2016年10月分選考雑感(スタッフ)
(スタッフ数名が地震被災のため作業に乱れが出ています。ご容赦ください。)
9149 : アジテーション 葵
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(一)あえてとりました。作者の中では音楽が鳴っているのではないか、と思います。しっかりとさびが作れているので、もう少しコンパクトにすればよいかもしれません。歌詞的なものでも言葉として表される以上評価対象としますので、こういう作品も待っています。
9214 : 雨の庭 ねむのき
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(一)空気感が綺麗。とても美しいので独自の単語選択にさらに踏み込んでも良いものが出来そう。
9217 : 2011 芦野 夕狩(ユーカリ)
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(一)前半、移行の度合いや跳ね方が非常に良いと思ったのですが、
リタリンなどが出て来てから失速していったのが残念です。
リタリンは謎を解いてしまい詩情を削いだのではないでしょうか。
後半を推敲したら傑作になるのではないでしょうか。
(一)「2011」という題名ですが、空気感としては90年代の、南条あやとか望月花梨、魚喃キリコとかの雰囲気がそのままあるようですね。
学校の閉鎖空間の中で分化する前の女性同士の友情/自己愛を描いた作品はわりと既視感をもたれやすいと思いますが、とても素敵に書いていらっしゃるのでもっと読みたいと思わされました。作品数は少ないし、ジャンルとして確立しているわけではないのですが、名作が多い舞台設定だとおもうんですよね。
三連目の「アメリカ」の唐突さは指摘しておきたい所。
もしかしたらですけど、二連目までにさりげなく「アメリカ」がどういう姿で作中話者らの生活に入り込んでいるか分かるような部分があれば、ラストももっと決まったように思いました。
9194 : 宿り 軽谷佑子
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(一)作者の実存性と抒情の光が、いかんなく放たれている作品。主題の移ろいも非常に興味深い。傑作。
9212 : GOLD 熊谷 ('16/10/29 21:34:08)
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(一)ほとんどの語尾が「た」で終わり、三聯に至ってはひとつ「だ」で他全て「た」
この構造だと「説明的」と捉えられてしまう危険性があり、それを超えるようなパンチラインがラストにしかない為、総じて「状況の説明」に陥ってしまっていてもったいなく思いました。
9215 : ファストフードファイター こざかな
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(一)薄さが良い方向へと働いていて前半は良かった。展開も薄いまま象徴性を持たせられず後半失速していることが残念に思える。
(一)三聯「撮っておき」はタイポでしょうか。
(一)特に何も言わない方がいい作品というのがあると思います。この作品はまさにそれで、なんとなくの雰囲気を貫いたところが良かったです。
9186 : 無垢 ちょび
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(一)悪くない。詩にするまでもないような些細な日常の一断片を切り取っていて、
そこに背景も流せている。作者のレスは好ましいとは言えず態度も改めてほしいが、 作品とギャップがあり、それも驚いた。
9207 : 浴槽 ゼッケン
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(一)タイトルで煙にまくやり方に見える。
(一)詩だからこそ許される展開で、面白かったです。長さも適切で、個人的に最後の終わり方も好みでした。
9211 : チビけた鉛筆の唄 atsuchan69
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(一)どんどん詩情の出し方がうまくなっている。
9171 : 銀杏は散りゆく宿命なら 野良猫ニャンコ
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(一)スラスラと読める掌作品。詩としてではなく掌小説として発表したほうが強度があるような気もしました。
詩としては、予想通りに進行し、
独自の表現があるわけでもないことに不満が残ります。
9208 : ホッピングシャワー くるくる
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(一)
>夜空の星々が衝突して新たな星が生まれる
ぐっときました。最終聯もとても良いです。
その前段の作中話者の苛立はたぶんとてもよく分かる気がしているのだけれど、自分の尻尾と追いかけっこしているネコを見ているような気になってしまいました。
9200 : I l t (アイエルツ)を受けたときのこと kaz.
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(一)構造とアイデア自体はありふれていて平凡だが、一文一文が丁寧であり問いが美しい。最後の平凡さに組み入れたこともわざとに思えてくる。丁寧な詩情。タイトルも良い。
9198 : 死にたがりボーイズ 脱ぎたがりガールズ 泥棒
URI: bungoku.jp/ebbs/20161021_788_9198p
(一)上手いです。計算されつくしている。さらっと書いてあるようで緩急が素晴らしく勉強になる。
9203 : 左と右 黒崎 水華
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(一)鏡文字的な作りの作品というと珍しくなく数多くあるけれども、それを踏まえて構成の力が力を持っており魅力的に読めた。タイトルの平易さは少し読者に優しすぎるかもしれない。もっと作者の剥き出しで十分、魅力的になると思う。反転する際の「正しい〜」の部分が一番、意識がいく部分なので、ここを、もっと工夫するとさらなる傑作へ進んでいきそう。
9188 : 水を抱える(botanique motif) 村田麻衣子
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(一)さらっとした言葉が力を持つ瞬間に惹きつけられる。
9201 : 三浦果実賞〜村上春樹さんへ捧ぐ 三浦果実
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(一)タイトルは詩という言語藝術の一部なのに、なぜこの詩にこのタイトルなのでしょうか。中身は面白く粗いけれども推敲すると秀作になりそうにも思えました。
9185 : キッチン ユーカリ
URI: bungoku.jp/ebbs/20161014_575_9185p
(一)この後味の悪さは成功なのだと思います。丁寧な前振りが効いています。
(一)やや訛のある文体は好き嫌いが分かれる所か。
9197 : 屈折した詩人たち、出逢った友に、捧げる 玄こう
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(一)小詩集として非常に出来が良い。心を動かさせられる。作者の生きにくいだろうものが作品へと昇華されている。
9189 : た、ど、る、 花緒
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(一)面白いのですが、基礎ができていないうちに装飾に凝ってしまった感じです。基礎にこだわればきっちりできる方と思いますし、まずは言葉で勝負してみてはいかがでしょうか。
9199 : 息子よ 朝顔
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(一)DV家庭の問題顕在化の過渡期。出口が見えないが生活を前に進めなければいけない。不登校になり暴力行為も壁にするだけで、これから更にひどくなりそうな問題を抱えているようでもある。父は対話をしておらず精神論で息子を立たせたいと思っているため、これから問題が大きくなっていくだろう。その過程の途中が書かれている。「私」であり「父」である自分を「君」とすることによって客観視を生んでいる。よくある手法だが客観的にみれなくなる状況が描かれているため非常に効果的。他にも作品を読みたいと思った。
9195 : 凍える蝶 桐ヶ谷忍
URI: bungoku.jp/ebbs/20161020_727_9195p
(一)上手なので、あと一歩を丁寧に紡いでほしい。
(一)説明しすぎで損なっている部分はあります。それでも美しく、素晴らしい作品でした。
9191 : 彼方 牧野クズハ
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(一)丁寧に書かれています。そして美しいです。最終連が息切れしているようにも思えました。最後もっと着地できなかったか。
9180 : 妻の夫 祝儀敷
URI: bungoku.jp/ebbs/20161011_423_9180p
(一)表現の甘い箇所もありますが、一貫した世界観があり読みごたえがありました。
9178 : 自由へと 鷹枕可
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(一)めずらしく世界観は、そのままに、まとまっている。
9166 : 百日紅 金曜日
URI: bungoku.jp/ebbs/20161007_122_9166p
(一)綺麗な文章。けれども書かなくてよい部分が多いので、もっと行間を大切にしても良いのかもしれない。
9141 : 六花少年 アルフ・O
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(一)になる作品です。更に分量を増してストレスをかけると詩情が開いた気がします。
9175 : 明け方の夢 fiorina
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(一)文章は上手く美しく、単語が違えば抒情として傑作なのだけれど。
9182 : 狂気 岩満陽平
URI: bungoku.jp/ebbs/20161014_520_9182p
(一)狂った様子を短めで終えるのは勇気がいると思います。この作品は短めに切り上げたことで、言葉の濃度が上がり、より迫ってくる感じがします。「アルファベットの」が冷静さを感じさせて、その点もよかったです。
9174 : 炎上焼肉 あおり屋 葛原徹哉
URI: bungoku.jp/ebbs/20161010_325_9174p
(一)先生は詩だけを書いているのでしょうか。なら生活できないので本職が何かが気になりました。
9169 : 叙利亜とサネ 山田太郎
URI: bungoku.jp/ebbs/20161008_156_9169p
(一)作品を書く前に取材に行ってほしい。取材に行った上で未だ揺れていて被害が続き死人が出ている被災地のことを、このようにファンタジー化してしまっているのなら悲しい。福島県のことに関しても調べきった上で本当に書いているのか。安全な場所からポエム化してしまっているようにしか読めない。
9165 : クズどもの残暑 泥棒
URI: bungoku.jp/ebbs/20161007_119_9165p
(一)素直な言葉で書かれていて、それを直球で勝負しない照れもきちんと織り込まれていて惹きつけられました。こういう作品は、なかなか書けない。
9161 : #02 田中恭平
URI: bungoku.jp/ebbs/20161006_034_9161p
(一)途中が素晴らしい。最初と最後の文が果たして作品を本当に高めているかどうか。気になるところです。
9162 : ハゲと酒乱 野良猫ニャンコ
URI: bungoku.jp/ebbs/20161006_083_9162p
(一)小さな嫌悪感を抱いた。嫌悪を僅かでも抱いてしまったということは成功なのだろう。ただ、
ふりきれていない。やるならやるで、とことんやってほしい。
9157 : ア ベースメント 西木修
URI: bungoku.jp/ebbs/20161004_962_9157p
(一)最初の二行が全てですね。惹きつける力があります。それだけに、その間で力が落ちてしまうのが残念です。意図的に普通の言葉にしているのかどうか怪しいので、読んでいて不安になります。
(一)最終行の大切さについて考えさせられました。途中まで、使用する単語は平凡ながらも良かったので最後が勿体ないです。
9152 : 薄紅の雨 桐ヶ谷忍
URI: bungoku.jp/ebbs/20161003_890_9152p
(一)情景を伝える能力に長けている文章。時折、説明的になるので、そこを削いでいくとさらに良い作品になると思う。才能に満ち溢れていると思う。最後の連は、どうだったか。
9167 : 「JIN - SEI」 湯煙
URI: bungoku.jp/ebbs/20161008_125_9167p
(一)きちんと読める文章です。ただし冠したものが、よいと思えない。もっと相応しいものがあったのでは。
9172 : ばく 北
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(一)悪くないと思った。独創性があるわけではないのだけれども。
9153 : Lonely 桂
URI: bungoku.jp/ebbs/20161003_898_9153p
(一)美しいですし、書き方を変えずテンションを保っているのが良いです。特に目立つ表現はないですが、次作につながる芯の強さを感じるものでした。
(一)文章が流れがよく世界観を提示出来ています。けれども一作品読んだ後に詩としての補える部分や書きすぎている部分、さまざまなところが単語の既視感と共に目についてきます。作者の世界観は連作として評価するべきなのかもしれません。タイトルと共に、もう一歩はじけたり丁寧になったりしてほしいと思いました。
9147 : #01 田中恭平
URI: bungoku.jp/ebbs/20161001_828_9147p
(一)作者の作品には人間という本質的にダサさを抱え込んだ原罪にあふれた生命の精一杯の抵抗と現実が同居しています。決して洗練しているとは言い難い言葉選びと文章が内界をダイレクトに伝えてくる面白さが時折、心を揺らします。
(一)読んでいて、ゆっくり味わいたいと思う作品でした。柔らかさに貫かれていて、とても気持ちが良いです。
9145 : 罪を食む 三浦果実
URI: bungoku.jp/ebbs/20161001_806_9145p
(一)書き始めて間もない筆致と、まだ何を書きたいのかと方法を模索中の文体。
それでも難しいことをしようとしているため、引用が作品化できていない。
最後の感謝の弁も作品化できていない。
上記が作品化できたら傑作になるのかもしれない。
まずは、たくさん書いて読んでいくこと。たくさん書いて、
ここから作者が、どんどんうまくなる姿を見ていきたい。
9144 : 或る生活 西木修
URI: bungoku.jp/ebbs/20161001_803_9144p
(一)あえてこのような形式に挑戦したのはいいと思います。私個人の好みもありますが、連を繰り返すのは力が試される形でもあり、この作品ではうまく行っていると感じました。また、重たい主題に対して、適切な距離感を保ちながらも、きっちりと主張を表現できていると思います。
9148 : 時計 山田太郎
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(一)読ませる技術が段々とついてきていることにも驚いた。
9156 : この場所にいる奴等はみんな敵 5or6
URI: bungoku.jp/ebbs/20161004_957_9156p
(一)後の一行が全て効果的に働いています。優良とか、そういう評価は、どうでもよい作品なのかもしれない。賞とか関係なく上手くできている作品。粗が目に付くのも良いと思える。
9154 : 君の売り買いしているものは__ 紅茶猫
URI: bungoku.jp/ebbs/20161003_909_9154p
(一)ショートショートとして楽しんで読めた。けれども様々な単語に独自性がないことが既視感につながり、これまでの作品に埋まるもったいなさも感じた。前半の未来が見えることの詳細も削って充分に詩情で伝わると思った。
9158 : かめ 石ころ
URI: bungoku.jp/ebbs/20161005_972_9158p
(一)もっと比喩に頼ってよい。説明的になっていてショートショートの面白さに詩的面白さが加味されているか疑問。
9151 : 詩の日めくり 二〇一六年九月一日─三十一日 田中宏輔
URI: bungoku.jp/ebbs/20161003_888_9151p
(一)一作いっさくが出来ていくごとに嬉々とする作者の様子に共感してしまう。詩の中で詩作を語り、こんなにも面白く魅力的に書けることに改めて衝撃を受ける。
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