#目次

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玄こう

選出作品 (投稿日時順 / 全33作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


  玄こう



『お先にー、お疲れ。』、仕事場をあとにする。着替え室で『ズボン』と言ってズボンをはく。『靴下』と言って靴下をはき替える。建屋を出たら外は心地よい風が吹いていたので、ふいに、『風』と声に発した。
冬の吹く風が暖みをましていた。春の到来を告げてくれている。空気の流れを頬に掠めたとき、思わず『風』と発した言葉について歩きながら思い返した。歩きながら少し不思議な気持ちになり考えていた。風という一語を声にした風は、
ひとつの同じ風。
、ふたつは違う風
ふたつは同じ風。
、ひとつの違う風



**

かかとの鳴るブーツが身軽に角を曲がります

ほとほとと花と水とが匂いたつ行路を夜過ぎ

石垣に並んだパイプの口から漏らした水の先

グランドピアノ脇に写る譜面が二つに割れる

トラデルシアトラヴィシア南から吹く風釦釦


***

よろよろよろめいてよろよろと座り込む手にとる一輪の野の花も 土につまずく小さく転がる紫露草の葉がフラワーフープを幾重にも腰に巻きつけ車輪のように浮かせている 花は思わずよろめく手向けた花弁の襞のもうひとつ奥のリム 坎から芯髄を覗かせている 

****

山むこうに山がありむこうにもまた山がある

道の先には道がありその先にもまた道がある

花のなかに花がありなかにもひとつ花がある

君の奥には奥があり奥の奥にもまだ君がいる

私を知らない人を知る人を知らない私を知る

..........
.........
........
.......
......
.....
....
...
..
.


雨の詩 三連  空間工房

  玄こう



   雨の詩 その壱

 
とてちて  トテチテ
あめゆじゆ

話ってなんだい?
 僕はつまらないよ

ドタバタ ドタパタ
ジトジト パチパチ
あめゆじゆ
 
降りはじめは
 研ぎ澄まし  ピツピツ ピツピツ
そのうち寂しがっては寄り添う雨が  トテチテ トテチテ
さらに怖がってはいきなり泣いて バチバチ バタバタ
思わすもらい泣きもしている   シクシク シクシク  
と 途端に興奮しながら  ドシャバシャ ドシャバシャ ドシャフル  ドシャ
いよいよ  雄叫び   バカラ バカラ バカラ バカラ バカラバカラバカラ
バあぁぁぁぁぁぁぁぁl―――――――
                 ――――――――――――――ああ

ん?

と 不意に  フっ と 雨は鳴りやむ



 サ サ サ とまた
忍び雨脚がやってくる
 
サササ ザザザ ザー 
ザザザザザザサ  
ざあぁぁぁぁぁぁぁぁl―――――――
 ――――――――――――――ああ


 天人の洩らす他人の空耳

僕の心に至ってはね
残念なのだが

つもるもなくて
 つまるもないよ

いろんな音を 
くれてる
雨がね
つまるもない
僕のお話を
つもらせて
くれてる
雨がね

面白いんだ

あぁ 天人の洩らす他人の空耳






   雨の詩 その弐

屋根トタン
ダンダン タカタカ 
ダンダン  ビシビシ 強く叩いて
いいよ 強く
もっと 強く
もっともっと 強く! 
声 おしあげ
吊るしあげ
語尾をね

もっともっと吊るし上げ ろぉぉ!!
語尾をもっと吊るし上げ ろぉぉ!!
 ざけぇええ!!!

ってね

さて残念だが
僕の心は
つもるもなくて
つまるもないよ
ハハ
あら?
また ヒトポツ ヒトポツ
雨音落として


僕なんぞ
言葉なんど
もうどうにも
おかしくしよう
さらさらおしまい
このままこのまま
僕の頭上を絶え間なく
駆け抜けていくんがいいよ

雨に載せ 

   ピツピツビシビシ 
   トテチテトテチテトテチテ 
   ジュルジュルジュルジュル 
   
 シャバフルシャバフルシャバフル 
 バチバチバチバチバチバチ
さぁさ高鳴れ 踊れ
ドタドタバタバタ
パラパラパラパラ
 ザンカ ザン カザン ザンカザン
 ザザザザザ サササササ

ふーん風も一っしょにやってきてね

ザンカ ザンッ パタパタッ ピツピツ

さぁさ 高鳴れ 踊れ
雨風よ


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   雨の詩 その参


  /雨の
  ///
  吹く
  風//
  ‥ …
  ‥草、いきれ
    、

   //(・/)
 
  夢忘る、なら
  影、 うつす
ほんとぅの淋しさをね
ほんとぅの厳しさをね
隠し持ってる
ヒトよりの雨風をね
僕も隠し持っている
北方の凍てつく猛吹雪や
大海原の巨きな大時化を
隠し持っている
安堵の心地に
想いを馳せては
人よりの雨風を打たせて
安住な眠りに就いていく
僕は
雨に 風に
かえすがえすも キクノダヨ
人よりの
話す言葉の何倍も 
何も言わない 雨音が 
ほんとうは 一番
正直なんだ と キコエルヨ 





   空間工房
              くうかんこうぼう
シュリン          かんくうかんこう
ピシ ピシ         ぼうかんくうかん
シュリン シュリン     こうぼうかんくう
ピシ ピシ         かんこうぼうかん
コ             くうかんこうぼう
カナン           かんくうかんこう
カナン           ぼうかんくうかん
カナン           こうぼうかんくう
カナン           かんこうぼうかん
シュリン          くうかんこうぼう
シュリン          かんくうかんこう
ピシ ピシ         ぼうかんくうかん
              くうかんこうぼう
カナン カナン       かんくうかんこう
カナン           ぼうかんくうかん
              こうぼうかんくう
              かんこうぼうかん
              くうかんこうぼう
シュリン シュリン     かんくうかんこう
ピシ ピシ         ぼうかんくうかん
ピシ            くうかんこうぼう
コ             かんくうかんこう
              ぼうかんくうかん
              こうぼうかんくう
シュリン          かんこうぼうかん
ピシ            くうかんこうぼう
カナン  カナン      かんくうかんこう
              ぼうかんくうかん
シュリン  ピシ      くうかんこうぼう
ピシ            かんくうかんこう
コ             ぼうかんくうかん
              こうぼうかんくう
カナン           かんこうぼうかん
カナン           くうかんこうぼう
              かんくうかんこう
シュリン  ピシ      くうかんこうぼう
              かんくうかんこう
コ             ぼうかんくうかん
              こうぼうかんくう
カナン           かんこうぼうかん
カナン           くうかんこうぼう
              かんくうかんこう
              ぼうかんくうかん
              こうぼうかんくう
『昨日の試合どうなった?』 かんこうぼうかん
              くうかんこうぼう
『えぇ? 何てぇ?』    かんくうかんこう
シュリン          ぼうかんくうかん
シュリン ピシ コ     こうぼうかんくう
シュリン シュリン     かんこうぼうかん
カナン  ピシ コ     くうかんこうぼう
              かんくうかんこう
『サッカーよ』 ピシピシ  ぼうかんくうかん
シュリン ピシ       こうぼうかんくう
コ コ           かんこうぼうかん
カナン           くうかんこうぼう
カナン           かんくうかんこう
『あーぁ、PK』  ピシ  ぼうかんくうかん
ピシ コ          こうぼうかんくう
カナン           かんこうぼうかん
カナン           くうかんこうぼう
『えぇ?』         かんくうかんこう
『なぁ? なんって』    ぼうかんくうかん
ピシ ピシ         くうかんこうぼう
シュリン          かんくうかんこう
カナン           ぼうかんくうかん
カナン ピシ        こうぼうかんくう
ピシ『あとで 話すわ』   かんこうぼうかん
シュリン シュリン     くうかんこうぼう
ピシ『ナニ? 勝った?』  かんくうかんこう
ピシ ピシ  コ      ぼうかんくうかん
『あ,と,で 』      こうぼうかんくう
『ピーケーよピィー 』ピシ かんこうぼうかん
シュリン ピシピシ コ   くうかんこうぼう
カナン カナン シュリン  かんくうかんこう
ピシ ピシ         ぼうかんくうかん
『聞こえねー 』 シュリン こうぼうかんくう
『……… 』 ピシ ピシ  かんこうぼうかん
コ コ           くうかんこうぼう
コ             かんくうかんこう
シュリン          ぼうかんくうかん
コ ピシ          こうぼうかんくう
『黙れ! 機械』      かんこうぼうかん
コ ピシ          くうかんこうぼう
シュリン シュリン     かんくうかんこう
ピシ ピシ         ぼうかんくうかん
ピシ            くうかんこうぼう
コ             かんくうかんこう
コ             ぼうかんくうかん
ピシ            こうぼうかんくう
シュリン          かんこうぼうかん
ピシ            くうかんこうぼう
シュリン シュリン     かんくうかんこう
ピシ ピシ         ぼうかんくうかん
ピシ            こうぼうかんくう
コ             かんくうかんこう
              ぼうかんくうかん
              こうぼうかんくう
シュリン          かんこうぼうかん
ピシ            くうかんこうぼう
カナン  カナン      かんくうかんこう
シュリン          ぼうかんくうかん
シュリン  ピシ      こうぼうかんくう
ピシ            かんこうぼうかん
コ             くうかんこうぼう
              くうかんこうぼう
              かんくうかんこう
コ             ぼう かん
              くう かん
              げん こう 
              の書くものは全般に
              どうにも薄気味悪い
              文章ですね
『黙れ! 機械』      ぼう かん くう かん
//(・/)          こう ぼう かん くう かん


、記

  玄こう


 *

 からだをつかえばよいものがうまれる。あたまをつかえば、よいものもわるいものもうまれる。
 皆がみなそうやってきたことが後になって気づかされたとき、がっかりな、
仕事の手足が、遠くで置いてきぼりをくっていた。バラバラ、バラバラ、に架橋をくぐる、線路をみおろす、はらわたが石綿のように捩じ込まれた傷みの今のこの心地。心配事を吹っ切らすため、橋の階段をおりていく、『右踵あげます、前に出します、降ろします。左踵あげます、前に出します、降ろします。』身体のひとつひとつの動作を、ゆっくりこなしながら、頭でじっくり確かめ、言葉で実況していく。21:00頃

 昨日見た惑星は、木星と金星だったようだ。何年ぶりだろ、深夜本屋で開いた天文ガイド、星図の記号をなつかしむ。5月21日に朝7:30 太平洋ベルト付近で金環日食だそうである。以降2041年まで待たないと日本では無理なようだ。
 数理と天文が太古に、結ばれ、分岐し、交差し、よられ、とかれ、人間の歴史的現在――現として在るもの。
 わたしの人間の記憶は過去という虚構であり、一歩その先の未来という人間のわたしの虚像は幻である。

 幻を視る   幻を視る
 そして観る  そして観る
 そして診る  そして診る
 こころみる  こころみる
 そしてまた  … …

 … … 知識や頭によって選り分けられた多くの次元を一元化させることは、机上においてあまりよい仕事の結果を生まないであろう。
 粒子性とも波の性質ともよべる光がまた別の物性の次元で、また違った別の世界をつくっているんだろう。
 例えば身体の五感を、視覚聴覚嗅覚味覚痛覚と選り分けられた、それらすべての性質を兼ね備えた別の第六感が、わたしの知らない世界をつくり、つくりかえているんだろう。1:51
明日がやばいので寝る。

 記、2013・03・13



 **

なにしゃべってるかわからへんし、
なにしゃべってるかわからへんし、
なにしゃべってるかわからへんし、

たぶんえぇひとやろ。
たぶんえぇひとやろ。
たぶんえぇひとやろ。

この街さらさらさらさらさらされよう
ざらざらざらざらざらつくひよりみ
ひだまりさんさくうつくしいひと
うつくつしているなんともうつくしくちらつくしらじらと
したまちのおちつきようがなんともくちびるむすんでなんにちもなんにちもなんにちも
ひらかぬくちになにもないものなにもないもの

ゆきしのみちをそそとゆきすぎはおりをめしてはかまをはいてうらわかいせいじんたちのにすがたがとおくでなんにちもなんにちもとおくでねがっていたむごんでほうちしただれかのおくびがいくとせとわすれてしまったかたすみからよみがえり一杯珈琲とミックスサンドを頼む。

『ハイチーズ』(^^v 写る娘を携帯で見合い初孫を抱きあやすたったいちどきりの幸せなふたりの笑い声が、たかなっていた喫茶店のむかうのテーブル席で喜びをきたす母とおぼし年歳と娘とおぼし二十歳の成人を祝うことのこの日。

おかえりなさい
おかえりなさい
おかえりなさい

しとねのひるのねまくらくびすじねちがへたどんつうかまけておくびにつかれてかおをぶたぶたぶたれたこぶたこぶぅたこ、わすれかけたこうとうぶがちぃととちとちとくるうおしげしょうむな喫茶をでて南向きにむねかざりをつけしげしげでていった。あとどれくらい?ひさしいひよりみたぶんあのひとはえぇひとやろあぁたぶん誰よりも何よりもなんにちもなんにちもなんにちもまったかひあってかがやくんだ。ゆきさきはちがえど花の咲く居酒屋暖簾をまたしてもくぐりねけ咳をしてゆかりのかんばせを空にまたたく耳からでてきたよじりあう星星を、俺はいったい、いったい

なにしゃべってるかわからへんし、
なにしゃべってるかわからへんし、
なにしゃべってるかわからへんし、

たぶんえぇひとや
ただいまおかえり
いつものおはなし

〓寝ながら聴いて寝る
自動で更新されるMENU
眠りながら記事を.T消灯
AM00:22 目覚ましAM06:30

 記、2013・01・09





..


I am NO the in MEDIA

  玄こう

>メディアは 文学にも藝術にも詩にも ならない


茶色い土がつなぎとめている
コップの水をうつしかえ うつしかえしながら
縦書き横書き斜め書き裏書き文字をうつしかえ
突き降ろす文字は意志へと伝へようと
テンキーはボタンの穴に無数の蟻の巣
 ↓
→●← ∞,∞, ∞,∞∞∞,卵
 ↑


陽光の照り輝きて巡る読者の眼を
白地の土を掘り起こし
黒印の火
心の燠火 
右から左へ
ひとりで歩く
どこへ行こうか

頭上高く一天をあおぎみ
雨粒さへ目もとにおとし
読ます文字を 一字一句
流し目にひきおろす
改行させ 改行させ その滴一点一点・・・ 
延べひろぐ ながら てんで ぼうぼう

鏡はなぜにわが身を縦に反転させへぬか
その身の自由は地上の二次元の目は前後
左右の奥行きのみが与えられているから
鳥たちは鏡など見るものか
キョクキョ  ういしく啼く ウグイスが 今日の朝方 玄関出たら
歯磨きし うがいをし 青空にむかって ガラガラと口仰ぐ 初夏の濃紺な空があった 



  ※

近隣惑星の人々に僕らら融資有志有史
花と実とが地上に矛盾していますでも
語る言語を抽象化しています、、でも
僕など歴史なくて沈滞平衡そして喪失
自らからセルのART?なんじゃらと
こだわりのおことわりのたわけた文句
過去を抱く真似乞食、勿体無いアザ字


未来の僕たちが新しいとかって
恐竜たちにも言えないですから
淡白な月面湿地帯に泳ぐ観念は
喪失して逝くのでしょう
、先行かぬ末路
言語の意味?あなたの
詩は歌われるのですね
たぶん忘れ去られていきますでも

言葉をねじるマッピング異名の字
ホームのベンチに腰掛けて編集し
宇宙の森にて観念から首だけ出し
声を聞くスイッチ一つで連を生み
たぶん忘れ去られていきますでも



  ※※

循環する暦の境界線
名前は黒
季節に篭る部屋から断層面上に輝く
露頭
忘れられない世界へ
朝ぼらけに刻々
瓶の船底に落ちた
豚ボボン
心移り気拍子木
排他目尻朦朧
ヴィジョンからヴィジョンへ
季節に篭るモナダ
新しい日ごとにイラホ

突く
厭く
模す
塞ぐ
こめかみ
凍てつく
がる
同時に日干し煉瓦
クレイジ、、ョン
座礁を繰る、電磁
暦を移送する海陸
煙る汗を鋭くつんのめる
解すかいすかやより
震え
沁みじみと
鉛筆を持つ
あばや
杜守
料理をする
手真似ごと
貞操をかいすかいす
野獣に形を掛けて新緑木立に泣く二匹
まだな
いまだ静か
停止
ららら

……


雨の日の エスキース

  玄こう


 *

オセロの反対コミュニティ 呪われた阿保阿保君の一人の労働者. 玄関を入ると香ばしい麦茶の香りがした. 特別最近, 台所でヤカンの麦茶を沸かしたりしたことないのに 何故だか玄関入ると 香ばしい香りがたちこめていた.  化学物質の人工臭とはまるで違い, どこか気持ちも和らぐ. ようやく身体を折り畳み 今日 帰宅くたくた 全身“胸糞”まみれな心の羽根を, 作業靴を脱ぎ, 玄関マットレスで足踏みをしながら携帯を開く. 今日は久しぶりに嗅ぐ香りがたくさんあった. いくつもあった. 設備の汎用機の油漏れの匂い. →電車ホームの豆や屁の匂い. →アスファルトやビニルシートのすえた匂い. 街なかの匂いを揮発し浄化していた一日だっ, 分散していく自分の位置に,, おかれている.


 **

時計の文字盤から落ちる言の葉 1 2 3 4 5 … 沿う雨を奏でている ,夢の戸から以前居た女の声が 紫色をしたクローズド ,出色の街の雨は文美(あやみ) ,日一日と新しい命が抗している ,ほつる雲が真綿のように秋を待ちわびている ,空と草木の雫 ,灰色をした雫,,, ...


 ***

夏が少しずつ遠のいているのをみるとなぜだか身の回りの音が静かに聴こえる サンダルで歩く足音が騒がしさを踏み消している 一枚二枚と木の葉を草履の裏にくっつけながら, 身の回り喧騒が遠のくのはきっと台風が近づいている前触れだから, 歩く私の足音を,車の喧騒を,吹き消し, 秋の風たちが様々な音をさらっていた


 ****

君はいつも夢にまで咲き,わたしは蔦の這う赤レンガのゲートをいくつもくぐる.凡庸な陽のひかりを浴び路のわきの沢に両足を浸し,落ち葉のせせらぎをじっと聴き立ち尽くしている.肥沃の混在する物憂げなカラーリング.水に浮くシラー カリアス書簡をめくり,歩く,歩く,左右くまなくめくり,項(ページ)を探し,求めて歩く.

菖蒲の池のほとりを魚見している,深泥(ミドロ)の粒をたたえた形跡が,夢にまで咲く形跡が,天井の雲間に曳かれた無数のたま粒が,横に長くあしらう水化粧の顏となり,,灰色く目元を濡らすツブツブを束ね,さわさわと降る雨となり,頬を探し,求めて歩く.



    .      
           .


      .     .


散文を歩く

  玄こう


  ** 散文を歩く **

 あさのみどりの道がらに
 つめたい滴がホトと落ち
 背中をかえりみ狐の山河
 座り込んでうずくまる
 おやすみなさい伝説
 ドングリを拾う
 アラカシの実を
 みつぶ手に拾う
 お休みなさいと
 土枕に聴こえる
 寝台の道を
 のらりくらり
 海をまたぎ
 亜熱帯の
 遠い記憶
 


 ** 流浪の木馬 **


よきよきやよき、われもこう
よきよきやよき、われもこう
哀しみはゆうべのことのよう
見上げれば、月はおくそ笑み
ぼくらを眺めているはずだが
きょうは無しか知らん雲隠れ
のきしたにうずくまる子が1人
ちかづいてみると、なんだかな…
ただのガーデニングの鉢には紅万作
なんとも勘違いしながら、ふー驚き
 「でも、それ、見てるんでしょ?」
所々の家家にはイルミネーションがまたたく
子のみた景色が音のない路地に聴こえてくる
 この静けさがたまらない
寒いよきであれば、温もるものもあるのだろう
ヘッドホンを両の耳にふさぎ、ぼんやりと
軽快なアドリブギターにめぐりあう
 よきよきやよき
 われもこう
 哀しみはゆうべの
 ときのようだ
 あるきよみちを
 とおとび、とおとぶ
 よきよきやよき
 われもこう
 あるきよみちを
 とおとび、とおとぶ
 よきよきやよき
 われもこう


屈折した詩人たち、出逢った友に、捧げる

  玄こう




   無題

この身ならぬ一日を、一字一句を抱え、はらいせる、散文を走らす

記憶が省かれていく、誰のためでもない、こ、そ、あ、ど、れって適当

少しずつ離れていく故里とを引き裂く空に 、私の両手の目や・足や

ハンドルを廻し、アクセルを踏み込む。、、カイロスの風が車内をうずめいている



生き死をわかつ特攻操縦士が競う、夜のテントの見せ物屋台船、一斉に明かりを落とす。おとり操作の機銃飛行から数えきれぬ弾丸が、見張りのデッキに立つ祖父のこめかみをすり抜けていった。命中はただ一発だが私は今も生きていた。物資を運ぶ貨物船に祖父は、通信士だった。一隻一隻の仲間の船は魚雷の激突と共に炎をあげながら沈んでいく。隔てた故里をあとに沈んだ人々、その生き残りの船はただ一隻だった、と通信を打ち続けた。船の見張り台に立ち打ち続けた。爺はそんな昔を昔話のように、語って聞かせてくれた。



故郷からなぜかしら記憶がそうしてよみがえっていたから、帰郷を済まし私は歯の痛みを抱えながら、一夜のハイウェイのなかで記している。長旅でもないのに、帰るあてどがどこへやら失踪したい欲求にかられながら、停泊、(2013/05/05/23:00)
無人のシャトルバスの窓のなかにうつしこまれた乗客座席うっすらと青白く照明を落とした車内にポツリ男が見おろしている。狭い視野の二重窓から誰かを待つふうな眼鏡の若い貌影になかんずく私はそれを見て車内で宿をとることに決めた。



**

   17歳

ある日ぼくは青い夕日をみた。氷のように冷たく、鉄のように固く、刃物のように鋭い夕日だった。そいつは空をなめまわした。そいつは空をくっていった。黄色いピンクのお面は、冷たい青いマスクにかわっていったのだった。
ある日ぼくは青い道を歩いていた。わき道の景色がどんなに寒々としたものであるか、
冷えた空気が死んだ霧のようにたちこめていた。そのときぼくのまわりの景色がぼくを捕らえようと、おくそ笑みを浮かべながら白霊の吐息がぼくをしばりあげた。ぼくはミイラのように固くなった。ぼくの体はとんがりだし、ぼくの肉は外にほうりだされた。さっき空をたいらげていたそいつは笑いながらこう答えた。

 「まわりがこんなに青いのはおまえにとってとても幸せなことだ
  誰がおまえを征することができようか
  これからおまえは詩人になりすまして旅をする
  おまえの外界を退いた空間のなかで
  しかしおまえは詩人の声をきき、旅をする
  これからおまえは詩人たちと出会い
  彼らの清純なる魂をみていくことになろう。」


・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・


  『本』

わたしたちはみんなによまれたいの
ねぇこの、虹をひらいてごらんよ
  
ねぇそんなにないてちゃ
おうちへかえれないよ
ほらみてごらんよ
きれいなにじが
あんなにくっきり

ねぇそんなにないてちゃ
にじがくもにかくれちゃう
てをかざしてごらん
みあげてごらん
きれいなにじがみえるよ

あんなにとおくにあるのに
あんなにたかいところにあるのに
なのにあんなにくっきり



  『ギターと北キツネ』

彼はもうかえってこない
あれから17年
彼のギターが蔵のなかで目覚めること
その白いおひげは北風でふるえていた
彼はかえってくるだろうか
春夏の原野で遊ぶこの時期
彼はでももうかえってこない


  『作家を志したものが言ったおはなし』

あのときとても大きな粒でないたのだ
でも今はなきたくない
かなしみはとてもおおきなものだが
あのとき落ちたものは
それは勇気という名
そして雨が降った
俺はそのまま
とても大切なことばを知った
山はそのまま流れ
谷は深くて短い
川は滝の心を知り
海のこころを知る
ただ一人のにんげんが生まれない
その大きな 大きな物
ただ 無いものが 欲しい


 『エドガー・アラン・ポー』

私の述べたことは真実である
皆は私を誇大妄想という
 「ユリーカ」
この世界は箱入りの大時計みたいなものさ
皆は私の直観に比べたら大洋に浮かぶ泡に等しい
 「ユリーカ」
でも皆は私を自己欺瞞な男だという
でもお前は私の確信を信じるかね
   

  『スプリット・ブレイン』

一個の私には二人の私がいる
一人は科学者 一人は芸術家
一人の私が林檎の絵を描くと
もう一人の私はそれを見てオレンジという
私が憂いに沈んでいるっていうのに
こいつらときたら笑っている
たわいもないことにいつも喧嘩ばかり
心はいつもとっかえひっかえ
私達はへつらいと偽りの中で
是か非かを 論争している


  『・リンドバーグ』

意気地がないねえ、君がどれほどまで過去において悲境の地にあったにせよ結局は過去のこと。まるで君は過去の屍を掘り起こしているのも同じことだ。
それよりどうだい、この海洋の美しさ、なんと大空の澄んでいることか、一点の太陽、過去にどんなことがあったにせよ、今僕らは大空に浮かぶ塵にも等しく、
……………そうさ、この先何が起ころうとも、この瞬間に生きていることでたくさんだ!



  『屈折した詩人がうたったうた』


 これで終わりだ わが兄弟よ
 これで終わりだ わが友よ

僕は何ひとつ持たず 砂漠の上をさまよっている
風に吹かれ 灼熱の陽に照らされ
たよるものは何ひとつない
昼と夜とが僕を突き抜け 月光が僕を照らす
コップのなかの砂漠では 手を伸ばしても何もつかめぬのだ

 これで終わりだ わが兄弟よ
 これで終わりだ わが友よ

コップの中が 全身の血で満ちぬかきり
僕はこの砂漠から逃れることは出来ない

 これで終わりだ わが兄弟よ
 これで終わりだ わが友よ

あぁ、僕に石を投げつけ、唾を吐きかけるつもりだな
あぁ、僕を愛するふりをして
   陰で罵倒罵声を浴びせているのだろう
あぁ、僕を愛するふりをして
   このままのたれ死にさせるつもりだな
あぁ、ここから逃げ出さなければ
あぁ、誰か僕を助けてくれ

 これで終わりだ わが兄弟よ
 これで終わりだ わが友よ

 あぁ、これで終わりだ


・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・



***

 二〇一三・四・二五 

    記


真夜中の迷い道を徒歩
針射す真っ赤な街の夕
君の瞳に目覚めた空が
耳にひそめる少年少女
ありふれた夢中を抱え
むせる咳を刻みながら
にぎやかな文字盤の目
分秒針を重ね合わせた
その五線譜を綴るのだ
歩む両手を互い握りしめ
蒸せた日差しのただ中を
太陽はほころんでいた。

円な瞳を耀かせながら
雲は逆さに流れていた
いつしか君とは逆に
流れていたのだった
だから、さよならとは邂逅だ
だから、いつか君の元へ贈る。

たどり着けるだろうか
この背中を縫ってく
かぜを
君の閾を通り抜けて
かぜは
歩く少年少女たちだ
傷つく
こころの燃えかすを
扉から
みえる玄関の明かり
眩い光
沈黙の
帷の
その光の風を煽りつ
むせ込んだ気管支炎
その背中はベッドに
横たわり心傷を
負いながらも君は
みなぎらせる魂を
その嘆く骨の声を
人々は救っていく
人々は救っていく

天地を繋ぐ滑車を
引き上げては降し
持ち上げては降し
魂は少し軽くなる
引きながら押して
押して引きながら
大地を這いながら
声の吐く白い息
聞こえぬ声の
無言の中の
聞こえぬ声の






                                                         .


萩原朔太郎 と 月

  玄こう



 画学生の裏ポケットからじゃらじゃらなにやら楷謔 壊朽の小物が引き出される裂烈したがる言葉の了見はツーリスムのなかになにもない ただあるのは心地と人気ヒトケの寄せ看板 歩む路の傍らにひしめいている ういしくこもれる発光せしうむトラペジウム 遍く照らすを知らずとも 若木の燃ゆる心情の斑の星ぼしたち 雨濡れにただれ ちっぽけなノート ダダダダイナシだ アンニュイなタダゴトで被われ 譬喩歌の秘めたる雨空に 降りやまぬ便覧 あてどない偶成 宿命論的運命愛


 あの萩原かな 初期の音楽的リリシスムに吠える月よりも 駆逐された虚無の人格 感嘆とむせぶ後期氷島の冒頭… /日は断崖の上にのぼり、うれひは陸橋の下を低くあゆめり、そは我が永遠の姿、寂しき漂泊者の影なり、巻頭に掲げて序詩となす、断崖に沿いて陸橋の下を歩みゆく人、かつて何物をも愛せず、飛べよかし!殺せよかし!我れは何物をも喪失せずまた一切を失ひ尽くせり、…/

 と詩文のいくつかの一節を 萩原朔太郎の書かれた氷島の期に 遭遇した今日この日の古き夢の傷口 悪しきデカダンの歴史的現在をめくる瞬間瞬間に カタチを変えるその本質は不立 舌は違えど語り継ぐ

 彼の詩的散文もなかなかの縦横無尽ぶり… /憤怒と憎悪と寂寥と否定と懐疑と一切の烈しい感情だけが、僕の心のなかに残っていた……凛烈、断絶、忍従、鉄鎖、などの漢語は意味の上より、音韻する響きの上で、壮烈なる意志の決断や、鬱積した感情の憂悶やを、感覚に強く表現したもの、漢語がこうした詩情に適するのは、アクセンクチュアルな促音と拗音とに富んでるからである。すべての言語は、促音と拗音の多いほど弾性力が強くなっていく。


 加熱しすぎた風呂桶が小さければ小さいほど湯の温まりは激しいものだ アッツイ 怪訝と卑劣と醜悪の混在する水が爆発的に熱を帯び弾け飛ぶ 心情燃ゆる一語一語の火元が小さな容れものの水をも沸騰させるもの


/虚無の鴉
/我れの持たざるものは一切なり


 萩原のこの二篇の詩は好きだ これ見よがしと媚びず狙わず なんのけれんみもなく ただあるのはただ 人としての単独の叫びだ 単一者としての叫びだ だが社会的孤独を凌駕した無一物となるまでを 自己とこの2つの詩を 萩原は見切れただろうか 二つは一つにしてその一体物は二つの個物である その天分の頂きに屹立しえただろうか? 人生なる一語さへ詩のうちに配合せし 世俗のうちにうらぶれ すさむ孤独感に極めて似たように人間性を孕む 荒寥の地の詩も /…かうして人間どもの生活する荒寥の地方ばかりを…/


 んなものはハナからないのだ 形容と属性を否めつくした諸物のモナド その無一物 幅も広がりも少しも持たぬ一点の光源として トラペジウム 織り成す散開の群れ 飛び放つ 蒼くひしめく 発光体


    虚無の鴉

  我れはもと虚無の鴉
  かの高き冬至の屋根に口を開けて
  風見の如くに咆号せむ。
  季節の認識ありやなしや
  我れの持たざるものは一切なり。






        風
     どこからかにおひかぎつけやってくる

 

        月

     つきがなげくそのむかしのまだむかし
     せんりゅうとはいくつきとすっぽん?
     しらないぼくはつきをみてみてみてみ
     ふたまたかけてきみのめをみてつきみ
     ひとはながくつきとともにうたつづる
     ひとはなげくつきとともににしへむく
     うたいびとなげくつきこころのかがみ
     にしにしずむつきをみずにながめてる
     つきをごくりとのませるおはなしする
     つきつきつきつきおもいおもいおもい
     憑き着き尽き衝き突き吐き撞きならす
     想い念いつづけて面食らうそのつきに
     なにもないいまのぼくにはただのつき
     そんなきょうちがないからつきをみて
     みてみてみてみてみてみてみせられて
     ちらつくあかぐもみてみてみてみてみ
     そそぐひかりのきべんをちらつかせて
     のーとをぱったりとじそれでもみてみ
     つきになになげく? つきがながいか
     かみのてんじょうぱたりととじまのび
     しったところでなにがあるさああさだ
     あさはかなこころのかがみをしのばせ
     ちらつくまぶたのきさきにつきがある
     まぶたにまたたくつきはきっとつきだ
     こころにあるもののひとつがつきなら
     なげくつきはそのむかしのまだむかし
     なにもないかたずをのみただそこにあ



       ●


西田幾太郎の書籍と、親父についての、とりとめのない随筆

  玄こう



  2015・ 11・ 30

 風と風とを食む小枝の指に
 囁やく互いの血筋の赤い糸
 夜空を指さした子が、あっ
 わっ綺麗、振り返った私は
 庭に飾るクリスマスツリー
>お星様とは言ってなかったな
 母は、ほんと綺麗ね
 子は、母を見上げて
 囁いた二人の影と影

 歩きながらふと、
 あぁ今宵こそは
 かの人がくれた
 お手紙のお返し
 書かなきゃな

 銀色した菓子
 包み紙が道に
 輝いていたな

 南天の夜空
 つづみ星が
 揺らめきつ
 


  2015・ 11・ 25

 財布がないから電車賃がない。電車賃がないから家の辺りをうろつく。飼い犬の散歩者らを盗み見しながら通りすぎていく。目映く真っ赤に染めた楓の野木を見上げては、時折たちどまり、赤と黄のグラデーション。斜陽の光沢が樹木の年輪にほとばしっていた。
 部屋に帰り無言の文字に移し換えながら、空き腹インプティ胃のなかにインスタント珈琲を流し込む。部屋の枕元に積まれた一冊の本。開いては閉じまた開く。数行読んでは本を閉じ、なにかを心に感じ、また開く。そうしてまた閉じまた開く。心に感じ、また開く。


>近年の思想界において著しく目に立つのは、知識の客観性というものが重んぜられなくなったことであると思う。始めから或目的のために、成心を以て組み立てられたような議論が多い。従って他の論説、特に自己の考に反する論説を十分理解し、しかる後これを是非するというのでなくして、徒らに他の論説の一端を捉えてこれを非議するにすぎない、自己批評というものが極めて乏しい。単なる独断的信念とか、他の学説を丸呑みにしたものが多い。私は或動物学者から聞いたことであるが、ダーウィンの「種の起源」という書物は極めて読みづらい、その故はダーウィンという人は、自己の主張に反したような例を非常に沢山挙げる。読み行く中にダーウィン自身の主張が分からなくなる位だというのである。……
   ↑
 西田幾太郎の随筆の一篇「知識の客観性」の冒頭である。

 以降の文を簡略化してしまうが以下ように書かれている。
   ↓
>苟も学問に従事するならばこういう心がけが要るだろう。知識の客観性といっても、私は或時代の真理と考えられていたものが、永劫不変だというのでない。何千年来自明の真理と考えられたユークリッドの公理も、一層一般的な幾何学のひとつとなったのである。それぞれの分野がそれとして客観性を有している。単に変ずるのではない。その時代の或目的以外に何らかの意味を持つ。学問的真理を考えるかぎり、永遠なるものに触れることがなければならない。


 西田の随筆は、述べている事柄はたいへんわかりがよい。ある一部分の分野を探求する際に必ず陥ってしまうアポリアをも示してくれているように思う。



**

 アホかどうかわからんが、そんな父とアホな私との交わす話しはほとんどその辺りでお笑い草である。独断的信念から一方的に展開させていくようなものだから、絵画芸術に関する断片のひとつ覚えの捉えかたが、日々日常の価値観にまで及んでしまうような誤解を与えかねない。そんな気がした。上の西田幾太郎の本の断片の一文を、ある時父に朗読したが、父には納得できるものでないだろう。
 長くやっている彼の絵の制作も、現代美術家との交流も、現代美術作品に対する独自の論も、あまりに乏しい言語能力で、論にも満たない論を毎年いくつも郵送してくれる父。
 西田幾太郎の思想を父からワカリもしないようなワカルことを、パソコンのワードで印字した論にも満たない論をざっと数十ページ……読めるか!!んなもん。
 そんな綴じ物を一冊千円で喫茶店や画廊に置かせてもらい手作りのカンパ箱も置かせてもらっている。画家や芸術家でもない素人に読んでもらいたくて、父は絵の具代の足しにするつもりなのだろう。それだけならまだよいのだがウンチク話しを喧、喧と、2時間3時間画廊で平気でレクチャもするし、よくわからない親父である。
 ある時、父と一緒に山を登り山荘で朝まで議論した。
窓の外が明るくなるまで、唾ぜり合いをし
あぁ寝るわ、もうお休み

      v(-_-)。
      ======
       =====
        ====
         ===
          ==
           =

***


 ちっさな岩波の単行本をよくポケットにしのばせながら、通勤電車で開いては閉じていた。
 そんな父は甚だ学問は弱いのである。絵の制作、画論と芸術の独断論を孤独に父は父なりにやってるんだろうけど。
 …西田幾太郎、と父、二人の哲学作家・画人は、緒先輩として、私はやはりいつまで経ても惹かれるのである。
 が、しかし、惹かれるからといってそうして安穏としてもいられないだろう。文学も(芸術も)私(読者)受け手とが隔絶した状態に陥ることがよくある。その現象のうちに展開させているああした父の物言いは、史的唯物論や物質的弁証法などを若いとき信奉し染み付いていたきらいがあったからかもしれない。
 ちょっと間違えれば形骸化した思想に捕らわれ、新たな思想展開が出来ないまま膠着し、終わる可能性は大だ、父よ。
 何かもっと違ったカタチでそこでの学びを私は化生させていかなければならないだろう。はて?どうしたらよいものだろうか。西田幾太郎の随筆を読みながら考えあぐねているのである。


****

 いかなる時代にいかなる作品が開展したかということは歴史や社会で説明できる。作品を歴史や社会存在のコンテクストと考えられるなら我々の精神的内容を有するはずだ。そしてそれは少なからず表現的である。その意義内容をその独自性を長く歴史存在に残す仕事が批評家のやることであろう。ところが作家は違う。他の作家の作品について述べるのは自らの制作に対し新たな機を生み出し得ることへの期待感があるからであろう。つまりそうした作家の独断的信念は、作家独自に組織された制作の裏付けからであり、少なからず現代社会文化歴史が授与する“仮説状態”にまで論を到達させ、通用させることが必要とされるのではないだろうか。(そもそも現代――*現代美術も、現代思想も、現代文学や現代詩などというのは*―― 仮説の状態であるにちがいないのだ。)
だから一人の独我論から脱却し、現代の仮説へと持っていく作業が要るのだろうと思う。
西田幾太郎の書籍を探り借り、もらった何かを綴りつづけていこうと思う。

>我々が現実に生きて、働いている日常の世界というものが最も直接な世界であるから、そこで考えられた世界から考え直すことをはじめなければいけない。常識とはそれを独断的にとらえているにすぎない。日常性を深く考えないままでいることが常識と言っても言い過ぎではない。それは何処までも深く基礎付けなければならない。当たり前とされていたことが或時代や価値の風潮によって変遷されるとするならば、その最下部の基礎が見えていないといえる。




     ・
 ペテルグルス↑  ・

      …

    ・  ・


クロノス

  玄こう



2008/05/29 05:19
『多摩川に捧ぐ』

とこしなえ
水の流るる
波まくら

配管を流れる水の音にホテルで寝つけないでいる
多摩川がこの大都会の何千万人の命をうるおしてる

上流は美しい渓流地
異界の地

わたしたちが直かに触れられない神々(カミガミ)たちのいてる場所

雨のふる天と同様に、雨音、その水音(ミナオト)はそんな世界から伝う音

水音のささやきに彼らの言葉があると思う

とこしなえ
みなおとさやぐ
多摩の川より


2008/05/30 00:05
『帰』

東京から新幹線で黙って夜の窓を眺めて帰った

近くの灯りは遠くの灯りを追い越していく

後方へ後方へと
カコ
、イマ
、、ミライ

小さな窓をすごいスピードで流れていった


2008/06/01 01:37
『イカロスの墜落』

われわれは空を見ない/
ただ残像だけがある/
ラジオ…イカロスの墜落/
単性生殖から自己増殖の海へと突き落とされた/
この一枚の絵を描いたパブロ・ピカソが/
何を描いたのか?/
オマエの生きた地の空から/
地上絵をして闘いきったのだ/

  \/
  \∨/
   ゙

2008/06/02 22:44
『しゃばふるしゃばふる』
|‖||‖|‖
|‖||‖|
|‖||
 家 家 家
雨やまぬ

あしたの天気は晴れ曇雨もよう?

傘がない
人間さまのご都合だけがどうして
天人(アマト)の心にかないましょうか


先日、座禅に行った
自身の持っているなにがしかの選択迷いを話した

さっきの天気にまつわる話
私たちは天気や季節に合わせて生活をおくる
多大な恩恵も受けている
そんな気持ちであなたの身辺を眺めてみては…

と、説教された


2008/06/08 23:38

『西行法師よ』

俺は庵の酒場に居てる。「宇宙」という語が何処から来たのか?科学用語じゃなくて、インド哲学からだときく

喫茶店のコーヒーを酒場で飲み、こずんでる白いカップにこずんだ黒いわっかを見ている

誰も知らない誰も書かない
産まれたての赤ん坊のような、虹のわっかが
真っ黒いグロい夜空の
スプーン 。/
    ♭
産まれたての赤ん坊のように、生きとし生けるも
みな、みんな、浮き輪


 西行法師の一句
“かざこしのみねに咲く花はいつさかるとちるらん

 ∩
⊂*⊃
 ∪ 

西行が俺の故郷でおとした歌


2008/06/13 19:04
『帰中、初夏候』

 足
  足
 足
  足
 ゛
  ゛
歩く

もう今年もはよから暑いっな
なんで、もっとこう
ゆっくり季節が巡らないかな
みんな歩くの早いしな

横断歩道立ち止まる
信号ぱっぱ変わる時、
見上げたところにお月さん
青空な
南東45゚
にじっとしている
あれはな 止まっていてもあしたには
空をひとまわりしてるから
あっ

また忘れた、宿題本
んもう明日、仕事休め休め

歩くのは俺が遅いっか。
6月半ば
7、8、9、は夏かっろな

金曜日は、なぜかホッとする週末だ
んで決まって
気を抜き
けつまずくんだね
よう注意だね


2008/06/15 00:44
『俺たちが世界を牽引してる。』

みんなと会えた 素晴らしいひとときだった きれいな声を奏でるギター弾きの歌唄いさん (この街で一番と勝手に惚れ込んでいる) 汗臭かったアンコールワット帰りの、同い年ちょい上か?建築士さん 旅行の精密なスケッチに感動した それからこの街の三大美人*の店のオーナーさん、あと、昼はケミカル開発 夜はこの店をきりもりする メガネがとびきりキュートな理系の女の子も オイ!! 組合!と怒鳴りながら肩組んでくる客のじぃさん みんなすっごく自分の生き方に尊敬と誇りを持っている

みんなの肝臓にはついていけないが、この世界は俺たちが引っ張ってるって議論するんだ、彼らと朝まで



2008/06/17 23:56

『月をぞ ながめる
   よすが(縁)にも』

薄らいだ雲間より月影照らす
同じ月を見あげるよすが
待ちわびて
きのうを省み
あしたを省み
ひとよ一日
しいては我が幾百余を省みどれもこれも
痴れごとだ
南向かいの空から正面きってわたしを見下ろす月があった
今から800年の昔かの歌人
西行はこの地で同じ月を見て
決して笑うことなど許されなかっただろう

かくゆう
「美それは人の嘆き」と西行は説く

私は嘆くより
笑うことのように生きてきた、…恐らく

お月さんが笑ってらあ
とは歌わないだろうな


2008/06/18 00:30
『月に吠える しれごとよ』

月に吠える
ことは今はもうない
荻原翔太郎

世にあらぬ嘆き、交わす憤怒、聞きわけのないダダ、(反芸術)ごとのように

私も
同じ月を見ている
映画か
あれもまぁまぁだ

…ようやくまた月が空に輝いてきた

南中のきざしから少しずつ西へとかぶく頃合いだ

早くもこの携帯のバッテリが落ちるのもきがかりだ


今日一日月が沈むまで書き続けたくなってる

なんて暇なやつ
じっと月をみ
焦点を合わすが
輪郭は二重にも三重にも分裂している

おぼろげに
おぼろかな
月ぞ眇スガめる
よすがにも
いまだひとつも
嘆きもみえず


焦点が合わない両眼に網膜を通じ
かすかな朧月をずっと見ている

結構がんばって、歌を作っても
あの月鏡に映し出される「これだ!」
という心境地は西行にしか詠えないだろうな

月がどんなふうに見えたんだろうか?

荻原も中也も月を見て歌っていたかもしれないけれど

あぁ比叡山が見える、愛宕山が見える

この屋上もあとわずかでなくなってしまうな

どこか住む場所を探すべしか

ちゅうか今、何時だ?



2008/06/18 02:04
『いまいつどきか』

地の暦は月の満ち欠けで知った
時計もカレンダーもないから
昔の人たちは私たちよりよっぽど月をありがたく感じていただろう

でも月ばかりでほかの星星にはどうも感心が及ばなかったと聞く…日本では

なぜだろ?
階段を降り
考え中
考え中
(部屋に戻ります画面が
もうそろそろ消えてしまうから)
消えてしまう?

あっ! そうか!!

きっとなんで?っていう発想が、ご法度だったんだろうな
世にきたすもののみを案じながらそれで充分だったんだろう

さあぁ一もう寝る
こんなうつつな夜更かしはあとにたたるし

あぁまた、あしたから
現実問題に直ぐ
終わり




2008/06/19 03:03
『スゲー書いたのにカキコありがとネ』

エモリっちに
全部消えちゃった
また書きなおさな
人はいつから…

僕らが生まれる前の時代から
地球があったから
自転
公転
太陽を一回り
それを生き物一個体が
外部から感じとってた
有機のリズム、生命時計

それから何十億年かたった歴史の履歴を
ただそれを万人がわかるようにつくったのは紀元前、なんとか人
えーっと今調べる
バヒロニアBC17
彼らが星座を作ったんだ
暦は文字に残した、エジプト、インダス、

そんなぁ知りません
本の知識だけの話やし
あなたが生まれた瞬間から秒針が回り始めたよに
ちっちゃい丸なんだ


2008/06/22 13:32

『ゴロはにほへと』

にちようびニチヨウ/ゲーちょっとまてえっ月曜むり/火曜は?もむりかよ
じゃあ水曜もむりっすよネ/だったら木曜日を目標に決めようぜ/えーっ出来んようなんていうな。/じゃもう一度土曜はどうですか?

はい一週間全部無理やりごろあわせ
どーも
いつか月ゴロ合わせ挑戦するぜ
イチガニサンガニチ
シクガカイ
ゴサツキ
ロカ
シチガハチ
サザンガクガツ
ジューイチニガサンガニチ  /"^`



2008/06/09 00:24
『6・く』

日が明けて6月9日
ロック ロック
クロック

緑色のライターを
ボトルネック変わりに
ギターをつま弾く

ハハハ
誰か笑ってくれ
いきれていさむなさんざん休まず
聞こえる音を一瞬間に言葉にする

今マックドナルドダックスフンド
大嫌いなお店で
コーヒーをストローでチュ



2017/01/08 *:**


  ((道の子))

  聞こえぬ声の
  温めた歌から
  声に出ぬ
  ぬくもり
  までも
  寡黙の包帯を巻き
  朝ぼらけ傾く
  刻こくと  
  ゆくり ゆっくり
  人は
  痛みや苦しみは
  移ろいゆき
  カサカサ踊る
  未開のひとりが
  腕をくみ
  道の人になろうと

  生まれるまえから
  死んだそのあとも
  沼地の静けさで
  寒さ暑さに昼に夜にと  
  あくびの顔したわたしは
  口を尖らせて案山子になろうと
  わたしはどこにも近づけない空のした
  わたしはいったいなにをしてあげられる?


  【自註
昨夜コンビニに行くと子どもが真夜中の3時半、ん?どこからか、子どもの泣き声がさっから聞こえる。伊藤園の自販機の薄明かりの下で、両の膝を付けながら、何かに向かって必死にせがんで泣きわめいていた、のが見えた。
その子は四歳と指で言ってくれるが、男の子は靴も履かず、裸足のまま、震えながら、『おうちはどこ?』『名前はなんていうの?』と聞いてもはっきりこたえられない。抱き抱え、その子がなんとなしに指さす方を一緒に歩き、おうちを目指すが、わからない。
もときた道のコンビニに戻りお店のバイトの青年と一緒に、、さすがに困りはて、とりあえず警察を呼び、引きとってもらった。……見つかるといいけどね。………そんなことがありこの詩が出来ました。


        *
       ・.・


五十雀

  玄こう


山へと渡る四十雀
わだちにかたまる
ユウスゲの
アケスゲ射す陽春
訊ねてまわる小鳥ら
喜怒哀楽をしのばせ
ヒョリヒョリ流れるくちばし
妻楊枝も
針刺しも
息つくカノン

ひっそりした町に居て
陽に誘われた春雨が
沢のトンネルをくぐり
一面の桜花を祓いつ
行き交う鳥らはつらなり
つらなる空へと羽ばたく
立ち止まった景色はいつも
私の故郷だったから
後につられていつしか空へと渡った

ほんの僅かな時を残し
彼岸の不帰(ほととぎす)
はもうとっくに暮れた
陽春不帰
よこつらを
ラムゼイルイス・トリオ


音身体の隅々へ
行き渡らせ
歯にくるむ
往復ピンタのカマ
くぐもるラジオ
クロードチアリ
疲れた雛壇を
飾りなおす少女が
華やぐ歌の
白い洞窟が
陽光の差す
小型の風に
煽られ
桃尻と
海月を隠し
太く静かに息をする
蝋燭の火が
音もたてずに揺れる
弾む毬もエプロンも
オタマジャクシも
せせらぎ
きをひかせてコヨーテ
のお貌もぺっちゃんこ
かぶってこちへおいで
スライドしていくから
何故だろうか?
口から流れでた
肌を抜けていく


母の腕(かいな) & オルゴールの音(ね)

  玄こう

ポンポぽんぽおなかの子ども蒲公英叩いて這いつくばるいつしか風になる
ジュウタンの原っぱが一面に広がる蛸足配線の中をかき分けて世界を跨ぐ
ガラガラと回るオルゴールが木目模様の天井から音を鳴らして降りてくる
トースタの灼熱のように燃える体温が額に音がチクチクする息切れのさ中
がらがら鳴る天井のオルゴールが目に見えぬがチラチラとさする耳の囀り
キーンキーン トーンコ コトン ↓ キーンと スットントンと坊やは聞く
ポンポぽんぽと生れた腹の太古から蒲公英の花弁の茎を手に握り叩きつも
蒲団のなかの真綿のすきま風が音にまたぎおまえは盲の野原を駆けめぐる
大地を這い抜けていけるだろう さぁ ひとえにかたえにゴクッと口の中で
飲み込む苦い唾やらぬめる痰にも慣れ咳込み咽び泣き喘ぎ涎も垂れている
風の混じる小枝を揺さぶる雨と地つづきに坊やの顔から吹き出る汗も滴る
額の熱を冷やしながら毛布にくるませ温める母など未だ見なかった人間の
顔という顔を未だ目にしなかったときのオルゴールの音を天井から聞いた
鮮烈な盲の時に産まれ始めた我が身の重たさを母の腕の中で揺さぶられた


水蛭をとる人

  玄こう



/カイ(χ)の化石の目蓋はいつまでも閉じたままだった /天と地を展(の)ばしながら /点と点とを手足で繋げ/ゆっくりとした手つきで/杖を回し/腕を動かし/時々手足が止まった

湖のなかにいる蛭(ヒル)を飼いつづけている老人だった,散切り髪の仙人のようなふうで,痩せこけ浅黒い顔で,熱心に湖の底を見つめていた

>いったいなにをなさっているのですか?
通りがかった彼(*)は訊ねた

>“自分の目や,耳や腕,その肉とするために蛭をとっているのだよ”
老人はささやくようにそう応えた

老人も,彼も,そんな一言では,なにも思い及ばぬことであったから,以降二人はなにも応えようがなかった



>///養殖のための水槽が近くにないニョーニョーコマーシャル/コップの水を移しかえては相づち打つコマンドの顔/あのぅ、あんのぅ/ケイケン()ちの()ちの/砂漠がさ迷う/詩が死に/死が詩に/詩の欲する先を/若くして聞きかじる
>‖わたしがグラスの角を‖棒で‖叩いて/叩いて‖をつなぎ止め/文字る/もじり/張りつき/引っ掻き、滲ませ、、,、、_叩いて_叩いて/棒の柄で‖叩いて‖叩いて‖ハッケョイおこったおこった‖おのこがおこった/‖グラスの縁からゴロゴロころげた‖‖


老人はじっと目をつむり口をふさぎ,老人の肉となるたくさんの蛭たちを杖に張り付かせながら,湖をかき回していた

しかし誰も,みなその水蛭を目にした者はいなかった,老人がその杖を持ち上げたところなど誰も見た者などいなかった

彼はその場を立ち去り,その老人のことについてばかりを考えていた,そしてこの老人が持っている(χ)の無数の水蛭,どんなものだろうか?,とただ思い浮かべるだけ思い浮かべながら,ただそれだけを文字にした,ただそれだけを詩にした,生涯彼はただそれだけを文にしてそうして書きつけていった



‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖
(本作の註)
ワーズワス『決意と独立‐水蛭を取る人』へのオマージュ作。彼(*)とはその詩の主人公である私、あるいはワーズワス自身を含む
‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖


M・A・.・. アストゥリアス

  玄こう



 詩を読むとは、わたしがぶつかる事の体験デアル。

 詩を書くとは、ぶつける対象に宛てる行為デアル。

 絵も彫刻もそれに準拠するだろう。

 呪の文字のほのめきを延展し読み刻む。

 絵的な切り貼り、マインド・ソウル・スピリツ。

 それらが奏でる疑似的黙示。脱字演技の肉の削がれたミテクレ人形。

 強弁に誇示する虐げられた恣意的示威のドグマのシーク。

 飼育されたアプリオリ 無思想という思想の意識が及ばぬまま収斂し。

 それら狂気と呼べるものたちがのたうち回る。


   <<<<<<<<<<巳<<<<<<<<<
   入り混じり割られる虹虹
   仲睦まじく番呑む白子蛇
   >>>>>>>>>>巳>>>>>>>>>

   >>>>>双頭の蛇の首飾り

 トルコ石のモザイク ミステカ芸術
 「マヤの三つの太陽 .M・A・.・. アストゥリアス/創造の小路より」


河原の土手で寝転びながら

  玄こう




音が聴こえてこない文字が横一列に並んでいた。年老いた者や若者も子どもも、みんな封じ込められていた。人々はみな階の屋上へと駆け上る。逃げるように生活から、そう、逃げるように外へ出ようと...変わりばえのしないジェイルズル_ーム。
陽が射す、寝覚めた眼をこすり一条の光る文字の、格子面が色とりどりに嵌めこまれたステンドグラスを囲う、ジェィルズル_ームの孤児院ミサで、弾くであろう優さん。

「あれぇ?生きとったんや〜」。「ワリカッタなぁ〜生きとって…」。俗離れがしきれんから葡萄酒焼酎酌み交わすならわしだ。にこやかに手をふり、別ち、川をつたいシュリンクスを吹き鳴らす。音の階を色とりどりに流れる、川瀬に吹く風もろともいやに生暖かかった。どこへいったんだろうか。幼なじみはどこを空でほっつき歩き野垂れ死んでるんだろうか。かの死んだ親友をふと空に見上げた。
過ぎ去りし春一番の風を顎にのせ土手を駆け上った。そこはジュエルのめくるめく点滅信号が瞬いていた。朝の横断歩道に立ち、手にする酒瓶の栓をこじ開け封じ、分泌する胃液が口に昇ってくる。惑溺にすがるどぶねずこう。

>頭がどんどん悪くなる
>人相もどんどん悪くなる
>体はどんどん鈍くなる
>学もどんどん鈍くなる
>呑吐(どんと)回りが早くなる
>歳がどんどん鈍くなる
>時がどんどん早遅れる
>萎んで枯れる顔の膨らみ
>土手で大の字に仰ぐ曇天
>どんどん流れる
>耳障りに韻を踏む
>脈動する血が
>頭のまわりを
>どんどん流れる


起き上がりこぼしたよだれを拭いながら天頂をかすかにさざめく星たちのダイオード。光害からより遠く離れ頭上の真上にまたたいていたのさ。猫の額の広さにうんざりするくらい光害スモッグの黄砂が周囲を覆い、天頂から手指で数えて東へ55゚近くに赤く見せるマースさへ黄色く調子ついていた。恒星と同じに地球圏内では同じ域のむじなだ。落ち着かないまままたたちて、あとは北斗七星のおおぐま座ぐらいしかめぼしい星がみつからない。疲れた首が欠伸をした。

動物と植物とが天と地とをばっこする者たちの、その手に牽かれる牛。捕らわれる額の真中を、屠殺者が引き金を引く。食肉牛のくり貫いた眼球を剃刀で輪切りにして、硝子に貼りつけ、眼玉の構造を子らに見せて教育している弟が、

演技のしつけ、台本の選定に忙しいと電話で話してた。現在の近況時をメカがメカで知らせるばかりなネット相が嘘臭くて、いやはやネットのドツボにはまりありとあらゆる人・類・種のるつぼであって、たから何ん何だというのか?

/過去五百年間を跨ぎ/すべてのメディア情報(だとかいう呼び名)が一年に飛び交うという/嘘くさく馬鹿げた劣化文に貶められた/矢筈折る手近なデジカメバキバキのバカチョン/だれでもオキレイに撮れる御用達/人と人との情の報い/短絡な示しを召喚し顔無し脱身体ゴーストのパトスが侵す/分割脳のセカンドライフばかりである/

対置させ二重に相殺するありとあらゆる危うさを、←・→ 綱引きしている力の次元じゃなく、もうひとつそこに新たな違った綱を接続させる必要があるんだと思う。引き絞りの三次元スペースの焦点を見付ける事なんだと思う。

なにいってんだろ、携帯ネットモードで自分イデアと出であうメモ。。美術評論家のグリーンバーグの示す脱中心みたいなもんも、日本ではお馴染みで流行ってるんだろうけど。なんだかな。マッスのデッサンを通らぬ人らが、セザンヌの画やロダンの彫刻をいったい。どこまでわかって批評してんだかな。ことばを意味論解釈しているだけ。親父のアンフォルメル絵画も、シュールもアレゴリも一足とびのお家芸の箱庭でしかないわ。悶々と訳わからねぇような屁理屈を張りながら現代アートもおお流行りだ。はは詩も絵もそんなんではやれぬわ。親父が来週家にくるらしい。こんどこそ奴の口をねじ曲げる。奴の鼻をへし折るつもり。


Unhurt

  玄こう

羽音


 しぃぃ [si;] 
 ささやくささ 
 つめたきよよ 
 夜るふるしぐれ
 耳明かりくるむ
 闇のまたとおく、
 胸のおくのおく、
 ほつる唇
 溌する口
 吐息のとげる 
 吐気 トキ トキ 
 トキ ともに
 ゆきすぎる
 胸元ゆれる風  
 フクカゼ 
 小夜のよの
 ソナタの夜る
 溌すれ ハツスレ 
 ソナタは 掠れ 
 擦すれ 沿われ
 吹き ふるわせ
 羽音の  熱れ 
 ササノ   イキレ
 まどろみ まどろむ
 トキ  シドロ
 ささめき ささめく
 ササヤク シィ ── [si;] 


ある女の

  玄こう



 ゆうやみこみち
 こずえにかかる
 あかいふく
 女が ひとり
 風にとばされたい
 とすすり泣く
 ガラガラとなく、よる
 ひとひと 小雨か、ふぅていた

 落ち葉の隙間に、ふと
 朱塗りの櫛を見つけた
 拾い上げ
 ほほにあて
 櫛削る針先を
 指ではじいた
 ガラガラと
 ガラガラと、
 白く曲がりくねった塀の
 雪の線が描く枝の木陰で

 その子の落した
 髪梳く櫛を
 わたしは、
 もどした
 身をかがめ
 落ち葉のなかに
 そっと埋めた

 小雨の降る杜の夜気
 こずえにかかる
 あかいふく
 ガラガラ、
 と、風にゆれ
 今にも飛ばされたい
 と、ちきさな、梢を
 すすり泣く

 ガラガラ、と
 ガラガラと
 ふきてはまた
 すすり泣く

 小雨か、梢を
 ふぅていた
 





      、


図形・詩

  玄こう



「 雨め 」

ゴークとゴークとい、う
石礫ぶてがおちて、
雨まどいのよこから
吹きあげ、屋根から
 かわら、かわら
+++、サビれ、黒ろく
   +++、あらわれ
菱 つ ぶ て
 戸 ひ し び
と も れ る 
++++、 ++
  +++
い ろ う
 雨 め 
い ろ う
 か ぶ し 
  、 ら  、
 じ ら    、
    、 と、

菱 ++++++ 全ん身を
 戸を ++++ 真ん中か を
+++
 +++、
+、進すみでて
+、立ちふさぐ
 + 
+++ 生滅すること
 ++ 
 季節はあらず

+++、
 + +  

  、

ゴークとゴークとい、う
しずくが滴たれる
肉くのよこから、+ 菱
ヒシメク   ++++  戸
トザス      
アマリ   +++
サケル ++菱 ++ 
サキ  ++  戸 、
+   菱 戸    
++
+++ あ雨めの垂れ
++  あ網みの目
+ 
糸吹き
開らき  +++++、ひ
散るら  +++ し
 ++++ び、し、び、し 
、 口ち が、ひし 、
  ひ し 、どよめき、、

戸の先き、雨めの、夢め
降る糸が、破ぶけて
飛びで、+る 口ちが
吹き散る+ 先きが
無我が夢中に、たわむれ
 
  ++た 
   ++て
 ++ぶ
  + ++、 
  +、菱 
 、 雨 
   、
 、

ゴークとゴークとい、う
雨めの礫てが、
肉くのよこから、なかを、
中かから、破ぶける
、         +
  、      ++
+  、雨まどいが 
  天井の、菱に  
、、
  、横こたわる

    、


 「オベリスク」
 ―――――――
―――――――――
―――――――――――
/\――生――/\――
◇◇\―い―/△△\―
◇◇◇\立/△△△△\
◇◇◇/ち\▽▽▽▽/
◇◇/―消―\▽▽/―
\/――え――\/――
/\―去らば―/\――
◇◇\―――/△△\―
◇◇◇\逝/△△△△\
◇◇◇/か\▽▽▽▽/
◇◇/―ぬ―\▽▽/―
\/――も――\/――
/\――砂――/\――
◇◇\―足―/△△\―
◇◇◇\踏/△△△△\
◇◇◇/む\▽▽▽▽/
◇◇/―人―\▽▽/―
\/――と――\/――
/\――為――/\――
◇◇\―り―/△△\―
◇◇◇\に/△△△△\
◇◇◇/し\▽▽▽▽/
◇◇/我れは\▽▽/―
\/未だ一歩も\/――
/\踏みしめぬ/\――
◇◇\―白―/△△\―
◇◇◇\砂/△△△△\
◇◇◇/青\▽▽▽▽/
◇◇/―松―\▽▽/―
\/――の――\/――
/\――ア――/\――
◇◇\―ラ―/△△\―
◇◇◇\べ/△△△△\
◇◇◇/ス\▽▽▽▽/
◇◇/―ク―\▽▽/―
\/――:――\/
/\生い茂みる/\――
◇◇\―育―/△△\―
◇◇◇\つ/△△△△\
◇◇◇/椰\▽▽▽▽/
◇◇/―子―\▽▽/―
\/――の――\/――
/\――密――/\――
◇◇\―林―/△△\―
◇◇◇\の/△△△△\
◇◇◇/夏\▽▽▽▽/
◇◇/―夏―\▽▽/―
\/――夏――\/――
\/――:――\/――
    ;


僕ん家

  玄こう

  ―R-o-
‐+―+‐+‐―
 +―+‐+‐―
  -o―O‐m
 ―‐―‐

立 敷 黒 わ 軋 目 弦 瓶
ち 石 く た む に の の
ん を 塗 し 角 見 鼓 船
坊 拾 り は 材 え 膜 底
し い た 寝 と な の を
昔 栗 く 転 ベ い 無 吹
こ 木 ら び 二 凸 数 き
の の れ な ア 凹 の 上
家 硬 た が 板 が 網 げ
に い 軌 ら の 梁 の る
住 枕 条 天 ク と 結 ズ
ん 木 を 井 ロ な い ボ
で の 走 を ス り 目 ン
た 四 っ 逆 し 顎 を の
子 隅 て さ た の 吊 裾
ら の 天 ま 図 額 り 野
の 焼 井 に 形 か 上 を
身 け 列 歩 を ら げ 北
長 た 車 く 指 天 1 風
記 柱 を コ で 井 本 ピ
録 に 待 Ι 撫 を 1 ュ
と も ち ル で 張 本 Ι
背 た わ タ て り 糸 ピ
比 れ び Ι い 巡 捩 ュ
べ る る ル る る る Ι


祖母、の

  玄こう


・・・・・・・・・・・・・・・
海岸灘両翼を固めた
鳶が浮く
人間の両をみすぼらしく
眺めながら
空を鳶が飛んでいる
・・・・・・・・・・・・・・・
彼方を眺めて海と陸の臨界を廻る
自ずの姿をみすぼらしく眺めながら
・・・・・・・・・・・・・・・
煙突に隠れた拳が
モクモクと腕を突きだし
砂を蒔く処女が
遠い潮騒に聞き惚れている
・・・・・・・・・・・・・・・
産みの親に愛奴(アイヌ)
と呼ばれた、祖母は、
両岸の過去に彼女は
今・立ち、生命崩壊及至死
・・・・・・・・・・・・・・・
生暖かな砂浜と水泡が浚う
青く透明なにび色の
・・・・・・・・・・・・・・・
鳶のふたつの目がサイクロイドの軌跡を描いている
砂を蒔く処女は口を咬み
・・・・・・・・・・・・・・・
破水を撒き散らし
愛奴の体を冷ますために
・・・・・・・・・・・・・・・
思いもかけない夕べの浜を陽はかたむく
・・・・・・・・・・・・・・・
海と陸の六つと七つ
太陽が、ひとつと、ふたつ
・・・・・・・・・・・・・・・



茶色い風呂釜が苔蒸して
どんなおケケが ヴァルナ ギーナ リグヴェータ
クモハ モハ  石のオリシス
あの浴場に入れた嬲りの階級は 
華やぐ文明の時事を語り尽くした詩人たちだけだった
バラモンの神々をつぐことのできる人たちだけだ
あの浴場に入れた嬲りの者らは
クモハ モハ 石のオリシス 
そんな詩を歌える人たちだけが沐浴できる
クモハ モハ 石のオリシス

当時僕はその排水口で髪を洗ってた
下ネタ ハラッパ クモハ モハ
鼻うたい
そのとき手足もなくて頭もあったか
とにかく母の羊水なんかぶち破っていなかった
海遊しながら幾億数千万兆個のたった一個の卵
ニシンの一粒が孵化した不可触賎民
たしかあの頃ニシンだった僕は
確率は孵化して幾億数千万兆のたったひとつ
ようやく一粒の奇跡
確かあのとき数の子一粒から生まれたニシンだ 
ほらぁ あのお魚を焼いておやり
干した尖ったあの魚を磨いて焼いておやり
油ののりきった磨きニシンを 
テカテカひかるニシンを網で掬い
味噌つけて食べてみた
あれは美味いぞ 
確かに美味いぞ 
みがきニシンは



僕の祖母が北海道生まれの頭の切れる札幌女学出の女史。
満州わたり結ばれた夫と一緒に九州熊本荒尾の元に嫁ぐ。
父を産み 夫はすぐに肺炎で他界、父五歳。
保守的家族に見放され、汽車に乗り身ぐるみひとつ、
子を連れて北地へ帰る
海端にほったて小屋の文房具店を開き
日に一人か二人子供が買いに来た店を賄い
水はよそからもらい、ガスはなく
夏も冬も一個のストーブで煮焚きして暮らしておりました
十日分のお鍋の底にはすべての生き物が沈殿しておりました
(美味かった ほんとぅに美味かった っすよ)
子供の夏休みの思い出でも
高校時が一番の思い出は、真冬の北海日本海 遊びに行って
毎夜 毎夜 ストーブで煮焚き 
一日一回 ご飯何杯も 〜さんま汁は一緒にどんぶり七匹食べました
家の中まで海風が入り込むから 毎夜毎夜吹雪はとても寒かったです
ガタガタ手足を振るわせ五枚もの毛布で
寝くるまって寝ました
人とお話しをするのが大嫌いでしたね、ばあちゃん
でも孫とあってはとても機嫌よくやさしくしてくれましたね
年がら年中 夏も冬も 何枚も服を着込み 三枚以上の毛布にくるまり
ひとりお祈りをして、一匹のネコと一緒に寝て仲良く暮らし
どんな物語があったんだろねぇばあちゃんねぇ
天に聴いてるよ この文を打ちながら 天に聴いてるよ
いろんな事を もっと、もっと 教えてほしかった
クリスチャンだった 短歌も書いてた 
短歌集 いつも読んでるよ、そこから学ぶんだ
誰にも読ませずこっそりと書いたあなたの短歌を 
もっといろんなお話し聴きたかったから
そこから学ぶよ こっそりね
ねぇ ばあちゃん 聴いてるよね 天に聴いてるよね
ずっと こっそり 見ててよね 


  人が 吹き晒しに飛んでるよ
  カモメに問うたよ
  ニシン 来たか?とね
  留萌(るもい)とどめよ
  漁港の北の艀(はしけ)
  羽幌サッポロ☆苫前(とままえ) 
  遠い遠い旅の望郷
  留萌の街は まあるい港 
  閑古鳥の鳴く霧笛が
  今も昔も聴こえるよ



> 人の世の業を成し終えて帰り見む 生まれし海辺に波を訪(ト)ひたし 


彼岸の折り長野に帰郷したとき、父から一冊の短歌集をもらった。 父の母が、明治、大正、昭和 生涯かけてたびたび書いていた短歌だった。私たち家族宛てに手紙に添えていた歌を父が冊子に編んだものだった。父は鉄筆で刻みインクをローラですり ガリ版刷りで市販の紙に 一項一項丁寧にふたつに折りたたみホチキスで留め 赤と青の表紙には父特有のデザインがほどこされていた。二人の共同作業でつくったタイトルは『虹夢』と書かれていた。


一生一句

  玄こう



 あんたんたるや
  うるけるねんねん  

┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘
 ワラシノ
 稿紙の路を
    ミチ
 徘徊の ワラジ
 ハイカイ 草鞋
 羽根無し ハネナシ 
  ドリ 鳥の
 、ざらつく頭
 砂のまじる掌
 もやもする
 生命 EXE 亀甲晶
 骨格の鉛筆が、
 柵の手すりに
 もたれる
 牽牛のあばら骨が
 寝台に横たわる
 聴診器をあて、る
 砂礫のかすかな寝息が
 音もたてずに
 聞き、もれる
 どこにも在るワタシという他人が
 今ここに有るワタシという稿紙に
 這いつくばっている、
 その…詩句を書きながら
 うつ伏せ涎を垂れている
 口から出た
 (稿紙は涎で浮き上がり 
 口から出た
 文字の地べたを
 口の舌から
 転げでた
 寝ぼけた亀虫が
 涎でふやける
 稿紙のうえを
 這って歩いていたのだ
 前足、中足、後ろ足、
 調子を合わせ、
 6足、6歩、
 乱雑な机のうえを、
 触角を揺らし
 四方(ヨモ)一寸先を
 歩いていた、、
 、 暗澹たる夜
  潤ける念念  





 おいたちきえさらばえば
  なすなのひととなりにけり

┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘

 繰り返して流れる川や,海や,一陣の風の,降る雨のなかに混じる砂粒が,大地を磨きあげていく,微塵の大気を虹のように空を彩る,空と地の境をうごめき,どよめく砂たちが軋むようにして,人の気の失せた死の,神のその生きた自然の発する音の中に ──
 消え去らば,「キエサラバエ」「ナスナビト」,とコトバを添える,生い立つ者の人・在の,生い立つ者の為人(ヒトトナリ)に,シに,消え,さらば え ば な 砂人(スナビト) ヒトトナリ 二 シ キエ サラバ エ バ ナ ナスナビト  繰り返し,そう繰り返し,諳んじながら,だんだんとこの句が出来あがる ───

 生い立ち消え去らばえば
   ナ砂の為人にけり


夜更けに見た夢見の女の子

  玄こう



 なんだか映画でも見ているような夜道を歩きつも、ふと寝間着姿の女の子が道に立っていた。

 狭い夜路の通りがかりにわたしが坂道を登ると向こうに見知らぬ女の子が立っていた。

 その子は笑いながら声をはしゃげて坂道を降りてくる。両の金網に絡む蔦の葉をつまんだりしては、その子はそのうち蔓を体に絡ませて、ラジオ体操をしているみたいに、くるくると踊りまわりながら、蔦の茎を縄跳びがわりに飛び跳ねていたりもしている。

 坂を降りてくその子は、酔ってるのかな?、、しかしあまりにもその幼い子の面立ちが、懐かしい小学生の時に好きだった子のような、肩にかかる黒髪のショートヘアを風になびかせカールガールのあの子にそっくりだった。

 わたしは、ついつい面食らいながら不思議なその子の姿に見とれてしまった。あんまり話しかけてもいけないが、なんだか楽しそうだから、かけ下りてくるその子についつい手を振ってしまった。その子はまるでわたしの存在など分からない様子だった。


 坂道を足早にかけおりて踏切でいつか下りてくる遮断機を待ちながら、美しく舞っている踊り子さん。

 病院から出てきた女の子だろうか、それとも家から出てきたんだろうか、夜更けに夕涼みに外に飛び出した子なんだろうか。




 砂浜の夏の夜のゆめみし遠退く、通い慣れた道幅狭く行き来たる影の子よ、歩幅は短く我が心は形無し夢みぞわたる子は遠退き、
 子は消え失せ、風をわたり、能わざるものを欲し、与えざるものを抑し、渇きしその子の笑い声も誰一人として人に与えぬ。

 その子は坂道をかけ下りていくとき、とても気持ちのいい風がわたしのこめかみをすり抜けていった。 わたしにはなにも見えていないまるで妖精のようなその姿を、その子もまるでわたしなんかが見えていない君の後ろ姿を、何度も振り返り、わたしは何度も君に手を振った。


夢ムマムマムマムマ魔

  玄こう

五つの星条を模る龍が 夢うつつに
絵画を見るように私を 見つめてる
しずこころなき西方を 向いている
宙をくる巻きくゆらせ 揺れる草葉
折り畳まれた部屋には 天井游ぐ物
ミニマム住む生き物が 眼を開けた
市井にまるかり潜んだ セピアの紋
伽藍の牢獄に仰向けて わたし微か
心愛しこの部屋にいて 繋ぐ夢うつつ
心棚びく風がバタンと バタンと揺れ
わたしは再び眠り落ち かかりながら
再び目を開けたら龍が 天井見下ろし
   ムマムマムマムマムマ
    ムマムマムマムマムマ
   ムマムマムマムマムマ
      ムマムマムマムマムマ
  ムマムマムマムマムマ
   …ムマムマムマムマムマ…ムマ 
   ムマムマムマムマムマ…
     ムマ 
   ムマムマ ムマ (◎)
     〜    〜
    (●) ムマムマムマムマムマ
   ムマムマムマムマムマ
     ムマムマムマムマムマ
    ムマムマムマムマムマ
   ムマムマムマムマムマ
      ムマムマムマムマムマ…
    ムマムマムマムマムマ
地を這う竹の根のベージュの毛織り
草の葉の息を吐いてるくすんだ文字
意識はなだれてその背後にいる文身
向こう夢から降りてきた私を観る龍


 弔

  玄こう



わたしのなかの
いっこの
おまえという
ゾンザイの
いきることの
ねぶかいいたみに
こわれた
だんぺんを
れきしにめくり
たいせきした地の
地につがれた血の
まなぼうとした知の
すべてがはかいされた
そのばしょを
しかとみすえ
だまってうつむけ!!
そこから一歩もうごくな!!

ただぼうぜんと
ただそこに、じっと
つっ立ったままでいろ!!
ぼうかんするな
なにも、かも
なにもかたるな!!
しかとみとどけ
だまってうつむけ!!


わがことのなかのひとごと
ひとごとのなかのわがこと
そんなたわごとであるかぎり
なにもむすばれはしない
なにもむすばれはしないのだ


なにも、かたるな
だまってうつむき
その場をうごくな
おまえというおまえの
いっこのぞんざいが
ぜんいもきぼうも
あくいもぎぜんも
おなじように
こざかしく

あらゆる “か ち”が
さい(賽)のように
投げられ
その“たいか”さへ
“うんめい” にのまされた
ほうまつのグズ


きづかれたれきしに
しるされたことばに
いったい、これから
どんなあしばを
きづけというのか

ウソをぬりかさねた
ことばの、ことばの
そのうえに、ウソを
きずいたところで
いったいなにを、
きずけというのか
なにも きずき はしない
なにも きずけ やしない!!

どたんばの あしもとに
すこしも たつことができないまま
いきるというよくぼうに
きぼうというみらいに
“し”というせつなに
そんなものにいまだに
しがみつき
わたしというわたしが
そうしたものすべてを
もし、てばなすことができるなら

そうして、 すべてをなくした 在・場 に
もし、立つことが、できるのなら
そうして、わたしというわたしが 自・覚するものが
もし、あるのなら


だまって“く い” をうつ。
その 在・場 に 立ち
だまって “く い”をうつ。

史のあしばを、しかとみすえ
そこに、つったったままでいろ!!
そこから、一歩もうごくな!!
なにも、かたるな!!
ただぼうぜんと、そこに、
つったったままでいろ!!

いまの、いまの、いまの
とぎれぬ、ときのまえで
なにも、なにも、かたるな
ただぼうぜんと、そこに
つったったままでいろ!!


随行

  玄こう

 夏の

 窓向こうの夕映えが小道に下りた 二度とあらわれない空の轍を雲が飛行している 時計の針が5時をまわるころに 雑木に隠れた蝉のジリジリと嘆く声が 響きわたる 耳に流れる何度も聞くのに 言葉にならない電流を 逃がしながら 左右を交互に踏む 足の親指と踵とを アースがわりにしながら 雑木のなかを一歩二歩と丘へとのぼる。
 黒いカタマりを口に含んで モグモグしながら 声にならないものの 微かな痺れだけが 足の爪先や 頭髪の毛先にも 木々の天辺や家家の尖った屋根にも 遠くの山山の天辺にも 草木の 枝葉の あらゆる先端部に微弱な電流を蓄えているようだ。
 流れないで踏みとめられて蓄えられた静電気が 無尽蔵に微かな痺れみたいなものが 丘を見渡した雲に覆われていた。
 小さなステンドグラスのように精巧で透明な茶色い二枚の羽が 土の上に落ちていた 蝉の胴体は跡形もなく 涼しげにふく風のように 二枚の羽がゆれていた。 
 人差し指ほどの大きな黒いカタマりを 口のなかでモグモグさせながら わたしは再び 夕映えを背に もと来た道を戻って帰った 少し薄暗くなった雑木の道を下りて帰った。


Sweet Rainny / Hole

  玄こう



、         、
 渡しの橋桁に沈む
 あるろうとなく
 名もない家家の
 土台には蟋蟀の
 影が、立ちのぼる
、         、

 鈴の音や表札のない戸口の、丘稜に林立する紙質のような家家の底に深々と根を張る、人びとの名も無い名前がある

 泥ぐつをはきながらコーヒー缶を口にし、わたしは枝葉のわんさと積まれた泥まみれの電柱を曲がりそして、車の通れない狭い路地を入っていく
帰宅クタクタと夜半すぎ家にたどり着くなり戸口の、やはり泥まみれのポストに手を入れるとある一通の手紙があった
折り畳み走り書きされた苦情を読みながら、慌わててわたしは屋根を覗くと、アンテナが右隣の家の軒に倒れ、電線にさへも引っ掛かっていた

 「あなたのことが好きです」長長と走り書きされた苦情の手紙にあった、不躾を悪く思ってか、唐突なそんな一言が添えられており一瞬面食らったが、
玄関の戸口を閉め、疲れ果てた身体をベッドに投げ出し、名もない「Blind Boy/ レイニーブルーズ (1935‐1948)」を部屋で聞きながら、しばらくその手紙を眺めていた

 今度は反対側の隣家の壁向こうからいつもの調子で、悪い咳をし台所で嘔吐する男の様子が伺えた
「大丈夫ですか?」
なんとなしに心配しながらも、わたしは煙草を吹かしながら、夜半数回のペースでいつも烈しく内物を吐き出す男の胸に息をあわせていた
戸口から戸口のわずか数歩足らずの隣人に、ある時林檎を持って行き、挨拶に伺ったことがある
物静かで小柄な佇まい、中島敦か?、黒縁の丸い眼鏡を掛けたその男は非常に困った様子で軽く礼を済ませ、そそくさと家に引っ込んでしまう
彼の戸口にもやはり表札はなくポストには名前も書かれていない

 まるで人づきあいの薄い地縁のない人びとが集まる居住区

 あと、そう、裏庭の向かい側の隣家からは、頬を何度もひっぱたく音、甲高い罵声が聞こえたものだが、まるで最近は嵐の過ぎさったあとのように、この頃は物静かである
継親の老介護される者は言葉が喋れない様子である、
 「あ゙〜」、「ゔ〜」
と呻き声しか上げられないまま血の繋がらない子に折檻されながら、されるがままの家族らの住む家がある
わたしは知らぬふりをしていつもやり過ごしていたが、近隣から苦情が殺到したためだろうか、その家の歳のいった老妻がある時一度丁寧に謝りに来たが、その後はぷっつり途絶えたままである


 我が家に手紙をポスティングした隣の人はいつも居留守か留守かわからない女である、挨拶を数える程しかしないまま数年が経つ、時折り休みの昼間には子どもと愛犬を連れてきてはワンワン大声で怒鳴ったり泣かせたりしている
隣家に回覧板を持って行き、戸口を叩いてもまるで返事はなく、(やはり名前のない)銀色のポストに回覧通知を入れている


 その夜は、しばらくその女の苦情の手紙を眺めながら、煙草をゆい、乾いたレイニーブルーズを聞きながら、嘔吐する男の醜く咳き込む様子を聞きながらわたしは、仕方なく重い腰をあげた
人びとの寝静まった夜に脚立を棟に上げ、まるで泥棒のように忍び足で、広い草原に転がったまるで獣の骨のように歪み、折れ曲がったアンテナを、ドライバーで解体した
生活になんら全く必要のないアンテナである、街灯が四方を怪しく照らす家家の、屋根の隙間の暗い影から、秋の音(ね)の蟋蟀が、恋歌のごとく立ち上っている
 、
 、、
 包帯のように巻かれた厚手の雲がどんよりと流れていた、人びとの寝しずむ息を吸い上げているようだった
暴風で倒れたアンテナを解体したあと、わたしは重たい部品を放置したまま屋根を降りた

、、
、、、
家家の林立する屋根には、チラチラと静かな時雨が舞い降りている





、、
、、、

  ミューズよ御覧なさい
  わたしらのうたう雨は
  あなたのように
  美しい歌を聞かせる
  雨ではないの
  蒸発する人びとの、
  紙の上にうつる名の、
  そのそばで
  聞き耳を立てて
  御覧なさい
  地を這う人の群れ
  家家の土台に隠れ
  蟋蟀のさえずる
  家家には深深と
  溝をあけ、
  戸口に潜む
  名もない名の
 ミューズよ
  ミューズ
 歌って御覧なさい
Blind Boy
/Sweet Honey Hole 
      9,1937 


                                   、


居ない

  玄こう

朝方いつも吠えてた近所の犬が居ない。檻の鉄格子は取り払われていた。地面のコンクリートも解体されていた。檻の回りには木が植えられていた。私は時々その檻に近づき金網に手指を入れると犬はすり寄ってくる。飼い主は朝によく箒やベルトでぶっ叩いていた。犬はじっとされるがままに痛みをこらえていた。帰りがてらその犬の様子が心配になり、やぁ今朝もよく耐えたねといつもの調子で金網に手を入れると犬はすっくと起き上がって、あぁ、あなただったらわかるような目をし尻尾を振りながら舌と指を舐めあい挨拶をかわした犬だった。白くてとても美しい犬だった。


うごくなうめけいぬいないよみがえれ はくばいうめくさくはなはな ほしつくつぐなへ したるみずのごときしろきけなみよ


(無題)

  玄こう



 あかあかや あかあかあかやあかあかや あかあかあかやあかあかや月

 山のはにわれも入りなん月も入れ 夜な夜なごとに友とせむ

 (明恵上人御歌)



 嗚呼、あかくひん剥かれた樹皮の掛け軸が、うえへうえへと昇っていく
 上人もまつられ 又木に坐り浮かれている 目をあけているのか 閉じているのか わからない 何かが見えればと思ったが 目を閉じながら何かを見ていた 
 絶え間なく広木の伸びるやわらかな絵筆は 色の雫をつたいやがては線が線ではなくなった 線をはなれて線でなくなった 
 われは見き われは聴く 片耳削ぎの上人の 樹皮をひんむいた血糊の松の枝間には 明かあかや あかあかあかやあかあかや あかあかや


 (樹上坐禅像)
  


                                 .


ついてくるからついていく

  玄こう



赤子の初泣きとは、はじめて
苦をおもいしったときのようだ
それはまるで昨日のことのようで
苦肉とは、そうして生き初めることを
からだが二度(ふたたび)教えてくれる
ひとたび ふたたび みたび よたび / と
ついてくるから
ついていくのだ

ヒリヒリと痛む肉体が
客車の心のなかを谺する
右半身がこわばり
つり革を固く掴み
わたしはマスクする顔の
暗い影の窓の外には
背中合わせに居合わせた
一人の女の顔の
視線がゆったりと
揺れ動いていた
散開した
その視界は
一度(ひとたび)
消え失せる
homeの列車は
二度(ふたたび)
動きだす

嗚呼、産まれた赤子の
あの泣くときのこと
それはわたしの病苦と
同じ世に産まされた
肉の阿鼻ではないのか

完全に受身状態である
今の私にはそれが一番
ふさわしいのだと
あのとき聴いた肉の呻きが
響動き(どよめき)
肉の心を幾度も谺していく
三度(みたび)、四度(よたび)と、揺らいだ
窓に影る見えない視線がいくつも、揺らいだ






              ‥ …


空に降る

  玄こう

空に降る
あの雨が
ただよい、
消え失せる

いくつかの
あの雨が
ほんのり
この地に
辿り着く

くきやかな
脚の細い
黒い爪先、
足元を光らせ
コンパスで
、描く円


 跣

  玄こう

ペンさきと紙の地とは
神の女の血を入れ替え
僕の血とを入れ替えた
紫色をした針さきのか細い管をしたん
朝と夕とに降った液光のチューブの滴
Superumaの液が僕のキッチンを拭う
錆びたT刃で彼の女の顔顎下や口元を
撫であげるスキンに赤くラインがのる
彼の女を眠らせちびたブラで歯を磨く
口腔の奥にある陥没した親不知 おあよ
M.O.U.R.N.I.N.G 洞窟にブラをあて
ドン ふぁ ふぁ ふぁ
ドン し  ら* ら+ ら゙ といった
ハミング練習を歯磨でするのが好き
ときおり口をすぼませ po.po.とやる
あるとき父が竹の横笛 をつくってくれた
ときおり縁側で吹いて 聞かせてくれた
ときおり‐‐‐‐‐‐ 親不知の奥から
出る血を‐‐‐‐‐‐ ブラシに眺めて
お.は.よ‐‐‐‐ M.O.U.R.N.I.N.G
きのう早い朝に泥靴で川を渡った一足を
「跣」から履き今朝も我が家の玄関を出た
この詩はペンと紙で書いたものではないが、
恐らく 跣 で こうやって文字を追いやり
唄い歩きつ いつも こうやって
僕たちの血を入れ替えていくのだろう。


日記(2011/11 の頃の )

  玄こう



いつまでたったらあの時やこのときやいま
過去←現在化させ未来の絵空事滅ぼしたいコト

その折り返しの先にたって生きている。そろっと煉獄の途に煮えたぎる熱情を足下の足裏から
ヌルヌルでてくるナニモノか?、を感じる一冊の本を十云年ぶりに読み開いている

 これは私だ!


というその一言が、この本で彼の(宗教的)実存で思い知ったのだが

  死に至る病/キェルケゴール

絶望ひとつとってもホントいえば私にはやはりさっぱりわからない。 
浅く潜り省察しながらも、私にとっての絶望とは、弱い絶望、の階位か?
…にとって絶望とは?と… 頭がつく段階でしか理解できんのだから、
永遠的なるものの…  神の御前、罪を、躓きを、
ホントむつかしい、 キリスト者、彼(…にとっての)キリスト者

…にとって 
最近面白く考え、読みふける。

 ------------

「お前はだいたいお前自身を誇りにしているのだ、それが実にお前の傲慢さだ!」
と誰かに言われてそこに真理が含まれていることを彼は認めるかもしれない、
しかし彼はそこで自分の弱さを包括的に把握しているならば 
「自分の弱さに絶望していることが傲慢であるはずがない」
その熱情がそう言わしむるとき、そのように並外れて強調するそれこそが
実に傲慢にほかならないことに彼は気づかないのである。------------

  岩波文庫  P130,13行
  
あたりの一文が自分の心にあたった。  

 おわり。


(((2011)(((((((10)((((((((11)*************************************************************************************************


   *2011


ポエトリー
裏表紙から君がうつむき歩き出す
誰か私を揺り動かさないの
グレーに赤い裏地のマフラー着膨れ
ほら
私の前ではたと立ち止まりうつむき歩き出す
通り過ぎては社会の窓に寄り掛かる二人
アートにさらば
作品を見間違えたかな
君は絵が好き?
では明日
同じ時間にこの場所でスケッチをしようかね
今日は日曜日
笑って目を閉じてますね
さもなくば空想
細かなエピソードは無知
輪郭は消え去られてるけど
笑って目を閉じてますね



        
  roomaji nikki

watasi ga kokoniarutoki

watasi ha siru ayamati wo

watasi ha kakugosuru ayamati wo

bokuha motanebanaranai kakugosuru beki taido wo

ikirutoiu sekininn taido wo

ikirukoto kanounisuru taido wo

bokuha motteiru? sono taido ima
poem wo kaku
jibunn no sonnzai no ayamati wo siru
ikiru wo siru
ayamati wo siru

 

   詩を携えた人間の詩論とその態度 NO.1

歴史を潜ませ、はたと立ち止まる
過ちを問うことは
人間の作り上げたところの感動を含有する。
罪深き礎に私もまた存在しているということを思い知る
深く生きること
食べる、泣く、笑う、願う、・・・この罪深き実のものたちは
死に向かうことは許されない
なぜなら私もまた罪深き礎に存在していることを知っているから
未来においても事実であり続けるもの=実を生きるということ
そのことを私たちは知っている。
生きることが罪である以上死に向かうことは許されない
そのことを私たちは知っている。
精神もまた死に向かうことは許されない
これは絶えず生きるという詩論である。

学もまたしかり
学が生きるという「する論理」であるならば
人文や倫理や宗教のような似方であっても
感動は
生きる過ちを知るということ。
詩は
生きる過ちを知るということ。
創造は
生きる過ちを知るということ。

しかして芸術や哲学はその態度さえ無関心なくらい
もっと他の感動の有り様を深めてくれるだろうし
自然や科学は全く別の多くの次元のことを教え諭してくれるだろうが
やはり私自身(一個人)が感動するところの中身は書かれてないはず
しかしそこから過ちを問うて初めて学から私が生きてくる。

既にそれは私(一個人)についての過ちでもあるから。
過ちを問うて初めて物事から私が生きてくる。
私でないものから私が生きてくるような。
罪を携え、過ちを知るなかに
そこに厳しく貴少の感動があると呪文。

つまらない話になるがこうした感動は
自己実現、達成の喜びの感動とは違って静かで重たくも感ぜられ
無意識的に自然とである。
過ちが感動の源などと言っているタワケではないのだ
そんなことあってなるものか!
意識操作に屈し、低俗な商品価値を生む為の手段などではない
本当に感動するとはどういうことであるのか問うのみである。
それは過ちを知るということ実を生きるということ
その中に感動が少しある
全く別物であるはず

加えて
前衛作家の父へ、これは私にとって唯一創造されることの許された態度です。
しかしここにある私的行動は脱同一化です
出たところが
言葉の海に流されてかえる
揺られて行方知れず
辿り着くは、何もない海の向こう
ならば考えよう
意味を
本心に迫る対象物が歪みの向こう
覗けば大気にかざる太陽
一つの死
気高い宣告
冷凍保存の地球世界
何も知らされていません
思い知ること十回
不名誉な不明
では実体験を手に
見るものは、何もない山の向こう
時間失格
白むさかずき
指先麻痺
シャッターボタンの伸びきる雪道
ガタガタ歯音
吹きすさむ電線のビーン音
眠りから目覚める世常人
活動隊
行方を知らねば生きない
論理隊
朝まで待てぬ
無形式
寓話に寓話を重ねた被写体
溜まるカス
いたたまれぬ自意識
没落
遠くで眺むれば草

願わくばここで生きていることを

ミルクとアルコールを混ぜ入れた
蓮華味噌汁に落ち葉を添えて
丸ういうつわと少々の漬け菜

こくりこくりと寝んねする
曲げて体を削る鰹節
折りたたまれたフキンの二月半ば
自称、指人形は姫の手足
肩に鳥のつま先
肌身はなさず皮膚骨格
鋳肌模様に内潜む灼熱の証
願わくばここで生きていることを

汚れなく手には汗と銭
足に長靴
襟首タオル
抽象にまみれた頭
水に薬
気管支ミスト
咳き込む彼
労働を見下す人々
あざける主
願わくばここで生きていることを

角を降りた四件となりの白い家
子を育て上げる誉れ
男不要説教ウーマン
精子も卵子もナンバーワン
力を知る one and only
理屈抜きで知らぬことはあっても
出来るということ
願わくばここで生きていること
過去を振り返る事々の刻印に
付属断片素子に
新たな遊戯だとか何だとか
堕落 Du-Du-Du-Du-Du-
なんかのひょうしここで生きていること




野暮な場数

愛ぅしくあられる君に、世界で一人、君に

だからわかれれる情愛は野暮な多数
一つは君やってみなさい
思い描ける詩が実となるよう


人を愛せない男なんて台無しだ
愛されない女なんて台無しだ
だからまたと無い実話、未来、ノンフィクション
願い、過去、をきっと君は雨に染み込ませるだろうから
足元を濡らす路上の街明かりが君を光らせるだろうから
僕の肺もむなしく君を咳き込ませるだろうから
いくつかの駒を机上で動かすつまらぬ博打の中で
重なり重なり生きていった人々
僕らの先進は了解したのです
僕らの景色はここに新しい彩りをそえるつもりです
また吹く口笛
この唄
この景色
この新しい風はなに?






.


あせび

  玄こう


 天地の雨は さしものもなく いのちのちのりはいのりのり 落陽の青光する輪郭に 乾いた生地が揺れている 風に流れた御影の顔が 水面せせらぐ縁と縁との 友と伴とのうたがいい  ひのひのひとのいのりのみちのり 賢しきもののふ 流れるこぶし 祈りが歌になるとき 歌がコトバになるとき 言葉が馬酔木になるとき 天地の雨は遠ざかり チビて駆ける足裏の 冷たい汗の匂い 歩者の解に解に ひとのひのひは明るくはずむ 声も顔もものみな川床 にて魚の玉石の玉梅の玉 足の下を流れて濡れ落ちた 歩者 はふる 流れる拳の降る雨が怒りに満ちて歌になるとき 歌がコトバになる言葉が馬酔木になるとき 歩者の孤独の背なかにも ほら其処にもあ其処にも やぶれ さばかれた一枚の紙が はふれ ほらあの時もあの時も しそのかわをばせとせに はふれた人の玉 うおの玉 ひしの玉 … … 川床逆さにうつける影が 流れる 

                                 
 

文学極道

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