9月分選考雑感(文学極道スタッフ)
2014-10-26 (日) 18:24 by 文学極道スタッフ
今月はとても難しかったです。田中さんは相変わらず圧倒的な作品でしたが、他の方々は、新しい境地を開こうとする作品が多く、安定感からは少し遠くなっているようですが、この人はこういう方向へ進んできたか、という驚きがありました。
zeroさんは、詩手帖に投稿されていた頃の、焦燥感漂う理知的、個人的な作品から一歩進んで、社会的、人間的な部分への視野が広がり、骨太な作風になってきました。これによって作品から「尖った」部分が薄れて、詩の精彩という点では以前の作品よりも見劣りするような気もしますが、思索の深さと広がりは増しているように思います。
葛西さんは、以前は、都会的でナイーブ、中性的な作品が特徴でしたが、ここにきて、敢えてぶっきらぼうな語法を活用することで、メッセージ性を獲得しているように思います。メッセージといっても、けして押し付けがましいものではなく、読者が共感できる日常性の息遣いがあるところが魅力なのだと思います。作品を丁寧に仕上げることに、本人の気が向いてくれば、どんどん良い作品を書くだろうと思います。
前田さんは高齢だと思いますが、詩作に対するチャレンジ精神には驚くべきものがあります。ご自身でも、いろいろ試行錯誤していらっしゃるはずで、その姿勢には頭が下がります。
思考錯誤といえば、はかいしさんも悩み多き書き手、という気がします。書ける人であることは確かで、おそらく、はかいしさん自身にもその自負はあると思うのですが、なかなか作品に結実しないという時期にあるようです。それでも、将来楽しみな書き手であることは確かだと思います。
以上です。