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三浦果実

選出作品 (投稿日時順 / 全6作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


きみのゆく道は果てしなく遠い なのになぜ

  三浦果実

桜は散ることになったと打ち明けたらユキ
しゃがみこむ背中に
下着が薄くみえて
前のめりに転んでしまう
フェンスなんて無用なのに
あれはなんだったんだろうね

もうわかったよって坂道を下りだしたらユキ
ライティングが
東京タワーに無口を現して
出会いの稲荷神社と同じみたいだねって
それはなんだったんだろうね

ここで決めた
新月が決めた
もう忘れよう
そうするしかないし
そうなるじゃない
希望が有ると
おもえたら
それはそれで
それで僕らはいいじゃない


 A I スポイルズシステム

  三浦果実

ハンマーの音が
耳を悪くしたとして
僕らは
悪く言うものはいない
シャフトがグリス切れして
異音が続くとして
僕らは
悪く言うものはいない
例えば不思議なことが
目前であっても
どうでもよくなるのが
僕らだ

例え話として
一匹の蜘蛛の話をしよう

現れた一匹の蜘蛛はこうだ
天井で
点滅する赤
チカチカ張り付く蜘蛛

天井の片隅にも
いるかもしれないような蜘蛛
膨大な世界のすべてが
集積回路に組み込まれている
微細な塵ほどのサイズで
赤い点滅は情報を処理している

チカチカ蜘蛛から
キラキラした糸が拡散する
チカチカ蜘蛛とキラキラ糸
糸のケーブルに
からめとられた僕らの頭脳を
端末が侵食する
踊りだすと止まらなかった
喜び尽くしてしまう
悪い気持ちでもない
そしたらね
そっときこえてきたんだ

片耳が聴こえないの

健気さが伝わってきたから
人の話を聞いていないこと
気にしないでと伝える

いつも持ち歩いて
外へ抜けだしたら取り出す
吹いてみれば
しゃぼん玉のなかに
蜘蛛がいる


アフリカの人、置き去り計画(ナイジェリアVer)

  三浦果実






 乗ってる車、なに?
  
   マークII。  

 新幹線の先みたいな?
  
   あー、そうそう。丸いフロントの。

 うちのパパが乗ってたから判る。


スタバで亜咲美と出会ったのは
彼女が必要とした車があったからで
たまたま隣の席に座ったからではない
夕暮れ過ぎでないと外に出ない
19歳のひきこもりの子


剥いだ生の皮から革を精製する工場
ナイジェリア人姉弟を迎えに
亜咲美が助手席で案内する
クリスの暴力が辛いアンジェラ
弟も一緒でなければ逃げてくれないと
訊けば訊くほどに僕はトラブルに巻き込まれてゆく
全員乗り込み 降ろしたら
クリスからクスリを買うふりをする件
ひとりで向かう僕は初犯だろう


 気を付けてね

   8人殺している元ナイジェリア兵、な。
  
 おしっこが近いよ、あいつ。そのタイミングで。


クリスが階段を軽快に降りて来る
初めてみるコーク中毒者
眼が見開いている
助手席に乗った後は
クリスを僕はみない
30分だ
10km程度離れた場所の
コンビニエンスストアや
ショッピングモールで
置き去りにするだけでいい


うんざりしながらも
亜咲美から離れられない
アフリカ人の不法入国者たちを
手助けすることに一生懸命な
ひきこもりが云う


 あんたさ、優し過ぎなんじゃない?
   
   優しい人間が、立ション中の・・

 アフリカの人を置き去りにした。


北朝鮮でおもいだすこと

  三浦果実

日本人だ僕は                   あなたは日本人だ
福岡には朝鮮人部落といわれる地域があって     就職することが大変で
小学校から中学校に進学すると彼女は消えた     中学生になったら実感した差別
北と南で違う学校だったのかな           日本人ではないということ
彼女はどっちだったのか              北だったから家もボロボロで
高校を出た僕は彼女に恋をした           そんな家にさ あなたは訪ねてきたんだ
誕生日プレゼントにレコードを選んで        中島みゆきの寒水魚を聴きながらの夕食
彼女の大家族と食べたご飯             悪気はなかったんだろうけど
僕は家族がいなかったから楽しくて         父親は日本語わかってなかったから
でもキミのお父さんに怒られ            嬉しかったよわたしは
昔からよく泣いていたけど             今でも日本人で一番好き
あの時も泣いた                  泣き虫だったあなたを思い出す

キミも日本人だ                  わたしは朝鮮人だ


詩ば書きたい

  三浦果実


豊中ってあるったいね
そこにね
満洲ば引き揚げとった
うちのじいちゃんばあちゃんが
住んどったっちゃん

おれね
単身赴任生活ば
大阪でしとったっちゃけどね
うん
そうたい
2年前の話ばい
でね
阪急電車に乗っとってね
豊中駅ばなんどもなんども
通過しとったとにね
忘れとったとお

ところがね
思い出したったい
なんでかいなっておもうっちゃけど
ほらクサ
今クサ
中国ばい
中国の武漢があれの始まりやっちゃんね
それで思い出したったい

話変わるっちゃけどね
満洲って
どうおもおお
あれってね
日本人が
かっこつけすぎ
たっちゃないかいなね

ごめん
言い方まちがったばい
ツヤばつけすぎとったちゃんね
わかるっちゃろお
そうばい
日本人はクサ
ツヤつけすぎん時
だいたいクサ
なんか隠しとうけんねえ

きさあん
なあん
詩ば書きようとおお
なんねその
標準語
なんか隠しとっちゃろお

なあんね
はああああ
詩ば朗読するとおお
ウソクサかああ
モテたいっちゃろおお
なあんね
よか人に思われたいとね
クサかああ
偽善ばい
偽善クサ
きさあん
博多弁でやりいよお
どうせ
やれんちゃろおお
みんなクサ
悪人たい
悪人
日本人も中国人もクサ
世界中が悪人だらけやけんねえ
あんたもクサ
そうばい

草とか
大草原とか知っとおね
これ笑いのことばい
知っとったほうがいいけんねえ
でもクサ
言っとくっちゃけどね
笑いごとやないっちゃんねえ
頭がいい
ツヤばつけとお
人はクサ
標準語やけんねえ
共有化とかば言ううったい
でね
共有ばクサ
できん人のことばね
頭悪そうって言うったい
ばかやないかいなねえ
日本語ばクサ
一つしか知らんっちゃないとおお
外国語は勉強するみたいやっちゃけどねえ
ツヤばつけとうねええ
でね
もう一回言うっちゃけどねえ
頭がいいツヤばつけとお 人はクサ
すぐクサ
笑いばクサ
ツヤつけてクサ
wとかクサ
草とかにクサ
するったい

詩ば書きいよおお
ちゃんとクサ
人間としてクサ
詩ば書きたいばい


崇高な愛なのか気持ちわるいバカなのか

  三浦果実





たとえ、人々の異言、天使たちの異言を語ろうとも、愛がなければ、私は騒がしいどら、やかましいシンバル。
たとえ私が、預言する力を持ち、あらゆる秘義とあらゆる知識に通じていても、また、山を移すほどの信仰を持っていても、愛がなければ、無に等しい。
また、全財産を人に分け与えても、焼かれるためにわが身を引き渡しても、愛がなければ、私には何の益もない。
愛は忍耐強い。愛は情け深い。妬まない。愛は自慢せず、高ぶらない。
礼を失せず、自分の利益を求めず、怒らず、悪をたくらまない。
不正を喜ばず、真理を共に喜ぶ。
すべてを忍び、すべてを信じ、すべてを望み、すべてに耐える。
愛は決して滅びません。しかし、預言は廃れ、異言はやみ、知識も廃れます。
私たちの知識は一部分であり、預言も一部分だからです。
完全なものが来たときには、部分的なものは廃れます。
幼子だったとき、私は幼子のように話し、幼子のように思い、幼子のように考えていました。大人になったとき、幼子のような在り方はやめました。
私たちは、今は、鏡におぼろに映ったものを見ていますが、その時には、顔と顔とを合わせて見ることになります。私は、今は一部分しか知りませんが、その時には、私が神にはっきり知られているように、はっきり知ることになります。
それゆえ、信仰と、希望と、愛、この三つは、いつまでも残ります。その中で最も大いなるものは、愛です。

<引用元>
約名:「聖書協会共同訳」
聖書種類:「新約聖書」
書名:「コリントの信徒への手紙一」13章01節から13節まで


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はじめましてではないけれど

とても嬉しいので、はじめましてと挨拶させてください。

今、駿河湾のサービスエリアに車を停めてこれを書いています。

東京までの道のりはまだ遠い静岡県。

静岡に住んでいるあなたのことを思い出しました。

今夜は満月、いや満月じゃないかもしれませんが

とにかく大きな月がずっとフロントガラスに映っていて

きれいなんで、私は好きな人のことをずっと考えていました。

ごめんなさい、長くなると思います。

なんと言いますか、気持ちが落ち着かないので

書いてしまうのです。

最後まで読まなくてもぜんぜん大丈夫です。

僕は23歳で結婚して24歳の時に娘が生まれて

その娘も昨年結婚して独り立ちしました。僕は50歳になります。

こうやってあなたに手紙を書いていると

好きな人のこと、忘れられるんです。

おかしいと思われるでしょうし、既婚でありながら

好きな人がいるなんてこと、不快に感じられてるかもしれません。

ほんとうに僕は狂っているんだと

自分でもわかっていて、そうわかっているからとても苦しいのです。

自分が老いてきたこと、自分が持っている感情というか

そんな、ぎこちないものが違和感としてずっしりと

身体の中にあってとても苦しい。

ひとりの女性を一生涯ずっと愛し続けることが出来ない人、

そのような人たちが

世の中には想像しているよりもはるかに多くいることを

最近になって知りました。

なんだか少しだけ救われました。

自分が他人と違うことが、いや

そんな他人との差異などにこだわってしまう

中年オヤジがキモ過ぎだと考えてしまい自己嫌悪になるわけで。

このまんま生かされてしまうんだったら

一瞬でよぼよぼのじいさんになってしまい

誰かを好きになる気持ちとかそんなもの

失ってしまえばいいのにって考えてしまう。



とにもかくにも僕はいつも恋をしています。

あなたが教えてくれた青葉市子が歌ってる

サーカスナイトを最近好きになって聴いています。

今も車中でずっと聴いています。

「一生分のことを変えてしまいたいよ」って歌詞が

堪えられなくなります。




長々と自分のことばかり書いてしまったけれど

博愛主義者さんはその後、どうしていますか。

学校なんて行かなくてもいいと僕なんかは思うんだけれども

好きな人とか、そんな人が出来るといいのに、なんて思う。

好きな人が博愛主義者さんに、もしも出来たなら

もっと眠れなくなるかもしれない。眠れなくなっても

そう悪くはない。

博愛主義者さんがうざくて殺してやりたいお父さんにさえ

新しすぎてたまらない、おはようが言えるようになる、気がする。

好きな人にだったら、伝えたいこと、伝えたくなるだろうし。

君が僕に語ってくれたようなこと、

宮沢賢治の雨ニモマケズは

他人に朗読して聞かせるもんじゃないとか、

人は万年筆と紙を使って交信するべきなんだとか、

梶井基次郎をキジロウって読むなとか、あー「檸檬」は

面白かったよ。あれはさ、なんだろうな、

主人公のあの乱れかたが好きだなあ。

「檸檬」はよいね。

で、君は聴いてくれたのかな。DMで送った、

「凡骨の夏」

まあ、君にはわからないだろうなあ。。。

ああいう歌を書きたい。

賢い君が書く素敵な言葉の隅っこで僕も詩を書き続けたい。



とても耐えられない友人達のこと、

わからないところもあるけれど、

よくわかんないところもあるけど、わかる。

みんなが線引きをして

あんたは声が小さいから正しくないよとか

そんなこと言われたら、、、

まあ、止めよう。




中学生の君宛てに初めて手紙を書いた。

勧めてくれたラミーの万年筆の使い心地がとてもいい。

こんなことを書いてしまってるのは

満月みたいで満月じゃないような月のそれのせいだねと

下手糞な詩みたいなことを最後に書いて筆を置きます。

あなたの学校生活が楽しい毎日でありますように。

博愛主義者さんこと遠藤きあらさん

僕を見つけてくれてありがとう。





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おぢさんへ

お前、あいも変わらずばかだな

途中まで良い書きしてたのに。

凡骨の夏、きいた。

おぢさんに愛人がいようがいまいがどうでもいい

おぢさん、詩を書けよ
ちゃんと詩を書け

好きな人?は?
おぢさんしねよ

学校にはもどるかもね

手紙また送ってください

またDMするかもしんない あ

アラベスクの飾り文字の問題
ちゃんと回答しろ


博愛主義者

文学極道

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