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阿ト理恵

選出作品 (投稿日時順 / 全8作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


メランコリーは絶滅危惧いぬ種です。

  阿ト理恵



しとしとしろんのあめがふるいきどおりをひるまずはしりさったほうにおかど(き)ちがいなメランコリーがいました。


かかわりたくなかったのですが、かま(わ)れてしまいまして、詩人のみょうちきりんの(あ)くび、ますますながくなってゆき、メランコリーはさもありなんさもありなんのこれしきにちぢんで消えようとしてるとこと。


シのシャープはドじゃない

  阿ト理恵



おまけにドのフラットはシでもないのでだまされつづけてしまいました

いちにち一mmだけうかれて

境界線をわたしの輪郭とするならば

いつでもつながってしまうことに

とりあえず
とりあわず

平温でいましょう

かってないいぶんちがいちってあいにくのはれのひ

ならない音のこうふくをきる。のたちわるい類のわたしたちってありえないわよ、まみれなくたって、できました、やりました、もめました、ぶちました、やめました。もうフランソワ・トリュフォーの映画なんてみないことにした。は、やはり、さよならの有効期限なんか三秒になるので、なんで愉しいのかわかんないって云いながら、そのととのえ方、きゅう(と)けいをす(て)きす(て)きす(て)て、ひらがなぼやけるくらいのぞむほどにのどはかわいていないのぞまれているわりにのぞかれてもいない、たわけた正三角関係だって云われて、わたしは彼女にしたたかにしたたる彼女はしたがる彼はしたがって彼女はわたしと彼にしたがうしかない、それぞれが三分の位置がわからないというせきららせきららせきらら

ねえ、どこからが空?

口+口+口は目
見た目も口がみっつ
足がはえた程度と見られがち
まあ、いまさらおもいのたけをぶつけるってのもいいかなって
まさかはなしたいことばかりだったなんてね
かなわないな
かまわないでおかえり
耳の穴
しこうよりクオリティをのむ
あさひさしこみたつはるに

さてと、わたし
たちとはさよならするよおやすみまたねようはワンセグみてぐだぐだしてるまにまに真実はさま(よ)っているらしく、

きゅうくつ脱いでしまおうか


街に雨ふる、が続くが

  阿ト理恵


休む、があったのか確かめるまでもなく木曜日、水、土を買う。少しばかり角度をあげた目に、つゆのくうはくの月、まち針でとめてみる。あられもなく空気が濃くなりましたね。すきとおる酸素も買いたいとの願いもむなしく、ふ確かなはりとこしがきゃしゃのまんまプラトニックふりかけドンと12段のぼりきったさきのドアをあけた部屋で空となって、空回りするくらいあかるくふるまったら子供っぽい雨粒が、ぽちゃん。ブリキのバケツ、またぎます。またきます。と、ぽちゃん。かわいい音もだちに囲まれているきみの背中に句点をうって、いるような、ぽちゃん。このおとし所に撃たれ、ふるためにやむ。それって、すでに決めてたこと。 きゅうくつたいくつうっくつどうくつそうくつひくつりくつこねくりまわし煮つめたくすりわらうスプーン山盛りいっぱい混ぜるな危険は、ふる(え)方をまちがえて、うらにわのあじさいはみどりからみどりから白どまり。きみをひらがなのようにしあわせにする、と、ほんのひとこと、ほんのりひとりつぶやいたら、うろこがはえてきてしまいました。


ちょっとちがうとだいぶちがう

  阿ト理恵



おやすみの日の午後は元気が天気に左右され、カスタネット休んで休んで、ととのえかたやらとらえかたにも、にごり「ゆ」だくだく。ずいぶん近いとちょっと誓うはいきているしいしきしてるしさるものはおあずけされてねこにこんばんはひとしくなればひとこいしくおもいつめくさとりだして問題はいかにしてやまいだれなく暮らしてゆこうかと。あまりにも夏めいて、いろばかがいろばなきかせいろきらい、せんすをあおぐ。あをあをとあらしのあとにあおぐそらへ水彩を部屋から放ち、ぐれてやるからくれてやるって、きみのはじめてがわたしでいいにきまってる。純粋な鈍器でなぐったとしてもアルマンのざらついたアルシャ紙には群青なんかつかわない、とわとわとちかわない、青にむれたくないから、でもでもでくつがえるわたしのいらないいろミスリードつけた青をきりはなしたいろなどみつからなくってもそこはこそっとひっくりかえしてみる。


はじまらないと

  阿ト理恵

きゅるきゅるのきのうまでのしあがりは透明とびっきりのご注文はうさぎですか?ご注目はなかのひとだからやさしいやさいだけ召しあがるんだな、で、すでにしないとできないとでられないとしらないとしねないとかさねないとかわさないとよばないとよどめないとわからないとわかってないとわかりたくもないとなれないとなりたくもないとくれないとくずれないとこたえないとこごえないときづかないときずつかないとおとさないとおとなしくないとつたえないとつたわらないとならべないとなくならないとなくさないとかざらないとかぎらないとあげないとあがらないとあそばないとそれないとそがれないとくだらないところがらないとまぜないとまざらないとならないとさわがないとさわれないとあやしくないとあやされないとあわせないといやされないとおもしろくないとうつくしくないとつくれないとつくさなさいといけないとがんばらないとかわいくないとさみしくないとあいせないとかよわくないといじらしくないといじられないとゆるせないとゆらせないとたのしくないとたのめないとなさけないとなかないとながれないとなじめないとかなわないといわないとはじまらないとないとな、で、アンモナイトみたくまるまる、で、そこはなんとかいかがなものかよりすぐりTHEざざざん少女を首になる夜か/しらん恋か/しらん胸か/しらん手か/しらん指かしらんらんキッチンで耳をすますフランスパンつかみどころのあるところの流儀のすべてはオールを漕ぎ意図せずともドロップアウトはかいじゅうするのどうして/どうしても/どうしたら最後の生物として出逢えるのわたしたち。


ねごとねこごと・あ・ら・Modeチョコレート

  阿ト理恵

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かけるは月とわたしだけ猫にこんばんは森へはもう戻れない

ミミにキレた理由をきくひともいないからいくつものきそ(く)をやぶる

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ノスタルジアへの切符は枯草色、少女と猫にだけ売られる

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ふみんにはひだまりにおうオフトニンさようならきのうときょうとうと

時間外手足はありませんコテンパンとミルクはいかがでしょうか

続編があればいいのにあの夏のチョコボールだけ投げ飛ばしてる

泣いててもかわいいが無敵なうちにぜんぶくださいきみのはじめて

さんせいの雨にぬれたポケットティッシュひとつぶんの羽根だとしても

ブランコから飛ばす靴は弧を描き別にいいけどできたら虹を

透明な地図つくる風は小さくふるきみの手のかたちしながら

かぼちゃよりまほうのすいか馬車となりうまくまいますきみをうばいに

はじまりの風をつかまえられたなら飛ばそうパラソルチョコレート

できることだけして花でいることにいけないわけなんかわけなんか

気配消す秋のじんちでじーんとなしてねとじーんとしとねしとね

この星のいちぶぶんでいいんだよね微熱を微風がさらうならば

めくるめくつなぎ目の芽よその先にそっぽむく猫のしっぽはシグナル

ぼくらがここにいることのわけとかはみんなちがってみんなかっこいい

う〜らららぼくとうででもくみながらぽけっとティッシュとばしませんか

どれどれみつけてまたたいてまた(が)ないひをたたんでまだ愛してる

とりつくろうためにふくろにおしこむそのよこしまよ、わたしがすくう


逃げる

  阿ト理恵


所沢航空公園で昼寝していた犬と目が合ったからにゃんと挨拶してミドリの窓口から森へムンクの森へ備えないから憂いもある改造屋からにげます

逃げるげるげるげるげる荷げるげるげるげるげる 逃げるげるげるげるげる逃げましょう


新青梅街道で女の子と歩きながらキスしてアオの窓口から海へフォロンの海へかき撫でられない養えない血の不良債権取り立て屋からにげます


逃げるげるげるげるげる荷げるげるげるげるげる逃げるげるげるげるげる逃げましょう


お茶の水の夜の酒場でアルカリ性凍結梅酒を飲んで元素になってアカの窓口から火のなかへゴッホの炎のなかへへなちょこボディなトラバントぼこぼこにしながら春の波動からにげます


逃げるげるげるげるげる荷げるげるげるげるげる逃げるげるげるげるげる逃げましょう


池袋のラブホテルの裏口に汚れたビニル手袋がいくつもいくつも干してあったので汚れなかった手は森からおかえり海からおかえり炎からおかえりおかえりおかえりおかえりおかえりえなさいませからキの窓口から気の樹のなかへにんげんもどうぶつもしょくぶつも影は同じ黒なのですから
すべからく
すべからく
心音心寝心根真寝芯根信根真音、しん、ね
心拍数、ね、きにしなくっていいの
ぼくはあなたのやきかたしってます
メープルシロップかけたほうがおいしいね


たとえば
いわゆる
これが
終わっちまったたましいを洗ったら縮んだので、なあんだ毛糸だったのね、羊だったのね
たましいわ
たのしいわ


地下鉄の階段を駆け降りて
にげるの
こげるの


地球のなかまで
おいかけてくれるのかしら
あなた
わたし
ぼく
きみ
真摯服きてきてね
音のからだは早いのよ




初出1997・8ユリイカ投稿欄(飯島耕一氏選)


勝手なB級記述

  阿ト理恵



ひびよひび、われ、わりきれず、なにくわぬかたちの方へ


なにかしら兆しある移り変わり吠えなくなったパラドックスよ


ゆくあてはあるのかないか、せ(い)かいも混ぜすぎて黒になってしまって


透明な存在は名前呼ばれることで場所を得る。とてつもなく


正しいはまちがってボーダーレスへ属さぬことの自由はどこか


ブレーキは成層圏を越えてゆき正確に届かずシャープなる


ナトリウムになるばかりではないのさそこにはいないはここにもいない


規則正しい普通を処分してはいい気になる世のなかは勝ってに


発達する仲違い乾舌にわらびもちでも補充してろ


あらぬほうをみてる間に台無しねじれた原色語が飛び交い


裏切られた睡眠は短くなるばかり只ではすまな異口を


始末してやるのさハハハハ明るい未来の値段は高いのだ


わるいゆめなら夜とじてしまっちゃえ瞬膜の記憶だけのこして


かいたいのならことばに殺されるなほどけた宙へかえしてやろう


こめかみに指ピストルを押しあてるネジ式のサイレントサイレン


てつがくの今日をてつがずにする月、それからはじまる革命とか

文学極道

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