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発起人バトル

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17 : 花を齧る  ケムリ '06/10/20 00:14:08

ささくれた平原に、とろけていく連なり。
輪郭をたわわに広げたあなたが、両腕で深く折りかさなっていく。
女の子の吐息から始まった音楽、白い鳥が空気の中で磨耗していくことに似た
大気へと螺旋が貫いていき、ぼくはいつもロケットの打ち上げを寝過ごした。

あなたが生まれたときには、きっと誰も痛まなかった。
えいきゅうに滑らかなかかとで踏みつけていくんだよ。
細く病んだ食道を、削れた永久歯で、花びらが通り抜けていく。
まだ埃にさえ痛んだことがない、滑らかな虹彩の海の中へ。

冷蔵庫開け放して、溢れた光と匂いの中で、粒子の羽ばたきを数えていた。
背中に触れてはいけないことなんて、ずっと知らないままで。
乳歯を噛み砕こうとしていたら、いつかあなたはまるみさえ帯びたままで
花を齧る夜のためだけにしか、もういない。

そうしつ、と繰り返すことが歌であるなら。

平原は蔦に覆われたがっている。
腐っていく生殖器へ、誰かがそっと種を植え付けた。
とろけていく歓びの中にだけ、あなたはそっと足を降ろす。
くろい水のなかに、やわらかいつちふまずが落ちていくのがわかるよ。

えいえんに汚れないつまさきを、黒くよごれる余地さえない親指のつめで
あなたは平原のなかを歩く。
海はいちご色に滑らかで、窓辺には一枚のシャツがはためいていた。
どこまでから、どこまでが、さかみちをあるく曖昧さで。

花を齧る。薄橙のグラデーションのなかへ、永久歯が削れていく。
手折れた分水嶺のほとりで、背中を丸めたまま。
砕けた花びらは、肋骨の隙間から風の中へと消えていく。
そしてあなたは生みつづける。やわらかな巻き毛の子どもたちを。

平原に幾筋かの川が流れ、羊歯の卵細胞が泳いでいく。
雨降りのたびに草原は広がり、あなたの輪郭は薄れていく。
子どもたちは笑いながら去っていく。
花を齧る、肋骨を風に泳がせて

>> permanent URI: http://bungoku.jp/pbbs/20061020_189_17p

  • Toat :
    こんばんは。

    発起人就任おめでとうございます。
    めでたいことなのか、僕にはよくわからないところですが(笑、いえ、皮肉ではなく)。

    こういう傾向のケムリさんの詩は、僕はやっぱりあまり好きではないのですが(ごめんなさい。前にもちょっと書きましたが、「creep」は好きだったのですが)、その受け付けなさがどこから来るのかというと漠然と"雰囲気"なんですよね。ちょっと適切に言い当てられてないかもしれませんが、"善人臭"のような。あるいはキレイさ(キレイゴトのキレイです)。観念的に言うと、孤独であるはずの人間同士が癒着しているような生温さ。前に"歌謡曲"と失礼にも言ってしまいましたが笑、やはり同じような指摘なのかもしれません。
    こういう印象を与えるのは単語のレベルから言い回しのレベルまでありますが、例えば「女の子」、「ロケット」(「爆撃機」なんかもそうですが、読者としてはパイロットや宇宙飛行士等の青臭い連想を微かにしてしまうように思います)、文末の「よ」、「やわらかな巻き毛の子どもたちを」、ひらがなの多用(これはもちろん良い効果を生んでいる側面も当然あると思う訳ですが)とか。

    これに関連して。
    「あなた」という存在なのですが。
    例えばNizzzyさんの作品の中での語り手と「あなた」の関係は、どこかストイックな貴族的な関係というかクールな関係というか(すいません感覚的で)。
    例えばダーザインさんの作品の中での「彼女」や「桜色のワンピースの少女」は、触れたいけど触れられないというような、愛を媒介にした明らかな"他者"であるというか。
    対してケムリさんの作品の「あなた」は、語り手と"溶けくっ付いた"、あるいは語り手を"依り代"にした、半人間みたいな印象があります。
    これはケムリさんの作品がある種の人間に与える(と思われる)"こそばゆさ"や"嘘っぽさ"、"きれいごとっぽさ"、"かっこつけ"のような印象を助長しているような気がしました。
    こういう「あなた」との関係を描いていると、これはもう"生理的に"ダメ! って人は当然出てくるような気がします。もちろん、これがイイ! って人も出てくるのでしょうけれども。

    ・・・・・・うーん。なんかちょっと役に立たない評かもしれませんが、、、、 。それでは。  ('06/10/24 20:48:31 *2)

  • ケムリ :
    >ケムリさんの作品の「あなた」は、語り手と"溶けくっ付いた"、あるいは語り手を"依り代"にした、半人間みたいな印象があります。

    どう応えたらいいのか、非常に悩んでいます。言っちゃっていいのかな、いいよね、だってぼくはもう「書き手」じゃないしね。発起人だし。(めでたいかは、わかりません。ぼくにも)こっから先「俺の悲劇ショー」になる可能性があるので、鬱陶しかったら読まないでください。

    その通りなんです。いや、Toatさんの感覚は正しい。綺麗事なんです。目指すところは「いろいろあったけれど、結局何もかも上手く行った」とかそういう地平なんです。でも、死んだ人について書くってのはそういうことだと思ってます。こう、Toatさんが指摘してくれる作品、というかぼくがずーーーっと「劣化コピーだろそれ」と言われながら書いて来た作品は、基本的にほとんど同じもので、読み手を前提にしたオナニーショウです。(そうじゃないものもありましたけれど)

    ぶっちゃけた話、死んだ人の考えてたことなんて解らないわけです。ぼくが一方的に依存してただけかもしれないし、こっちが思うほど向こうにはぼくの存在なんて重くなかったかもしれない(これは、人間関係ってものに必ず言えることだと思うんですが)そういう意味で「あなた」はぼくの中にしか居ないし、まさにその通り、ぼくが自己療養のために都合よく作り出した「半人間」です。そうは見えないように書いてたつもりなんですけどね。嘘っぽいし綺麗事だし、かっこつけなんです。もうね、そりゃ認めざるを得ない。でも、死んだ人間にはリアリズムってもう無いような気がします。そういうわけで、ぼくが精神的に健康であるために、好き勝手に書いてます。ズブズブに一体化させてね。だって、本当にそうであったかなんて今更確認出来ないんだから、それでいいと思いませんか?

    基本的に、ぼくは「世界に対して提言する」とか「リアルな生を」とか「人間を描く」とかクソ食らえってタイプです。勿論、表現の技術としてのリアルさは必要なものだと思うんですが。そうじゃなくて、ぼくが書きたいものを書いて、その世界観の中で遊んでくれたら、それも好き勝手に解釈して、勝手に自分を投影して楽しんでくれたらなぁ、と思ってます。だから、たまにToatさんのような読み手が出て来ると困ってしまう。楽屋裏ですよ、そこは(笑)ぼくにとって「あなた」は「他者であり他者じゃない」ってところからぼくの一連の連作は続いているわけで、レゾンディトゥールに踏み込まれてしまった感じです。結構、途方に暮れていたり。

    >人間同士が癒着しているような生温さ
    多分、リアルな「死」みたいなものを全面に出していけば(というかこのコメントを書いた時点で果たされてしまうので、今までは禁じ手にしてたんですが)そういう印象は多少なりとも消えると思うんですけれど、ぼく的にそれはどうも、好きじゃないんです。人を殺せば盛り上がる昼ドラみたいで。昔、巽さんという方に「CMのようだ」と評されたことがあるんですが、そういうものでいいと思ってます。だから歌謡曲的なんです。それも全然否定出来ません。

    とはいえ。ぼくはそれ以外の詩を書かないわけではないですし、あるいは「技術」的に「生理的に受け付けない人」の感性をかいくぐることも出来るんじゃないかと思ってます。かいくぐってやるぜ!と誓いを新たにしたところで、今日のところは勘弁してください。人前に出す以上は、ぼくは評価第一主義ですし、「そこはぼくの根幹だからあなたは読まなくていい」ってタイプじゃないんで。褒められたいんですよね、たくさんの人から。本音を言えば。

    正直、Toatさんの読みはしんどいです。「下手だ」って言われれば、「頑張ります」でいいんですが。痛いとこをクリティックされっぱなしです。  ('06/10/24 23:56:31 *1)

  • Toat :
     >正直、Toatさんの読みはしんどいです。
    謝りません。笑。
     >そういうわけで、ぼくが精神的に健康であるために、好き勝手に書いてます。ズブズブに一体化させてね。だって、本当にそうであったかなんて今更確認出来ないんだから、それでいいと思いませんか?
    いいと思いますよ。世の中解釈だと僕は思います。もちろん、事実を認識した(しようとした)上で。
    別に鬱陶しくなんてなかったです。どうか、ご自愛下さい。(いや、皮肉じゃないです、笑)
    (レスレスなくてもいいです)  ('06/10/25 00:33:27 *1)

  • ケムリ :
    「詩について」と「個人的な話」が混じってました。
    ごめんなさい。だめですよね、その辺は分けないと。詩と個人性みたいなものが、どうしてもごっちゃになるんですよ。ぼくだけの傾向ではなく。

    なくてもいいと言われると書きたくなるんですが。そのうち、この方向性でかいくぐってやろうと思うので、また罵倒していただければ幸いです。実際、誰かに言って貰わないと、「どう伝わってるか」なんてわからないわけですから。批評とかそういう段階以前に、これが一番大事だとぼくは思ってます。長々つき合わせてすいません。  ('06/10/25 01:02:59)

  • 平川綾真智 :
    拝読させていただきました。

     大気へと螺旋が貫いていき、ぼくはいつもロケットの打ち上げを寝過ごした。
    が無かったらケムリさんの作品と気付かなかったかもしれない、感覚を読後得て、少しワクワクしました。
    この感覚、好きです。
    私はメランコリックな内省を前に進みながらも落とす苛立ちを思ったんですが、
    四連目がうーん。あまりに唐突な気がしました。
    その後にも繋げられることが出来ているように感じられませんでした。
    七連をもっと膨らませていけると思ったので、そこが少し残念でした。
     黒くよごれる余地さえない親指のつめで
     あなたは平原のなかを歩く。
     海はいちご色に滑らかで、
    はとても驚愕したつづりでした。

    シャツを生かしていく方法をもう少し考えて欲しくも思いました。
    次回作が相当楽しみになりました。

    以上です。
    失礼します  ('06/11/04 23:14:13)

  • contra :
    こんにちは。

    全体を通して、よく書けているな、思います。
    個人的には、

    >えいきゅうに滑らかなかかとで踏みつけていくんだよ。

    ときどき挿入される語りかけのフレーズがよいアクセントに
    なっていて、同時にそれは、ケムリさんのメインモティーフである「子供」への眼差しを思い出させる気がします。

    一点だけ
    >腐っていく生殖器
    というところで、「腐った」というのは、使い古された言い回しではないかと。生物学的な「進化」よりは、「衰退」のほうが戦後日本のサブカルチャーのメインテーマなんじゃないか、と僕は勝手に思っているんですが、そこには、抑圧された暴力への衝動、つまり戦後の日本が表層的に採用した「平和」な社会の裏面が、表出している(さわらぎのい氏の論によれば)

    話が大きくなりましたかね。すみません。
    詩の作者性について、ケムリさんと僕の立場は正反対なので、そこらへんもいつかお話できれば、と思います

    では。  ('06/11/10 05:05:30)

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