ではないもので代用が効く範囲にあるように感じる、内容の中核がパロディ/オマージュにも満たない使い古されたものに感じる、そのままと言っても良いかもしれない、ここから、どう書くかに感じた、という意見がありました。主題は買いたいけれども、アプローチには大いに疑問あり、という意見もありました。リズムや、詩の切り口としては、面白いが、内容が、陳腐だ、という意見もありました。詩人以外に詩を読んでもらう為には、或いは、ティーンエイジャーにアピールする為にも、この方向性は強く支持したい、何年経っても錆びないタイプのテキスト、文学オタク以外相手に、これを読ませなくて何を読ませるんだ、という思いがある、という意見もありました。

3663 : 花冷え  如月 ('09/07/23 02:47:42 *1)
もう一歩行けるはず、けれどもそこがまた魅力かもしれない、
 声
は、いただけない、
 てのひら
部の良質に負けすぎていて、
 あたたかな内陸
から、夜へとゆるやかに満たせていない、
 声
が何回も出てくるのも問題に感じる、けれどもそんな疑問も花冷えなんだ、という意見がありました。観念的描写のみに終始した詩という印象、そういう詩であるなら、せめて言葉運びに強烈な個性があることは必須、その点でこの作品は無個性、という意見もありました。

3642 : 街  なつめぐ ('09/07/11 09:11:00)
抽象的な手段がいまひとつ感興に結びついてこない、品のある文体だけに残念だ、という意見がありました。もう少し切れに気を付けたら香るような気がしまする、「い」で終えるのは頻発すると塗りつぶされるかもしれない、という意見もありました。無難にまとまっている、言葉も内容もわるくない、けれど突き抜けてもいない、ベース自体はかなり普遍的なものなので、(言葉が柔軟でも)強烈な個人を感じるプラスαが欲しいところ、という意見もありました。おしまい、という言葉を多用しているが、こういう言葉は、安易に使うべきではないのかもしれない、短絡的、底が浅くて、安っぽくなっている、言葉選びは、慎重でなくては駄目だと思う、という意見もありました。この作品、この作者の場合、句読点が無い方が作品に奥行きが広がるようにも感じる、あとは嗜好の問題かもしれない、好きな作品だ、という意見もありました。

3627 : 無題  ミナミ ('09/07/03 12:50:29)
くだらない、そこが凄く気になる、
 俺は同じように親指を宙に突き立てていた。
 昔の映画にこんなシーンがあった気がする。

 曖昧な視力で見るこの部屋は簡素だった。
 ベッド、テーブル、たんす、老人。
 万由子は笑っていた。泣いていた。
 もしくは何処にもいなかった。
この辺をもっと高めていけるのでは、と感じた、
 彼女の小指に小さな切り傷があった。
など、想像せざるを得ない背景の物語が効いていて、内容のどうでもよさが本当にどうでもよく、泣けるかもしれない馬鹿作に思える、という意見がありました。いろいろ惜しい作品だと思う、機微の表明や怠惰の傘を開くだけでは、なかなか届かないのも確かだ、という意見もありました。

3657 : 金色の月  野々井夕紀 ('09/07/20 21:29:49)
悪くないけれども悪くはないまま、まごついて終わっていく、もっと踏み込めるのではないだろうか、または手触りだけでも良いのではないだろうか、という意見がありました。冗長気味なところもあるけれども、メルヘンがあざとくなく素直にハマっている、という意見もありました。童話調の語り口、ややゴツゴツしているので、もう少し意外性のあるランディング等が欲しい、ジュブナイルに徹底して絵を添えれば、また違うかもしれない、という意見もありました。

3637 : 雲の瞳  草野大悟 ('09/07/08 01:44:54)
比喩のあり方は凡庸だけれども、その分文章が活かされている、凡庸さで感触をきちんと伝えるのは難しいこと、その点すごいかもしれない、という意見がありました。

3672 : フランクフルト  如月 ('09/07/31 20:43:51)
短調であるかもしれないが、普通に読みやすい、しかし優れている作品とは言い難い、という意見がありました。地味だけれども、不思議な心象を顕しているように感じる、ガマの穂をフランクフルトに見立てる、というのは少しばかり怪訝、という意見もありました。構造の雑さが目立つ、一文目など良質な部分もあるのに、もったいない、という意見もありました。きちんとした読ませる文章だ、しかし食い足りない部分がある、という意見もありました。

3670 : (無題)  debaser ('09/07/30 18:20:52) 
着地の失敗、出だし2行・5〜8行目それぞれの矛盾で成された詩のふくらみの予感を、説明的な最終行が潰してしまっている、という意見がありました。肩の力が抜けていて、地味に、いい感触がある、という意見もありました。

・惜しくも選からは漏れましたが、その他、以下に挙げる作品が注目されていました。

3631 : 月  ゼッケン ('09/07/04 16:57:07)
ここまで、どうでも良い内容を硬質に書くことが出来るものなんだ、と妙に頷くものがあった、自動販売機をもっとねちっこく異形の存在として描いてもよかったかもしれない、それなりだけれども、それなりに過ぎないとも思える、という意見がありました。言葉が堅い、それだけが先に立ってくる、という意見もありました。

3661 : 独裁者  んなこたーない ('09/07/22 14:48:28)  
返信を付けられないまま流れてしまいました。申し訳ありません。おもしろかった、けれど例言の数の多いこと、無駄に挙げ過ぎている気がする、という意見がありました。やりやすくありふれている、良い部分もあるのでそこだけ抜き出して拡げて欲しい、最後の一行は、良いと思った、という意見もありました。独り繰り言を街宣しつつ、あれこれと混濁している様が、痛々しくも笑える、照射の仕方は類型的だけれども、オマケが沢山なので相殺されている、即興気味な感触はあるけれども、よく考えられているのではないか、とも感じる、という意見もありました。

3660 : shiki  mei ('09/07/22 12:25:56)
需要がある作品なのだろうとも思う、ただ「大衆性」というよりも詩の延命策の方向に感じる、という意見がありました。借り物の世界観を借り物のままにそのままに書いていて、そこに吸引力があれば良いのだけれども、過去のものばかりに感じる、どうも二次的なものしかなく、詩情が書き手にあるのは分かるのだけれども、それをどうやって出すのかは別問題に感じてしまう、大衆的顔色を窺って書いているような感覚を持った、という意見もありました。豊か、だとはおもうのだが、言葉の選択に大風呂敷な感が抜けない、という意見もありました。ヨーロッパの近代詩の翻訳詩みたいだ、天使、地獄、永遠、ダイヤモンド、など、あまり馴染まない言葉が多い、それから、「君を愛している」は、直接的過ぎる、ポップス歌詞用語、もはや、詩を書く以前の姿勢の問題に感じる、という意見もありました。

3652 : 唯の夢 その八  菊西夕座 ('09/07/17 01:44:06 *1)  
初めて唯の夢に近づけた気がした、構成の勝利で最初の二連を起にし夢を通して何だったのかの手渡しが為されている、ただ、もっと暴走して良いというか、説明口調で、淡々と静かなので、突き抜けていかない印象を持つ、という意見がありました。これまでの作者のなかでは、わりと描けているほうだとおもう、ひょっとしたら改行はいらなかったかもしれない、という意見もありました。

3655 : 賞味期限  伏樹 ('09/07/20 18:43:14) 
表面はうまく書いているわりに、芯の部分が不得要領、という意見がありました。比喩の使用の仕方が範疇にあって、それは今までに書かれているものだ、それでも詩がある、そう思う、もう少し独自のものや比喩の別の視点を手に入れて欲しい、作者に期待したいものを感じさせる作品だった、という意見もありました。

3648 : ある朝の走馬灯  イモコ ('09/07/14 23:02:49 *1)  

3621 : 土の碑  かとり ('09/07/01 21:29:05)

3638 : 飯田橋ホッピー/ハッピー/ラッキースター  蛾兆ボルカ ('09/07/08 23:43:25)

さて、また、

全体として、基本的にやや、レベルは低いように思えた、私は、こういうことを書いている、あるいは表現している、という言葉のなかの熱気みたいなものが全く伝わらない作品も、いくつかあった、もっと筆力のある詩を、読んでみたい、そういう方が投稿されるのを期待する、という意見もありました。

以上です。

Posted in 月間選考 | Print | No Comments » | URL

お知らせ

2009-08-24 (月) 16:23 by a-hirakawa

「文学極道No.2」が、
阿部嘉昭さんのブログで取り上げられました。
ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ「文学極道No.2」
ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ「文学極道No.2のNo.2」
りすさん、軽谷佑子さん、中村かほりさん、浅井康浩さん、へ丁寧な評をいただいています。
つづきが近く書かれるようです。

阿部嘉昭さんはmixiの方でも論評などを公開されています。
「文学極道No.2」の記事も公開されています。

Posted in 本・出版, お知らせ | Print | No Comments » | URL