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9235 :   おでん '16/11/04 22:10:08 *1

寂れた朝
青白い空の光が
この部屋に分け入る
俺は
朝食のベーコンエッグをとり
牛乳で胃に流し込んだ

死んでしまった親父の
首吊りの姿を思い出しちまって
今もどこかに親父が隠れているような気がした
たとえばあの部屋の向こう
あるいは鏡の前
目の届かない死角に
親父の首吊りの姿があって
眩しい光に晒されながら
いつまでも糞尿を漏らしている
ような気がしていた
日常は半分凍った波のように
ゆっくりと流れている
憎しみそのものになる瞬間があるんだ
頭の中が真っ白になって
その時の自分の顔は見えないけれど
表情がどんどん変わっていくのがわかった
そして相手が誰であろうと
腹の底から声を張り上げて
真正面から罵倒してしまうんだ
ある人は怯え震えて
ある人は鳥肌を立てて固まっている
そして俺はまた孤独になる
ああ分かっている俺が悪い
俺は遅刻魔だ
遅刻を咎められて
ついうっかり
殺すぞ! と言ってしまうんだ
俺の中に悪魔が棲んでいる
いつからだろう
時々こいつが目を覚まして
俺の体を乗っ取るんだ
そしてコトが終わると
俺は正気を取り戻して
悪魔は眠る
親父
お前の顔も声も憶えちゃいない
ただ海沿いの道で
明るい空の下で
白いシャツの大きい背を
俺に向けていたことは
今もハッキリと憶えている
いつもそんな映像が
瞼の裏を流れるんだ
愛そのものになりたいと願った
天使のように優しくなりたいと
天使のような星空の下で
愛そのものになりたいと
風呂場で
アザだらけの妻が
俺にこう言う
ねぇ
あなたって
天使なの?
悪魔なの?
ほんとに
わからない……
赤紫色のアザが
白い肌に映えて
ひたすらに美しかった
氷のような虚無を常に感じている
いつになれば溶けて無くなるのだろう
氷のような虚無の中で
俺の髪はほとんど白髪になってしまった
怖い人
なんだそうだ

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