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作品 - 20141126_899_7772p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


ラフ・テフ/ヘンドリック=世界の秘密

  織田和彦

「アフリカの匂いがする」
http://bungoku.jp/ebbs/pastlog/133.html#20080603_533_2806p

「ヘンドリックのいた夏」
http://bungoku.jp/ebbs/pastlog/215.html#msg4310

「ラフ・テフの切符」
http://bungoku.jp/monthly/?date=200602#a04

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タバコを燻らしながら
食事をしていた
テラスに通じる掃き出しの広い窓から
朝陽が差し込む
麻衣子はバイキング形式のホテルの朝食を
トレイに乗せ
テーブルについた
そしてぼくに
昨晩はよく眠れたかどうかたずねた

直射する太陽のお蔭で
麻衣子の表情がよく見えた

   ∞   ∞

長い廊下を渡り階段を通る
トップライトから陽の差し込む
とても大きな部屋に入った

荒縄でぐるぐる巻きにされた
ダチョウとヘンドリックが横たわる
弁護士が
係争中の裁判は
11月の会期もって終る筈だといった

ヘンドリックはぼくの顔をギュッと睨んで
人権侵害もいいところだ!と憤慨した
入り口にいる憲兵が
ぼくらの方を眠たげに見た

この国はどうかしてる

ダチョウは新聞の差し入れをぼくに頼んだ
アラビア語の新聞がいい
ダチョウに葉巻を渡し
火をつけてやると

いや
やっぱ新聞はいい
面倒だからな

俺たちの仕事(事件)は大々的に出ているかい?
役人と財閥が癒着しているこの国じゃ
俺たちのような英雄は
いつも泥棒扱いさ!

吐き捨てるようにダチョウはいった

ダチョウさん
私たちのヘンドリックをもうこれ以上変なことに巻き込まないでくれる?

ワタシたち?
きみらもひょっとしてこいつらのまわし者か
ダチョウは訝しげに憲兵の方を見つめた

ねぇお願いだからもうヘンドリックは解放してあげて
馬鹿なことを言うなよ
ダチョウは麻衣子を睨んだ

部屋の隅で二台のスタンド型の大きな工場扇がブンっと唸りを上げて回る

ヘンドリックはぼくらの顔を見て安心したのか
鼻くそをほじりながらグゥーグゥー寝ている

  ∞   ∞

守衛がぼくらを見送り
差し入れを約束したダチョウと
ヘンドリックに別れを告げ
黄昏がおりてきた
刑務所をあとにする
    
  ∞  ∞

海岸を散歩しない?
海岸線の丘陵地帯に立地するホテルから歩いて10分
ダチョウの弁護士からの手紙を
麻衣子はぼくに手渡した
ダチョウは看守から手酷いリンチを受け
別の刑務所に移送されたこと
ヘンドリックは素行不良で
独房に移された事が書かれた手紙だ

ヘンドリックは
他の囚人と折り合いが合わず
すぐにトラブルを起こすらしい
浜の砂の熱くなりすぎ太陽
規則的に脈打つ海鳴り

ぼくたちの前を
数人のアラビア人たちが取り囲んだ

背中に撃鉄をくらい
目の前が暗くなった瞬間
ぼくはラフ・テフに居た

どこか
とてつもなく遠い国の
海辺に建つ
芝生のある大きな建造施設の中庭

テリア犬やシャム猫や 
オウムやトカゲやシャチなんかが居たりして
ハンバーガーやピザや 
チキンナゲットといったジャンク系の食べ物を
ひたすらパクパクと両手で口にしている

ぼくは彼らの中にヘンドリックがいないか探した
麻衣子はまたテリア犬に姿を変えられたのだろうか?
ぼくは中庭から動物たちの間をすり抜け
施設の中央を目指した

海の匂いのするテラスの
吹き抜けの大きな螺旋階段から
ひょこひょこと降りてきた
一匹の
サングラス掛けた大柄なカンガルーが
ポケットから葉巻を取り出し
ぼくにすすめた

カンガルーはサングラスの奥でニヒルに笑みを浮かべぼくに言った
警戒線を突破するのは
昔から死刑囚と決まっているんだがねぇ


 

文学極道

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