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村田 麻衣子 (村田麻衣子)

選出作品 (投稿日時順 / 全19作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


生育暦

  村田麻衣子



「なにも着ていないの? ひとつ
あまらせているから、きみにあげる。」
待ちに待った、台風の日です。
家に上げたら、育つのにどのくらいかかるの
か、あと数秒で折れてしまいそうなきみが傘
で部屋を汚しに来る。わたしが傘を脱がせる
と、ふるえてないていた、
頬に触れると、
塩分の味がする。からだはちいさくて水の味
を知らないであろう。手を上げて、届かない
あめ粒をくちびるに、あててあげた。
わるい天気に感染して、病んでいるばさばさ
のくさばなが、きみを見ていっきに
わらいだすから
日が落ちても、きみはまだ玄関にかくれてい
る。人工の光はきしきしするからそんなとこ
ろにいないでよ、と笑いかけた。暗いあいだ
は、しょくぶつも見てない。きみは「うん」
と言って部屋に、入ってきた。



あめにぬれただけじゃないの、たがいにちが
う冷蔵庫のなかで結露した。わたしたち
ひとつとりだしたグレープフルーツのはんぶ
んずつをフォークで、すくってたべる、晴れ
た日には、きみに生育暦を教わった、糖分で
育ったわたしは、陽光に焦がれるたびに去勢
される肌の色を気にして、「黒いのよ」と言っ
た。きみが白いのは、ははに似ているのだと
言った。短く切った前髪は、ははが千切った
のだとくりかえした。わたしは、髪が伸びる
のもわすれて、顔を隠してあげたくなった。
きょうも天気は、生育暦に隠蔽され、わたし
は部屋で眠る夢を見た。



きみは柑橘の薄皮を、爪できれいに剥いて、
分け合った種の最後のひと粒をたべない。
退化していくさまざまな機能を食べずに
腹の奥で響かせ ハミング
積まれない音と昔を、重ねて歌った
花の種を埋めた。みどりも、いずれあかる
いいろに隠される。
その影が消失したら、目の色が薄くなる。
午後がながくなって

温室では、朝を保って、息を吸い込んだ。
育つこと それなりの濃度を血液のなかに流
して、  夏は待つ春よりも真昼が長いのだ、
わたしたち早熟で、結露が腹からこぼれて薄
くなっていった




わたしには影があるが きみと同じ濃度に
したくて影ふみをしている。「ぼく」と言っ
て、こぼれだしても何の味もしない。きみが
拡声器で、しゃべるとわたしのははに似てい
る。似ているというのは、大袈裟だった。お
んなのこのはなしかたは、大袈裟だから と
ころどころを弱毒してしまう。
腐った果肉を剥いで皮をフオークで貫通した
。 火照る爪が粒と粒のあいだ 浸透して空
、いつまも口の中に拡がる
窓を開けたり閉じたりして、きみが来るのを
待っているあいだ




ぼくたちはあたためられるだけあたためられ
て暑いにもかかわらず巻かれたマフラアのよ
うなものを、ぐるぐるほどき
ながら眠ってしまう
きみが着るはずのないレースの下着を、わた
しが脱がせて。ちいさな靴も靴下も
とてもちぐはぐで
わたしのものじゃない
ただ、この部屋に脱ぎすてられている。







        「ねえ、眠れない」
        だれかいるの、

        (これが、きみがいる
        ただひとつのしるしな
        ので わたしたちは、
        はしゃぐ
        みんな台風に、飛ばさ
        れてしまったのだと、
        聞いてしんだふりをす
        る。すると聞
        こえた。きみのははは
        かわいそうに災害で、
        しんだのだ。きみの声
        の低音域が、眠りに落
        ちる前の瞬間をとらえ
        ていて心地がいい。)


ストロウ

  used sea

それだけ、(よ) ほしいも
のは生みだせるから スト
ロウを分別して頂戴。しゃ
かいの授業でならった で
もわたしの目には噛んだ跡
がそこいらじゅうにあって
、昔いたらしい怪獣の記憶
を裁断したかけら みたい
で材料がほしいから 造花
を葬りかけて やぶれかぶ
れのオゾン層から熱したプ
ラスティックが匂ってく。

集合住宅では、あのこの
ママとこあたしのママが
ゴミの事を罵り合ってい

   
     せいほうけい
     にしまうと 
     まあるいビス
     ケットがまっ
     ぷた つ じ
     ゃあ ないほ
     うが まし


はなしになんない かわ
りに、勢いよく たべた
いちごをいっきに吐いた
ら 中央線を逸れてって 
帰れない 防空壕みたい
 って胃を突き上げなが
ら 地につかない足がぬ
いつくようにがっこうか
らはあるいて 帰った。
道端の停留場のわずかな
面積 これじゃ眩しくて
隠れることすらままなら
ないわ せいほうけいに
数字があって あたまが
ぐしゃぐしゃになって 
ちょうほうけいになった
 朝までバスは来なくて
 速度だけが 摩擦で黒
くただれてたのに 疑っ
てやまない 瞬間裏から
かわいい犬がでてきて陽
に焼かれてた 傷をなく
す新しいニスを探してき
てて塗り残したところどこ
ろが ママがくれた乾いているマニキュアは植物に
    塗ってあげた ママの肌の感触は とてもわたし
    とちがう


ちはみたことがない。わたしは
、うみだせることを疑ってやま
ない
まちがって口の中を噛んだ やわらかい傷
はやわらかい寝床にあるのだと
ははは毎日汚れたシーツを乾かしながら
思わせぶり
胃まで伝わない食物残渣で生き残るわたしたち


それは
ママたちが、たがいちがいに歯で
口の中を噛んで
まちがいを仕向ける戦争なのだと

ストロウを噛んで
口の中にした味 それ
も後になってからのこと

5ねんご 
10ねんご
100ねんご

死ぬまで戦争がやってこないでくださいと
わたしは咀嚼したいちごを
飲み込むことすらままならない
せいくらべの
 はしっこからちょきんちょきんと
 結った跡ばかりが痛いです
おっこちそうな
ようちえんじだとしても


kimi no yume

  used sea

わった果実の切断面を
錯覚して、くっつける
ことばかりがほんとう
 。 」部屋の隅々か
らくちゅくちゅ」音が
して「くる 、聴こえ
がいいのは夜だけ だ
から きみとわたしが
眠りにつくまで、
          

わたしはきみではない 
似ているだけでべ「つ
べつの「容器に入れら
れ」た かわいそうな
きみ  死ん」ださか
なが溺れるなか きら
めく あれは、 

夢だってきめつけた 
くっついてからの記憶
が鮮明すぎるから 目
が覚めないように 冷
蔵庫のコンセントは抜
いて  」」あげた
        
きみの細い手首のよう
なものを握りしめたま
ま日を越えて しょー
みきげん ですが そ
の記憶があるのはわた
しがとても古い映像

見ていたから、

みんなテレビのなかのことにすぎな
い 新しい映像はきめが細かくなっ
て たにんの肌みたいに馴染んでし
まって   
          ))
            )
いちど切れたものはにどと
くっつかない でんわをか
けたら ははが教えてく

れたのだ おなじおと
が聴こえないきみはで
んわにあなのあいてな
い強く耳をおしあてて
、スピーカーを壊した
わたしだけにあいてい
るあな をこえようと
 きみのかおはわたし
の輪郭をおしなべ わ
らわせ わらいがとま
らない 
ははに似ている
のはわたしだけなのだから


Re:Re:

  村田麻衣子


聴こえてくる神様とのおしゃべり
で、眠りにつけないんだ って。
コンクリートに埋めても充填しな
い空腹感、それはちらつく淡い希
望に支配されゆくわたしたちで。
いつだって、窒息できるから ボ
ートにのっけてあげた。空を見る
と、向こう岸のホームレスの顔が
見えない。スピーカーの近くはざ
らざらした感触、胸に触れた手に
は垢

目をみひらいた まっくらな真夜
中にもういちど目を覚まそうとす
る、肌が透き通って、子たちは 
粒子を真昼の試験管から 取りだ
せないからっぽになる瞬間 手に
触れた液体に溶けてはっとする。
ベイビーが、ネイビーに馴染んで
ぶるーを あおく感じないことが
ある あなた制服は似合わないけ
れど 一昨日のミリタリージャケ
ットよく似合ってた わたしを好
きって言ったけれどそれは、何世
代目なのかしら わたし、骨折ぐ
らいじゃ死なないのよ

えいえんを築くものがあるんだっ
て、消耗品とそうでないものに分
けてから自転車を廃棄した。それ
に乗って遠くへ行きなさい やけ
に声がとおったことに気づいて 
言ってしまったことを悔やむから
。二度と代弁して欲しくなんてな
い ふたりめのわたしなんて ね
え 神様 ここに自転車をとめた
って覚えているのかしら


新種果実

  村田麻衣子

外気に触れているそれぞれが陽
光を含んでいるからいちいちや
けどして 傷があるからやさし
くなれるの、ほっといたってな
んらかの形にはなるのよ 欠陥
じゃない たべられるものは、
みんな既製品だから。

とびきりの完全後みせびらかす、
陽光に慣れさえすれば そうや
って実現不可能な生き残りに 
かけて熟れたからだって、実質
あたまうち。わたしがあいつと
いちゃいちゃしてるとこ 見て
たじゃないどうして。わたしと
完成しようとしないで 痩せす
ぎたからだに気づいてから 目
を見て あんたに何が起こった
んだ? って、わたしは目を見
てなんにも言わないで できた
ら ゆびだけにしよう活性化し
た枝みたいなあなたの そうや
って

なまえをつける 好きなひとっ
て言い方で呼ばれたいだって名
詞みたいでしょう おっきな概
念から果実もぎとるみたいに 
おやゆびなんて、はいんないわ
ただ ちょうどよくなりたいだ
け暴かれた夏に浴びせかえる、
肌の色すら消耗する


I-my-me [pupet makes people]

  村田麻衣子


 仮縫いみたいに 新聞を縫いつけられて
 テディベアはなんさいなの 読んだばか
 りなのに忘れてくのは、360°をまのあ
 たりにしたあらゆる内角だから ちっぽ
 けなこどもは大人に 先に言わないで!
 て 未来を先読みしてる 型紙のまある
 さを、尖った輪郭に触れるみたいになに
 この美しい子はって噛ませてあげて だ
 って熊なんだから。
 
 ここからここが、腕です。ここからこ
 こは、ないぞうよくたべるこで顔の付
 近がきゅうきゅうになるくらい綿をつ
 めこまれて、目が×になっちゃうくら
 い! 
 
 合唱てのは、一斉にみんなで声をだす
 から人体実験みたい 声をそろえてひ
 とつのことをして、いろんな声が聴こ
 えるようにしてくれますか 口を縫わ
 れているからそれはやっぱり内蔵され
 たスピーカーみたいで 衣類の裏地を
 つっきる 今季初めてのコートは、と
 ても暖かいけれどそれだけで ふわふ
 わにはんのうするだけ ちっともかわ
 いくなんかない
 
 わたしに所有格はないので、いちばん
 やわらかい大腿内側だけは剥がされな
 いようにしようって あのこと約束し
 たの ぬいぐるみはわたしのものよ。
 まっくろのボタンの目がとれたら、ひ
 とのせいにしようってもっと黒く塗り
 つぶしてるとこ。どんな色が映ります
 か? って実験は続いてて目をあけろ
  窓をあけろっ 足をひらけって命令
 されて目がとれた 耳もとれた こん
 んなにもろいなら わたし誰の代わり
 にもなれるわってしゅっけつしてたら
 所詮おまえはかわいいあのこのストラ
 ップさ って言われて てもとれた 
 あしもとれた

 おなかがすいても たべるとかたべな
 いとかそうゆう問題ではなく 抱えら
 れるまでもないやさしさばかりがめり
 こむので剥がすのはたいへん 詰め込
 むのは栄養になるまでが待ち遠しい 
 今日また廃棄されます もうしゃべん
 なくていいでしょう内蔵されたスピー
 カーが壊れないうちにオフにして。は
 んぶんは社会のものだからなんて あ
 のこだってぴんときてないって顔して
 るでしょ わたしはかおをかく めを
 くろくして あんな代物、まのあたり
 にして生存してるなんてひとでないか
 ら考えられることすら 労働くらいに
 しか思ってないわ。


シャットダウン(#idou doubutsuen.)

  村田麻衣子

パソコンのうえ あたまくっつけて冷たくなってたのにベ
ッドに連れてってくれるひとはいないの ごそごそ顔につ
いた跡にびっくりして 気にしながら起きる ひとりで暮
らしてるから ひとりで眠るのには、もう耐えらんないわ
 電気も朝までつけっぱなしだし デスクのうらがわには
なにがあるかわかんない 壁にあたまくっつけた わかん
ないから怖いの いらないなんにもいらない。 顔に、ひ
っかき傷みっけ

ひらがながカタカナ変換になってるのにいつまでも気づか
ないで書いてた 最近思うこと、みんなカタカナでいいや
ー きみといるときの快楽とか、ひとりでいくらことばに
してかんがえてても、それねむるとかねむらないとかそう
いうもんだいじゃない ねむたいってのと、きみといたい
ってのはおんなじ

受話器越しにきみが、眠がってるのがわかってしまって 
ごそごそ 騒がしい音してるから もう「いいよ」って言
って「イイワケナイジャナイ」って言った たいしたこと
が起こってる わかられてしまうなんて、わかんないなわ
かんないでも愛してるって言って、がちゃんって 受話器
きった。なんなのなんなのっっ

あたしのパンテイにもいろんな うらがえしがあって、衣
類がちらかってるこの部屋は汚くてきらいなの なんなの
なんなのでも だれのかわかんない毛布かぶってたらもう
わたしだれだかわかんなくなってパジャマのなかのふわふ
わを感じるあのいっしゅんをうわまわってくれないし わ
たしがこのかんかくに囚われてないとってあわてて部屋を
片付けて、鏡をみたら知らないひとみたいな顔してるから
、しらんぷり ピンポーンてあなたがきて わたし暗がり
が好きだから電気つけないし、そのまま玄関とびだして「
わたしいまマネキンみたいな顔してたの」 って言ったら
「そんな子、知らないよ」って 毛布ごと抱きしめてくれ
たから。


インファントフロー

  村田麻衣子

#She is fine.

あのこは、からだを「く」の字にして眠っている。胎児の
翳がある、ただ どの部位にいるかわからないのでからだ
をていねいにたたんで眠った ぶかぶかのバレエダンサー
が身につけるような ソックスだけを履いたあのこが、か
らだを売ったベッドでひからびたティッシュだらけになっ
て、あれでドレスメーキングされる。粘膜をひたひたにし
てさわられたいけど 大概が乱暴な手つきだから、破れた。 
踊らないマネキンの腕はとれ、あたまどこだかわかんない 
し、誰かの匂いがするけど、誰のか知らない。誰の腕なの
、手首なの わたしのおんぼろの毛布 とりあげたパパも
いないママもいなくなった

さわられなれた雛鳥は、ある周期の乱れみたいに、#Fが
鳴り途切れたところで 平衡を、踊りながら下手なりに顔
立ちすら端整に見えて 玩具箱をひっくり返すしゅんかん
、鳥篭からいなくなる。ひたひたの神経回路に浸かってて
羽毛よりやわらかい 溺れるまでもないのに、暗い淡い翳
がありましたが そこごと羊水をわたしの肺に撒き散らし 
憶えていないあなたの浅はかさがあったので、洩れなく溢
れた酸素がルームエアーでひかるひかる、それほどにまで
美しくひかる

パパはいませんママもいません ママにあらう順番を教え
てもらったのに やぶってムービーヒロインみたいにてき
とうに石鹸でからだを洗ってたから 土曜日の朝の映画の
色彩は、弧に。視線を、めりこませ 弧から弧を。二つめ
の海を錯覚するように。そらごとにひらかれた午後へ、漣
に繋がる白黒以前に、やけにはっきりと意識に残る。そし
て、やわらかくふやけるもっと内部で、

黒い薔薇の皮膜の中で眠った 重なりあう音域にある熱量
、37℃で 常軌を逸して高ぶるわたしたち ぶれた瞬間 
貪欲にやせっぽちだから、だとか皮膜越しにでもあなたを
映した細胞わたしのだからもっともっと内部へ めりこん
だ視線みたいに欲した弧を。やわらかくふやけ 起きたら
ガーゼをまとっていたあのこの手や足を見つけては わた
しがやさしく包みこんであげるから、


"コウノトリララバイ”

  村田麻衣子



声がかすれてかすれてやばいて、それでもいじれてないで 
ちゃんとしゃべらないと。指をすり抜けたシールド踏んだ
まま雑踏を歩き出した かき均すともわからない管それは
感情であった、アスファルトに書き殴るみたいに、歩き出
す やたらおっきな声 出してしまって、洩れてしまった
声が、だっさいなーなんて。

放った鳩時計を元通りにして とれたネジ巻くふりしてた
。羽が、日を透かして血潮を温かく散らかした 破れたコ
ラーゲン、骨まで溶けちゃって 祈りから解放されるため
に正気を取り戻す。いのちなんて初めからなかったかのよ
うに翳を追う白と黒の時計仕掛け いくら反回転しても、
見えているあの坂にあなたは転がる 傾斜を、その女性の
美しい曲線をあなたは かき均すななめの前髪から見えて
いるせかいは、バランスよく崩れているから 鳴っている
単音オルゴール歌って、ねえ和音にして二人でのこと、し
ゃがれ声はわたしにだけ聴こえてるだから暗黙。ipod再生
して、早送りし過ぎてひとり取り残された交差点のオルゴ
ールでやや早歩きに 見慣れぬあなたの早起きで。向こう
岸に見つけてから首をもたげて。あたまをぎゅってヘッド
ホンにされて、いとおしさが容量を越え フォルダに分け
そこにはわたしという要素が充填してはっとする シャン
ソンそれはわたしの声量にちっとも相当しない そうやっ
てスタンダート追い越していく 漏洩したヘッドホンから
聴こえるUSインディー 聴き入るあなたがいてここまで孤
独が騒々しいと思わなかった それがわたしにとってのB
GMだから、コウノトリララバイ。第一啼泣に、呼吸が間
に合わなかったこどもたちのあえぎ 音階を、アスファル
トすれすれでこぼしてしまった鳥たちの死骸をひとつだけ
見つけて 何の鳥かわからなくて 進行方向の向こうにい
るんだって、みんな。ここからみんなが泣き始めるってと
こでコード3つ忘れて適当にジャンジャカジャン 鳴らし
ても ヘッドホンでは近すぎてスピーカーは遠く感じてし
まって みんなまるで知らん顔。あのこが転んだ気がして
、立ち上がるまで待っていた そうしたら目が覚めたんだ
って、朝。

泣いている人を籠に入れ、わたしがここからいなくなって
しまいそうだった コンビニガツマンナインジャナイ嗚咽
コラエテこころのなかでわんわん泣いているわたしに気付
いた人が、無糖のコーヒー買うとこ見てた。イナクテモヘ
イキニナレヘイキニナレヘイキニナレ3回唱えても かな
しみを抱えきれなかった思いを、からだから均等に離した
だけ
 「静寂…? いや、コウノトリララバイ。」
蹴ったら、ぎりぎり部屋だった ベランダでやっと泣き止
んだあなたは、やっと赤ちゃんになれたみたいで 甘えて
きたから抱きしめて 体が冷たいのがわたしの方だって気
づいた ずぶぬれの質感ある液体で 分離した重圧と軽率
を いとおしさで正気に戻してでも、海は険しくて、脚を
ひっぱられるかんかくが周期的にやってきてまた そのメ
ロディにみんなが絶望して泣いたって人づてに聞いた 漣
は 編みかけの籠の解れを電熱線で伝うようなノイズ そ
の揺れを繊細に、眠りに誘う あなたがどんな姿になって
もわたしには 子守唄が聴こえてるって、耳に手をあてて
いた


puppet

  村田麻衣子


クローゼット片付けてたら、要らないものがでてきちゃうし、
ぬいぐるみとか昔の手紙とか下手したら子供のころもらったよ
うなのも、平気で捨てちゃってる「わたし」を主人公にして。
中途半端な日当たりが嫌でたまらなくて、カーテンを閉める。
そこから物語が始まってしまうから わたしは あとは、エキ
ストラがたくさんいるからいいや。みんなやたら色んなものを
残したがる。やたら子供を欲しがったり、感情的に身体的に流
されて、オンナノクセニって言われ慣れてない証拠に、社会に
でれてない証拠に 感情が操作不能なくせに
産んで育てない奴はクズだと思う。
経済的に現実的に、もっと正確に感情は違った方向に流れてく
はずなので、それをいとおしさの正体をつきとめられもせずわ
たしは刻々と護る「わたし」を、素敵な部屋に囲い。誰かを
護るということそうして、やたら保存したがるのを嫌うそのす
べをあとからみつけようとする癖に、その記憶力と想像力が欠
如しているがゆえに、その現実に甘んじて産みたがる女たちの
例がそれなのかもれない

捨てられないから、こんなにぐちゃぐちゃになってしまうし。
あたまのなかもぐちゃぐちゃで 今してることの何が、これか
らに通じているのかわかんないし。永遠に結びつかないすべて
が、刹那的なものに目を奪われているだけのような気がして胸
がぎゅってなって、涙が出るまえに「違うよ。」って思えたか
らよかった。冷たいフローリングにカーペットを敷きつめる。
昨日の飲み会は、お見合いパーティーみたいでつまんなかった
。誰よりもはしゃいでお酌してたのはわたしだけど(笑)ふと彼
からもらったメールを思い出してしまって がやがやとうるさ
い会場を写メに撮って[保存しません]を、クリックして返信し
、途方に暮れてしまった。カーニバルで、はぐれて迷子になっ
たみたいに 急に誰に話しかけたらいいのかわからなくなって
しまって帰った グレイのワンピを着て、クローゼットから見
つけた花柄のストールを羽織ってた。そこにいる人達とわたし
が、欲したもののあいだにファッションが存在し セックスも
同じでように わたしたちどうすればいいのかよくわかってい
る。何事にも鮮度が大事だけど、グレープフルーツは熟してい
るほうが好きで、食べようと思うだけで痺れてしまうくらい好
き。

彼はこの部屋の真昼の訪問者であり、夜に染み入る電飾焦がれで
今ごろ、モザイクをはいだ半裸の女たちとまぐわっている。
わたしは冷蔵庫の中にあるだろう食材を食べようとしたら、
実際にあのはんぶんのグレープフルーツはなかった事実に消衰した
あのこは、そんな世界があるとも知らずに子供を育ててる

彼やそのすべてにおいて心を奪われた瞬間から、あけっぱなした冷蔵庫の前に座りこんだわたしがバドワイザーをあけるまでのえいえん。内側から外側にかけて故障してるみたいにひりひりとひかる。次はわたしに何を演じさせようか、えいえんにつづいていきはしない今が、そういうインパクトのない時間が流れていく。 


commercial

  村田麻衣子

食べる≠吐くであると、それは賑やかな孤独から見つけ出す ややくすんだ光のようで
郊外のコンビニから漏れ出している 駐車場に宛てられているコマーシャル的なネオン
ライトは 消費される欲望から消費する欲望へと変換されるたびに書き殴られた文字ら
しくにじんで アスファルトの上に散らばった個包装たち。運命を弄びすれ違う人たち
がこんな時間まで起きている事に 安堵し 巡る運命または転がり続け その人たちと
目が合い逸らされるたびに周期的に涙を流す日はそう遠くないのだと予感している。並
べられた雑誌のページには死んだ虫が 潰れたままうごめいていて悲しかった 時計を
眺めてみたが、目がかすんでよく見えなかった。
運転席から見た雨と写真を見比べて、いつか会った彼と彼女を蘇らせ。その影響につい
て、感じながら運転席で膝を抱えてみた 誰かを思う隙はなかった聴衆的には美しいも
のを、「美しい。」そう叫びそれを匿名化してまで 聴衆でいたかったのはどうしてだ
ろう。

わたしはそれを食べる=吐くであると それをソロプロジェクトだと費やしたものは、
時間と身体的消耗。ファッション誌には書かれていない 残響室の騒音で温もりある胎
児の大動脈を身体測定して それを嘔吐する商業的な行為。単純に退屈がやってくる
もしくは、目の前の景色を過剰に感じて酸味の強い柑橘の果実を半分切って からだに
流し込み そのはんぶんをルーズリーフの書きかけの記事に乗っけたまま 仕事に出か
けた。冷蔵庫は、きらいだった あるいは好きだった 
そしてわたしはそのマイナスへ振り切れたエアコンディションを 
半強制的な行動すべてを
からだを流れ出す冷たい水滴を
常温での過呼吸は常軌を逸している。誰のゼリーかわからないまま溶けだしたその果実
を見て。その強迫のスピードを感傷的に言うと、愛していた。

多目的トイレに駆け込んで吐こうとしたら雨の雑踏から 男女がそのビルの1階の一角
に駆け込み、男が女の手を引くようにして入って行った。入ったことがあるトイレの個
室はやたら、広かった記憶が蘇る でも一人でこんなところに立たされている 気分っ
たらなくて わたしはその扉を思いっきり蹴った。
センター街の路上では、店内BGMが漏れ出して、イントロダクションからそれはもう聴
けたもんじゃないのに 2つの店舗から融合してダブルイントロとなり あんたたちの
主題歌みたいだって。沸々としていたからか、肌蹴たウィンドブレーカーの下にはなに
も着ていなくて
首にかけてたヘッドホンから深夜 周波数を合わせないで録音した ノイズが流れっぱ
なしだと気づいてはっとする 目の前の景色はわたしが経験した夜の浅ましい記憶より
もずっと現実的で優しかった

明け方は、闇を争いながらかき消すそのグランジの始動みたいに 扉から出てきた彼女
はサンローランのクリエイティブディレクターに就任したばかりのエディスリマンの20
12秋冬コレクションを身につけ その清楚な顔立ちを狂わせながらワンピースは肌蹴す
ぎていて 男の子に借りたかのような クラブ帰りのシャツを身につけて わたしの顔
見て顔を赤らめ走って どこかに帰ったのだろう。

彼とわたしは残されて、タイル張りの多目的トイレはやたら寒々しく冷気を放ち、ギタ
ーケースを担いだ彼は薄着でシンプルな白シャツにディオールのパンツらしきものを身
つけて 色白の笑顔が不潔だと思っていたら、漂白剤がまかれた室内で彼は眠りだした
。わたしもそこに横たわっていたら、ケースから腐食したフローズンバナナを取り出し
てわたしにくれた。数字的に期限切れなわたしたちの接点は 感傷に無神経だった頃の
わたしと時間軸をあわせ そう 融合させる=いとおしい とはさらに違っていると理
解するまでかなしかった 気分的に不潔なのでわたしは服を着たまま この部屋のベビ
ーベッドと一緒で セックスはわたしたちにとって対象外だった

これらの鮮度がたまらなくいとおしいのは中指にも親指にも耐えられなかったから。嫌
いではなかったけれど彼は、はんぶんの約束でわたしにくれた。はんぶんはとっておく
ようにわたしにただ渡した
プールの外に溢れているオーバーフロートに紛れた双生児みたいに触媒は穏やかな空気
に接しながら溺れている

「こんな場所で迷子になったらいけないよ。腕も、首も、太腿の内側もこんなにうつく
しいのだから。」
「うん。わたしは、帰ってこれを冷蔵庫にしまうの。だから、さよなら。」
「ママに食べられないようにね。」
「そうね。」

ソウダネ
わたしが呟いたのは添い寝から経過した3日間。蝉はうつぶせで死にかけ新たなニュー
スソースとなる。それをモデルにしたチョコレートが発売されたという斬新で美しい事
実を耳にする。北欧では希少らしい彼らの騒々しさは あの時のわたしのかなめになっ
て夏日をたちのぼらせ 今日からの始動らしきテーマソングとなりうる スピーカーの
前で眠った記憶 それは、紛れもなく彼の影響だった 気候に左右され 気が振れてい
く神経を静める高らかに そうして静寂へと帰って行った。


ガードレール

  村田麻衣子

オルガンの鎮静を始めますが ちょうどいいボリウムが、 わからない
からあ あ 通る声 は拡声器で顔が覆われて誰だか わからないけれ
ど笑って迷子のお知らせをするまえに 買い物をしないと 笑って 神
経がばらばらに剥かれ る料理を始めた午後になった、あたりから ね
え 魚をペーストに してあげた 助詞を なくして」 つなぎあわた
ら あ あ ああなたにはしてほしく ないことばかり あるで だか
らあなたのからだがだめにされる前には 冷めようがあたたまろうが 
どうでもよかった

たべさせられる フードプロセッサーで砕かれた骨 はあなたの裸を憶
いださせてくれる湿度と匂いといなくなってから咲いたベランダのヒヤ
シンスの事を まだ常温であたたかいけれどだんだん冷たくなるんでし
ょう外気の影響を受けやすいから、彼は気候を気にしているその影響で
わたしはテレビをつけて天気予報の放送を流してやっと 眠りについた

あらかじめ笑っているマネキンが 手首をわたしにくれたからわたしは
抱きしめてあげた して欲しいことがわからない わたしのからだのほ
うにかなしみがたまりつづけていった 誤って変換されてそれは、あな
たに対して怒っていたり、笑っていたりそうね、愛している、というの
だけが違った感情の流れにはっとするからすべてを包みこんで 手首を
遠くにやらないようにからだに縛りつけてあげた 救急車のサイレンが
騒々しくてたまらない あなたは切断された手首だけを見つめていたか
ら かんかくのすべてを麻痺させないといけなかった

迷子のお知らせをします

記憶のなかのあなたとわたしの知らないあなたをつなぎあわせる 対象
を失ったきのうのわたしからそうして迷子だらけが生まれたんだ スー
パーマーケットはの駐車場は夜の 教会の室内を、破壊したみたい 
やさしさにはモザイクをかけてまじまじ眺めて 朗らかな風すら 常温
を上昇し続ける くちうつしで甘みを映しとるエアコンディション 鼓
動を左側から開放されていて鋭利につきささるほど 交通整理のコーン
がばらばらになっていた プールサイド 水中に顔をおしつけたら目が
痛くて見えないものが見えるみたいアスファルトは色彩を濁らせ、かた
くてやわらかい

目をあけてたら目が痛くて 洩れた声を遠くに感じた しゃべる声より
吐息がまじって呼吸みたい
聖書が読めないわたしたちは感情を離脱して しゃべっている。
マイゴノオシラセヲシマス

感情を離脱したような話し方をする あなたは、アナウンス通りに行動
するわたしが 嫌いだったんでしょう好きで堪らなかったんでしょうオ
ルガンが鳴ってからわたしは
迷子の子供たちを順番にならべて番号をつける
顔のないそのこたちが帰れるように家に暗幕を張っていたら
部屋は海みたいに 漣のBGMをザーザー振りの、雨の音が
そこに帰っていいのとわたしに問いかけ、放送様の口調で帰っ
ていいよという
寄り添うことを否定された誰かを否定してやっと
わたしは懐かしさを否定して抱いた悲しみと新しい感情を
あの頃にもどることはできないけれど、必ずここに帰って来るから

ただしい 反応が もたらせれず かなしいのに笑ったり、怒りたい
のにかなしそうな顔をして疲れきっているせいにするけれどそれは、
疲労に左右されて、中二階にある植え込みの色彩ごとに鎮静をかけ深
いところの色にやっと届くから駐車場にやけに響いてしまう
表情の乏しい女性 ランウェイで歩く距離より遠くにいけない 悲し
みがあらゆる角度から押し寄せてきたのを、敏感に感じて彼女は睨み
つけたファッションショウ。浮遊力が足元にあってね、それが嘘みた
いな生きている感覚を、じゅうりょくをさかさにしてそうね、生きて
いるというのは自分自身への命令に過ぎないんだわ

泣くことで肯定していた。ちからいっぱいなくと目が腫れて 顔中か
ら液体が流れていたかなしんだとしてもうつくしくもなんともない 
それをまた考えていたら 交通整理のネオンライトをもっているひと
が いつもと違うひとだったようにも見えて安心してわたしは、対象
をもたないから迷いこんだ色彩や熱線に 力を奪われて眠る
国道に抜けていく私道から、その色に支えられても ガードレールの
白さには伝わないように
家に帰っていった


愛とはからだに投げ込まれた包帯

  村田麻衣子

 
コンビニの駐車場で眠っているとあっちの世
界に連れていかれそうで、いらっしゃいませ
って言われてよかった 有線BGMを聴いて 
悲しい音楽が激しい音楽を、癒すからわたし
歌いながら店先に入ってく。光に迷いこんだ
蝶みたいに心の中で唱えた言葉で誰とも話し
かけられない 飲んだミルクでくらくらする
みたいにからだに撒き散らかし からだの浅
はかなの翳に反比例して。液体は、水族館の
内部みたいに水生動物をはんぶんにして 展
示するかなしみがある固形に鎮められて肌色
に塗り固められた わたしという生臭い自己
があった

変な目立ち方をする若者のファッションショ
ウが始まる。目の前にいるひととおしゃべり
できないから いつも有線の音楽は心地よい
し、いとおしい それなのに触れることがで
きない センスを違えた他人まさに セック
スできない人たちで こころのなかは充たさ
れていた
埋め立てられたアスファルトの下に 希望が
あったでも、得体がしれないわかちあえない 
それに触ることはできない。

胸にふくらみきらないフラスコが胸の中にま
たぶつかって 軋んでしまうから 呼吸がは
やくてくるしそうだし空気が破裂して溺れた
 もう誰か早送りしてくれって心の中にしか
いない 人と話している
 誰 誰 誰もいない内に、朝になりその気
配に負けて冷え切った朝がすごいスピードで
わたしを通り抜けていった

あっちの世界にきみはいる、その曖昧な位置
から飛び降りようと 変な格好をしている 
騒々しい 気配でコンビニのオレンジかグリ
ーンの光に包まれるのは、蝶になったみたい
と肌の色を錯誤するじぶんの事ばかりか じ
ぶんは理解できない対象となり それでもこ
とばでしか扱えないあなたのことを わたし
とすることのない行為でわたしを包むことが
できるのか セックスをしないひとをあいす
ることが生きていく意味なのだ 愛とはから
だに投げ込まれた包帯だ 血塗れになって包
囲されて 言葉で理解されたことだけ 一方
的な表現であった ぐしゃぐしゃのカセット
テープが飛んできて、黒いセンサーは でた
らめな聴覚を愛されて アナウンサーの声は
 愛されていますか 淡々と今年最後の放送
になりますとか、言われるたびにうんざりだ
から


色とりどりのそれを眺めている光に ただれ
そうになりながら、顔についたそれは切り傷
だったり 剥がし切れないティッシュの擦加
傷みたいだった
着ている服をぬがせてやれ、ティッシュで覆
われ 三角巾でつるされるままに浸されるわ
たしたちの水位。たくさんの傷を覆いなおし
て、破れたそれを、後部座席から 助手席を
抱きしめるようにもたれかかり駐車場で待ち
合わせた客にもらったお金をスタッフにわた
し 小銭はもらったことがない札束だけ 子
供のころは、小銭のほうがお金って感じがし
てた 本物を知らずにあつめたおもちゃのコ
インの軽さが気に入って遊んだずっと遊んで
いた そのコインが擦り切れてプラスティッ
クが見
えても使い古びたら、母はほかの遊びもしな
さいって、公園にわたしを放って いなくな
ってしまった

公園のアスファルトは転んだら痛かったでも 
それを誰にも言えなかった 言わなかったん
だ駐車場で目が覚めて映るレジの子のつまん
なそうな顔とか、たまらなくいとおしいとき
が、ありませんか。 温めた方がおいしいで
すと必ず温めてくださいの差に埋められない
 希望みたいなものに埋め尽くされて いま
す そのからだが温かだったとき ヒーター
で温まり過ぎたとき生きているのか死んでい
るかわからない違いを区別され いきてるの
を 明らかにできないよう 会計を済ませた
のに、まだわたしのものにならない感じ
手を停めるレジの彼女の 手持ちぶたさを待
って 沈黙に温め終わるまでの間 「電子レ
ンジ もういいんです 」話したときのはっ
としたような 笑顔。

包囲されているエアコンディションに、愛さ
れてあなたまだ ここにいるね。
わたしまだ 昼休みの常温がわからない 夜
分ここにいる


street#tube

  村田

皿を洗っていてわかるのは、それがとても汚れているのか さほど汚れていないのか
バクテリアの繁殖を、次々と 目に見えないメモガミエナイママそれは誰かの遺書みたい
腕がなくなって初めて 脈をとった とれなかったからだじゅうに血がついてだくだくながれていた玄関で。
塾に行く男の子が通る 同じ柄のコートを着ていて
損なったぶん色彩が 記憶をからめとる あの場所あの匂いに、行くのかもしれない
買い物に行ったら魚が 腸をうばわれてるところだったから帰ってきた

窒息の程度を記された教科書の裏側には、恐怖があるわ あったからそうね、喝采のうらがわには
神経がじょうずにじょうずに捻転されて 翻ったらきみのはなしていることみんなわからなくなるよ
ぼくのはなしているすべてが、
張り巡らされているわきみの平衡かんかくから
ななめ10°この机はかたむいているけれど、この角度をたもっていれば
どこにでもいけるしちっとも似ていないきみは
損なったぶん さしひいて やっぱりすきだから
校庭の外から か細い声だけをあつめた合唱を楽しそうに感じたんけれど内がわからやけにひかる 光を
辿ったり わたしに似ている人を
見つけた抽象絵画の理想しか持たないから風船持たされて
目から外れたアイライン、剥がれかけたペティキュアは欲望を映しださない
化粧をしすぎることなんて怖がらなくていいよ
あなたかわたしか わからないまま殺されてしまうから主語が使われないままの
骨が埋め尽くされるこの国には
陽気にくらそうとする気がないから視力検査のプロポーションがじょうずになって
よく見えなくなる頃にむかう よく見えていた季節に見ていた景色を記憶する
悲しい顔をする義務かのようにおしえられたけれど権利だからこそとてもかなしいかおがきれい

かなしいふりして塗りたくるキャンバス あいしているふりなんて
できないただ 
目はなにかをみたことがない
きみを見てみたかった
かんじないように午後にやっと麻痺してくる「あの、さむくないから傘かしてあげますね。」
細胞はテレビをかんつうしてしかかんじないせまいせまいせまいせかいだし
排卵してシャワー浴びてセックスをする流れがきらいだった 洗いたての排水溝を触られるみたいに つまんない
塩素はきれいになる必要が過去をもたらす 幸福な過去をもたらす 
それは写真ではわからないから、吐ききれないCO2を感じながらセックスした

耳がなくなって 絵画の渦が空にある青と違う色に変色して
わかるんでしょう
わからなくなる しゅんかん
わかるんでしょう
錆ついていて切れなくなったナイフをデリケートに扱うあなた
そうね、指先から透明な血が流れている
生きていく術が、凶器以下で見つかったのね
そういうあなたと バクテリアを交換する。それは毒であるのかわたしを殺すのか
そのどちらでもない
あなたを殺して逃げるためのしゅだんだから わたしは皿を洗い続けている
バクテリアは見えないけれど
権利だからそんなにきれいにならないでいいんだ

海辺の家であるから、汚れていなかった流れ着いたライフカード
って なんかあやしい。笑
残高が増え続けている負債を割り続けていく分母と
今日まで費やされた希望が 201429と記された日記が、流れ着いた
片腕で、あらかた右だったし
あらかた洗い終わってスポンジの汚れがきときとにしてしまう
ジーンズのポケット付近に汚れやすいが着心地がいい
たぶんそれ
高架下を眺めて聴こえる今日最後の悲鳴、それは美しいアナウンス
やけに姿勢がいい人と悪い人が、
同じ方向を向いて倒れこむ寸前。


you

  村田麻衣子

伝わらないと意味がないと
それしかない 噛んだストローが洗面台におっこちていた
コップとか、
病院の冷蔵庫が こんなところにあるなんて
配置が
おかしいし
噛みあとだらけ の
コップが投げ捨てられている。

「苦しい」とか「悲しい」とか
そういう言葉以前であった
投げつけられた
コップを床に みつけた
青い透明なコップはプラスティックだからか傷が
ついているいつも投げつけてしまうから
落っこちている

匙の上にのっている すりつぶされた
ご飯粒が
透けて 
差し込むわずかな
光をあつめ 掬いとられている観測であるその
すべてのきぼうが いいように
すりつぶされて おいしいかおいしくないか
その 生温かな希薄でもふくよかでもない ただおぼつかない
時折匙からこぼれては
冷たくなった 食器の置かれているトレーは。
滅菌されているが
口に入ったものがしばらくその低い沸点を
なだめるようにそう、その子の手はいつも温かだった

大人が子供にうけとらせた
ものがある 
わたしは、宿題がきらいだった
宿命を
あたえてしまう。だってさきに
いなくなってしまうから、
おとなたちは、
生きていてほしいという それで
まちがいなく
続いていく生命はうとましく いとおしく ただくたびれたようでいて
モニター上の心拍は100から120に
少し上がる
お風呂のあとだから
からだがやわらかくなって
すこしだけリハビリをする
時折
母とわたしは120の心拍に
ついて
笑いながら はなした
生温かだった粥がいつも
あふれた匙からこぼれおち それが
冷たくなる

ひねってから
しまった、と思った蛇口が洗面台で流れ続ける
送り出した心臓の血液は、投げつけたコップのようでいて
あのこの感情とは違っていたのかもしれない
憶測であるが
セメントはその流れ出た 違う流れの 力を感じていた

「そろそろ声出して
笑っていいい月齢なんだよ。」と、
母が、わらったかおをちかづける
「おもしろいこともそうそうないか。」と、
疲れた母の 頬の筋が くっきりと見えてきた

あらかじめ決められた
ただひとつの宿命
生きながらえると、
宿題をするにも早いかと、
ソウデハナイコノコハ一生コノママダ。
決別とあきらめをくりかえす
最初に覚えた言葉は
「ママ」だったり「マンマ」だったり
「アンパンマン」
だったり する
商標登録されないがその愛すべき
キャラクターとその家族たちと
はなしたことすべてが
わたしの
壊れた脳細胞のどこかに 蓄積されながら
つみあがっていく
わたしたちがつくりだすせかい
その子供たちがつくりだすせかい
わたしたちの作った つたないつたないせかいのほうに
流れてこんで給水塔の配管のようにつよく
つよく流れ込んでいくそのたぐりよせたらこわれてしまうような
淡い日常を あいしてやまないと、わたしはおもい
そのベルトコンベアーをつくったんだと、笑ったあなたを
たまらなくすきだった

かつてつくりだした世界
こちら側のせかい
駅には分別されたごみが
透けていて
あちら側がきれい、と思う。
捨てられた新聞には、
被害拡大なぜ防げず 
と何のことかわからないから
目を凝らすと 幼児虐待、と書かれていた
透かした向こう側に人々が通り過ぎるから
とらえた光が表面を
生温かに 潜んでいる
廃棄的発想。
向こう側で手をつないでいる 背の高いおんなのこと
背の低いおとこのこが短い髪で にたようなシャツを着ていた
優しいやさしい時間がながれている


つかんで そのこははあくする
離せなくなってしまう大人の指を
傍を離れられなくなってしまう大人と
ついて消えない感触はあの子のものか大人のものか

おなかがすいて くちを もぐもぐしている子を心配そうに見て
こちらのことばのよくわからない 中国人の母だったろうか
おしゃぶりをもって
「これを たべさせて いいですか? 」という
いっしゅんとまどって
いいですよとまよわずに いう

触っている血液が誰のものかわからないまま
流れている 夢をよく見る
いろんな子のところに行っては 出血をさがして
ああちがう ああちがったとわたしは走り
子供はびっくりしたような顔をする
母のものか子のものだったのか
誰のものかわかれないけれど
流れ出している それを探し当て手で押さえて
とめた
泣きながらとめた
なんじかんも もう流れていないのを
確認しようと汚れた ガーゼをはがしたら、また
大量にながれだしてしまった
そうやって目を覚ます


歯が生えた
萌出していたのを見て
痛んでいるようにも見えたから
いたいの?
返答はないけれど心拍数がすこし高かった
きっと誰にも聴こえていなかった
真夜中2時


籠のない日

  村田麻衣子

あの瞬間だけ
存在していたあなたは
監視カメラを覗いている
そのフレームにあなたが浮かびあがる
僕が
記憶の先端
そのぬるぬるとした
かたちになり
そのいつまでも10cm程度
それは小さなあなたの
腕をじたばたとそ
させて大腿は
均されていつまでも滑らか
めりこんだまま
わるい とても悪い
思考がこんがらがったままです
遠くから聴こえる救急車が連れ去った
その日付時間
消滅する
迷子の神様
といなくなって
いたことしか
憶えていない
指をさす
翳が飛行機雲の上昇が終わるあたり
12階の部屋の裏側 とてもきれいなものが
消滅し
空に
堕ちていった
そのように あの時は
歴史を
もたず
去った

もうすでに存在しない
産み終えた母もすでに、母の母を失い
母のことを思いだすのは
母が病んだとき
その日は、餌が得られないのは
しかたなかろう
刈にいかなければならず
わたしといると
二つの異なる映画のヒロイン
ヒーロー
僕であるかのように
喉がからからになったり
くたくたになるまで
働いたりした

使ったことなどないのだろう
いびつな 母の杖を
砕いて
籠をつくった
母はいきており
はつらつと
訪れた


杖は枝の
芽吹く前からそうなるまでの
瞬間を成り立たせて
いる
死んだ眼の少女の映像が時間を経て
やっと、
想像が
更新され大量生産され
違う電極をもつ
産物になる。

花の記憶にも
ぶちあたって
それは過去にとどまっていないから
母は乳房が大きく、
安くくさい看護師の帽子をかぶって
誰かとまじわっていた
後ろ向きでよく見えなくて
誰かの事をいやだと思った
大きい乳房
その質感がわからないのはいやだと
後ろの大腿から
見える膣の ひだが 
あまりに美しく
そこにあたかも存在していた
かのように僕は
滑稽に
ふざけたりした
あなたの意中にあるように
振る舞った
僕の
すべて
赤子は
奥歯で噛む
身体の奥底から欲しているもの
その杖が突き刺さって
地面につけた足の
こそばゆさ
母の立位をたすける
母は湿度そのものであり
あとは美しい建築にあこがれて
そこから離れようとしなかった
やさしさを
僕にほうばらせる
ひとつひとつの存在へと
変化していく
その強さわたし自身に
たわむれる
わたしの悪い癖を知っていた
触ってはいけないところが
あまりに多く雛鳥のように
逃げだしたくもなる
私自身が
そうであったからかもしれない
見てはいけないもの
食べてはいけないものに
晒されて
溢れている素粒子の顔を描き出し
走り出した
違う電極を、与えられて
わなわなと戸惑っている
わたしば
溢れ出ている公園の蛇口を
とめた
得体のしれない衝動を
戦場から日常に
もちさることはできない
その日常に晒されるだけ晒されて
皮膚の未熟性が
ゆういつのつながりとなり
母に触れては
あたたかだった
記憶にぶちあたる
そして光量をあらわすメーターは
振りきれたところで
静止している
だからわたしはあなたの顔によく似ている
あのこにも
よく似ているという
あのこは 母の杖で籠をつくる
あらがったじゅうりょくが
僕のところに
かえって きたかのように
あなたそのものが
突き刺さってとれない

やわらかく砕ける骨が見えるのだという
まだ母は杖など使ったことが
ないというのに
つながった違う存在が
あやうく ふるえている
ここまで あるけたと
地図を見せる
ここまでならいけるわと
軋む
その音は、
聴こえるのだという


水を抱える(botanique motif)

  村田麻衣子

わたしはわたしをころしたい 
それだけを申したくて今こここの円形の屋外劇場の後ろの方に 立っています 観客のぼやき あなたのことなんて知らないわ とか馬鹿げているなどという 声、それがわたしの輪郭をなぞるように はっきりとした意思へと向かわせます
ああ、こんなかたちをしているんだ 
喉の奥がわかっていることとそうでないこと 嘔吐の後に、トイレの前で涙目になっているおぼろげな景色も そうが流れていく音には懺悔も混じりけのない純粋なものに近くなる頃 運命には向かうべき方向が備えられ あらゆる方向から一つの意思を導きだす 重荷ではその時を迎えられない性があるゆえに 荷物は座席に置いた
 
初演が、もう始まってしまいますので ここで始まる 古代から伝わる悲劇のかなしみは、360度から迫りくる現実との対比で ここには 一滴の雨すら降らない。人々のからだから抽出される 涙さえ、年を重ね 枯渇する真皮の奥やそのなかに存在する言葉や堆積にしかみいだせません 
くたびれた だから、わたしは詩を書くのでしょうか それは紙が汚れることです
コラーゲンの入ったスープをコンビニで買って落として からだのなかで汚物にならずに 
雨の日の駐車場が汚れた
暑い日の空は、体の中を熱くしていたら死んでしまったでしょう だからよかったのかもしれない

冒険のような人生において 真夜中の国境付近は、たたずんでいた子供たちの鼓動より先に響いてくるのがわかってしまう あなたは生きている
 ここに。此処に、夢の手前で立ち往生する 

水が流れました わたしのなかの血液が うなだれたわたしの中で騒々しい 冒険に関しては、恐れをなし吐き気をすら、憶えました
それが 本当のことを申すと 吐きすぎてもう生きながらえないほどです  
わたしはここで、最後を遂げたいと思っておりましたが 口にするのは遅かったようで 誰かが 空き缶を投げてきてそれが顔に当たった 馬鹿らしいというからには馬鹿らしいのだなと 客観的には


わたしは 立往生しているが 崖の下に転落するのはほんの一瞬で きっと時間がかからない 
あなたは 雄を迎えたことなどないと言い ああそうなのと その人を祝挽歌と呼んだ。ちゃんづけで呼ぶと調子がいいのでそうした 生と死その2方向に、その命の糧を。滴の燐光を。分け与えましたあなたが見た世界と私が見た世界 あわせて360度 ばらばらにして180度ずつに隠された光の粒子 それぞれが目の奥で潰されて暗幕が掛かる 美しいものを護るように お互いに 言葉を発せずに触りもせずに 繰り返した
それが 死とのコミュニケーションでした
 祈るための公園すらいらないよと いやいるよと わたしは主張し 潰されなかった 虹彩は大変平坦な 破裂を起こしましたが 水の流れとともに穏やかな平日が描かれていました わたしから水が流れ出すということが滑稽で 戯れている噴水の水が流れ出すという想像で瞼を閉じました 

膝を折りました ええ抱える間も無くそうして人々のまえに新しい存在として膝をついて 迎えます 産んだことのない子供を抱きました あやすのがおせっかいにも 好きでした  わたしを呼びましたか そうすると
こころのなかが荒れ狂い 狂わされたくなどないのに静けさがやってくるのにはやはり時間を費やすしかなく 一瞬の秒針の狂いであればどんなによかったか
求められてから 本当にわたしでしょうかと聞き返す 堆積を終えた砂がしっとりと鎮座する
整列の美しさなど 憶えていますか?いいえ 

往年の堆積が始まる 自然を成してから 与えました あなたたちが、澱ませた世界のなかでね 公害の空気を吸って育ち 間違っては同じように修正液ばかりを使い 削り取ってやったら 汚らしくなる空虚さに はっとして それからあなたの裸を思い出させた どうしてか透き通っている あまたの希望を背にしていてもなお積み重ねられ
地層を偶然にも 鮮やかにしたのでしょう
わたしは 死なない 代わりに詩を書くのをやめてしまったのです
植物の断片を収集し 人間にあまたのことを尋ねましたので 偶然にも発覚したのですが
わたしの考えは傲慢なのです
なぜかというと
あなたに向かいあうときの
やさしさというのは、わたしの唯一の創造物だから


ひずむ音になれなくて ゆがまなかった

  村田麻衣子

アスファルトのうえに芽吹けなかったものがひずむ 静寂を描きかけて 
やめて熱量がたちのぼった瞬間。目に映るものの すべてに記されたの
が記号でなく水彩画でよかったね 泣いてもにじまないアイラインなん
て風情がないけれど きみが きみ自身が滲んでも滲まなくても 叫ん
だことのある人の顔だからね

流さないでいい想像の中での血は、現れるまで 流れ着くところをえら
ばない 昇華されなかった思いがすべて そこで 透き通って 少女が
踊るのであなたかどうかわからないけれど きれいなひとが 溢れた世
の中でよかった。

そこまで及ばない馳せられた思いも、彼女の嗜好がなんだったのかに変
換され雑誌に書かれていて/





          抱え込むようなかっこうで街を歩く 雛鳥をからだ
のなかに 放した 腕の動きがどんなにたどたどしくても、消耗していく
温度を、右手から左手へ 広げながら 深くお辞儀した 骨が見えて 
もう雛ではなかったんだ 
鋭い目つきでわかった 閉じ込められたこの気持ち ねえわたしが き
れいでいることとなんの関係があるのかしら 路上の測量の読みにくい
文字があらわせた 踏みつけて そういう形になった そんなつもりは
、なかったんだよ 綺麗な少女のふくらはぎが世界を描こうとしている
じゃないか 二つに一つをえらべない時に てのひらに 在ったがもう
すでにないものを、泣き腫らすほどにそう。声にならなかった凝縮され
たものが胸に 垂れていくほどに あたまのなかは重みがかたよったま
ま満ち足りていく 
二つの脚に。宿るあたたかさは、交差することを。赦された 偶然だか
らわたしのなかから排除したのは あなたでしかできなかったことなの
に 生きていることを許されたような透明な血液が、透き通ったんだ 
そこまでひどく人見知りをする 反面 歪むかもしれないけれど、握り
しめました わたしのものでなかった
あなたの手でした 
 かなうかわからないことだらけで信じられなくて 滴りに消滅する生
命の。かけがえのない。筋肉の層は、厚くなるだろう、その消えかかっ
た跡のうえを、歩みます。
そこにいるだけです。なんにも 言わないでさ 重い教科書持ちきれないでいる
持たされて まだ憶えていないことだらけが記されている その重さに耐えて 歩むのがやっとでした


玄関で脱いでしまった靴のせいで 足に傷をおう

  村田 麻衣子

ガラスは目にみえないんだな
白い浴槽に ぜんぜんたまらないわたしの血液
こんなにいたいのにぜんぜんながれない
傷が、大袈裟に見えるものばかりを芸術と言われてかなしくてくやしい

あなたの眠りが深いときだけに 発作は 静まっていくけれど 気のせいか 嘘じゃないかって 時計を何度となく見ている
鮮やかなまでに、
洗いあげたのだがまた
それいじょうに 毎日の虜になってしまう彼ら

「ここまでいっちゃいけないことを、カレンダーに書いたのに ひどい言葉をまた繰り返し言うのね。」
「今日の欄には、なにも書かれていなかった。日記みたいに思っていたけれど、 寝ているあいだに何か書くのなら日付と時間を記すのを忘れるな。」

飼い慣らせないでいる怯えている子がわたしみたいで不憫 トイレにもう使わないCDプレーヤーを再生して置いた
臭いを落とそうと何度も設備を洗うのだが、
きみを洗うのには、いつも罪悪感がある。
きみを失いたくないからだ。
石鹸の臭いはあなたと混じった途端からもうあなたではなくて それは あなたのお母さんみたいにもう跡形もなく
石鹸は溶けてなくなったあとに あのこはうまれるのでしょう
わたしのかさかさの手 足には、きらきらとひかるガラスだけが、残っていました。

文学極道

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