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イロキセイゴ

選出作品 (投稿日時順 / 全28作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


鈍い

  イロキセイゴ

チラシが舞って
躑躅のピンクと連動して居る
忘れ物を必ず取りに帰ってくる父は
全体的に翼の様で、チラシはとってくれなかった
忘れ物を取りに戻ってくる父は
全体的にエアーみたいで
動きが鈍い


(無題)

  イロキセイゴ

戸が削除されて居る
根底を探れば馬が正しく放出され
木の扉を出て行く時の
私の尻の位置が分からなくて
傘を待って居る雨が降って居る
私は喫茶店で席が空くのを待って居た

音が猛々しく響く日暮れに
想起されるターザンや「許さないで欲しい」
右足の裏の棘が痛む
網タイツを履いても癒されない痛みに
格差を思う夕暮れ

矢鱈と手渡して居るパチンコ屋の東側で
そこに辿り着く前にも手渡して居た事を想起して居る
そこから東へ向かって進み北へ左折してから再び東へ向かう
漂う様に私はマーメイドに成って居る


私と言う悪夢

  イロキセイゴ

流水プールの中の私は
初めての物語を読みながら
水の色が服の色に転化する様な夢の中に
かわいい犬を連れた老人をつけ回し東へと戻る
初めの地を憎み
西方進行を続ける
少年二人が剣道をして居る
消防自動車のサイレンが聞こえ来る中
私は「私」を取り戻しつつあった


侵食

  イロキセイゴ

鴉の子はどう見ても鳥類だが
鳥では無いようだなどと不確かな議論で
けむに巻かれて居る最中に
私は歯医者の診療台で
明らかに先週とは違う雰囲気で
先ずは黒いコードが鞭打つように
荒々しく蛇を成して足元を襲う
続いて洗浄しながら削る義歯から
水が眉間にかかり
荒々しく診療台が揺れる治療が続く
もうね、普段の環境のままに
普段の通りにね、お宅のね
普段の住んで居る環境にすり合わせた治療が好評なのでありまして・・・・
そろそろ段差にぶつかって膝がいてーぞこらと
地底の歴史が叫んでも馬耳東風だ  

そろそろ私がみつむ公園に辿り着こうとする頃
公園のベンチでは
男女の中学生のむつ事が始まって居た
女子中学生は北へ向いて居たのを
東へ向く時に
北へ向いて居た時には尻を乗せて居ただけなのを
東へ向く時に
足が開いた形と成り
男子学生と向き合う

詩のフーガを知って居る
それは歯医者へ行く前の
給水塔の草地に生えて居る
芥子のオレンジの花が
風に揺れる度によみがえって来る
清潔な私は記念碑を建てるのと引き換えに
ココにある歯が
白い黒いピンク色と国旗の様に
あるのをイブカシム
歯の根元にこびりついた黒は
執拗にこすっても取れず
ピンク色を犯す黒い縦線は
二つか三つほどあり
どう考えても正気の沙汰ではないからだ


木の扉

  イロキセイゴ

トイレの扉を開くと
思いっきり馬が出て来る喫茶店で
順番待ちをして居た
真緑のパラソルの下に居れば
ブルーベリーが実って居て
私よりちょっとだけ背の低い
木が扉をちょっと強く閉めると
壁ごと揺れる家屋を眺めて居る
お茶したら本屋に行こうかと
誘われてもノーサンキューのモードで
誌だけ買えれば床屋はまた別の日に行ければ良いと思う
木の扉は木の壁に擬態化し
殆ど高低差?(凸凹の無い滑らかさですね)が無いので
トイレの扉は出っ張っても引っ込んでも居ないので
思わずトイレの扉の前に待って居た所を
開けられて(その人は野球同好会の人だろう)(団体客で上得意と言った所)
尻を木の扉でぶつけられて仕舞った


「マヨネーズ」

  イロキセイゴ

ポストが閉鎖するとイッサは殺意を覚えた
白いマヨネーズの用器が着地すると
新聞の購読が止まって居る
白い白すぎるのだ

新聞に載る度にポストが閉鎖する事に
イッサは殺意を覚えて居た
例えば長良川で鵜飼を見学して居ても
白い白いポストが浮かび上がって来る

白いマヨネーズの用器が着地したのだ(そして声が発生したのだ)
問答無用でお琴を弾き始めるダミーに恐怖を感じながら
又しても白い白いポストが海水に濡れそぼちながら現れる

ラオーが白いポストを保持しながら
尾瀬沼への観光ツアーで
何故突きを喰らわせねば成らぬのだ
もう少し詳しく言うと前歯が折れたのでは無くて
少し欠けただけなのだと
何故シルクロードを通じて
正確に伝えようとしないのだ

誤解した白いポストに埋まり行く
マヨネーズの夥しさ
黒い椋鳥を観察したお好み焼き喫茶店で
又しても白い白いポストが
マヨネーズを充満させて居るでは無いか


  イロキセイゴ

長い川の前に
慈雨が続き
ロバの群れが続く
長い川に大きな川が接続して居る
そばかすの少女が独り
斜視を患いながら
視覚を取り戻そうと星を見る人になる
車が侵入して来るプールを抱えて
暮らしの中で二階の北窓から
星を見る少女が
見る物は星だけでは無くて
川の中の人やヒヒや木立なども見る
長い川も大きな川もやがて大海へと繋がり行き
慈雨も止み
ロバの群れはプールに消えて仕舞う
斜視の手術は二十日間を要し
二十針のまぶたの糸を抜く時に
少女のウィンクは止まらなくなり
無限の海を恋うた(「恋う」(動詞)+「た」(助動詞)です)(読みは「こうた」)でしょうか)


和の接近

  イロキセイゴ

和が股間に来ると
プールが眼前にある
すばしっこい接近だった
古代の様な懐かしさで
私の操(みさお)を奪う
片思いだったぎりで
自由を謳歌していたのかもしれない
シアン化物が不意に口に来る
私はあわてて家持(やかもち)の和歌を口遊(くちずさ)む
すると毒気は消える
再び接近する和に
私はたまらずプールに飛び込む
プールの底に沈む
スクール水着だけが
真実を知って居る様な気がした


異次元

  イロキセイゴ

席に包帯がぐるぐる巻きにされ
ルーゲーリッグが動けなくなる
何時からだろうか
鉄の馬だけが走って居る
ルーだけでは無くて
俺だって風呂でバーキングな気分を
味わって居る
追う追う追うと
松方弘樹は死んでしまった
ちきちきちきと
あなたはあなたの秘密を守れますかと
問いかけられているような気がする
龍の立派な天井画が鳴いて居た
共鳴する激しい龍は
拍子が打たれて共鳴して居る
遂に我々四人衆は「さや」に来たのだ
席の包帯などに惑っている場合では無い
ルーゲーリッグも救い出そうと思う
やたら歯の中から鉱物が出るのも
得心が行くような鮮やかな
解決の図が我ら四人衆から案出されると思うが
それはまた異次元の話のような気がする


津川と俺

  イロキセイゴ

遺灰の感謝に
私は聖モニカをたたえる
内部の人間だった私は
津川を夫婦岩で殴る
伊勢神宮を参拝し
おかげ横丁で昼餉をとった後だった
娘を誘拐された腹いせに
神を呪うと効果覿面(てきめん)で
津川は夫婦岩で殴られる
遺灰の感謝の記号学だった
聖モニカをたたえて
内部の人間となると
ターゲットの津川の娘がさらわれて
案の定神を呪って居る(津川)
ほれ引っ掛かったと
津川を夫婦岩で殴ったわけだ
キノの大冒険も控えていたし
バサラ大名も控えていた
私(俺)のやる事はサミーで
レンタルビデオを借りる事だけでは
無かったと言う訳だ

さえて来た聖モニカを
私はますますたたえる


人知

  イロキセイゴ

人知を超えたところで
シャチが野良を突き刺す
死期は一瞬で
戸がウキウキして居た事だけが
記憶に残る
一億円の息子が「来た」かと
パラオの遺骨収集を真剣に
考え始めると
ミーハーとは何か
ミーハーとは何か
ルーキーとは何か
ルーキーとは何かが
残響して居るのに気付いた


正夢

  イロキセイゴ

幼稚なところへ行くと
小学生の女児が自転車で
突っ込んで来て焦った
リールで釣り針の付いた糸を
巻けないので何も釣れない
ボルマンだけが釣れた
チースは「こんにちはです」の略なのか
「こんに(ち)は」「おはようございま(す)」の略なのでは?
とブランチを食べながら思う
知るべきだ
知るべきだ
先生は幼稚なところに
閉じこもれない
部屋の茶色の二スはまだとれない
体が回転ばかりして居る夜に
夢は新聞ばかりでは無いのに
新聞の夢は正夢の様で怖い


通信中

  イロキセイゴ

牧場には首を痛がるコーギーの
前歯の一部を割る藤の木があった
藤の木は春夏秋と葉々を繁らせるが
冬には葉を落として
裸木となる
小学生二人がブランコに乗って居る
ゴジラが扉を破壊して来たので
避難して来たのであろう
ゴジラは原始人の様でも
藤の木は通信中なので
コーギーの前歯を鉄棒に当てたり
教師の不可抗力を誘ったり
チャレンジャー号を爆発させたり
チェルノブイリ原発事故を
引き起こすことも可能だ

コーギーの飼い主が結成した黒シャツ隊が
街を席巻してうざい
鳳凰のアゲハ蝶が
差を解消するどころか
差を拡大させて行く中
黒シャツ隊も通信中で
薄く薄く儚い
藤の木の事を思って
ミッキーマウスと独楽を供えて
イルカが蔓延る世の中を夢想する
黒シャツ隊と藤の木は
通信中であった


名付け夢想する

  イロキセイゴ

我を無くしたら
コミックが解放された
日直の仕事を拒絶すると
石が飛んで来るようなものだ
有難く石をよけながら読ませて頂いた
送風が涼しくて粗暴な眷属は居なかった
強情な帽子をビーバーに変えて慰安を得る様な物だ
歯が自らの歯をイチゴに当てる時には
霊魂が上に行って栄えてくれる
意思もまた苺を食べてくれる
石が減量を初めて
摩周湖に
投げ込まれる時にはビーバーハットも湖面に浮かぶだろう
シルクハットと言い換えてもグレートヤブキか
グレートカブキかの区別は難しい
クーラーにかかった服を
取りに行けずに
頭頂部が盗聴されているのに気付けない私は
蜥蜴の居る庭をロブグリエの庭ではなくて
ブナの庭、エリーの庭と名付けた
聖書の中のロトのタペストリーを
夢想したい


  イロキセイゴ

船具商をつとめていた私の父は
心に魔界を秘め
死海に臨む
砂浜でモネの絵を拾って
火にくべると
魔界に山が出来たので
山にこもった


解決をしたい私

  イロキセイゴ

職員室はカーテンに覆われ、覆われれば覆われるほど、職員室の中は教員がぎっしり詰まって行く。カメラの木には花が咲き、ピンク色の少女が木登りをしていた。春風の強さのため、目によく異物が入った。教師が一人だけ混じり生徒らは円環をなし、バレーボールのラリーをしていた。夜に激しく痛む腿。それはむき出しのバスタブを思わせた。

ノッカーが持って来るバスタブ
バスタブの欠陥に愚痴は言えない
夥しい数の花びらが川を流れて行く
猥褻な橋を渡れば
少女に響き渡るネアンデルタール人の叫び

カメが痒がっている
その亀を取ろうとする
子供の木田先生を揶揄(からか)っても
痒くなるのは幕張の為?
川は流れる
ある部分だけアンコントローラブルに

千賀地(ちがち)の館まで川は流れる
千賀地の館に忍者が居る
器具を使って悪さをしようとしているのだ
ムクドリが耳に住み着いて
蜂や虻は見捨てた
御前は乗せんと言われたトラウマを抱えた
大部分の忍者

職員室には夥しい
荻原守衛の「女」の彫刻が
倒れたまま置かれている
教員をぎっしり詰め込もうと思えば
それらはどかさねばなるまい

春風の害
強風の害
目に異物が
私の体は半分に割れて行くのだろう
バレーボールを蹴りたい衝動
それにはどんなペナルティーが
あるのだろう
桜並木を歩けば
私はバスタブしか発見できなかった

(カメラの木だけは解決できない)


ラテンアメリカ

  イロキセイゴ

ラテンアメリカを全貌すれば
羊の放課後と裸体の抑制
階段になって行く孫の国は
口から竹の生えた人で統治され
目利きたちの揺れが伝わって来る
風が強くて家に帰る

家に帰れば真実が語りかける
フェアリーランドに写る
ラテンアメリカの全貌に含まれる
いくらかの真実
椅子が照り付けられて
僅かな水分さえ吸って行く太陽に
私は憧れて
捨てられない自我が土に染み込んで行く

大地は地母神が司る
ラテンアメリカに羊の群れ
太陽が黄色く微笑む
私は今を溶解させて行く
神の恩寵についての論文の執筆の義務が
自分に下って来たのを感じ始めていた


自我

  イロキセイゴ

壁のデコレーションが好きで
混んで行く私の自我
黒鍵が白鍵よりまぶしい日に
壁に抱きついて泣いた

粘土の試作品での
試合が続き
やがて城へと完成する
粘土の含有成分が
不穏でも
粘土で作れば海の波で
崩れはしない

私の誇らしげな自我を
崩すのはどの神だろうか
粘土でできた壁はもはや
輝かず ピアノは海中に
沈んでしまった

もはやテクでこくるしかない
ドガの踊り子を引き連れて
私の自我が野良猫島に上陸する
雪の精に用事があったので
とりあえずジョバンニに
私の自我を預けた


三つのもの

  イロキセイゴ

タールのチェックが始まると
アスファルトを構成するのか
煙草を構成するのかで
友がワイワイし出した
山廬集の句を読んで居た私も
その輪に加わりこのタールは
アスファルト、あのタールは煙草へと
チェック機器を利用して特定し
小夜を過ごした
私は何回グナを見ただろうか
それらの過程で見てしまうマムシが
グナであるはずもなく
グナのグナたるゆえんはタールとは
全く無関係だったにもかかわらず
グナの支えを必要とした私は
タールをチェックしながら
現れるグナを数えながら
タールとグナは無関係と
ひとりごちた
ひとりごちつつも
ワイワイし出した友を遠巻きに
タールとグナを同時に
見てしまったような気がした
現実界のマムシは
二つの間を取り持つ使者の様にも見え
タールは現実と非現実をのあわいを
漂って居る様にも見えた
グナとタールとマムシの三つが
同時に平等に存在する時が
私の顕現する時だとふと思った


  イロキセイゴ

血が辛い
血が足りない
意思が血を吸いすぎて
何時の間にやら
塩を混ぜて居たのは誰

二匹のジンベイザメが
理解する貝二つ
泡は無数に生起して
コナラに生じる団栗を
バケツにつけて居たら
色水になりました
バケツの水に血を混ぜるのに
手がふるえて居たのは誰

辛い血を飲み干して西瓜を食べる
ジンベイザメに西瓜をあげる
城に居る王様に色水を下賜しましたら
普通逆だろうからと
王様の方からくれる色水の数多
「下賜」「くれる」
ガセ情報が徘徊し
色水が撒き散らされ始めるころ
私はジンベイザメの血を欲し始めた


展示会

  イロキセイゴ

鎌子と一緒に
大極殿へと行って来た
明示される展示
長椅子から職員が
どすんと床へ自由落下する
書家の私は
石川丈山を展示する
石川丈山の漢詩を
墨書したものを展示する

大極殿を訂正する必要に迫られる
訂正すると言っても小極殿ではないし
分からぬ鎌子は去って行った
私はとりあえず小堀遠州の書画を
家に展示した

団栗を発芽させることは
展示会と同等の意味を持つ
発芽しても中々成長しないし
幻想の中では
矢鱈大きく成長した後の
虚偽ばかりが蔓延って
きつい

遂に私は展示会をあきらめ
団栗の種まきを躊躇して
幻の2006年を迎えた
2003年を迎えた
1984年を迎えた
1985年に死ぬと言う死亡フラグと
対峙する
鎌子が戻って来た
家では座敷童が寝起きを始めた


言語の裸体

  イロキセイゴ

言語の裸体が赤く染まり
飛んで来る変化球はツーシーム
打ち返すセーラー服の男性は
先週知り合った人

落ちて行く日 燃え上がる日
裸体が屋根に上った
下で火を焚く湯女が居る
湯女の眷属を私は知っているのだが
個人情報を燃やせずに
希少価値が生じる
大きな月が昇る
言語の裸体は屋上で茶をすする
走るなメロスと叫んでいたような
少年時代だった
その痕跡が今でも藤の木の下にある


焦らされて

  イロキセイゴ

庭にミッキーマウスが来ている事は大変好ましい
武勇を示すのに絶好の機会だからだ
スーラの様に滑らかに吟遊詩人の様に
巧みな詩を言える徳川家康を
地獄流しにしてから皇帝に就任した私の
武勇はうがいをするためだけに
我が家を利用したシーラカンスを見逃した事
ノアの大洪水で我が身を捨てて
動物だけを救った事

井戸に水を汲みに行った
ミッキーマウスの帰りが遅く
庭に中々戻って来ない
別にカブトムシを撮りに行ったわけでもないだろうから
私に楽府(がふ)を書かせるほど待たせてはならない
早くミッキーマウスに
私の武勇を示して
ミニーマウスの秘密を聞き出したい
カタツムリは枝で濡れ
ヤマメを釣るのにも金が要る
赤ワインを飲めば寝るだけなのに
それも禁じられ相当私はジリジリと
焦らされている様な気がした


日記

  イロキセイゴ

日記に髪の毛が
生えて来た事がありますか
猫のトム君は自分の毛よりも
自然の木々の減少を憂えているので
日記の髪の毛をカッターナイフで
デザインしても
無視して紅マス釣りへ行ってしまう
田圃に起こる鳥の囀りが
土の固さを思い起こさせて
日記の髪は逆立って来る
足の太さと体の細さから来る
ギャップに寝てくれないトム君が
夜ごとに蚊だけが余分だと言っている
日記の髪の毛をカットすると
木々も減るからいやだとはトム君の説
何かが沈む音がして
日記の根っこが張り出したことに
気付きました


驟雨の豪雨

  イロキセイゴ

輝けないことを気にして
ゼロの今を見つめる
なごめてもなごめなくても
朝はやって来て目覚めの時
南天の花が半分ぐらい咲いて居た
小花の集合が黄色くあるいは
オレンジ色に弾けて
柿の木の近くに有る
科学の世界では獣は排除されて
ドーバー海峡を渡る獣(けもの)
デッキブラシがゼロなのだと思った
濡れて獣の毛は弱弱しい
ゼロの今にデッキブラシを大鎌で
かっさらうもの神より高次に有るもの
美しい雨なのであった


草に寝転び

  イロキセイゴ

口が緑を食べて居る
襟を食べられたような気がして
背が伸びて来たような気がしたので
セコンドをつけて
ボクシングをやってみた
リングは自然のままの草原で
トライに次ぐトライで疲弊する空だと
思った カーテンがひと揺れしただけで
飲めない光を体中に蔵して行く
草原に寝転んだ アンパイア(審判)兼トレーナーの持つ
ムチが若くなって行く
風の尾があるとしたらそれは寒いに違いなく
胃に未来があるかと思えば
稲穂が風に揺れて
雀のさえずりが聞こえて来た


物置

  イロキセイゴ

イチゴが成人して
二十二歳で卒業して行く
広範な自治は母の指に依存して
水が飛んで来るだけでは
潜水は出来なかった
ハタキでハエを追い払って
曲の構造を露わにした
母は退場して
就職する事は旋回する事だと言った
イチゴの発散する生気を
ヒヨドリが食べに来た
単数形のドアと複数形のドアが
太陽の光をコントロールしている
鈍い光が物置だけを照らしていた


印刷をしたい衝動

  イロキセイゴ

鷲の飛翔から
微光が放出されて
鷹の隊列が少し乱れた
稲穂の中で揺曳するイタチが
私から目を背けた
田のあぜ道に生えるセンダングサの実が
ズボンや靴や帽子に付いて
鷹や鷲は微光だけではなくて
微香も放っていると
確信した
山のあなたに
猫じゃらしが生えている
私は徒党を組んで
自然を印刷したい衝動に駆られた
エノキの木を抱いていると
心なしか鷹や鷲の飛行高度が
下がったと思った

文学極道

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