文学極道 blog

文学極道の発起人・スタッフによるブログ

●「2019年8月分月間選考雑感(Staff)」

2019-10-24 (木) 23:56 by 文学極道スタッフ

11419 : a boy  白犬 ('19/08/30 00:24:41)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190830_795_11419p
(一)空白が、もっと効果を考えながら構成することも出来たと思う。先月は、空白との構成で高め合っている作品となっていた。そこにヒントがあるような気がする。
(一)少年の描写から宇宙的なイメージの広がりを見せる展開はスピード感に溢れ、最後まで一気に読まされる。表現方法に豊かさがあり作者の成長を感じる。

11422 : 赤い口紅  コテ ('19/08/31 09:01:01)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190831_818_11422p
(一)音が、とても良い作品である。視覚的にも整っており作者の作品としては、今までで一番よいと思った。

11414 : 沈黙  曇天十也 ('19/08/26 06:45:15 *1)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190826_742_11414p
(一)言語の選択が、あと一歩だと思う。オノマトペは面白い。

11377 : メドの赤い屋根の家  atsuchan69 ('19/08/07 06:52:59)  [Mail] [URL]
URI: bungoku.jp/ebbs/20190807_496_11377p
(一)よく出来ている作品だと思う。作風が表層的にも見える。

11398 : Tag, You're It  アルフ・O ('19/08/17 00:12:23)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190817_615_11398p
(一)粘着質に捕らわれていく悪意の充満を、作品の中で発信していく。詩情を得ていく屈折が美しく苦しい。
(一)相変わらず挑戦的かつ挑発的な作風。ネット時代の代表的な詩風であり、そのまま紙媒体でも通用する技量を感じる。ラストは肉体へ作用してくるような錯覚に陥る。

11403 : 目さえない青  いけだうし。 ('19/08/20 23:19:45 *18)  [Mail]
URI: bungoku.jp/ebbs/20190820_665_11403p
(一)思春期からの性到達の混濁が上手く描かれてはいる。けれども粗いままであり、その先の感覚を詩として掴む種のままであるように思えた。
(一)作者が述べているように歌詞としての構造を持った詩。「文学擬人化シリーズ」のひとつだが、これまでの作品と比べるとインパクトに欠ける気がする。歌詞としてなら文句ないのだが。

11418 : 分断  霜田明 ('19/08/29 18:30:54)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190829_786_11418p
(一)後半にかけて、どんどんと良質な作品になっていく。前半が説明的であることが気にかかる。

11421 : 編み物  鈴木歯車 ('19/08/30 02:12:57)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190830_802_11421p
(一)軽さもあるけれども読みごたえがある。散文とは違う詩文の良さを、いかんなく発揮している作品である。
(一)読み進めるほどに狂気が深まっていくのを感じるのだが、狂っているのは編み物の人なのか語り手なのか。単純明快なようでいて、読み終えるとその判断がつきにくいことに気付く。読むものを不安にさせる点で優れていると感じた。

11420 : 兄さん兄さん  イロキセイゴ ('19/08/30 00:55:27)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190830_796_11420p
(一)言葉の流れが跳躍を持ってはいるけれども、不鮮明さが前に立っている。

11370 : サンダーソニア  ネン ('19/08/05 21:55:17)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190805_473_11370p
(一)死と救済、深めていく言語選択が更に可能だったように思える。

11411 : 綺麗な花  蒼井椛 ('19/08/26 00:42:27)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190826_737_11411p
(一)余白があることは、分かる。自由律俳句などの一行の詩情を更に読んだりすると、一行への感覚が捉え直されていくかもしれない。

11415 : 褐色のおんなのこ  田中恭平 ('19/08/26 11:44:23)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190826_745_11415p
(一)圧が強い作品である。その上で編み込んでいく丁寧さを持ったら、更に上質さを増すと思う。素材と組み立て方は上手い。

11412 : 野紺菊  山人 ('19/08/26 06:26:11 *2)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190826_740_11412p
(一)優良か次点かに迷った。優れている描写と内面との紡ぎ上げで成立させている作品。最後の言葉が残る。書き込まれた作品よりも、改行が作者には活きるのかもしれないと思わさせられレた。しかし三連目が、もっと充実していたら、ということも感じた。

11409 : てんごく  水漏綾 ('19/08/24 19:27:56)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190824_717_11409p
(一)上質な綴りではあるが、展開が単調に思える。「てんごく」という平仮名が、もっと効果的に作用できる詩に思える。
(一)全体的には安定感があり作者の技量の高さが伺えるのだが、ホームレスの連だけが少し安易だと感じた。

11413 : 死と乙女  st ('19/08/26 06:39:12)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190826_741_11413p
(一)言葉と空白が上手く作用していくために、もう一歩の更なる客観視が必要なのではないだろうか。

11408 : 日記の詩  霜田明 ('19/08/24 17:03:27 *7)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190824_715_11408p
(一)日記と詩との対象化をしていくことで、客観的に心を見つめ直している。作品が更に後半で立方させることが出来そう。

11407 : 時をあやつる女神  st ('19/08/23 03:49:40)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190823_697_11407p
(一)空白が、ひょっとすると詩情を削いでいるかもしれない。再考の余地があると思う。

11400 : 雨  水漏綾 ('19/08/17 19:30:20)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190817_623_11400p
(一)美術室という舞台設定、石鹸のにおい、降り続ける雨といった設定は良いのだが、描写のもたつきが見受けられる。後半が顕著だが、基本的な筆力があるのに一部の表現が物足りない。

11388 : 雨降り  宮永 ('19/08/10 20:36:06)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190810_541_11388p
(一)平凡な文章に擬態している不思議な効果を、持った作品。最後の連で技巧に気付かさせられて驚く。
(一)作者は創作時に観ていないと言っていたが、「天気の子」を連想させる内容。これからもずっと雨が降り続けるような、今の時代を象徴しているかのように感じられる作品。一種のSFのように、この詩の世界でも雨は降り続けて新しい姿へ変化していくのだろうか。最終連におけるおばあちゃんの言葉はユーモラスであるが、どこか啓示的でもある。

11405 : absolute darkness  海日秋斗 ('19/08/21 20:41:23)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190821_678_11405p
(一)「ごめんけど」で始まる詩作品というのは新しく面白い。行替えの位置や空白を丹念に意識すると、もっと上質さが湧いたと思う。

11392 : 草原で  右左 ('19/08/13 18:25:51)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190813_575_11392p
(一)希死念慮と対応させていく描写が、艶めかしく神秘的である。希死念慮を言葉として出さなくても良かったのかもしれない。
(一)子ども時代に昼寝から目覚めて、いきなり自分と世界を再認識するということがあります。この詩もそんな体験を描いたものだと思います。内容的に共感できますが、「突然!」がちょっと唐突に感じました。

11374 : ひまわり  たこ吉(たこ) ('19/08/06 21:27:55)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190806_490_11374p
(一)一行ということの意味を考えた。鮮烈な詩行を改行で描くことと、一行で描くことでは明らかに一行で成すことの方が難しい。敢えて一行を選んだことから、効果が生まれるはずである。言葉の選択を、もう少し前へと進ませられたのではないかと感じる。

11401 : 貝殻の秘愛  ゴロキ ('19/08/19 01:08:23)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190819_647_11401p
(一)文章は非常に上手い。純愛と貝殻のイメージが、過去の詩芸術を乗り越えて行けるかどうか、どの方向で成し遂げられるか再考と推敲をしてみても良いのかもしれない。
(一)男女の愛を下品になることなく描いている。表現方法自体は巧みだが単語レベルでやや新鮮みに欠ける。

11399 : 夏の記し(三編)  帆場蔵人 ('19/08/17 03:51:03)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190817_617_11399p
(一)音が非常に高い位置で進み、視覚的な展開と観念とが交差していく。最後の一文まで楽しめる切なさを孕んだ作品でもある。
(一)夏を描いた詩としては非常に完成度が高い。的確に選ばれた言葉によって構成されたイメージは実に豊かで、鮮やかな情景だけでなく空気まで伝わってくる気がする。最後のパートによるまとめ方も上手い。

11396 : 魚  山人 ('19/08/16 06:47:22)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190816_605_11396p
(一)最終行が、もう少し上に行けると思いました。
(一)語り手の閉塞感や無力感を魚という存在に託した詩。その内容には共感を覚えるが、目を開けたままの魚の描写が前半と後半に2回出てきているのが少しくどく感じた。

11393 : 拝啓砂澤ビッキ様  まひる ('19/08/13 22:00:43 *1)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190813_579_11393p
(一)分かりやすい比喩で構成されている。次作も読みたいと思った。
(一)砂澤ビッキの名前を出したことで、どうしても彼の作品に対して詩の内容が弱く感じてしまう。テーマそのものは魅力的なので、もっと表現を工夫してほしい。

11395 : 耳をピンと立てた君は大きくなった  空丸 ('19/08/14 22:58:05)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190814_597_11395p
(一)構成は良い。文章の凝集性を高めていくと傑作になるのではないか。
(一)前半はブツ切りにされたイメージたちが絡み合い不思議な疾走感があるのだが、後半になってネタ切れ感が出てきてしまっているのが惜しい。

11389 : 恒転  曇天十也 ('19/08/12 06:52:32)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190812_564_11389p
(一)暖かみのあるのユーモアが良い。「ジリジリ 陽炎」「ポツポツ 雨垂れ」「クルクル 風車」は、それぞれ1回ずつの方がリズム的に良かったのではないか。

11376 : ぬけがら  青島空 ('19/08/07 00:18:33 *1)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190807_492_11376p
(一)分かりやすい比喩だけれども、今しか書けないであろう年月との文字が力を持つ。独自の視点を探すと良作になると思う。

11394 : 静かなダンスによる生活  ゆうみ ('19/08/14 00:13:03)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190814_582_11394p
(一)言葉のセンスは随一なのではないか。まとまりがないが、これが統一感を持ったら、どちらに転ぶのか分からずにいる。

11390 : てんとうむし  たこ吉(たこ) ('19/08/12 08:02:50)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190812_566_11390p
(一)柔らかい作品である。イマージュを飛ばしていく在り方が鮮明。しかし、それでも最終二行に妥協が見える。
(一)最初から最後まで言葉の選択にいっさいの無駄や不足がなく、非常に完成度が高い。テントウ虫という小さな存在から宇宙規模へ感動が膨張していく。本当に見事です。

11379 : はじまり  田中恭平 ('19/08/08 09:38:01)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190808_505_11379p
(一)美しく、難解で、物悲しい。それぞれの連にはつながりがないように思えるが、違和感なく読み進めることができる。これは作者の力量によるものだろう。最終連のまとめ方も良い。

11384 : ポエティカルポリティクス、ある種のオマージュ  玄こう ('19/08/09 22:09:23 *1)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190809_526_11384p
(一)面白くなり始めた時に、「つづく」の言葉で終わってしまった。勿体ないと思った。

11380 : リクリエーション  ゆうみ ('19/08/08 16:13:09)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190808_507_11380p
(一)理屈を超えていく展開が心地よく発火をもたらす。タイトルを感覚から離していくと効果が出たと思う。

11373 : 乱反射していた。  黒羽 黎斗 ('19/08/06 17:15:07)  [URL]
URI: bungoku.jp/ebbs/20190806_487_11373p
(一)「5秒前」のフレーズが残るため、繰り返す際には差異が必要だったようにも思える。丹念に粗さを抱えながら練られた言葉が躍動している。

11383 : めざめ  左部右人 ('19/08/09 12:38:57)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190809_522_11383p
(一)連毎の呼応が丁寧に作られている。最終行を、まとめ過ぎてしまった感もある。

11385 : □■  湯煙 ('19/08/10 00:34:02 *3)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190810_528_11385p
(一)作品が為そうとしたかったことは為せている。意味もある。
それは優良や次点の枠とは関係ないものではあるが、続けて欲しいと思う。

11386 : 春も秋も  鷹枕可 ('19/08/10 03:26:24)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190810_531_11386p
(一)振り切った作風の追求を、他の物の追随を許さず行っていく。最終行の柔らかさが効果的であったかどうか。
(一)終わってしまったもの、過ぎていたものたちへの美しいレクイエム。抒情と退廃の中間地点に位置している愛の詩と言えるだろう。

11363 : 肋骨  アルフ・O ('19/08/02 22:48:02)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190802_408_11363p
(一)悪意や怨念が間接的に渦巻いている。直情的だが、煙に巻いている情感がある。
(一)作者独特の美学に磨きがかかり、短い中にもセンスの良い物語が展開される。最後の一行まで隙がない。

11366 : うしのナニー  camel ('19/08/05 06:48:49)  [URL]
URI: bungoku.jp/ebbs/20190805_460_11366p
(一)生と死を描き出している。文章の巧さは、更に磨いていけそうだけれども食物となったナニーの凄惨な感覚を導き出していることは評価されて良いと思った。
(一)食事、セックス、出産といった行為を並べて見せることで、読み手をドキリとさせることに成功している。生々しい描写ではあるが不快感はなく、最終連の謎めいた終わり方が想像力をかき立てる。

11365 : 小羊のメアリーちゃん。  田中宏輔 ('19/08/05 02:19:49)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190805_457_11365p
(一)「かわいい」という言葉の奥深さに気付かさせられる。あり得ない話の展開を身近に思わせてしまう強度がある。

11369 : 夜景かご  はにゃらす ('19/08/05 20:05:42)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190805_469_11369p

11368 : 背中の躍動について  右左 ('19/08/05 18:36:08)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190805_467_11368p
(一)文中の熱気に興奮してしまった。自分自身が熱狂することを丹念に、見つめ描き出すことは困難な道のりであるに違いない。それを見事に行い、興奮の坩堝へと誘っていく。これこそ美である。

11367 : 壊れてしまうのかな?  みちなり ('19/08/05 17:40:47 *2)  [URL]
URI: bungoku.jp/ebbs/20190805_466_11367p
(一)丁寧に書かれている。壊れる、と、シャボン玉を全く新しい比喩にしていくことが必要かもしれない。

11357 : 水没都市。  田中宏輔 ('19/08/01 00:17:02)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190801_353_11357p
(一)連の中で展開されていく不可思議な世界が詩情を構築していく。皆が体験していた世界に穴をあけていく上質さ。
(一)半ば水に浸かった教室で普通に授業を続けている教師の融通のきかない様子が、ユーモラスではあるが同時に不気味さを感じる。この設定でもう少し物語を展開させてほしかった。

11364 : 誓い  みちなり ('19/08/03 18:07:37)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190803_427_11364p
(一)丁寧に書かれていることは分かる。表層的であり一歩、奥へと進んでいるのかどうか気になった。

11362 : a  湯煙 ('19/08/02 21:49:53 *2)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190802_406_11362p
(一)空白と言語の噛み合いが独特で、新しい作品として存在感を示している。初連が、留まっているように思える。

11361 : 叛分子、記憶  鷹枕可 ('19/08/02 21:47:54)
URI: bungoku.jp/ebbs/20190802_405_11361p
(一)作品の圧力が強い。作用していく言語の昇華がヌメリを持っている。
(一)権力による暗黒の近未来を作者の個性的な筆致で描き出している。作者のメッセージは書かれていることとは真逆であると感じた。

Posted in 月間選考, 雑記 | Print | URL