文学極道 blog

文学極道の発起人・スタッフによるブログ

10月選考雑感

2008-12-06 (土) 16:39 by a-hirakawa

今月も勉強になりました。
ありがとうございます。

今月は、

3073 : 眠り(a)  疋田 ('08/10/08 03:51:15 *4) 

3106 : Trick or Treat?  黒沢 ('08/10/28 23:55:36) 

3116 : ムルチ(『帰ってきたウルトラマン』より)  Canopus (角田寿星) ('08/10/31 23:16:40)    

3054 : カナブン  如月 ('08/10/01 16:16:13 *4) 

3082 : gloom  5or6 ('08/10/13 14:41:14)   

以上、五作品が月間優良作品に選出されました。

3054 : カナブン  如月 ('08/10/01 16:16:13 *4) 
は、今月一番美しい作品で印象的だった、という意見がありました。また、もう一歩進んで文学史に残るような傑作に仕上がる可能性が残されているように感じる、しかしその未完成的な部分が味でもあり、奥行きを作り出している、という意見もありました。本当、作者の成長には驚かされるばかりです。

3082 : gloom  5or6 ('08/10/13 14:41:14)   
は、粗もあるけれども、それを上回るだけのエネルギッシュさと覗く実力が魅力ある、という意見がありました。ストーリーはとても良く、そこへと引き込む写実や感覚も鋭敏だが、「格好悪くてもバカにされても生きていけばいい」このような直情を何度も出してしまうことが何度も読みたくなる上での楽しさを削いでしまっているのではないか、実存的だが、露出し過ぎの塩梅に感じる、という意見もありました。これから先が確かにある作品だ、という印象を選考委員一同、持ったようです。

さて、次点佳作作品について触れていこうと思います。

3060 : 島の女  ミドリ ('08/10/02 19:20:38 *3) 
は、小さくも良い作品で、女も風景のように描かれている、それがとても印象的な作品だ、という意見がありました。内側を時折混ぜるので、奥を見たい欲求を確かに叩いてきています。それ以上の情感を盛るだけの余裕というか隙間というか猶予というか、遊びが、もっとあっても良いのではないか、という意見もありました。このままでも十分楽しめるけれども、もう少しシャープになれば実存大賞を取った作者の実力が活かされるのではないか、との意見もありました。笑顔で、すかしっぺの達人、と言いたい、との意見もありました。

3096 : クマの名前はヘンドリック  ミドリ ('08/10/22 17:31:13)
は、作者のいつものこのスタイルの詩とは少し違い、静謐な時間と空間が描かれている、という意見がありました。上手く、軽く、背後もあるけれども、その上で読み返していく折り重なりが足りていないのではないか、という意見もありました。

3097 : 失語  fiorina ('08/10/23 21:03:09) 
美しい作品です。前菜のようでその実、何度も振り返る引力を持つだけの強度を持った作品です。初めに放たれた読後が触手を分けて幾筋もの光を作り出して、失語、とタイトルが背離を孕んでいる部分もよいのだと思います。高潔な文章の裾野を広げ、咀嚼し尽くす世界観を織り込んでいっても良いのではないか、読後の足りなさが気になる、という意見もありました。

3074 : (無題)  マキヤマ ('08/10/08 17:51:17 *6)
は、場の空気から独立しても強度を維持できるだけの負からのエネルギーが渦巻いている作品だ、という意見がありました。

3110 : 夜中に娘がひどく咳き込み  yaya ('08/10/30 09:43:26 *1) 
愛や本能も生活には負けてしまうものです。奥深くに書かれているものは喪失していく自分を喪失していく感情の鈍磨の嘆きにまだ気づいてしまう鈍感になりきれない寂しみ、に感じます。文体より情感より内容の詩情が良質だ、という意見がありました。悪くはないけれども、リアルという事柄もシュールリアルやSFや妄想に照らし出されて現成することがある、身辺雑記を超えるものがあるのかどうか、作品の泥臭さをもう少しだけ考えていく必要があるのではないか、という意見もありました。

3091 : 朝の路傍で  丘 光平 ('08/10/20 11:47:09)
は、時間を描き出すことに長けた筆致です。三連目の奥行きをもう少し出しても良かったのではないか、朝や明るさが勝りすぎて暗い部をはっきりと浮きたてられなかったのではないか、小ささをより小さく作品へと与えてしまったのではないか、などの意見がありました。一連目と最終二行が素晴らしい、ただし作者の別の側面も作品から読んでいきたい欲求に駆られる、などの意見もありました。

3092 : めくるめく角質  ゆえづ ('08/10/21 00:32:35) 
文章が汚い、という意見もありました。粗い部位、効果的とは言いがたい部位、目につくが、それも味なのではないかと思えてくるほどに奥に潜む情感が、かすむことがない先を感じさせる作品だ、という意見もありました。個人的に、豊かな繊細さで生活を捉えている詩情を作品で高めていくことが出来るだけの作者だと感じました。どんどん書いていって欲しいと思います。

3079 : こことよそ  ぱぱぱ・ららら ('08/10/11 02:05:55) 
面白さもあるし、りあるってのはこんな物だろう 、という意見がありました。とても軽い作品で、深いテーマを扱おうとして扱えなかった感がある、という意見もありました。

3068 : 括弧の中が遺書です。  S. ('08/10/06 17:10:36)
は、意見が割れました。いい加減に書いたものを放り込んだとしか思えない、という意見もありました。縦書きにしての映え方や空白の使い方に尋常ではない上手さが光っている、という意見もありました。タイトルがこの作品を高めているかどうかについては疑問だ、()にどうしても向かう意識が情感を昇華させる部位に達せていないように押し付けてくる、という意見もありました。

3101 : 花巻  5or6 ('08/10/27 13:25:16)
は、美しい情感に満ちています。第二連、
 そこに俯いた少女を細い葉のような指で
 燃えるような思いと共に気高い少年が唇を重ね
 まだ蕾の花を守るように抱きしめていました
一行目と三行目の「ような」若しくは「ように」は要らないのではないか、短い文章に修辞上の簡単な粗が目に付くのは問題なのではないか、という意見がありました。
途中までとても良く、上質であでやかで巧みだけれども、四連の
 少年の思いが
 届いた気がしました
から急激に面白さが逃げていくように思える、それは迷いの情が負に働いてやわらかな道のりからはみ出て形をとどめなくなることから始まっている、という意見もありました。最後までもう少し上質なままでも良かった惜しい作品だ、という意見もありました。多くの粗を乗り越えて優れていると感じさせる力のある作品だ、という意見もありました。

3066 : 秋の散歩  鈴屋 ('08/10/06 00:07:20) 
眼前の切り取りから始まり内実があって眼前の切り取りで終わる、情感と実存を高めあう作者の得意なスタイルにアレンジを加えた魅力ある作品です。一行目の切り取りは吸引力があるけれども、内実の展開の遅さや古風さの中途が高まりを足りなくしてあるのではないか、という意見がありました。最終二行の冒険は成功しているけれども、全体が粗く、踏み切りの件などは勿体無さ過ぎるのではないか、という意見もありました。

3059 : ビオトープ  ゆえづ ('08/10/02 17:12:07) 
一連目と二連目に突き刺さっている陳腐にも感じられる言葉を少し取って、最終連にかけてを、もう少しだけ選んでいくと上質な作品になったのではないか、という意見がありました。まだ未完成だけれどもその向かう先が見え、そこに魅力がある、という意見もありました。個人的に、とても気になる作品でした。輪郭を曖昧にさせる塗り重なろうとも見えてくる感情がとても柔らかで魅力的に感じました。

3062 : 非詩  はらだまさる ('08/10/03 22:47:12) 
言葉の跳躍とイメージの連鎖や雑学に惑わされてしまう、返信部分の方が面白く情感ある文章のようにも感じる、という意見がありました。真剣さや、詩作品として向かいあったであろうことから伝わる情熱は飛びぬけている、という意見もありました。もう少し、隙間があっても良いのではないか、という意見もありました。

惜しくも選からは漏れましたが、その他、以下に挙げる作品が注目されていました。

3085 : アンニュイな空に  雨宮 ('08/10/14 10:46:57) 
良質な部分がとても多い作品です。日常のどうでも良い生活の中に細い感性が情感へと触れて詩作品としてわずかながらに立っているのだと思います。
場面転換が時間的にはとてもゆっくりとしているのだけれども思考の反射で素早くつなげていっているので、情感が多い部分をつないで、
 わたしもあの、
 空のような奥行きが欲しかった
 子供の頃から
 そう願っていた
 わたしは未だに子供であった
このように情感が少ないような削いでしまうような部分も目立たせずに書かれてはいます。
 テーブルの上にあるチラシを手に持ち
 滑らかな質感を確かめてから
 紙から翼に変えてやる
このような小さな情感が作品の等身に合っていて、
 朝の光に照らされたナイフの鋭角な反射だけを
 頭の中に持ち出して
 家を出る
最後まで堆積させていき、読後に残るものを形成しているように感じます。
 わたしの腕と手は
 翼を作れても
 翼にはなれないことが
や、前述した情感が少ない部分はもう少し言葉を選んでも良かったのかもしれません。
そしたら、もっと伸びあがれたのかもしれません。
後、
 ポケットに入れておいた
 ナイフを机の上に置いてから
では、普通の方の普通の日常での細い捉え方が面白い側面が少しだけ狂気に寄りました。前にもう少しだけ何かあっても良かったのかもしれません。
構造があるところは良いけれども、それ以上の上質さは、ないように感じる、という意見もありました。

3113 : 鳥葬  はらだまさる ('08/10/31 16:39:15) 
二連目の、
 積み藁に火を放ち、
重複が重ねる巌は効果がないのではないか、とか、三連の小ささが効果的ではないとか、最終行だけ切れが悪く余韻をかぶせられていないとか、多く疑問を感じるけれども、
 冬が勃起する
は現代俳句的でもあり、それだけで十分通用する詩がある、という意見がありました。冗長な場合が多い筆者にしてはわかり易く、且つ行間も生きており、空行や改行に語るものがある良い詩だけれども、ありきたりで強い神話のモチーフが短い作品を刺し貫いているのはきつく、膨らんでいかない、という意見もありました。作者の作品は作りこまれていて、熱量や完成度も評価すべき位置にあるけれども、奥深い感動が作品自身に少ない欠点が目立つ、という意見もありました。

3107 : 傍らに明かり  結城森士 ('08/10/29 11:05:50)  

3064 : ミュウとオムレツバーガー  はるらん ('08/10/04 03:38:12)  

3072 : 海の瞳  草野大悟 ('08/10/07 23:27:03)   

3056 : (無題)  マキヤマ ('08/10/01 18:51:15 *1)   

以上です。

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