文学極道 blog

文学極道の発起人・スタッフによるブログ

11月選考雑感

2009-01-10 (土) 11:18 by a-hirakawa

2009年、明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

今月も勉強になりました。
ありがとうございます。

今月は、

3151 : autumn  泉ムジ ('08/11/14 23:28:44)   

3171 : 仔鹿  りす ('08/11/28 17:06:35) 

3143 : 地平線  雨宮 ('08/11/11 10:16:14) 

3146 : 祖母の葬式  シンジロウ ('08/11/12 00:39:57)  

3134 : 露光  DNA ('08/11/10 00:12:37)  

3148 : 気狂い  ぱぱぱ・ららら ('08/11/12 15:29:08) 

以上、六作品が月間優良作品に選出されました。

3151 : autumn  泉ムジ ('08/11/14 23:28:44)   
には、作者のセンスを見せ付けるだけの良質な作品であり実にスマートだ、という意見がありました。また、いとおしさを得るけれども、枯渇の部分、もっと話者の慟哭が聞こえてきていいのではないか、という意見もありました。題材、文体、構成、連の高め合い、膨らみなどに、もっと高められるはずの情感が鈍く在しているように感じる、という意見もありました。多くの意見が出るだけの、様々な魅力が随所に顔を覗かせている素敵な作品です。

3171 : 仔鹿  りす ('08/11/28 17:06:35) 
は、作品に関しても作者に関しても実に興味深い恋愛詩なのではないか、という意見がありました。仔鹿は話者自身の、溺れてしまえない、けれど逃れきれない欲望であると同時に恋愛対象としての他者であるともいえ、そこを見事に作品として昇華している、最後から三行目の「ユニット」という言葉のみ、要推敲の感があるかもしれない、という賛辞の評が提示される一方、内省についての内省を読まされた感覚だ、作風の変化にやや冗長なきらいがあるように思える、などの意見も提示されました。これからの方向性を気にさせる、先のある魅力が咲いた作品なのかもしれません。

3143 : 地平線  雨宮 ('08/11/11 10:16:14)
は、僕と妻の性格の浮きだし方が見事で、その性格が出来るに至った生い立ちなども感じさせる余白に充ち溢れた素晴らしい作品です。地平線、恐竜、太陽、壮大なものの前に不安定さを抱えた人の小ささが見事に対照化され、作品を高めています。その内実が文章の拙い部分や巧いとは言いがたい部位と合わさり詩情を昇華しているように感じます。
ちょっとしたリアルな風光描写の挿入があればよいのかもしれない、どうも作者は化けきれていない、良質さを作品化出来ていない、という意見もありました。

3146 : 祖母の葬式  シンジロウ ('08/11/12 00:39:57) 
には、父がいないことによっての小さな成功が貴重に思える、という意見がありました。母からの電話と祖母の死の切迫の距離が解りづらいところが詩情を邪魔している、という意見もありました。

3134 : 露光  DNA ('08/11/10 00:12:37)
は、巧い、導入の魅力が全体を良質に仕上げている、という意見がありました。ただし、導入から魅せる観念の流れ着く先が見えないところが気になる、どこになにを届けようとしているのか、その先をもっと表出させても良いのではないか、という意見もありました。

3148 : 気狂い  ぱぱぱ・ららら ('08/11/12 15:29:08) 
には、ナイフで切り取ったような鮮烈さがある、という意見がありました。内実には共感するけれども、書かない部分やタイトルに高まったものを感じられない、という意見もありました。

さて、次点佳作作品について触れていこうと思います。

3178 : 狙われた街/狙われない街(メトロン星人)  Canopus (角田寿星) ('08/11/29 23:45:59)   
には、作者と詩の距離と読み手が入れる位置関係は見事に思える、という意見がありました。優良へと推す声もありました。誰かのせいにして、生きてゆく、その感触が良くも悪くも印象的だ、悪くはないけれども、説明が過ぎるような気がする、という意見もありました。メトロン星人を知らないと、書かれている、存在している情感がどうしても小さくなる欠点があるので、それはやはり作品としての短所なのかもしれません。それが長所なのかもしれません。

3122 : P・S ジャスミン  ミドリ ('08/11/01 13:53:22) 
は、上手くも、軽く、そして感情をつまみ出しなぞる、たたずまいの美しさが敷かれています。最後は上手く小さくまとまってしまって、もっと残せる余韻が削られているのではないか、という意見もありました。

3173 : てつづき  はなび ('08/11/29 00:21:23) 
には、このベクトルとしては悪くない作品だ、独自の作品として成りたっている出来の良い作品だ、という意見がありました。うつくしさ、日々のかなしみの、そこが印象深い、という意見もありました。他の作品と比べ、どうしても霞む部分を意識して、もっと立脚して欲しいもどかしさを感じる、という意見もありました。作者の今までの投稿作品の中では一番、良い距離で読み手とつながることが出来る作品のように感じました。

3150 : 舵取りの神  殿岡秀秋 ('08/11/14 20:37:57)  
は、優良へと推す声もありました。内容の展開に上手い部分もあるえれども、見せ方が立ち止まり説明してからの繰り返しになり、分かりやすさが奥域を出せていないのではないか、という意見もありました。前述した点、そういう書き方でそういう作品なので、その上で、もっと引き込んで欲しい、という意見もありました。解りやすさと抽象の具合をもう少し客観的に捉えても良いのではないか、作者はもっと良質に書けるのでは、という意見もありました。

3140 : 喉が渇いたのでソーダを飲んでみた  滝沢勇一 ('08/11/10 15:25:18)  
 熱帯の海に放り投げられたとき、深く深く群青に吸い込まれそうになりながら上を向いたらオレンジ色の液体のなか、気泡身体からのぼってってきらきらきらひかりが砕けたやつが降って刺さってくちのなか合成甘味料に似たひとの濃い、体液のあじがした
 夏休みを思い出した。
 残ったオレンジ色のソーダを乾いた蝉の死骸にかけた
 空き瓶は道端に捨てた
 余計に渇いた喉
この部分は実に印象的で、全体としてやりたいだろうことは解るけれども、理性的な狂気が完全な揺らぎを産めないでいるのではないか、という意見がありました。どんどん書いていって欲しい、手前の詩ではなく先にある詩をいつか描ける作者なのではないか、という意見もありました。

3132 : jazz  5or6 ('08/11/08 10:17:14)  
jazzを聴きたくなるような文章じゃなかった、という感想がなにより的を射ているとおもう、人生のなかにあるjazzの片鱗を、ほぼエピソードに頼っているという印象だ、そこからグチという感想がうまれてしまうようにも思える、という意見がありました。方向性は買うので、ここから数歩踏みこんで、作中に泥臭く心地よい波を起こしていくことを期待したい、という意見もありました。ダサい男性って感動してしまう、文章として、領域の詩作品として、拙い比喩なども引っかかる部分もあるけれども、それは二の次にしても良いのかもしれない、という意見もありました。

3119 :  言葉のない世界に  殿岡秀秋 ('08/11/01 07:47:07)  
圧倒的に見えない、予感するだけの、他者との寄りそい、それがある、という意見がありました。人との関わりにおける本質がここにはあり、この詩から膨らむものは非常に大きいが、ともすれば無難に読まれて終わってしまう言葉たちだとも思う、なにより作者の意図はそこまで伸びてはいないだろうし、仮にそうであればまったく違う書きかたをしているだろう、「予感するだけ」、けれどそうやって闇のなかで人は人と寄りそうものだ、優良に推そうか最後まで迷った、という意見もありました。「語るのではないか」と仮定的な書き方が作品世界を狭めているように感じる、比喩は決して手つかずなものではなく、多く使われてきたものなので、どこかで断定していくものが欲しく感じる、それを除けば書いていく紡いでいく合間合間の内実がどれも良質で爽快に思える、という意見もありました。

3139 : 団欒  ともの ('08/11/10 14:34:45)  
相変わらずユニークな書き手だと思う、ただ、メリハリがなく、バランスも良いわけでもない、今回の作品には、どっちつかず、という印象が拭えない、という意見がありました。作者はおそらく、言葉としての洗練よりもこういう、どこかギコギコとしながら核心に矢を向けるような紡ぎかたが合っていると思う、悪くない、という意見もありました。ところどころセンスが光っている、繋いでいく点と点も良いけれども、最終着地点を最初から決めていて、どんなに脱線してもそこへと戻しているような勿体無さがあり、狭い作品に感じる、という意見もありました。

3149 : 「 蛇。 」  PULL. ('08/11/14 09:46:40)  
力作だけれども、ちょっと収拾がつかない、乱れが面白みに繋がっていくわけでもない、という意見がありました。「そしてざらさらとしたわたしからだの中の様子を、」の部位だけ文章が乱れているように思えて戸惑った、あまり目新しくはないが、凡庸な位置にもある場所から書かれているものだが、丁寧に書かれている繊細さが内在していると思う、という意見もありました。粘度を保ったまま、全体的にもうすこし引き締めていい、斬新ではないがより高めたものを彼の言葉で再度読みたいとも思う、という意見もありました。

3176 : ダッチガール  koe ('08/11/29 08:53:26)  
放ち方が立っている、見せ方に再考が必要かもしれない、という意見がありました。

3156 :  八十八夜語り ー秋小寒ー  吉井 ('08/11/18 19:14:55 *2)  
とてもキッシュにまとめられている輝く作品だと思う、連作の一つとしてみた場合は浮いていて、そこが気になる、しかしこういう取り込み方はなかなか出来ない、という意見がありました。

3154 : 青い葡萄  小禽 ('08/11/17 08:30:09)  
には、良い短詩だと思う、さらなる成功へと狙いを強く持ってほしい、濃くも淡くも策定が中途半端な部位を再考して欲しい、という意見がありました。

 乾いた靴がまた濡れ始める頃
 少女はもう一度溜め息をついた
 外では雨が降り続いている

 柔らかな毛布が本当に好きで
この部位をもう少し高められなかったか疑問だ、けれども上手くまとまっている、という意見もありました。古いつくりで、伝統的なつくりで、寓意性を拡げていて、それはこれからをも予感させる上手さだとも思う、ただ、
 青い葡萄
この一番大切な部分を古くからある、あるいはあまりにもありきたり過ぎるどうしても過去既にあったあり過ぎた比喩としか言いようがない言葉で済ませてしまった点は大きな問題に感じる、作者自身で考えた言葉ならもったいない、という意見もありました。

3141 : そら  水瀬史樹 ('08/11/10 17:10:58)  
構成も、描写も、特に面白みはないけれども、無駄なくモチーフを伝えている点を評価したい、という意見がありました。作品を鑑賞する際に「鮮やかな安堵」を求める一つの主観が存在を高めることがあるが、そこへの提示として意味があるように思える、という意見もありました。
 かたちをうしなっちまった
ここに、ユニークで、可能性を秘めた角度でのモチーフの掴み方がある、しかし、その試みが実っているかどうかについては未完成だと言わざるを得ない、という意見もありました。作者は発想が少し凡庸なので、そこから動くものをもう少し考慮する必要があるように感じる、この作品は子どもが飽きないように読める感触に手をつける、ともっと味が出てくるのではないか、という意見もありました。

惜しくも選からは漏れましたが、その他、以下に挙げる作品が注目されていました。

3133 : 雨の波紋  丘 光平 ('08/11/08 21:44:28)   
 舌のうえで
に振り返させられる強度があります。最終連の余波はまとまりすぎているような気もします。一連二連を受けての三連のあり方もタイトルと共に伸び上がるあり方をもっと探せたようにも感じます。
秀逸な描写もありますが、飛躍が結実していないようです、という意見もありました。
言葉ひとつひとつの強度を、作者にはあえてもっと求めたい、作者としては推敲の余地はどこにもないくらいに、すでにギリギリと書き詰めていることが、もう書き切っていることはわかるし、他者との感覚その差異を確認する意味での投稿のような意思さえ伝わってくる、けれども、そこまでの完成が、読み手の手応えには必ずしもならない、二連目の氷の比喩ふくめて(四連での覚醒に直接関わる重要な連に思える)、ここは作者の美意識……心象風景からソネットという形へのこだわりまで……が読み手と共有しうる範囲内か、あるいは強く香るものであるか、という点にかかってくる、「庭の遠さに/雨は寄りそう」という表現は、とてもよいと思う、三連以降の語句には前半二連の流れを、言葉の選択として若干汲み切れていないようにも感じる、一気に無難になっているように感じる、本当に美しい、推したい、と思わせるにほんの一滴足りないもどかしさがある、という意見もありました。

3159 : 淀み、流れ  やす ('08/11/24 04:07:54)  
2連目は良い、1連目の「太陽」や3連目の「街」などは言葉以上に余計な距離感を生ませてしまっていると思う、惜しい、という意見がありました。もっとつき詰めていい、テーマは買いたい、という意見もありました。

3130 : 友達  笠原 秋人 ('08/11/04 18:29:43)  
生きるとはかつての自分との剥離、別離であるとおもう、がんばって脳内風景を辿っているのがわかるが、再読すると少々自己完結の感が否めなかった、という意見がありました。成功はしていないが、空気は生まれている、という意見もありました。

3128 : 蟻  寒月 ('08/11/04 12:26:14)   
「困ったじんるいである」が蛇足にも思えたが、それほど失敗ではないかもしれない、という意見がありました。

3127 : 頭ガ痛イ。  あらいらいら ('08/11/03 16:21:55 *1)
構成は良いかもしれない、文語調の言い回しはこの作品にそぐわない気がする、という意見がありました。

3172 : ハイツユカリだとか、中町コーポだとか、なんだかそんな感じの名前のついたアパート  リヅ ('08/11/28 23:40:45) 
悪くない、ただ詩の場合こういうものはプロット臭から抜けだすのが難しいかもしれない、ショートショートタイプだと思う、という意見がありました。

3158 : ブタのように生きろ  5or6 ('08/11/21 10:08:31 *7)  

3123 : 蜜柑粥  ゆえづ ('08/11/01 17:14:53) 

3174 : 降るコンクリート、夏の  滝沢勇一 ('08/11/29 00:22:18)   

以上です。

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