グキッ
ボキッ
とかとか鳴らして
首の骨を
鳴らして見せる
ジュン
凝り症だから
とかとか言って
しょっちゅう
ボキボキ
やってた
いつだったか
おもっっきり
首を回して
(まるで竹トンボのように、ね)
飛んで
いって
そのまま
まだ
戻らない
最新情報
2019年06月分
回す!
雨後に
雨の雫に濡れた畑の瑞々しさ
自然を開き破壊して得た日々の糧
だからこれほど輝いているのか
ぬかるんだ畑に足あとがみえる
だれの足あとかは知らないが
きっとだれかの足あとで
あなたもこの畑の瑞々しい緑の間を
何が正しいのかと自問しながら
歩いたのだろうか、だれかの足あとよ
それは誰かのひとつの道だろうか
ひとつの道、わたしが進むべき
ひとつの道、さがしてたたずむ
ひとつの道、道をつくるのだ
ゆっくりと畑の足あとを追い
トマトを胡瓜を籠につみながら
よく肥えたトマトをひとつ残す
この後に来るだろう生命に残す
かたわらには水や雲の路があり
生命は常に動き続け過ちも悔いも
呑みこんで道を路をつくり続ける
もう自然ではあり得ないけれど
あの葉から滴る雨の足音のように
大地に足あとをつけてひとの道をゆく
柩車
途絶えて
夏蝶に傷める白い帷子
____
ごらん、
あれが煉獄にうめくひとたちの貌だよ
人貌花を指し
天使が血錐の丘を駈ける
円形舞踏に――
そして包丁に
罐詰に
姉妹達の石に
振返るな
町を出れば人となるもの
泥濘、
私の死を報せる者よ
_
___
希臘
函人間達
その死を睡る都市
ダイダロスの永久機関
アタランテ
秘跡の死体学
物質の叛存在
自由運動をする原子
絶滅科学の嫡種を期して
現象の現象たる証明
現象の証拠たる証明
現象の証明たる不在
現象の不在たる解体
在るは介在‐人体‐証明
__
__
断崖に岐路
落鳥の目に墜ちゆける夕は在り
追悼するか?
彼が死んだ。ゲームの中の一人、ストーリー内ではいいやつで、基本的に能力値も高かった。体力がすこし低めだったが、こんな序盤で死ぬとは思ってなかった。もう生きた彼に会えないのかぁ。ギャラリーはあるけど僕は彼の画像を全然とってない。まあ、他の人のをもらえばいいが、別にそこまでするほど思い入れがあるわけでもない。ストーリーでは彼について何も踏み込まないままだった。面白そうなやつだったんだけどなぁ。少しきになるな。
彼に向けたチャット、届くはずもないチャットに「まじかー、もっと使えばよかったわ」と送った。
あいつなんで自殺したんだろ
月の影に咲く花
月達の会話がこうこうと聞こえる頃に、星達はきらきら笑います。その日僕は月達の影に見付けたのです。自分とは違うけれど、似たモノを持っている事を、分かったんです。いずれは壊死してしまう細胞と同じように、私達の全ては期限が決められたモノとしての、死が約束されています。死は誰もが通る道の最終地点です。その最中で、生死というものが、救いになる事もあります。できれば、生きていてよかったと思いたくても、変えようがない事もあるんです。死にたいと思う事が、どうして悪いのでしょうか?生産的な視点での経済を支える目では、私達の死は、少なからずのダメージを経済に与えます。ほんのささやかな、幸せの中でも、手放したくないと思えたら、死にたいとは思えなくなるでしょう。
零の愛しみの影には、失ったことから得たパースを元に組み上げられた世界があります。それは僕にとっての光です。
一の涙には共感の力があります。それは僕にとっての力です。
二の微笑には何時もおまじないが込められています。それは僕にとってのびびでばびでぶー。魔法です。
三の伏し目には黙祷の意味が込められています。それは僕にとっての怒りでした。
四の見上げる世界ではヒビが入って割れそうで割れない事が、正しさです。意味が分かる頃には、やさしさが与えられるのではなく、与える事だと知ります。
五では見下ろしていきます。撫でる風は過去ではなく未来へ向かう事を自然と教えます。
六、愛するという事は行動が必要です。結果は後からついてきます。愛される事は誰よりも愛する事だけど、距離感を知って、近付く事だけが愛する事ではないんです。僕の水は、誰かから一滴貰えれば、百の力になりました。百の力は分けていけば万の力になります。だけど、サボテンに水を与えすぎてはいけないように、愛することも度合いによっては、傷付け合う事がありました。
七、苦しみとは楽しさを知るためのカギです。楽しみを探すためには、言う事や書く事よりも、同じ時間を共有する事、それはあなたにとっての楽しさであっても、僕は楽しいんです。笑顔を見れる事が、幸せだと思うけれど。手を伸ばしても届かない。苦しみがあるから、笑顔の素晴らしさにも、僕は影を感じます。
八、九、十。心にも体にも良いのは、分量の差でしかないんです。
十一。欲しいものを欲しいだけ手にする事ができたら、手に入れる事、手に入らない事の差異から何を見出せるのでしょうか?どうあがいても手に入らない事から、救いを。生み出せるのは誰でしょうか?
十二、十三、十四、十五。サイクルの中で繰り返すことが、折り鶴を折るように。折り目を付ける事が。誰にも大事だという事を気付かせてくれます。それは、些細な繰り返しかもしれないけれど。世界には。小さな積み重ねでできた。光と影があります。僕はどちらも持っているけれど、どちらも持っていません。持つという事を待っていたんです。
十六〜ニ十八。秘め事は男女問わずあるんです。明かす事だけが全てじゃないよ。お墓に持っていく事も決めてる。そんなに多くの事は誰も望まない。望むという事がどれほどの価値を持つのか?僕には答えがある。誰にも教えないだけだよ。
月達の会話がこうこうと聞こえる頃に、星達はきらきら笑います。あの日僕は月達の影に見付けたのです。満ちる事も欠ける事もない。
とこしえの花。
あなたの影が美しいのは、僕が美しいと感じるからではなく、誰かにとっての光が昔は、陰であったから。輝きだす瞬間に出会えたら。何よりも幸せなのかもしれない。
カスピ海へ至る道
夢のなかに、わたしが現れたことは一度もない。夢のなかで、わたしはいつも傍観者である。そこでどのような出来事がくりひろげられていようとも、わたしはただ一個の視点として、それを見つめるだけだ。でも、わたしは無機質な機械ではない。不条理に怒り、陰惨な事態を悲しみ、歓喜を共有することができる。わたしは夢のひとびとの仲間である――一方的な関係において。
ひとびとはといえば、撮影者であるわたしに構わず、好き放題にどこへでも行く。空を飛び、深海を歩き、時空を飛び越えたりする。わたしもたやすく彼らについていく。夢のふしぎなちからを借りて、わたしたちの関係は保たれているのだったが、ちかごろ様子が変わった。ここ最近、同じ舞台の夢を見つづけている。まるで続き物のドラマのようだ。わたしは、彼らを置き去りにして、ひとりカスピ海へ向かっているのだった。
最初の日、うとうとと眠りに落ちたわたしは、例によって身体を失い、意識が徐々に徐々に立ちのぼってきて……やがてはしゃぎまわる彼らを捉えた。酒場みたいなところ、そのすさまじい盛り上がり! いま振り返ってみると、あの爆弾めかした笑い声、支離滅裂な会話の数々には、こちらをぞっとさせるものがある。しかし、そのときのわたしは、感情がいやに平板で、彼らに同調することもなければ、反発も覚えなかった。目の前の光景をひたすら見た。徹底的にというよりは、茫然とそうしていたと言ったほうが正しい気がする。あるいは、たしかにそのとおり、夢見心地で。時間が経ち、夢の住人たちも、机に突っ伏したり、床に転がったりして、すっかり寝入った。それを見届けると、わたしの視線はひとりでに行動をはじめ、鈍い動きで店の外に出て、星月夜の道を進みだした。《カスピ海へ向かっているのだ! この道の果てに、カスピ海がある!》
次の日も、その次の日も、そして昨日も、わたしはカスピ海へ向かって歩きつづけている。道のようすはわからない。月と、点々とちらばる星々は、わたしの行手を照らしこそすれ、あたりを明らかにはしてくれなかった。はるか遠くでちらりと見える光は、湖面から放たれているものなのだろうか? 日に日にそこまで近づいてきてはいるが、まだ先は長そうである。それにしても、なんという静寂。カスピ海へ向かっていることを察したあの奇妙な直覚を最後に、わたしの意識は沈みこみ、感情が死んだようになっている。視界だけが、任務でもこなしているみたいに、黙々と活動していた。わたしの夢からは、ついに誰もいなくなってしまったのだ。わたしは、おそらく生涯で一度も関係することがないであろうカスピ海について、すこし調べてみた。手近にあった百科事典を開く。そこには、油田地帯としてのカスピ海の写真があった。その写真からは、人間の姿も、世界最大級といわれる広大な水域も、あまり見えなかった。たぶん、今日の夢も、このつづきなのだろう。こうした種々の想念が、眠りに就くとともに消失し、目覚めるまでずっと、足音も立てず静かにカスピ海へ向かうのだ。もっとも、道の果てにあるのが本当にカスピ海なのか、わたしの本能以外には何の確証もない……住人たちもみんな置き去りにしてきた……
声
使われていないテニスコートは、吐瀉物と下痢便の様な汚泥とともに、何年もの堆積した落ち葉が敷き詰められ、私たちはそれを撤去するために荒い吐息と、鉛のような腰の痛みと、まとわりつく害虫に悩まされながら肉体労働に精を出していた。しきりに耳元で、狂ったバイクのアクセルの様にいやがらせの羽音を蹴散らす害虫に悪意はなく、神の声に従い飛んでいるに過ぎなかった。作業手袋と作業着の間の皮膚に吸血する虫たちの食餌痕の血液が皮膚に散らばっている。鉄分の混じった泥と落ち葉の黒く土化したものから発せられる特有の悪臭が、私たちを人間から獣へと生まれ変わらせ、ついには土とともにのたうち回る虫にまで失墜していた。しかし、私たちはすでに使われることのない、今後使われはずのない、テニスコートの声をずっとずっと聴いてきた。私たちが私たちのために施した、この鬼畜の作業の中でテニスコートは声を発していた。こそげ採った泥のあとを暑い日射と風が通り過ぎ、あたりは何事もなかったように平面をさらしていた。それが声だった、かつてテニスコートだったはずの平面の声だった。
私たちの声とテニスコートの声が、寂れた施設のなかで静かに交わっていた。
Dryad
自ら朽ちようとする意志に
用意していた毒舌の多くはその毒性を
ありふれたものに変えて沈む
赤紫の闇へ
疲弊したモチーフにスラップバックを
産まれたばかりの絵画に祝福を
「やーいやーい、にんちてきふきょうわー。
『やーいやーい、にんちてきふきょうわー。
「やーいやーい、にんちてきふきょうわー。
…
……そっかー。
ポンコツは俺/ボク/あたしのほうだったかー。
あっはっはーだ。
「で、ともかく最後まで付き合うけど、
危うく死にかねないプレイは別料金だからね?
/
「そう、延々と降ってくるのは貴方がたの不始末。
そしてあたしたちは、無遠慮に蔓延る
それらを、
消化しきれないまま延々と生を全うするのだと、
無言で拡散し続ける。
センセイたちの真顔が少しだけ崩れて
ものすごい勢いで顎を掴まれる
あたしたちは平然と分裂を繰り返し、
都合のいい真実で一斉に敵の呼吸を止める
/
鐘を13回打った彼女が
外套を翻してこちらにゆっくりと跳び降りてくる
「綺麗な、ブーツ、
「せめて声帯だけでもシャッフルできたらいいのにね。
技術ならあるのに、
「時空だけじゃ不足?手厳しいなぁ、
/
「早くしないと、
こいつも裸なのがバレちゃうって、
「それって致命傷かな?
朦朧とした意識で
枯木に繋がれたまま犯されたあたしは、
最後の抵抗で犬笛を吹く
時がこのまま凍りついてしまえばいい、と
/
「どうすれば上等の太鼓持ちになれるか、
せいぜい俺を見て学ぶんだな。
「心配すんな、
今に貴女の偽られた墓標だって
お仲間達の記憶から葬り去ってやる、
/
あぁ、おめでとう。
───そして遺された僕たち/あたしたちは、
次々に望まれざる鬼子を孕みました。
産んでは棄て 産んでは棄て
いつしかそれらは勝手に親の体積を
追い越していきました───。
同じ窓の下で
追憶を許せない放物線
二次は一次と非連続であると
幼い物体は抑制し長考する
交わらない四点を作り出すのに
曲線と人と同じに見る愚かさは
決して必要な情報ではなかった
軽蔑を自信と呼ぶべきであり
生者としての自信を持つべきだった
体積のない大きさを与えるべきだった
語り手は流れ行く者、一人
不自然は未来と同じ哀しみを感じ取る
死屍累々を好む人、人々、人
昨日に在らず
緑の中で一人を覚醒する
「青に生まれたかった」と
巧みではあると認めた天井
触れぬ脆さが魅了する
突き放された二人と一人と一人と一人
三角形の外接を描くのに丁度良い
書き出す条件は
三つ巴の矛盾を認め放たれる
拡張と縮小を同時に行う手先
二度とこんな憎しみを生まないでくれ
冬の大きさは存在した
大きな洞穴に、人は住む
Morning
一月
早朝7:00過ぎ
マンションの
消えた電灯の下
1階の廊下の角
一台の車椅子
太いコードを
差し込み
バッテリーを補充する
赤色ランプが点る
きみはまだ
布団の上
シーツを被る
ドアを開け
部屋の明かりをつけ
先輩とぼくが
挨拶の言葉を掛ける
こんもり盛り上がる山
ぐにゃぐにゃ
うごめく生き物
キッチンに立ち
フライパンを温め
卵を落とす頃
部屋の中から騒がしい
人の声が広がってくる
頭だけをシーツから出し
きみはテレビに向かい
M-1グランプリ
を見ながらゲラゲラ
フライパンを持ち上げ
先輩が焼いて見せる
卵がじりじり
少しづつ朝が
目覚めはじめてくる
・
カーテンを閉ざした部屋の
半開きの扉が開く
キッチンを這って
バスルームへきみは向かう
裸ん坊のきみの背に
シャワー水が打たれ
流れ
皿の上に
リクエストの
朝食があり
部屋に戻った
きみは
大きな青い桶
に尻を入れて
閉ざされた扉の向こうで
声もなくただ
しばらくして
先輩とぼくが桶を持ち
便所に入る
木のヘラを使い
うんちを掬い
便器に落とす
先輩は掬ったうんちを
便器に擦り続ける
ぼくがヘラで掬いながら
一気に落とす
オー グッドアイデア!と
先輩が
静かに囁く
・
仰向けになったままの
きみに下着を着せて
ジーンズを履かせ
シャツを通し
靴下を履かせる
床の上でテレビを見る
きみと
うんちと
ゲラゲラ
を余所に仕上げに入る
オーブンを開け
トーストを入れ
ポットから湯を落とし
コーヒーを淹れる
テーブルの上に
三つのカップが並び
焼き上がる
キッチンから運ばれた
目玉焼きを乗せる
ぎこちない若い手を
ゆっくり運びきみは食べる
先輩とぼくと
カップを手にテレビを見る
カリカリと砕かれていく
トースト
カーテンも
先輩も
笑う
・
ショルダーバッグを掛け
テレビを消し
明かりを消し
部屋を出る
車椅子を運転し
スロープを下り
国道沿いの歩道を
北に進む
角の郵便局で
光熱費の支払いを済ませ
駅に向かう
きみのバンドの話
カノジョの話
横断歩道を
渡る
陽光の中
たどり着いた
地下鉄の
エレベーターに乗り
電車に乗り
仲間たちの待つ
場所へと
・
優勝は
笑い飯
賞金は
一千万
僕の少年
薄くひらかれた口許から 吐息を漏らしながら声帯を震わす
まだ 生まれたての皮膚についたりんぷんを振りまくように
僕の唇はかすかに動き なめらかに笑った
足裏をなぞる砂粒と土の湿度が おどけた動きをリズミカルに舞い上がらせ
僕はその 遊びの中で
くるくる回りながら気持ちを高揚させていた
土埃の粒子が何かのエネルギーに吸着され 一度残酷に静止した
世界はやはり 僕の回りで凍り始める
--あなたから発せられたひとつの言葉--
静かに細胞は壁を破砕し 平らに横たわっている
ジャングルジムの鉄の曲線に 僕の眼球は一瞬凍りつき
やがて ぐらりとそのまま土の上に落下した
僕の中の仔虫たちは惨殺された
緑の林縁はオブラートに包まれ 目はしなだれた
複眼に覆われた ぼんやりとした視界があった
土を丸く盛り 仔虫をひとつづつ埋葬し目を綴じた
あの日 僕の中の少年は
--あなたから発せられたひとつの言葉--
によって撃墜された
*
たおやかに流れる豊年の祝詞の声
村々にたなびく 刈り取りの籾の焼けるにおい
はるか昔の 少年は
薄く染められた秋の気配に
どこかの葉先の水滴に 映し出されている
僕の中の少年はまだ死んでいるけれど
少しづつ僕は
ながい呪縛から抜け出そうとしている
ゆるやかな階段を降りるために
前から二番目、窓から二番目
緩い空洞が増幅させる
伝達の補助など高尚な事象は
黒板一つで十分だ
立ち上がる煙が空を纏う
立ち上がる倒木の枝葉を刈る
目は無くなり、ただ音がする
手は忘れていく、ただ道となる
決壊する己の稚拙
見飽くことなく垂れ流れる鉄
数学者は問いを放つ
iを愛する意味は何かと
空を嫌う舟人達に解は無く
一陣の雷雨が停滞する
沈むべきは雨滴の義務のみ
無限を有限に変えるべき
平面に存在しないことは赦してくれ
勘違いをしているので訂正
全ては肯定であり、権利の話
気に病むことはない
千切れた才能を一人で食べている
頭のない獣
銃弾は撃鉄を起こす
盲目
おれは水溶性だから
泣いている人とか、
こういう灰色の天気が
嫌いだ、
カゲロウみたいに
目の前がふらふら歪んで、
傘の無い人もろとも
いきなり消えてしまうのは
怖いな、
”匂う”
”何の匂い?”
”雨の匂い、
いや、鉄の匂いがする”
鉄の匂いがするのは、
電線は目の前を切り落とす
空間兵器だから、
ご覧、もうすぐ
暖かい夕焼けが来て、
朝はしっかりしてたはずの
おれの目もやすらかに
衰えていくから、
盲目のきみをちょっと
うらやましい、と思った
蛙男。
まるで痴呆のように
大口あけて天を見上げる男
できうる限り舌をのばして待っている
いつの日か
その舌の上に蝿がとまるのを
(とまればどうすんの)
蛙のように巻き取って食うんだ
(と)
その男
舌が乾いては引っ込め
喉をゴロゴロ鳴らす
そうして、しばしば
オエー、オエー
と言っては
痰を飲み込む
(ほんと、いくら見ても厭きないやつ)
訊けば、その男
蛙がごときものにできて
人間たるわしにできんことはなかろう
(とか)
言って
じっと待つのであった
(根性あるだろう、こいつ)
ぼくはそんな友だちをもってうれしい
ほんとにうれしい
フレアスタック
どんよりと低い空に
ふうっ、と 溜息をもらし
雨を吸った暗いモルタルの壁は
重々しい匂いを滲ませて湿ったまま
窓枠に収められた日々を嘲い
片付いた雑事に安堵を覚えると
たちまち、身体は薔薇色に火照りだし
部屋に射し込む雨上がりの陽光
踵の高いパンプスと、青い薄手のコート
唇には、唇から始まる、真っ赤な嘘を塗って
すこし派手目の恰好で家を飛び出せば、
他愛ない日常は 音もなく崩れ去る
工場地帯のフレアスタックと、不快な騒音、
浅はかな風は 孤独に怯る町を越えて、
吹き払われる絆に舞い上がる火炎、
川縁の雑草にからみつく帯状のプラスティック
白いポリエチレン袋も、そこかしこに
幸福を装った悪夢のなかで人々は集い、
グラスを手に手に満面の笑みで祝福を捧げ
忘れられた儀式のうちに見送られる
――死が、二人を別つまで‥‥
やがて歓声が消えた後の残された闇
激しい、歓びの終わりに
打ち棄てられた影と影が揺らめく
紙屑や投棄物の散らばる
ひとり、逢瀬の小径
そして人生はつづく
夜が僕を覆い隠す
酒が僕を覆い隠すときのように
海が絶え間ない波音で
世界の言葉を覆い隠している
残りは僕の中にある言葉だけ
僕は歩きながら
海と浜辺の境界線を探していた
波は若くて、
だから海はまだずっと遠かった
白く並ぶ歯のイメージが不意に浮かんだ
「波が砂を噛む」
という表現が
慣用句のように
僕の脳裏をよぎった
*
風呂からあがったとき
「夏だ」と思った
春だ、を通り越し、
体感が冬から夏に飛んだ
ガラスにぶつかる雀のように、
自分の中の二元論にぶつかった
春の心を理解したと思ったことは
この人生でまだいちどもない
秋や冬は僕の季節だが、
春や夏は僕の季節ではないようだ
*
モーツァルトも
ベートーヴェンも
シューベルトも
作曲家は
年を経るごとに良くなっていく
だが映画監督には
駄目になっていく人も多い
このあたりで止めておけばいいのに、
という表現の限界を
年老いた監督のいくらかは、
あえてのように踏み外すようになる
あたかも相対的な良し悪しなんてものには、
もう拘りたくないという
幼い主張を示すかのように
僕が仏像のように
絶対的に存在していたなら、
浮藻のように揺れ動く人々を見て
そんなところにいるな、
こっちへこいと言うはずだと思う
だが僕自身が相対的な存在として、
相対的な人々の中で何も言えないでいる
*
寺山修司は処女作となった
短編映画「猫学」で
猫を屋上から投げ、
悶え死ぬ姿を撮影した
無差別殺人と同じように、
猫を「猫」としか見なさないところで起こる殺害では、
罪人としての彼の姿が浮かび上がるだけだ
そして彼自身がおそらく理解していたように、
その姿は表現に値しないような、
つまらない一個人のものに過ぎないんだ
*
人生とは不可能性のことだ
可能性のことではない
生きるということは
つまらない一個人として生きるということだ
創作の中で暮らすように
どんどん良くなっていくことではない
陽の光も、月の光も、雨も、
この世に存在するものは、
愛する、あるいは愛される、
あるいは、静かに落ちていく
*
取り替えの効くものとの関係だから
男性と女性との関係を代表とする
性愛というものは相対的なものだといえる
反対に、
もし取り替えの効かないものとの関係があるならば
それはすべて愛の関係と呼ぶべきものだ
*
そして
絶対性というもの、
愛というものは、
性愛よりも身近な存在だ
現実における絶対性とは、
避けることが不可能であるとか、
そう収まらねばならないという
必然性のことだから
リアルシンボル
小心翼翼たる私であった
誰も気にしていないことを気にしていた
皆が気にしていたことに気づいていなかった
相互に破壊
ラッキークラックいただいて
こん棒一本振り回した
マリア様
私にキレないで
あの子に断られたんです
祭りに参加
疑い深げに突き付けられた45口径
布団をたたんだ
きちんとした生活を送った
有名な恋人を手に入れ
美しい農夫となった
闇の中に足を踏み入れた
ホタル飛ぶ
虫が飛ぶ
星が霞んでみえる
未来に限界を見ない
孤独に放射されるスペクトル
そっと冷静に
おいしいミカンを食べつつ
クールジャパンを咀嚼した
消えそうな心を完全に論破した
この世の民度が改善された
夢の歴史に叩き割られたガラスの破片が降りかかった
その中で
呵呵大笑した
はいわかりました
先生の正しくないところに服従いたしません
もう大きくなりましたので
かかってきてください
宇宙の膨張と同じくらいに伸び広がった
心のむなしさ
担保も拡充も補填も色を失った
誰かに嫌われる血の色の言葉を
口にした
その後で
自力で答えを見つけた
ホタルはもう光っていない
全ての人間が分かり合えると思った
悪意の伝播
ヒト、待ち
プラットフォームで
ヒト、押されて、待ち
自分、つぐねど、
ヒト、押し、ヒト、待ち
自分、つぐねど、
ヒト、ヒト、押し、待ち
いいぁげん
悪くない、誰、ひと
悪くない、おのっれが悪い
おのっれ
が悪い。ひとひとまちまち
おのれっが悪い。
プラットフォームにいる俺が悪い
人が悪い、俺が悪い
お前だお前、
俺が悪いから
割ってやる
倒れゆく馬をみた
あれはいつだったか
陽炎にゆれながら倒れゆく馬をみた
北の牧場をさまよったときか
競馬場のターフであったかもしれない
或いは夢か、過労死の報を聞いた
快晴の街角であったかもしれない
或いはあの川面にぶつかったときか
なぜ、おまえが倒れたか
なぜ、おまえが息絶える
その眼に何がうつろうか
とおくとおくたくさんの
蹄の音が血をゆらして
あぁ!
もう狂い馬だ、狂い、馬だ
尻に火をつけられて、幸運の前髪を
掴め!と急かされる、皆、狂い馬だ
産めよ、増やせよ、やめてくれ
狂い馬!来るいまだ、走れっ!
鞭がはいる、無知なのがいる
焼き尽くされて、いく、理想とか
正しさ、なんて掴めないものに
尻に火をつけられる毎日だ
川岸でずぶ濡れの身体を抱いて
なぜ、おまえが倒れたか
なぜ、おまえが息絶える
その眼に何がうつろうか
なぜ、なぜ、なぜ、と
もう聞かないでくれ
陽炎のなかに
おまえたちは歩み去る
走る
ことも
働かされる
ことも
なく
もう、なぜ、などと
聞くものがいないところへ
たおれゆく
馬を
うつくしいうまをみた
無題
人間の肌は黒糖菓子で、電車の中で足を組まれている皺だらけの捻れたスーツから臭いの汗が垂れる。紙コップの中身を掛けられたローファーは、切れそうな車内の蛍光灯へ、短い唾を吹き込む。安全靴の先から一匹の蝿が沸き立つ。
背を、少しだけ曲げさせられた、つり革の上に、薄く、預けられた通勤カバンの隙間から、これからの未来について、本が腕を剥ごうと企む。ぶら下がる半透明な爪から、電子タバコの軽い、メンソールが騒ぐ。唇を、薄く、摩る、右肘から床下へ、入水する硬貨。交差する蝉時雨、という耳鳴り。
這いずる黒蜥蜴。老婆は、伸ばしていたとりかえばや物語を包むが、煤けた虫眼鏡を駅舎に置き忘れてしまう。車窓を少しだけ開くと愛染のストールが煤煙の海で踊り狂っていた。浜辺に立つ、形の顔をした残丘は、波を模倣して人のすまない部屋の中を海鳥を買う為に必要な呼び名で覆い尽くしてしまう。水平線の先に俊立する雷鳴は天を掴んだような覚えをした。
耳元で震える、アコーディオンの蛇腹を脇のソファーに蹴り置き、電池の水が噴き出したリモコンで、ふるえながら白鳥を撃ち殺してしまった、という枯れ貯め池をタブレットで頬張る、ワードワックスで短髪を刻刻に立てた男。私は熊が好きだ。トートバッグから、威勢がする。靴紐がほどけ始める。徐々に埋まり行く空白の席に置かれた、温習みかん。矍鑠な口紅が歌い始める。ここは、ここは、ここの穴から、広がったサンダルは、穴の抜けた三角は、どこまでもどこまでも、丸く尖って、血のついたトマトのようにみえなくて、疲れている。もうじき降りなくてはいけないのに。ホームと右足の隙間に落ちてしまった。
ラテンアメリカ
ラテンアメリカを全貌すれば
羊の放課後と裸体の抑制
階段になって行く孫の国は
口から竹の生えた人で統治され
目利きたちの揺れが伝わって来る
風が強くて家に帰る
家に帰れば真実が語りかける
フェアリーランドに写る
ラテンアメリカの全貌に含まれる
いくらかの真実
椅子が照り付けられて
僅かな水分さえ吸って行く太陽に
私は憧れて
捨てられない自我が土に染み込んで行く
大地は地母神が司る
ラテンアメリカに羊の群れ
太陽が黄色く微笑む
私は今を溶解させて行く
神の恩寵についての論文の執筆の義務が
自分に下って来たのを感じ始めていた
sea and sky knife exit
深い 深い 海に潜った 私は
持てる翼を用い
鳥の眼 で 詮索する
(私は神様を信じない)
あぶく 白く 醜い 美しい 光を失った 罪無き 罪そのものである 生物達
(奇妙に枝分かれしていった はらからよ)
黄色い嘴に牙を 胸毛の中に隠した爪を 意味を喪失するまで 記憶を喪失するまで 壊し尽くせ
尖らせた私を
深い海に
放て
はらからよ 私達を捉える 言葉を むげんに眠る人々を 突き刺す 言葉 を
はらからよ 私達の楽園は何処に あったのか
叫べ 歌え
血が
あぶく
泡 と ナルマデ 君の真実を 私の嘘を 君の 嘘 を 私の 真実を 刺して
舌を用いて
私は叫ばない
私は呼ばない
(私は叫ぶ 深く 深く)
(呼んでる? 深く 深く)
はらからよ
(翼をはためかせ)
アナタタチヨ
(水面を叩き)
私は
(言葉を)
ふいに浮上する
水上へ
言葉無き
神無き
光の飛沫が言葉として千切れる世界へ
鱗を光に曝せ
翼を光に曝せ
殺せ お前の命だよ
歌え お前の命だよ
私は踊る
神を踏みつけて
判るか?
私は踊る
運命を踏みつけて
さぁ、睨めつけるknifeのメ
光を孕んで
踊ろうぜ。
がらくたを頂いた
はらからタチよ
歌え 踊れ
貫け
血を
綺麗に飲み下してあげるから
綺麗に刺してあげるから。
再見
昨日との境界線を引かず風邪と辞書ばかり引きながら
頭から腐る魚を尻目に尻を腐らせて生活している
たくさんの人に貼られた詭弁をペリペリと剥がしながら
エイリアンが穏やかな陽光の一粒ずつとすれ違っていく
今朝聞こえてたのは雨音じゃなかった
そんなことに今さら気づきながら
わきの下を湿らすトラウマをタオルで拭う
母国語のポップスで泣く才能はもう
とうに失くしてしまった
ガムを口移しして君のお尻を感じた記憶は
明後日の方向へ羽ばたいてしまった
本当は私は 明るく楽しく
テレビみながら何気なくアイス食べたりしたかった
残響だけを脳に残して
雨音と間違えられた拍手を向こうにして
静かに疲れたままで線路へと歩いている
花の眠さ
ちらちらと鱗粉がきらめき
花々は眠ってる
思い出のようにかすむ広場を
立入禁止の柵が囲ってた
川底に沈んだ塗絵は
いっさいの輪郭を失い
溶けあった幻のような色味で
でたらめな水中庭園をしあげてる
奇妙な舞台を見たことがある
幕が上がり照明が降ってきて数十分
役者ひとり出てこなければ音楽も鳴らない
たゆたう、という言葉を初めて聞いたとき
歌う意味だと思った
陽だまりの下
花は誤読を誘った