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黒髪

選出作品 (投稿日時順 / 全23作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


北極

  黒髪

思い通りにならないことはたくさんあった
近所に住んでいた女の子に嫌われて、一人で遊ぶしかなかった
お弁当箱におにぎりを詰めて、小さな遠足をしたり
一人で石を壊して遊んでいた幼少期
「ねえ、ぼく、いつまでこうしているのかな」
年齢相応に甘えた僕はそんな疑問を口にした
お母さんがいなかったから北極のペンギンに聞いたけど、わからない
ペンギンはよちよちと歩いた
寝起きにぐずぐずしていたある日曜日の教会の鐘の音が美しく思われた
靴を履いて礼拝に出かけよう
聖書朗読の間に着いて、結んで、開いて、神様一緒に踊ろう
と問いかけても
天使は絵の中で微笑んでいるだけです
これらの日々の幸福の仕掛けを……わからないまま、僕は大きくなった
次々と崩れていく橋桁、心の支え
崩壊していく心、ひとりぼっちの
ああ、静かなこころよ、天使様
ある女の子に絶望的に恋した
その子の夢を見ていた
僕は手術室の助手
カンシ、開腹
成功だった、よかった
子供の頃の思い出の中のように、やはり何かがある
一度きりの全身麻酔のおかげで、炎に包まれてしまった僕のカラダはそれほど苦痛を生まなかった
プスプスと黒焦げになった僕は、ひどい臭いに包まれて
煙は廊下に充満した
やってきた親は泣いた
普通の暮らしを望んでいたということが頭をめぐる、僕はもう喋れない
思い出されることばかり、昨日の星屑に、なりたいと思ったのは、星々の輝きが綺麗で憧れたから
大人になって初めて星を美しいと思った、それは童心の思い出を呼び寄せた
青い空に最後の涙を流した
オーロラも今七色に輝いて
ペンギンの親子が静かに見やっている
確かに僕は聞いたのだ遠くで足音がシャリシャリいうのを
この世は夢なんかじゃないのさ
遠い、遠い夢さ


  黒髪

石ころ形の悲しみを硫酸に溶かしてあぶくにしようぜ
悲しみを減らしたい心という、他者のメロディーを奏でてさ
石ころに語らせて耳をじっとすますんだ

津波が海の中に引き込んだ
魚は喋らなくても視線をそそいでいるだろ
モーターサイクルボーイよ、つんざくエンジンで、おびえをかき消して
饒舌な音を、あたりにこだまさせて

歳月が
重いスポンジケーキみたいな物だったら、誰も持てない
心配の多い心はわからない
化学プラントを壊して爆発を起こすみたいな破壊衝動、注目されるほど痛い

僕の口を被っていた黒いカーテンは、今記憶だけを覆う
コントロールのきかないインビジブルの
色をみるために切り裂く、ナイフで
パックリと口を開いた記憶の中に昨日の血がつく

悲しみは水よりも軽い
見てみぬふりと黒メガネで覆われてきた物事の意味を、縫い付けるための糸が、繭からつむぎ出されている
空に上って空気に紛れるまでに悲しみが溶かし出されたら
ああ神様のところに届いて
叩きつけるような雨が人を犯す
同じことが繰り返される
雨上がりの道路の輝きや架かる虹は美しい逆理
少し空気の成分が変わったのは
魚の減少と関係がある
海の底を見通せる魚眼は
認識の甘さに警告の光を発する
最後の守備兵である魚達が泡を吐いている


俺の静謐な列車

  黒髪

俺はつらいつらいとつぶやいた
衝動に駆られて玄関のドアをガチャリと開け
合成皮革の靴を履き駆けだした
あたりでは草いきれの波がさざめく
汗や涙が流れて落ちる
俺は想い出す
子供の頃にさえ青空を見上げたことも
星空を眺めたこともなかった
まるで地面を這いまわる一匹のトカゲのように、眠たげな目を持っていたのだが
いまは、走っていると周りを飛び去っていく緑の中のまるで異物のように、反逆者だ
要するに人間とは誰も反逆者だ
連帯することはなく孤独な、頭の中に閉じこもった一人だ
どんな小さな微笑みも影を作らずにはいない
同じようにどんな小さな思考も裏の副作用を持たずにはいない
影の固まりが、不安を締め上げる
誰がストーリーを知っているのか
一本のスジの通ったヒストリーは
めちゃくちゃに裁断されてピースも失われている
もう一生混乱の泡立ちの中でもがくことを決められているのか、この世は地獄じゃないのに
どうしたら分かるっていうのか俺の頭のなかを
俺の夢遊病のような有様
別人格を与えられたクローン
だから先回りをして俺を押しとどめようとしても無駄だ
俺は計画をやり遂げるのだ、たとえ時間軸が撹乱されたテーブルであっても
その拘泥だけは立派に持っているのだ
だれだってそれにしがみつく
積雪のように崩れやすい記憶
明日のようにかぼそく儚い記憶
俺は忘れっぽいぜ
そう一本の川は海へと続いている
そして一途な想いは夢の中へ忍び込むことになると知っている
知らなかったのはこの日がどこへ消えて行くかということだ
初めて眺めるような雲に行方を聞くことも
空が切れる場所を覗き見ることもできない
それらの物語はみんな「自由」という文字の中に収納される
収納容器の自由というお笑いぐさ
その空虚さに耐えられる人などいやしない
だから多くの赤色が筋を作る
この夕日を見つめたくて
開放の時の声を聞くだろう
つらい思いを誰かに打ち明けるだろう
靴に空いた穴も気にしないで
心に空いた穴も気にしないで
風が吹く
風が
あの時の青い夏の日の残照を想い出す
みかんの果実が思い出の中から浮かび上がってくる
沈黙が思い出と調和して
何かの形を作り上げる
昨日とは何か
明日がくるときをいつまで待てばいいのか
人気のない駅で列車を見つめてる
静謐な車輪の、鉄さびに、今がわかった
その時構内アナウンスが流れた


変わりたい

  黒髪

変えたい変えたい人を変えたい
大事な人も大してそうじゃない人もみんな変えたい
必要なら呼んでくれ
その声を聞き逃さない
共に生きているという縁をつながりを
僕の狂った信念さ

変わりたい変わりたい自分が変わりたい
嘘と偏屈で自由にならない
気持ちを残しておざなりの
考えのリズムと思考のすきま
僕の狂った信念さ
そうさ執着してるのさ

もしかしたら人は人じゃなく
全て悪いプログラムなんじゃないかしら
毒を飲んで死なないように
いつも誰かを助けてる
変えたい変わりたい
一生かけて変えたい変わりたい

憎まない憎まない過去を未来を憎まない
取り合いも競争もあるが
差別をされた不幸を見て
自分じゃないと安堵はしない
特に美しいものや普通なもの
どっちの肩を持とうかな
どっちか持たなきゃいけないと僕は思ってしまうのかな

思考においては我を忘れる
そのように僕は道から外れた
コロコロ転がった真珠を僕は追いかけた
多くのヒーローが伝えたかったこと
泣かないヒーローが
笑顔を忘れないヒーローが
君はまだ午後のお昼寝中
どんな悪夢も大したことはないんだ
一人しかいなけりゃ心から笑えないだろ
子どもたちは独りぼっちな自分を
夕焼雲に投射しながら
明日また朝を迎えるんだ

体も頭も調子はずれ
愛も余裕もない
末期のセリフとはするまいぞ
まだわが望みを消すまいぞ
とばすシャボン玉
人は変わる
風に乗って飛んでいけ
小さいの大きいの
閉じ込められている愛を
過去さえ失いかけた
夢の中で許されない者
誰か救ってください
叫びかける相手もない閉じ込められた心の希望を想って
宇宙の姿にも
いつもの夜空にも
愛はあふれそうだ
光を与えてくれる人の数は
かぞえきれない


夜伝わる音

  黒髪

聞こえる、闇の中、列車の音が強く。下り。いくつの駅があったのだっけ。
子供、学生、おばさん。
強いシュートを蹴る方法、風邪の養生は、余裕のない生活から抜け出すためには。
それらいろんな答え。
列車の後部にはたくさん物資を入れたコンテナが運ばれているだろう。
中身はなんなのであろうか。ごーんごーんと夢を運ぶかのような想像することをする。
音はすぐ遠ざかっていった。どこでも光を照らしながら音を立てるのだ。

猫の頭部の光る眼。
夜を越えたい、そうすれば諦めなくてすむだろう。
風がなる音に、不安と期待の入り混じった感情が喚起された。
夜に花びらは散っている、そっと地面に落ちていっている。
幾枚も幾枚も、ふあっと香りいっぱいに。天国のような。
それら人知れず落ちるものと、自分の境遇を重ね合わせ、
その時その場所なのだ、私が全精神を震わせても助けに行くべきなのは。
知らないことを知らないと言い、知っていることを知っていると言うことの、交わることない思考のラインを、
もしかしたら、その行為で、よぎることができ、レールの分岐を動かすかもしれない。
知らないことを知っていると言い、知っていることを知らないと言う。
本線から外れていくレールに、突き進むことだけが与えられる。
嘘と吝嗇が闇を生み、だれも望まないところへも道が続いていることが、とてもとても恥ずかしい。
涙が出そうになった。考えられない愚かさ。誰も救わない労働。
それは、おそらく、日常ならぬ道化の行為であるせいで、その結果も、はかばかしくはならないのである。
なぜそれを考えられるのか、例えば嘘は方便であることもある。しかし、独りぼっちでしゃべることはできず、
ただ慣性力のままに、間違った道を行っているだけだったのである。
散る花を救いたい、と、物事を知らない人間には感情的理由しか見つけられないのであって。
その想像が縁取られた場面となる。孤独な遊戯に答えを見つけようもなく、狂う、心が詰まり。
ぱあっと開いた笑顔が、すべてを許すように、明かりの中に見える。光に錯綜する幻視。
それは、原理的な……。
美しい蜘蛛の巣が張られるべき朝を迎えるために眠ろう。
明日は今日よりもよくなるはずだ。
賢い人間はきっと花の意味をなくすようなことはあるまい。
列車に乗りどこかへ行きたいのだ。
そして最後には、駅に降り立ち穏やかな風を感じられるところで自分の愚かさを恥じ、
またレールの先のほうの彼方へ、消えるところを確かめよう。
感情的な静けさの中で。
やっと得た平和の、閉ざされた空間の中で。
歪んだ夜にふさわしいヒキガエルの王となりたいと思いながら、田んぼの中で立ち尽くしているだろう。
心をかき乱す旋律で全てを燃えたたせる、指揮をとるために。
よこしまな王の偽に歪んだ心こそが開くことのない扉の鍵となるのだ。扉はまだここにある。
少年少女に刀で切りつけられてボロボロになった扉が、まだ誰も見たことがない世界とをつないでいる。
まぶしい光が生まれた予感がする。まだ暗いのであろうかと、扉をくぐった私は今まさに、
目を開き見ようとしている。
悪の全一者は、光線に包まれていなければならない。
レールの上しか行くことのできない不自由なものが、善の全一者となりえる。
服に付着していた花びらが一枚、ひらりと地面に落ちた。
どうやら地面はあるようだと、希望を強くさせられるような靴の下の感触に、希望の光が頭の中を渦巻き、
良き予感が体中を走った。どこまでも静まった夜と、なにがしかの気配のする朝とを、
繰り返してきた過去が、きっと形式を外れ、王冠の主にふさわしいカーニバルを与えられるかのような、
狂騒の熱の中へ、溶けていく。


声と笑顔を失った人たちの未来へ

  黒髪

星の降る夜を泣く
果てを見たいのにどこへも行けない
宇宙をめくって君を包むこともできるというのに
一生かけても追いやれない悲しみをどこかへ捨てるために
僕の生まれ故郷へ君を招待しましょう
汗に滲んだキスの虹
夜配置
宝石を探そう
スコップを使って
空気の流れが変わる
饒舌が生まれる
大事な素朴を沢山つくりたい
藁がブクブク泡を吐いた
流れが示す通りにどこまででも行く
教えてほしい未来永劫の幸せを
雨よ降れ
そのまま
傘をさし雨合羽を着て
どこにもない所にいる
どこにでもここがある
病棟には踊っている人がいた
さなぎの殻に用がない人だ
大事なものが何か探す力を奪われた
過去を捨てることはとても難しい
雲は歌う
悲しい過去の歌
輝かしい今の詩吟
いつまでも続く未来の唱歌
せっかくだから
闇の中へいく
狂った蝶を一匹従えて
君を想えば怖くない
一人が孤独じゃない
嘘なきをやめよう
タバコもやめた


A tree

  黒髪

ああ、木だね。高くない低くない。僕は背くらべ、君といっしょに。立ってるんだね何にも支えられず。
高いのも幅が広いのも、みんな美しいなあ。
葉をいっぱい茂らせて、あなたは緑色の夢を見るの?それとも茶色の?

童話に出てきた木はいつも、鳥を包み込んで、人を包み込んで、愛を包み込んでいた。
木漏れ日は夏の日よりも長かった。火はずっとずっと、空に放射される神様の手からこぼれた意志の対象を、にらんでいたんだろう。
僕が立たず竦まず、煙の知らせるものを、大きいのか小さいのかと、推測することで、凍り付かない時の対象のいましめを、ふりほどいた。
彼らは大きすぎたらいけなかったんだ、きっと存在から気づかれないだろうから。
つまり存在とは、知ることではなく、知られることでもなく──、気づく能力が、結晶して、方法をふりほどいたときの夢が、
可能的に存在すると言われる時の、影だけから知られる、小さな雰囲気なんだ。
存在に対して可能になるのは、その本質的な言葉を、記すことで、関わり合いが複雑になり、抽出された質量が熱くなって、
速度を増していくことで安心がもたらされるということ、速度に怯えず、常にブレーキが有効に働くことを織り込み済み
であることが、知られることだけに重要な話となって、人を救うということなんだ。
あなたは、僕をその下で、安らげている。僕はいつかしっかりと立って君と同じになるよ。
闇の中大きすぎるダイヤモンドはない、小さなカマキリも鎌をふりあげて、
川より遠くないよ近くないよ、と僕が話す相手もどこにもいないけど、その目の中にはあらゆる個別の事が、ひらめくように、
存在していた、僕はそれを知っていたのに考えなかった。
あったのだ、いつまでも続く時が、渦巻く星たちの力が添えられているから、孤独と競争の最後の結果は、つねにロマンチックだ。
無限に裏拍を数えていくことは、年代記を記すとき必要なルールだ。
答えよ全てを知る者よ。僕の方向を指し示せ、風の中に吹きさらされるこの地において。
どこまでも広がる原野の中で、立ちあがって惑いながらいる僕は、両手を握っているぞ。
手を開けばこの硬貨が、ゆっくりと回転しながら地に落ちて、柔らかく小さな音を立てるだろう。それを合図と考えてもよいか。

地球上はきっと、多くの樹木で彩られる。まだ十分に君たちのことは、理解されてはいない。
その、存在が、地球上の世界の多くの宿泊者を告発する。黙って、言葉なく。
お願いだ、僕を守っていつまでもいつまでも。56憶7千万年後にあなたが僕にキスする人として生まれてくるから、それまでずっと。
もしその時が近づいてきているなら、風をまとって時空を抜ける鏡の、割れた表面にはI love youの字が、サインペンで描かれていると、
教えてくれるのが、合言葉だよね。帰納的にしか知りえないことを、証明したことを、僕はしてきたことのなかで、一番誇りに思っているんだ。
生の裏側でなるシンバルに、言葉を失くした僕は包まれている。迷路を抜けたいなら、気を弱くしちゃだめだ。常に最高の時だと、
思い作り上げるんだ。架空の指切りは、忘れないでいるよ。妄想を現実として生きたのだとしても、心が知っているだけの全ての君を、
僕は受け入れ、許しているんだ。僕が許せないのは、僕が存在しているということだけなんだ。そうだ結局は良心の問題だけだ。
新しい考え方を作り上げたとき、妄想が現実と同じ重みで存在しているのだと、飲み物と一緒に考えて、飛び上がって光に指さして
触れる僕は、あらゆるものより幸福であると信じられるのじゃないか。点々と続く足跡をたどる僕の、振り上げた足に、全ての意識を
預けよう。最初と最後を一致させれば、一つの曲が円環を閉じるのだ。リズムが繰り返しを原理とすることを超える曲を、生み出すことが、
リズム的なリズムを構築するための足掛かりになるだろう。一つも一致しないリズムでできた曲と、一音というリズム出来た曲には、
違いがないだろうと思えるのだから。そのように同一の原理が個別原理と一致して描かれるなら、あらゆる存在は、融合して、
自分と人との序列を気にすることなく、安らかな日々が到来するのだと夢見ることを許される人に僕はなるだろう。


眠りの程度

  黒髪

草を揺らした風が私の頬もなでていった
大きい使命感で高揚してる
理想は私にとって心地よく
雄大な流れがキラキラ光っていた
顔をうつむかせ影の中を凝視していると
何百体もの笑う幽霊が出現した
口を開け暗闇を見せていた

全てのものにはおのおのなりの中心がある
闘うことを忘れてしまっても軍鶏はやはり荒々しい
宇宙船の腹に映る己の顔
どこへ行くのだろうかと考えているようであった
私も孤独だった
遠く広がる海を越えるため船は出港に控え
光と影を交換する使節が通っているが
私の心も影の国の領土だった
光の中から来たらしい人たちが話す明るい言葉で
燭台に火を灯されたように感じる

眠れない
眠りがなく光が溢れ朦朧として
地は叩かれて砕かれる
光は目覚めを待っている
幾時間もの間差し込んできていたのである
光が見える
音が降ってくる
音符の雨が地面を叩いた
割れた破片を私の耳に注いだら
砕ける音は優しく
雨の中の光
音と分離した光が見える
これは何だ
何かがつるされたロープを引っ張ってみたが
引っ張ってみることはできるけど
持ち上げられそうにはない
よほど重い過去が結晶しているのだ

耳を引っ張られて光の中に突き落とされた
眠りのなんと心地よかったことか
繭の中でいつまでも安心していられたら良かったのに

力がわき意識もはっきりとしてる
周りに気配を感じて
私は考える
今日から振り返り昨日の意味や明日の展望
指し示される誤った場所について

コンパスを見て強く念じた
自分で選び自分で変えていかねばならぬのだ


緑色の蠍

  黒髪

緑色の蠍がはさみをちょきちょきと動かしている
どこへ行くのかな
何を考えているのだろう

蠍はきっと音に耳を傾けているのかもしれない
蠍にだけ聞こえる特別な太鼓の音に
そして消えていくのだろう
全ての命がしたがう法則のとおり

後悔は何にだってあるから
緑の苔もむせかえるように
蠍は私の知らないところへ行く
蠍は私の知らないところへ行く

声が途切れる所、川の中へ落ち流れていく
緑色の蠍
私だけに聞こえない太鼓
お祭りの行列の最後尾から
声に合わせて叩き続けた
忘れてしまったのか
叩けなかったのか
もう聞くことができないんだあの太鼓の音は
もう二度と
闇夜の中に聞こえるのは
透明な空中にピンで張り付けられた音だけ
虫の鳴く音だけ
さらさらと花粉がなる音だけ

フラリフラリとさせるような
はさみにはさまれた私の克明な意志
見つけたよ強さと優しさを
ありがとう私の緑色の蠍
またねいつでも会えるね
死を乗り越える試練課せられた夜の使者
永遠に守る物をとうとう見つけられたんだね


ラインが引かれると希望が生まれ

  黒髪

一本のラインを強く放つなら
拡声器を通せ
ひだのあるスカートを履いた
君の声が歌うのは喫水線の上

思い出すこと
ドキドキが嬉しいって言って走っていく
きっと咲いているさ
干からびた昨日の景色の中なら

伸びやかな声
滅びる時は共に連れ添って
有名になれなかったら訪問出来ないのかな
言葉の力で奏でられた夢のまるで花のような甘い色
私と君には繋がったところがあまりなく
神様が唯一のルールだ
仮想の敵と仮想の味方で戦いを挑む
永遠に競争相手でも良かったのだけれど

今を壊す音と苦悩のイメージの中に
絶望は一つもない
嫌いとは終わりだということを思った
さよならを告げたんだ
いや本当は
告げられなかったんだ
心の中心がなによりも冷たい
唇を使って二行目を歌い出さないように
靄がかかった文字を振り払おうか

知っていた知っていた
あの日からずっと知っていた
だからだからもう同じこと繰り返さなくていいよね


子山羊

  黒髪

子山羊さん
山羊さん
白くて素直だ
礼を言う
あなたに
風土がどうとか言いたくなるけど
ここは一番だ
一緒にいられるのが
吹かれ揺れる草の向こうの
彼方のおぼろな光
現在の心の色は白
そして黒の輪郭
あ、そう蝙蝠の
飛ぶのに似て
私の心も夜を迎える
これから目を閉じ
心隠し

洗面台にたまった水に映る月を散らす
きっとどこかへ向かっている
戻らない時が増えていくほど厚い祝福を求めるものだ
覚えたものが有効になるには
時が揺れ、空が鳴ることが必要だ
一人ずつ生きている人間は
もう一人を自分と同じだと数えたときに一人でなくなる
怒る時また一人になる
共に怒る時には何人になるのか
それは怪しい遊戯のように複雑なかかわりなんだ
暗闇を怒るのは得策でない
怒りによらない鼓動の感覚を満たしてくれた人よ
心のメモリは再び満ちて
怒りが崩した遺物を拾い上げ
この二三歩を寄って花は香る
涙が乾くのを待とう

鳳仙花の夜
おお噎ぶのは
生者の声と死者の声
話したのは
生への意志と夢を語り継ぐことだった
怖くもない
暗くても命の色は
消えても残る自画像の形
消えない軌道
あまりにも無駄な生を生きて来た、というのも
暗闇の迷路の中に閉じ込められていた
壊れた未来があまりにも苦しい
光が閉ざされた頭の中には
甘えるなというハードルがいくつも置かれていて
転んでしまう
一生懸命生きた
楽しんで生きた
暗くなると
侮辱も不機嫌ももう見えない
何もできないこと
何もなくなることは
個人的な消耗だ
それを感じているのだから
生の力を求めよう

白さには汚れた心が映る
多くの光を目に入れた
醜いと思うのは自分の心の反映だったのだ
責任を人に負わせるほどの理路を持っていないから
私はぐずぐずと生きるような日本人だ
要素に解体してみてもいいけれど
新しいものを作り出すときは
現実に学んでから頭を巡らせなけりゃならない
人を助ける時のように自分を助ける力を出して
自分で道を歩いて行こう
道が通っているから
自分の行くべきところがある
包丁に軽く触れ
愛に傷をつける
そのまま立って
過去を振り返ってみると
もうそこには何もない
心がいっぱいになり
私は空漠と充実を密接な位置に置く
まやかしにやられてしまった犠牲者の一人である
私は突き詰められた真実を望むのである


無限の美術

  黒髪

澄んだ空気を吸い頭の中の旋律は新しい。
胸を叩き心をよく整える。
過去をだれたまま放る、筋肉の力でねじの緩んだ頭を刷新する。
人が望むものでは恋、ポエジー、平静が、現状では素敵だが、
望むものは争いの元だと子供のころに分かった。
傷ついて心を隠すほどの過度の内気さ。
生まれたときに泣くことを知り、時がたち泣かされてはならないと覚え。
未来に行くにつれ可能性が少なくなっていく。
宇宙の可能態も、心も。
いや、心は、どんどん複雑になっていくのに、なぜ可能性が狭まるというのか。
時間と空間のせめぎ合った状態を「表現空間の有限性」として考えてみても詮がない。
何時もの通り、大事なものがはっきりとわかるときもう手遅れで、
醜態で赤恥の上塗りをするばかりだ。
だが、一度ならず苦渋を味わったあとでは、唯一者となれると確信している。
心が再び甦るよう誰の手助けも拒否して立つ、
無限という普遍性に満ちた概念が、正しくみなされ、居場所が生まれる。
喜びの渦と枯れ枝の落ちることも表裏一体となっていることが、意外で困惑する。
はっきりとしゃべればときには純粋になり、純粋になればうれしいのだが、
はっきりとしゃべるときの全ての場合にうれしいとは限らないのは神の意地悪だ。
自主性と他者性を、隔たった二者の代表例として、モデル化出来る。
小言や不機嫌をやりとりしたりしてきた夫婦が生きていくうち、
純粋は空の傷の裏側にいくつもしまわれ、
そしてそれは忘れ去られていき──
現代美術は反復としてしか見出されないのだと思うと、
時代が進化していく様子をイメージできる。
テレビの砂嵐はいよいよ激しさを増す。
打って蹴って。
緩慢な生にはもう飽きた。
優しい心と剛毅な心持ち、自らの罪を滅ぼすのだ。
論理のごとき美の上に。


  黒髪

海の広さに一つだけ答える
わからないよって

帰るだけ
砂を袋に入れて
ああまだ生きているなぁ
いつまでも生きていたいなぁ
心を縛る縄をほどいてくれた海風とも
いつまでも一緒にいたいなぁ
でもそれはできない
だから僕は思い出す
新しい神の夕べに薪は倒れてカタリという

一人の旅に出た友よ
僕は君がまだ生きているかのように思っていたいんだ
問いの届かぬ海の向こうにも陸がある
美しい波と時よ
命の永遠よ
繰り返し連鎖するイメージは強いることもなく
海と空との青く広大な向うへとたどり着くだろう
愛の感情は寛大でありいくつもの苦しみを救ってきた
人が目指すところは全ての心の内側
助けるのととがめるのは同じ心
もう物言わぬものは決して消えない
閉じた幕の向こうでも続く劇がある
時折振り返るとふっと歌声が聞こえてくるような気がする
ふっと表情を思い出して君の心を考える


複雑な工法

  黒髪

眼球の表面は光に満ち薄い赤色に輝く
工法がわからない建築物は
夜空を埋める星の瞳にも届くだろう
疑うならその核を飲み込んだあとで
いやな感じだったら吐き出せばよい
愛しています
言ったことはない
愛しています
頭の中で考えた
不確かなナイフは何に使える
悲しいイメージにつながる危うい力使い方がわからない
涙を掬うスプーンで
赤子は不器用に生きることをする
なぜこんなにアンバランスに
なぜ全てが苦しみの中に崩れていく
生きていくことに自信を持っていない
疑うなら
やや仄暗い心のバオバブの作る影の中の
一生のあいだ崩れない
体の真ん中にある喜びと悲しみとの飽和が
再び帰ってきた
優しさのある子供たちのための永遠なる未来
私は何かを食べる
私は何かを受け入れる
何もなくて干からびる
心が潤った新しい日々の
埋められていく海の果て
海の果ての果ての果て
嵐が去って凪いだ海の果てにあるもの
輝く愛の階段を上って
世界の輪郭に行ける橋を架けよう
上空はいつも晴れている
失うことの怖さに縮こまらせた身が
海の果てを夢想し
いつでも雲の上に行ける橋の工法を知っている
論理的でない蟻の行列についていく
恐らくはみんな力を合わせていく
論理的な工法の書いてある羊皮紙を開き
夢は一段と自由な唇を開閉させる


世界を思えば

  黒髪

完全な世界を望んでも
人の中にある利己心が
私の利己心と不協和し
その果てに崩落する

空の上に流れる雲
幾億年たる悠久の

聞き洩らした神の言葉を求め
あやなす感情をかき分けて進もう

言葉の船がすべりゆく
不完全な心の歪んだ形を
オールで撫でて力加える

マストが折れてしまい
藻屑になり
それからすべては変わっている
私の見ていた不完全な世界が
私なしの完全な世界へ

張った布の上にボールを落としたら
柔らかく受け止められた
布はボールを除けば元のとおり
散見されて尽きないこと
人と世界のために
私が世を離れると良いのだろう
その跡は時という巻物に残っている
人という存在は有って無くなる
鳥の雛が殻を破り自分の力で生まれ
命の尽きるのを自ら受け止めて死ぬ
世界を歪めた
みんなはあの世でお話し
いいところだったね


切りつける言葉

  黒髪

切りつける言葉だから時には美しい
語り合う声は調子を抑えて美しい
なんでもいいやって言って
全ての事がどうでもいいと言う
そんな気持ちになる人の
過去の間違いを考えたら
二つの星の中に閉じ込められている可能なことが
ガソリンを燃やすように見えてきた
生活を離れては生きないのだが私の声に火がついて
失うことにはいつもセオリーがある
働き方を失った蜂のように私はそっと飛んでみたい
未来を覚えていられるように
何もないからこそそこには可能性が豊かにあるはずだ

夢はとても理想的
心を静かに収めるように
ペンチを取り落とし
拾うためにかがんだ背中はいつのまにかさみしかった
世界のあちこちでは壊れていくものもたくさんある
それを考えようとすると考えたくないと思い心臓の血が涙に変わる

その通り
知らないで
悲しいことの理由なんて
支えられない言葉
狂った風に消えていくとしても

燃えるように赤い表紙の本だ
それを否定しないでいたい
言葉が人を洗っていくのは
人が言葉を洗っていくのは
小石を掴む指の柔らかい感触で
物語は適切な長さでなければならない
瞬間は指の間をすり抜ける
だから言葉の外側にも責任を持とう
心の周りにある自分ではないものが
私には見えるのだから
心を砕いて境目に甘えることがなく
本当に自分があるためには
目をそらしてはいけない
それは真理を信じるということ
それは長い歌を歌おうと試みること


誰もが罪びと

  黒髪

老人が犯す、罪
一輪挿しの花入れてつるつると光るあなたを封じ込める
くすり、とは、無礼だ
全てがはっきりとした輪郭で存在する
電車の中のスープ状の人々
別になんだっていいけど、疲れる
ヘアカタログを繰ってみた
一つの宇宙を手に入れたように
埋め立てられた池には
完全な善のような魚が棲んでいたのに
人が聞く最後を信じられるか
分からなければそれでもいいが?
最後には神様が全てをしっかりと仕立ててくれるから
明滅し始めた神様は
現れる?現れない?
この世界の北極圏に巨大な足を踏み下ろせ
知っておられる、人は弱いよ
ちょっとつついても悲鳴を上げる
だから非暴力を今こそ
それが必要だ
愛が愛が愛がと主張するように
うるさいことが愛だと思うのか
不可能である静寂と
騒がしさの楽しみを
それらはただきっちりやればいいんだ
疑いは言葉を殺していく
そんなのは必然的だ
笑う殺し屋の頭の上の帽子
吹き込まれた生き方の中での自発的な少しだけある良心
帽子の中に混乱を入れて
はっきりとした決着を明るみに出す
誰か正しい光を
暗闇の中うごめく奇怪は誰のものでもない
罪は全て神様、あんたが救ってくれるだろう
この世界の果てまで壊れるような
個人の破滅をカウントダウンしている
畑の中、土はお前を拒絶する
思い知れ
やって来ない暗い目の人が明るい笑顔を持っていること
何よりも大切だって
だって不条理は
ずっとずっとあなたを捉え
抜け出せないようにして
最後を与える
だから僕を受け取って
あなたは、心の中を見せれば
僕の中の命は、あなたの罪を洗って
やり直しのできない人生の上に
浮かれるような歌を歌えるよ
そう僕たちは
手をつないだアマガエルのようになりたいな


衝動

  黒髪

それだけですよソラシドレ
革命大好きカキクケコ

運の悪い時には槍の雨が降る
信じていても愛はやって来ない
こちらから行くことが道のりを縮める
やって来ないことを思うとき
余暇のような過ごし方になる

曇り空ははっきりしない
タイツを履いて攻撃準備
アドレナリンで興奮させた
心の使い方を覚えたよ

とても小さな行動範囲
とても小さな愛の場所

カラーンコローン
緑の帯ついた本
シーンシーン
旅立ちの曲

いつでも準備をしている途中
駆け出すのは焦りではなく衝動に従って
栄光が二つに割れ
時のシャワーを浴びる
今ではもう昔の話
でも思い出す
宛先のない心が話したがっている
誰でもいい
疑いを持たないならば
心の痛みのことを聞いてくれるのなら
飲めないけれど
酒飲み友達みたいになるかい
子供のころ思っていたような
立派な言葉をしゃべり合い
くだらない冗談を共有して

おとぎ話の続きを考えよう
権力に情けをかけられて
反省した末に
残った破れ野原
過去から目を背けないで
未来の不安を隠さないで
今や雄々しき血のたぎり
愛と論理が欲しいから
橋の上に立って幽霊のように
見渡せ
見通せ
くたびれた優しさを
心に秘めたよ
同じ夢を持ち
生きようとした星の話
光り輝く群衆の
僕もその中の一人
誰も罵ったりはしないで
時のメビウスに投げかける
昔の歌を
昔の愛を

ポツンと取り残されている
誰かが僕の涙の中にいる


空を指す

  黒髪

私の涙何になる
涙で濡れた指
とても汚くてとてもきれい
感傷の自己愛あるいは錯覚
唾液は飲み込むことはない
どうせこの身一つの私だから
見るものすべてが廻り出し
私の頭を混乱させる
何か変わるかい
君は変わるかい

細い羽根に釣り針を引っかける
そのまま戻ってくるように
黒いインクに染まった指が
愛を食べようと隠されている
フルーツでみなしごを育てる
奥歯の中につまったダイヤモンド
見えないだろう

悲しい音は主調になりえない
限られた時間を統べることだけに私は王
頭は全てを知っている
知っていることだけが証明だから
軽く広げた羽に夢を載せて
好きな方へ行く
好きな星を見つける
好きな人を見つける

もんどりうつ
人間以外は悲しい
人間は人間じゃなくなる時悲しい
保存された音をまるで赤子の様に
区別をわざと失くして
分かること
それがなぜだかは分からないが


怖がらないで

  黒髪

怖いことはたくさんあった
震えていた自分を責めた
それでも詐欺師のようにはなりたくなくて
人を恨むことの後ろめたさをなくしたいと

謝るよ
月の光
全ての温かい心
自分ができなくて
自分が分からなくて
きっと明日は新しい日
みんなの望む悲しくても大丈夫な日

さらば
水面の光がきらきらと動いていく
どんな時でも
ちょっとだけ望む
何度抑えてきた愛を
果物だって足りないけれど用意した
名前にちなんだお菓子を買った
君たちみんなが純粋だ
思っていたあの通り
放り出さない怖くはないから
身の震えを消して
見つからなくてもかまわないんだ
愛情にはやっぱりかなわない
知ったよ
恐れない
言葉など
恐れない
イメージなど
恐れない
印象を傷つけられるのを
あってもなくても変わらないようなことを
恐れない
失くしてはならないもののために
トンネルを掘るように
シャベルもつるはしも使う
抜け出して向こうへ
自分を飾り立てないで
本当に欲しかったものを
本当にしたかったことを
ちょっとだけ喋っていいかな
うるさくはしない
選ばれなかった人と
選ばなかった時間も
わかろうとする
あふれるような虹が
空に浮かんでいるので
全ての人が
知っていること全てを
使うことで
全部宇宙さ
知っていかなければならないんだろう
待っていていけないだろう
出来る限りで出来ている
怖がらないで


  黒髪

電車に揺られ目指す
歪んだ現実は人との交わりを壊すものだ
工場地帯の有害物質に汚染されても
頭がおかしくなるくらいの被害にとどまった

流れの悪い血
自らの選択は結果が悪くとも決して人の所為にはできない
沢山の粒子がどんな振る舞いをするかわからない
おぼろげな空
空が意味を持たない土地もある

光が弱く
犬も弱々し気
始めよう
人気のない町
犬が吠える
僕も彼に賛同する
弱い僕

町は空に敵対していた
だから僕は町に敵対していた
涙を流すことが精一杯の抵抗
捻り潰されるだろう
僕は
川沿いを歩いていくと
気が暗くなった

身体の中に取り入れることは
愛の行為に違いない
強くなければ愛することはできないだろう
だんだんと暗くなっていく
境目がなくなる
危険を遊ぶ気もあったけど
紀行は暗闇を見出して終わった


方法

  黒髪

方法と言うのにふさわしいのは何か
漁業法とか
工業の方法とか
新しいものはそのように実践される
感情について考えると
内に秘めたる
橋を架ける
向こうにわたる
すなわち
在る者同士をつなぐ
では方法とは何かという問い自体が
幾分かの愁いを帯びて
在ることについては
光の玉を抱きしめるように
新しくかつ落ち着いて
考えられる全ての
自分たちが
考え思うこと
答えがなくともまた間違えようとも
生きているから
ずっと付き合う
消えた心は光る
生まれいずる
何度も確かめる
硬い地面は愛おしいと
そこにしか何もなく
そしてそこに在るものは
単なるモノではなく
不気味さと美しさを与えられるのは
沈黙と静寂の関係に似ているかのように思われる


リアルシンボル

  黒髪

小心翼翼たる私であった
誰も気にしていないことを気にしていた
皆が気にしていたことに気づいていなかった

相互に破壊
ラッキークラックいただいて
こん棒一本振り回した

マリア様
私にキレないで
あの子に断られたんです

祭りに参加
疑い深げに突き付けられた45口径

布団をたたんだ
きちんとした生活を送った
有名な恋人を手に入れ
美しい農夫となった

闇の中に足を踏み入れた
ホタル飛ぶ
虫が飛ぶ
星が霞んでみえる

未来に限界を見ない
孤独に放射されるスペクトル
そっと冷静に
おいしいミカンを食べつつ
クールジャパンを咀嚼した

消えそうな心を完全に論破した
この世の民度が改善された
夢の歴史に叩き割られたガラスの破片が降りかかった
その中で
呵呵大笑した
はいわかりました
先生の正しくないところに服従いたしません
もう大きくなりましたので
かかってきてください
宇宙の膨張と同じくらいに伸び広がった
心のむなしさ
担保も拡充も補填も色を失った
誰かに嫌われる血の色の言葉を
口にした
その後で
自力で答えを見つけた
ホタルはもう光っていない
全ての人間が分かり合えると思った

文学極道

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