#目次

最新情報


キメラ

選出作品 (投稿日時順 / 全18作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


恋人

  キメラ

淡い彗星到来
さわりぞら
沖網に掛かる
幾千の廃絶が決心を垂らす

鉱石の連鎖
明滅の香澄
二重のIラインが
悲しく咽び濡れ

散ったのはいつだ
散るのはいまだ

微かな声を
手探りでさがし出す
午後は纏まらず
幾ばくかの敗北と
薄紫のレインコートから
水滴だけが在為を知らせた

遠い汽笛と吸い込むべき気圏には
いつも
清々しい想いでが空を創る


君よ
白いセスナの羽を翔け
より栄える真紅の吐息と
蜘蛛の巣から
細くたなびくひかりの糸に
油性の湿りけを
与えつづけよ

ああ
人里離れ
寂しげを
私の永い黒煙に纏い
岩戸や閉鎖の怖い風刃にも
泣くなよ恋人

岸壁の庵
儚いしゃぼんと白熱灯
黙殺された純真に砕けたのは
確かに四月とわたしで

ゆらいだ紅を水面に溶かす世界が
暗寂をはねつけ
君の香りがひろがる


嘘なんてなかった


この世界で生きたい


永遠

  キメラ

相反する心情を瘠せた天秤に揺らし
語り始めの薬指が気だるいエレジーを集めた

訪れの春 もう10年も前だったか
遅れた控えめとセンテンスは
8年前には歪めながら
飲み干す牛乳瓶の翳しのように
無責任な時節をしがみ付けた

永遠についての確固たる道標
散り散り
乾いた風にも馴染まず
たくさんの手記の中じっと押し黙る


“間違えただけ”
そうなのだろう


画集の数ほども積み上がるわけ
軽い嘲笑のような日々に耐え難くも
いつしか
消え逝く面影を数分で呑み下しては
不幸なんて云う
実直な死やらカタルシスを
稀な宝石のように繋ぐ


“間違えただけ”
違う


そうじゃない
欲しがったのは欠片程の産声をあげた魂だ

哀しみの海に欠けた水性を憂い
星のさざなみに
繋ぎ止めきれぬ白日に
この胸の切り裂きを
叶えられなかった蒼白い掌を
照らし続けた
ひかりだ


すこし突き放していた4月
永遠を見つけた

レール遥かを見つめ
歩き出す歩幅に
恋人のような月明かりが先を照らす


永幻の波紋

  キメラ


現実からほんの一枚渡った
終焉にはアトラクションに明け暮れ
少し足早な人々の無音
白い熱灯の口に端をくぐらせ
ひかりを柔らげた海辺の舗道
澄みわたるミント風 頬を撫でた

露摘みのテラス
頼りなく錆びた音律は
焦げ茶やら黒に浮き彫りのまま
波ひとつたてない水面の冷たさで
認識を連れ去った後のカンヴァスに
切ない火華を散らす

空中都市には宝石届かず
届かぬ彩色の建造物にまだ在った

あの日観た
夢とおりのわたしの顔


黒夜にとけ
雲海をくるくる形に変えながら
完全に同化した異星のメインアートが流れる
規格外の巨大な帆船が浮かび
鮮やかなオーロラ色の4D
氷点下のさざなみ
ハレーに跨った魔女はせわしなく
宇宙塵を光年のかなたへ吹き上げながら
平均率を奏でる

それは
ちょうどよい紫の雪に
掠めゆくしら雪の懐に
最果てから
誰彼知らず繋がれた祈り

つぎつぎ目映く
わたしを通しては
幾千の高鳴りを知らせ
悠久の銀河を瞬く永幻の波紋よ

やがてこの空に生きよう


佇みからほんの一枚渡った

夜を告げる灯台のひかりが
すこし遠浅の海にひろがる


めぐりあい

  キメラ

満ち欠け体温に揺らぎ
天辺から途切れる
あなたのような電燈が
バチバチと胸を焦がし
歪んだ季節に羽化しました

明け方の冷たい窓の外で
燐粉を降らせたデッサン
レースから特有の孤光
まるで押し黙りながらも
太陽から生まれた幼子の顔で
切なく通念の銀埃を照らします

思えば随分不埒に生きたものだ


指を掻き毟る
甘い夏の木漏れ日は
イメージより早く溶けあった
二個の若輩

足取り緑の園
ひかりの洪水とめどなく
遙彩が融けた月光
秘密をうちあけながら
眠っていたのでしょうか

面影が香り
真剣な世界に知らせた
あの高鳴りを奪ってほしい


ああ
もう一度
めぐりあい

無理していた
足元に解らせた
失くしてしまった灯りが
力尽き

ふたたび甦る


言葉なんかいらない

あなたを感じたなら
いつでも


メモリーズ

  キメラ

白びかり記憶の母胎に孵り
廃絶したお前の空が瞳を覗き込む

空襲に焼け落ちたような是空
一呼吸遅れた廃艦のパヴァーヌは
憂愁を吐き出し
幾つもの波風を舌に絡めた

凍りついたのは
純真を見返しては巡った岐路
乾ききった無防備な皐月は
優しく見知らぬ死の薫りを吹き込む


あの日
解らずにただ泣いていた
振り返らない白い少女の
ワンピースが深緑の幻光に消える

しめやかな囁き
大海に蒼衣と永遠を劃した
可憐爪弾く哀しすぎた埋葬よ
ああ
面影
照らせ
切なる融解を穢れた漣に散らし
赤い日輪の殺戮
崩れ去る瞬間の苛烈な獅子を殺せ

残響に燻られた善心
転生の兆しが六番目の指に繋いだ
柔らかき感触を諭した


メモリー
中空には失跡の影
今も尚
ひかり続けていたわたしの欠片


ムーンライト

  キメラ

あなたを想いだす
その限りない閉鎖の表情で
おおきく柔らかな時間の傍ら
水桶に冷えた胡瓜のように
あなたはそこに在った

変わり逝く影象に飛び込むシソフレ二―
いのりは膨大に伸縮された
澱む底辺から それは静かに
奏でられることのない不協和音の暗言で
あたたかな呼気にうらはらな唄を刻みつけ
舗道に蒼く結晶した零配管のエレメントが
あなたに星の涯をとどけた


わたしは知っている
あまりにも繊細なモノトーン
鳩時計が告げた独白の中心で
あなたは願った

それは重なり合う世界の外側から
たったいま わたしを突き貫け
幻廊ゆらぎ逝く 永き放物線のさざなみ
くぐり抜け辿りついた 淡い初夏の陽炎
スロウラインに哀しく明滅する夜光虫と
シルフィードの琥珀玉

夢のように消えてしまったわ


もうすこしあるこうか
あの湖畔のどこか あなたが
いつかみつけた永遠がまっている


水面に佇みあなたを想いだす
高架の林道からのライトが
そっと涙を照らし
あなたのような月が滲んだ


あめのあと

  キメラ

ほんのりあまき内在にひろがり
くうかんのふちに輪舞するはもんを
凍ったひとみでいつまでもながめていた
ひるがえす そのひどくやつれた鋭角に
うらぶれる一閃のかぜ 死といわれるものやら
うっすらひとつ灯 なにかの色火がともる

亜響フィトクロム ゆめのあとにくぐらせ
暗いくらい日本歌謡オルゴールがわたしを燈籠にする

なにひとつの あかるいとしるものもなく
ゆるやかな光波の偏光 オリオンが媒介したあしもとに
ほしのかけらを砕いてとかす
とうめいがふれてくる

もしも ゆるされることがあるなら
それはきっとあなたからもたらされた
青い鳥のためいき かわされたやくそく
いくせんのしんでいったおもかげが
あのとおいような 掌にとれるその宇宙から
しんしんふらすエンジェリティーを結晶した


あいをおぼえた あめのあと
こいをうしなったまどべから
ぬれた賛歌のつぎめから
ひかり はじかれ
あふれだし
こえにならぬものがふたたび燃えあがる
 

はじめてだれかをまもりたいとおもった

あめのやんだ星欠けのテラス
あなたが あなたのこえが
わたしにはすべてだった


童心

  キメラ

いしきとまる裏通りの星にふれ
かぜにひかりながら
まきあがった燐屑のポケット
スペースから既に世界は切り取られ
創傷な気圧はとても静かな私をうけいれた
しばらくの沈黙 またたき彩られた荘重
私をつれさり 繋ぎに赤い火花の絶音
にがりしめやかな強烈よ

ゆめ甘露と鼈甲飴に薄くひいた
自転のチューブを横水にくぐらせ
鬼の百夜ひそか レンゲ燃ゆる春のまぶしげや
めまい散らう 幾ばくかの変心光が
水晶石の洪水となり深緑をうめつくす

なんだ なつかしい匂いじゃあないか

きらきらひかり さらさらあそび
いろあせず とおくまであるく
もえていたのは 硫黄かそらか
すぐよこのほころびに 蒼い冷酷の点在
火花を放ち ずいぶんおおきな古代のかおも
ながれながら明滅したものだから
わたしはいそいで星なみをかつぎ 
おどるくちぶえに 漆夢を弛ます


たそがれていた夕刻のかわき
メンタリティードロップ 麗らかに
口端でなめして想う童心から

あめがふれば あさのうち曇り


殤心

  キメラ

面影はなくなったのだ
そこにはたらくちからを
しばらく考えもする
不条理ではない 赤い血だもの
とくべつはひかりを放ちながら
平楽のなか 潤いはかぜだったか
中核にむかい やがて永い花屑な時節にすら
罅をえがき 淑やかに染みいる囁きなら
なにを罰とすればいいのだろう

特異なるはひとの変身也
否 戒律から逃れれば
或いは救われの岸辺に
恐ろしく曲々しき電発性の対価
灰色ではなかった黒雨
曇り空にくぐらなかった
あまりにも甘美なる逃走への残骸よ

塗り込んでは そこから傍らに強く靡いていた
なぞるようないのりと 淡き幼さへの終焉奏
ことごとく尖った水泡ひとつ
まもりとおした希少な日光日和よ
残響は充分ななれあいを砕き
面影
ああ面影

ひさかたのうたはこれから埋葬されるのだ


ひたり火

  キメラ

まるで偏執な物体が希少に向かいあい
執拗に岸辺を凌駕しきれないでいる
“失う”とは時になんと甘美な転生なのだろう
在るべき場所にモノが無くなる便宜上の不備
モノローグの反響が外界の冷旋に浚われたような失念
肌で覚えたシンパシーから
その琥珀を埋め尽くす 風光の彩よ

凍りついた警醒と溜め息は
心の触れあいからのみ賜る 柔らかき球体枠に
いつしか枯れた吐息を吹きかえし
物憂げな窓辺 焦点を失った終焉の唖響
銀河軌道の亡き半世紀を媒介し 乱れとぶ蒼羅漢
慈愛のヴェール 妖艶は地平の尺度に犯され
のち刹那に狂絶したままの幻暈の汽笛が
かすめに絶叫している

“とうめいが触れてくるのが解るか?”


様々に流れだした 宵のひたり火
かえれない祭囃子
永劫を纏い
世界の側線から
いま

いちじるしきおもかげに砕けよ


まさゆめ

  キメラ

ガードレールしたから日輪の渇きがきこえる
大日本中央玄関から地下室の銅線は溶けず
人波の側線でゆめのひびを考えていた
逢瀬の恐怖と喚起をもたらした10月の秋風に
センテンスの膨大な夕闇と声色をしたため
黒いワンピースが視界のなか揺らめく
脳髄から瞬間にセピアはめくり挙げられ
ゆびさきが冷たさを失った

秋風の御壕 スワンが餌付けをねらっているのだろう
対照的な時間枠や波紋を散らす数枚の落葉が
水面下のこどくな屈折ににじりこんでくる
物語のように焼きつき幾度となくふきあがる
噴水イオンの涼しげ
泣き出しそうな雨を待っていた
かたから冷たさがふるえながら
まるで跨ぎの小川に無邪気の足枷
痛々しくも頼もしくひかりに流れる

真っ赤な可憐 肖像を色彩の果て
ここまで連れてきたというのか
赤い花壇遠目の天使 はねにふれながら
オレはもう始まりを覚えずにはいられない
銀座的虚構 包み始めのメロディーが
退廃ではない音律を間引いては
間隔なんてものをカタルシスに委ね
ぼろぼろだったから伝わりはしなかった
エントランスに逃げ込む愚見
下方からの吹き上げる狂叫詩は弾き
耳が囚われている 裸足のまま開かれること
変態奇知外の性行為や滅裂陶に
ステップを鳴らし 心音が空間を媒介し始めた
罪びとだったプリミティブは空白をとびこえながら
かさなる二個のへや影をあそばす 

ほんとうに弱いにんげんなのだった


大きすぎて手に負えない星のこえをきく
かなしみ
かなしかったから
丸の内が
燃えた
きみがないた 血流にあたたかで
すべてを砕き
かなわないくらいのもの

オレもう生きるのだめなんておもっていたよ
きみにあうまではずっと


  キメラ

起きたての薄ぼやけたひかり
ひとつまたひとつと現れては消える
いつもの窓から朝焼けは時をしらせ
人が死んだ世界で誕生する
彼にはそんなことはどうでも良かった

彼の名前は誰かに知らせる為には存在しない
通りを歩く楽しげな笑い声
海辺のショッピングモールでごったがえす
買い物客の喧騒や心地よさも
彼は流れ逝く全てを対象とし
世界の外側から絶えず見つけ
流れ逝く全てを愛した
初恋の甘さもなく
愛する人の腕の中で見る
永く柔らかい夢もない
ただひとつ間違えなく云えること
彼は決して恨んではいなかった

まだ彼が小さい子供の頃彼には父がいなかった
彼の父は幼い頃白血病を患い若き死を迎える
彼には父親の記憶があまりない
彼は独りで遊ぶことが好きな少年だった
まだ誰も知らないであろう場所まで自転車をこいでは
見つけ出す全ての新しさを好んだ

広い空き地で彼は
一人とても冷たい風を受け
心だけが風を受け入れられぬまま佇んでいた

夕暮れ
空一面を彩るその荘厳に
彼は自分の足元が少しだけ立派になった気がした
夕闇に風がシャツを心地よく揺らす時刻
片隅に捨ててあるひとつの玩具を見つけた
それは電池式であり
繊細な赤や緑の糸が幾つも施されており
電池を入れると内部の電極を通した糸が光り
点滅を繰り返すといった玩具だ
しかし彼には電池がない

どうしようもなくそのひかりが彼の心にひろがる
ひかり・・の点滅がほしい
えいえんにきえないひかり・・・

彼は自転車に乗り家路を辿った
ひかりの玩具は空き地の片隅の樹の下に隠し
何となく見つからないと彼は確信していた
それは紛れもない彼自身だったから

家に着き二階の陽の少ない部屋へと進む
そこには時折思い出したように
薄笑う彼の顔が在る
彼は両腕を天井の方に向け歌う

ピカピカ、ピカピカ、僕のお手手に赤い街・・
ピカピカ、ピカピカ、僕のお手手に青い森・・・


ひどくつかれていた
完全にひとつの運命のようなものが
灼光した炎のように彼の中にひろがる
彼はまだ気づいてはいなかった

あらゆる朽ち果てしモノの中で
大気すらもいとおしく彼の表情をなぞったことさえも


あまやどりの停留

  キメラ

くらやみの中
また携帯のひかりだけだ
通りには車の行き交う音が
すこしだけきょうの反省のような音にきこえる
ふるえていた
似ている夜のかおは
きみのぬくもりみたいに温かくはなくて
オレは決まって何かを夜に守っている

10年後の空からは酸がふる

その土地での生活はまるで苦い覚悟のような味で
甘さはすべて君だと聞く
ふたりで観た
くらやみのオリオンは架空であるなら
ふたりでオリオンを背景に裏側までもすり寄らせ
むかしばなしをしてみたい

その一瞬が10年をとかしたから
一瞬で10年をきざみ歩きだす

そんなことって
まだ残っていたんだな


最終のバスはいってしまった

あまやどりの停留だよ
星空にないていたらふと
横にきみがいたのは


夜の行列

  キメラ

ビイ玉のまるみには
ひろい海があった
王珠水の波にたゆたう
憧れがあった
退屈なリゾートは
檸檬かぜの詩を
憔悴の日だまりに届け


無声にて泣いていました
すこしふくざつな梟も梢にて
銀粉雨が降りやまぬ
小指どうしの間隔に白昼通さず
唯々そのさよならが
ずぶ濡れの足元
陽光の残り影を
つめたい月に暴きます

だからわたし
夜の行列に独りで佇みました

ずいぶんと色々な
夢幻も手に踊る
綿のように彩づいたゆき
埋もれて
きのうを投げた
その霞みのアモーレよ

蒼い抜け殻を真澄の心室にひたし

そうでした

とおい昔
及ばぬほど真裏に
窓を見下ろしては
わたし


真夜中のせせらぎ
ちいさく波状する水鏡のいびつ

あんなにもいとおしく
ありさまを零したりもしたものですから


しょうじょめしべ

  キメラ



なんで
けいたいなんか
できたんだろう
むかしはさ
こんなのなくても
つたえあえたんだよ
おもいだして
くれないだろか
ちいさながめんから
ひろがるせかい
ほしになったり
なれなかったから
ひとでにかわったり
うみにしずんだかぜ
りくにあがった
しんぴのいろがみを
とどけたよ
まーめいど
ねったいやのなか
てのひらのうちには
けっかんをすかした
あぶくのうずしお
すくいきれない
けだるいひみつは
ねむっていて
もしも
もしもぼくのてを
にぎってくれたなら
つたわるのかしら
ばかげたねつ
たのしくも
きらきらひかる
みずのそこに
みつめる
いちずで
どうしようもなく
とおくはなれた
あのことなんかもさ

ゆめじゃなかった
そっと
おしえてほしいよ
だめだろうか
まーめいど


すみれレイン

  キメラ

遠ざかった
昼過ぎの暑さきびしく
伸びやかにあれど迫り来る
車輪きえず
心すれ違い赦すことばかりが増え
いつしか
灰色が世界の四季だと知る

なんのいみもなくて
かざぐるまのように
力無き部品を彩る自動車の加速
国道から海沿いの辺鄙に
船の博物館があった
蒸し暑い9月の熱風
揺ら揺らとあの世とこの世を遊ぶ
勤務時間内だし抜け
人影もまばらな博物館は
まるで死への入り口のようだった

ここをでたらおわらせよう
ここで終らせる

おびただしい
すみれの雨がふる
虚妄色した喜劇どものパントマイム
根付いたものを愛した幼少
ふと船幽霊の文献に目がとまる
目がはしる
さいごの興味は質素な海の話
食い入るように博物館を覚える

だれもしらない午後の
だれもしらない絶望
だれも
息をすい
空中に冷気パラパラ綺麗


ぼくだけの雨は
すみれレイン

いま解ったよ
うまれたときから
そとは晴れていたんだ


クオリア

  キメラ

虹をゆめだと信じていた
やさしいカラメルとパンの朝
七月のゼリーにミントふりかけ
自転車の海岸線には真白い花束をかざろう

朦朧と浮かび
流れる知人やら故人の顔
なにもない巨大な空白と午後に
風が香りを覚え
さし伸ばされた手のひら
摘みとられたすみれ色のしずくが
透きとおった陽光に耐えながら揺れてる


こんな離別

きえたはずの鳥
青い鳥のテーゼをしる

宝石がつぎつぎに触れて
零れるくちびるなら
夜の半ば
風はあまりにうるさく
ぼくは手探り水銀灯の明滅に
儚き蝶をえがく

月あかりに突き放した
怜悧なさざなみが託した
とめどない涙
涙よ


ゆめじゃなかった
きみだった


青いことり

  キメラ

少しあるいてはあしもと
黒い四角形のキューブだったから
反射する光もなさそうで
光を探していたきみによく似ていた

きっと佇んでいたはずの
帰らない買い物手さぐりで
夢幻なの
そうでないかなんて
ゆるい夕焼けいつもは響いた

こころの裏付け
寂しいってしらなかった
なんども赤トンボをえがき
なぜ兄弟はあのかわ縁に
ぼくにも似ている緑をわらう

うしなわれたものはなんだなんて
ふらつきながら深夜を飛ぶ鳥の
痛々しくも宇宙の形
しているのかもしれないそれらに
柔らかい羽根を認めなかったのは
おおきく並べながら
せかいの形をつくっていた
過失だからだ

 ほら
 せなかから
 きみの羽根はずれることなく

はずそうとする夜
いつだって裸でいたきみによく似ていた
歩幅はそろえた靴の間隔で
いつしか丸いしゃぼんになって
丸の内を飛んでゆくから


よくにている
寝そべりながら探していた
あの頃の僕も

きっと旅をしていたの
それを知らなかったぼくら
なんども寂しくて

文学極道

Copyright © BUNGAKU GOKUDOU. All rights reserved.