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「11月選評雑感・次点佳作作品」 編集・文責=泉・前田 編集=織田

2010-12-27 (月) 18:50 by gfds

「11月選評雑感・次点佳作作品」 編集・文責=泉・前田 編集=織田

4800 : 熊のフリー・ハグ。  田中宏輔 ('10/11/01 05:18:29 *2)
URI: bungoku.jp/ebbs/20101101_008_4800p

◆この作品を強く「推している」発起人がいたので、次点佳作に入っているわけですが、はっきり言ってぼくもよくわかりません。内容も面白いと思わない。ただ、まあ、ゲイの人のセクシャリティに言及されているところは(自分には無い感覚や体験という意味において)興味を惹かれる部分でした。

◆ 詩が次々と展開していく面白さ、内容も面白いですが、
いかにも長いです。もう少し短くないと、読むのがきついです

4826 : アレルギー性恋愛過敏症  ゼッケン ('10/11/13 15:39:56)
URI: bungoku.jp/ebbs/20101113_166_4826p

◆>ヴぁ、ヴぁ、ヴぁっくしょい! 好きです
 >つきあって、ヴぁっくしょい、ちーん! ください
とても、独創的な、オノマトペが、とても良いですね。
そのあとに続く詩文が、小気味のいいリズムで、続いていくので、
気持ち良さを体感できる詩でした。また、恋愛詩にある、べとべと感がなくて、えらく底抜けにさわやかなのが良いです。
ただ、一遍の詩にすると、簡単に読めてしまい、物足りません。

4828 : 旅への誘い  右肩 ('10/11/15 05:42:25)
URI: bungoku.jp/ebbs/20101115_186_4828p

◆巧いけれども、読者に近づく姿勢はなくても良いと思う。

◆「あなたは死の世界にいる。」今日はあなたが死ぬのに良い日和であった。刺激を差異として陳列する「世界」で自己充足するのが人間だ。あなたはそう考えてきたとする。だから、あなた自身がいない「世界」はあり得ない、と。」
と言っている部分は、説明的であると思います。
哲学的な考えは、直接的な言葉では出さずに、別の詩の言葉で表現した方が、心に響くと思います。
また、
「あなたは死の世界にいる。」というのは、唐突としていて、違和感が突然に、生じてしまうのが、気になりました。
でも、最終連は、濃密な表現で、秀逸であると思いました。

4837 : 工場  熊尾英治 ('10/11/18 23:35:59)
URI: bungoku.jp/ebbs/20101118_226_4837p

◆「あなた」と「君」は違うのか、同一なのか、よくわからないが、
そういう欠点が図らずも露出してくるということは、
この詩が、とくに語る強い言葉を、持ち合わしていないということにもなる。

けれども、抒情詩として、作者の気持ちがよく出ていると思う。

4838 : 羊飼い  J ('10/11/19 20:38:05 *14)
URI: bungoku.jp/ebbs/20101119_232_4838p

◆各連の後半の反復のフレーズのところは、遠近法の感覚を与えていない。
羊飼いは、どこのいるのか、また、牧歌的な詩の風景に、羊飼いの黒い目線は、時間空間を切り裂いて、異様である。抒情性の寸断みたいのことが露わになっていて、詩の安易な安定性を避けようとしている工夫が伺えます。その所に、この詩の非凡なところが現れていると思います。

4840 : サマー・ヴァケイション  bananamellow ('10/11/20 00:24:56)
URI: bungoku.jp/ebbs/20101120_243_4840p

◆一連目は、比喩が面白く、暗喩が散りばめられて、よくできている。この後が、持続しないで、尻つぼみの感がある。二連目は、まったく余分で、書かなくても良いと思う。あとは、粗削りであるが、丁寧に書いている。
最後の連の 「焦点の深い写真をもらった」は意味がくみ取れないので、戸惑ってしまい、台無しである。

4854 : 風切羽  yuko ('10/11/24 02:18:09 *1)
URI: bungoku.jp/ebbs/20101124_342_4854p

◆器用ですね。

◆羽に、色を感じ取ることが出来る。例えば、雪に関連して、白色とかです。
聴覚的にも、羽の音が聞こえます。
とても、静かな世界を、イメージできます。それと厭世的な世界観が混在して、不思議なイメージの世界が見えてきます。

4856 : プラットホーム最前列  久石ソナ ('10/11/25 23:47:14)
URI: bungoku.jp/ebbs/20101125_369_4856p

◆全く悪くない。
かといって飛びぬけてはいない。
けれども等身大の中の最高を、どうにかして探り当て作品に昇華している。

◆落ち着いた佇まいの抒情詩であるが、一連目の言葉の整理が必要であると思う。句点まで、息の長い文章をつくるので、間延びしないことに注意が必要であるかと思います。
日本語の生理として、長文に耐えられない、言葉の貧しさを持っています。
だから五七調が、今まで長く生き続けているのであり、詩の言葉も、読みに堪える、息継ぎのような部分が必要です。
息継ぎ=余白のような感覚です。そういうものがないと、読み手に取ってとても辛いものが出てくると言えるでしょう。

4858 : 星霜  破片 ('10/11/27 08:30:21 *1)
URI: bungoku.jp/ebbs/20101127_383_4858p

◆「星」に焦点をあてて、話が進行するが、「星」というメルヘンチックな語なので、
詩の含意が深まっていかないようであり、表層的な詩に読めてしまう。
きれいに書こうという試みも感じますが、キラキラ感はないです。

◆「こんな風に小説的(散文的)な修辞をある程度組み込んでいる(ように思えました)方が、一般的に評価は上がるのかもしれないですね、もしかしたら。」(田中さん)

「評価が上がるかどうかよりも、どうしたら綺麗に美しく書けるかという模索、また今回はいつもの改行詩では書いてて物足りないかなという気があったのでこういう文体にしました。」(破片さん)

<投稿掲示板でのレスポンスより>

しかし詩と小説の境界を破るような散文体の文章が詩として評価され始めたのはどこを契機とするのでしょうか?おそらく詩が物語を求めたのと同時期に、小説が物語を失ったことが大きいのでしょう。

この「星霜」という作品のテーマとなっているのは。

「生きてるってこと」

>青く開けていくビル群に横たわるアリアが名前を欲しがる。
>耳打ちは誰にも聞かれてはいけないよ、
>人々はいつだって起きるのではなく、起こされるのだから。

ところで作品はそこで「生きる」ことを考えながらその主体性の否定から入っています。

「起きるのではなく、起こされるのだから。」

>雨が降ってくると星たちがいないから、
>人間っていうのはね、動きたくなくなる

そして人間主体の還元先を、環境や自然の中に求めている。いわゆる自然主義的な立場に立ちながら、同時にロマンのあり方も模索されていく作品となっています。

4860 : Une serie de l'homme 3〜En Iriyamada  はなび ('10/11/29 05:24:59)
URI: bungoku.jp/ebbs/20101129_412_4860p

◆入山蛇さんの発言に興味を感じます。0の起源とか、
でも、このシリーズは、あまり成功しているとは思われないので、
普通に詩を書いても、良いと思いました。

4865 : あなたへ  yuko ('10/11/30 12:24:07)
URI: bungoku.jp/ebbs/20101130_437_4865p

◆詩学の投稿欄の頃から変わらずフォロワー文学を突き通していますね。
巧さがあるのだけれども、なんというか。
書きたい衝動よりも表現の表面にばかり気を取られてしまっているところが気になります。
吹っ切れていないというか。タイトル変更は非常に良い方向へと働いたのかもしれません。空洞化を推し進め、表象を差し出しています。

◆詩人の遺言書、詩人の引退宣言みたいですが、広くメタファーとしてとらえると、これは、作者の現在の詩を書く状況のようなものが描かれている。そう考えると、作者が語り手の言葉で、今、詩を書くことに行き詰っている事を述べている、そういう作品として解釈できるのでしょうか。そして「この小さな部屋でまた新しい命が生まれようとしている」のですから、新しい詩の進むべき方向が見えているといったところだろうか。
そういう風に、全文読むことが可能ですが、とても、難解であることには変わらない。

4866 : サンクティティ  しりかげる ('10/11/30 17:42:43)  [URL]
URI: bungoku.jp/ebbs/20101130_440_4866p

◆いろいろな方の影響を良い方向に受け取って自分なりに咀嚼していけている気がします。
しりかげるさんは、冊子になにかしらの形で載っていても特に違和感がない作品を書かれますね。

◆「神聖とは、騙されることでしたから」という言葉が、この詩を表している。
このような時代的な懐疑なものと、時代に対する厭世観に似た無気力感は今の時代性を表しているが、こういう詩が、極めて多く書かれるが、このように時代に寄り添うような思考に、詩の可能性はあるのだろうか。考えさせられる問題です。

▼以下落選作品から

4843 : あそこらへん  藤崎原子 ('10/11/20 18:45:05 *3)
URI: bungoku.jp/ebbs/20101120_261_4843p

◆拡大解釈を許す狭さが、象徴的。

◆これは、メタ詩のような様相を呈しています。いわゆる詩のための詩というところです。
もっといえば、詩的言語が、傷口を開いて露出している場についての詩でしょうか。
でも、この手法は、多くの詩人が必ず手がけている手法ですので、特別なものではありません。しかし、歴史に名を残す詩人も多く書いています。
多くのメタ詩は、その詩人の自らの詩の理論の実践として、書かれる場合でありますが、この詩には、それは強く表れてなく、憧れのような、詩の出会う現場を詩の存在場所を、詩の中で書いているのでしょう。
「あそこらへん」は、通常言語とは違う、詩的言語の存在、そのものの場所なのでしょう。

>たくさんのあそこらへんたちを
>僕たちはどんな言葉でくくれるのだろう
>前に何回か行ったことがある
>でも知ったかぶりだったりする

何度も書いてみたが、詩的言語の傷口の露出現場をうまく作者のものにできなかったことへの反省でもあり、どんな言葉で表せばよいか、作者の苦悩みたいなことでしょうか。

>うなづきながらひたひたと
>話を変えようとにらんでいる
>整えるために用いられるそれぞれの代名詞の感覚は
>それぞれに同じで無い

これは、詩のほうから、差異と反復を孕んだ詩的言語が、藤崎さん(作者)が書いた言葉とは違うコノテーション、いわゆる、言外の意味、意味のズレを含んで語りかけてくることでしょうか。
この四行があるから、この詩は、大変、奥行きを持って読めますし、詩的言語が、作者に語りかけているという、詩的言語の謎めいたあり方が述べられていて、この詩の核心部分ですね。

>だから僕は多用する
>きびしく限定したくない

前に作者の憧れと書いたが、この二行で、作者の詩論のようなものが、垣間見られます、しかし、僕には、それが何か、よくわからないが、修辞技法の、いわゆる、隠喩や直喩の多用を言っているのだろうか。その宣言なのだろうか。

>どうしてか落ち着かないここもいつかはあそこらへんになる
>もっともらしく、色づく
詩人として、詩的言語を希求しており、それを獲得する作者の自信が伺えます。

4841 : 僕らは境界線の上で眠る  如月 ('10/11/20 11:20:10)
URI: bungoku.jp/ebbs/20101120_252_4841p

◆ヒダリテさんからの影響を受けすぎなのは別に良いのですが、その上で自分なりの視点が「生活の雪崩」にしかないことが気になります。
綺麗な作品を書いていますが、作品の拙さが目立ちます。
次点に残しても良いとは思います。

◆「境界線」という難しそうな題名であったが、詩の内容は、牧歌的な家族(夫婦)の情景詩である。力まずに読めた。
ただ、「夜」が境界線というのは、あまりに普通すぎるので、何か工夫が欲しかったと思います。

4818 : 『防空壕』  はゆ ('10/11/10 12:22:42)
URI: bungoku.jp/ebbs/20101110_130_4818p

◆戦争詩。復員兵の悲惨さと、その語り手の思いを書いている。この場合、「僕ら」で語られているが、読み手の共感の事前承認が「僕ら」の中に含まれている、だから、この場合、その戦争を知らない世代なら、猶更、「僕」で書くべきだろう、戦争世代の人に、「君らに、僕らの気持ちがわかるのか、何がわかる」といわれるだろう。
だから、「僕」で書くのです。
また、この通時的にしか、語れないことを、共時的に語るのだから、猶更であると思う。
そして、こういう深刻な問題を、詩人の自分の言葉で書かなければ、説得力のある言葉は生まれず、つまらない散文と同じではないだろうか。
(唯、勿論、逆に詩の現場の状況にもより、「僕ら」と使うことが良い場合も勿論あると思うのですが)

9.4857 : 小さな冬、の  はるらん ('10/11/27 05:42:57)
URI: bungoku.jp/ebbs/20101127_381_4857p

◆yukoさんへの評は、自分へのメッセージなのでは、とも思えます。
書きたいことはある、というのは分かります。
綺麗に書かなくてもよいのですが、綺麗に書いても良いとも思います。
ただ、中がたるんでいるので、毎回、削ぐことを意識して欲しいと思っています。

◆恋愛のエクリチュール。
このようなトレンディー・ドラマの場面を、上手に書かれているが、これを現代詩と呼ぶかどうかは、別として、このような詩は、詩に親しまない人(そういう読者層)でも、共感を持って読めると思うと、詩と散文の境界線が、この詩の芸術的であるかを別にして、あるのではないかと提示したくなる。

4833 : Night Wind  丸山雅史 ('10/11/16 18:51:28)
URI: bungoku.jp/ebbs/20101116_200_4833p

◆来世という夢の世界のオルフェウス物語、「来世に招待された指揮者はアイドリング・ストップし、」これが、オルフェウスがエウリュディケに振り返る場面にあたるのだろうか。
シュルレアリズム風な表現を使っているのは面白い。

ただ、漢字が多い気もする。

4806 : わたしの  帆かけ ('10/11/04 09:51:40 *14)
URI: bungoku.jp/ebbs/20101104_046_4806p

◆「そうして君は ひとになる」
「私」が「君」になるわけですね。
ここで、語り手の場所が、大反転すると、詩に劇的な効果を
出しています。遠近法的思考を、ぶち破った、まさに、詩の誕生というところでしょうか。
短い詩ですが、味わいがあります。

4835 : コスモスと鰯雲  はるらん ('10/11/17 04:42:23 *1)
URI: bungoku.jp/ebbs/20101117_212_4835p

◆毎回、悪くはないのですが。
生活の中で、爽快なファンタジーに展開させていきたい気持ちは分かるのですが。分かりすぎるというか。
悪くないのですが・・。

◆青春のメランコリーという物語です。
こういう閉ざされたテクストを読むと、一義的に読めるので、読んでいると、さわやかな気持ちになるのは、多様すぎる現代詩ばかり読んでいるからだろうか。

4845 : THE 0ー  榊 一威 ('10/11/22 00:13:40)
URI: bungoku.jp/ebbs/20101122_291_4845p

◆はっきりと書かなくても良いのだけれども、作者の存在は大切。
内実は良い。

◆一種の独白ですか。終始、厭世的に思うところを述べていく。
時々、問いかけるような語りが、この作品に反復性のある詩的な余白を生みだしている。

4823 : 足跡を踏む  谷垣 ('10/11/12 13:20:16)
URI: bungoku.jp/ebbs/20101112_152_4823p

◆新緑の大地に沈む夕日に照らされてなど、ベタにいかなくても良いのでは。書いてある内容は非常に分かりやすい。

◆典型的な抒情詩です。
とても、切ない思いが出ていると思いました。

>新緑の大地に沈む夕日に照らされて

なんかの歌謡曲のフレーズにあったようで、あんちょこな表現なので、もう少し工夫が必要でしょうか。

>木漏れ日のような眩しさ

直喩を使った比喩なのでしょうか。でも、この詩の内容からすると、全然比喩になってなくて、そのままです。

>忘却の彼方に

詩全体の流れからすると、このフレーズだけ、大げさな言い回しで、言葉が、浮き上がってしまってます。

>抜け落ちていた私の大切な一部だから、と
>何度も繰り返し色を塗り重ねて
>もう一度、胸にしまいこんだ

ここは、抒情詩の特徴が出ていると思いました。

もう少し、全体を見ながら、工夫して書かれたほうが良いと思います。

4819 : ナス トマ キュっ!!  ヨルノテガム ('10/11/11 23:28:11)
URI: bungoku.jp/ebbs/20101111_144_4819p

◆もう少し振り切れると良いような気もしました。悪くはない。

◆言葉の遊びとして、とてもユニークで面白いと思うが、散文詩体の4連はあまりにも、長い、さらに、ナス、トマト、キュウリ、肉の多用によって、クドクなっていて読み手としては、かなりキツイと思います。
もう少し、短くして、言いたいことを、全部いうのではなくて、
読み手に、読む余白のようなものを与えると良いと思います。

4814 : 映画  丸山雅史 ('10/11/08 01:16:57 *1)
URI: bungoku.jp/ebbs/20101108_099_4814p

◆文章の密度を濃くしたらよいという問題ではない。

◆色々な言葉を装飾して使っているが、語彙の反乱があるということ以外、魅力的なものが、詩から感じられない。

4802 : Crying lost child  黒髪 ('10/11/02 17:31:18)
URI: bungoku.jp/ebbs/20101102_020_4802p

◆童話の世界のようで、良くできている。「今凱旋の朝」に集約される、刻々と移りゆく、詩の臨場感があります。
「幸福になること」から比べると、全然出来が良い。

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