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阿部嘉昭、詩集「頬杖のつきかた」発売。

2009-10-26 (月) 11:07 by 文学極道スタッフ

阿部嘉昭、詩集「頬杖のつきかた」発売。
書店などでお求めください。
http://www.7andy.jp/books/detail/-/accd/32323937

頁数320頁という驚愕の詩集「頬杖のつきかた」は、『フィルムの犬』『ス/ラッシュ』『頬杖のつきかた』『春ノ永遠』という4詩集を一冊にまとめた大著だ。読み始めた瞬間、再読の楽しみに身を馳せ、読み進める中、完全に飲み込まれ、読み終えてしばらく、心拍数が上がり続けて静まることのない昂揚で満ちる。何が起こったのか分からなくなると共に余韻の創造が体内で始まり、やがて頁を繰るのを止められなくなってしまう。阿部作品は独特の疾走感覚があり、漢文・俳句・短歌に影響を受けたであろう修辞は、しかし映像的で音楽的で舞台的で、生体リズムに訴えて来て全てを、繋ぐ。繋ぐという確かな触手、それこそが、この詩集を言い当てるに相応しいだろう。思想的であり哲学的かと思いきや官能的で変態でエッチで助平で冷徹で美に擦過し意味変型が喩的な化合を起こす。難解にも思える一文一文は見事な音韻と絶妙の改行で眼球を転がし想像の先を走るフレーズを脳内に叩きこむ。阿部言語が見えてきたと思ったら次の瞬間には、もう段階は変容を遂げていて、流麗さから完全なる文法の決壊を導き出したりもする。質量がそのまま熱量となり、追いつきたい引き上げられる先がある読書体験は爽快と感じざるを得ない。今回、この詩集に収められたほとんどの作品は、SNSとブログで発表されたものだという。この事実も、この詩集の特筆すべき触手であろう。現在、多種多様な発表媒体が詩という分野にも用意されているが、信用に足りるものとして読まれる場所は一部の層には限られてくる。ネットなどの集団偏向現象を詩は嫌う、という言葉がまっすぐに発されたりもするが、それは違う。集団偏向を淘汰していくネットという現象を使いこなした阿部作品は詩の方から求愛してくるものばかりだ。詩集として成立した過程も繋ぐ物語を内包する新時代の一冊。これはゼロ年代談議などを蹴散らし忘却に帰するほどの威力がある。
《逆流して、
 あすは身に墓を立て、二階の高さで四万十のさなか透明に佇つ。
 一秒以降を 一秒から離れるために。》
帯に引用されている部分もやはり素早い。技巧の複合的な呵成と愉楽の転与、そして全てを繋ぐ触手の具現に皆、より速く巻き込まれ驚いちゃってしまえば、いい。
(平川綾真智)

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