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作品 - 20090209_091_3324p

  • [優]  詩人 - ぱぱぱ・ららら  (2009-02)  ~

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


詩人

  ぱぱぱ・ららら

「僕は詩人だ!」
深い崖の下で叫び泣いた
僕は
確かに僕だったと思う
 
波がきて
波が去る
その繰り返しが時間なら
僕であったはずの
僕は
退屈さの中で
死んでしまった
 
石ころだっていつか死ぬ
その頃には
ヨークシャテリアだって
哲学的問題を解き始める
 
「僕は詩人だ!」
って沈んでしまった太陽の光の
ように泣いたって
明日は仕事さ
 
むかし、詩人だった君は
白い月の下
イタリア製の高級スーツに身を包む
 
Xー700を冬の海に持って行き
世界を切り取る僕は
やっぱり詩人なのかな?
周りは
愛無き愛の物語
 
「助けてよ」
と言ったのは誰?
海を潜り、水難救助した僕に
待っていたのは部屋
に一つの死体
 
『鏡の街』
 
第一編・詩は死を呼ぶ
 
僕は探偵だ
だから依頼を受けて
事件を解決した
報酬を貰い家に買えると
死体が転がっていた
僕の彼女だ
死体は言った
これは報復なのよ
誰かを救えば
誰かが死ぬの
生命には限度があるの
人が増えれば
木々は死ぬ
僕は尋ねる
何で君が殺されなきゃいけなかったの?
犯人に聞けばわかるわ
 
第二編・センチメンタルに走る僕は非詩人
 
 豚丼を食べている僕は、間接的に豚を殺している訳で、彼女が殺されたからって、犯人を責めることは出来ない気がして、僕は時計を左回りにまわす。
 すると、海が見えてくる。寒い、どうやら冬のようだ。太陽は山の裏に沈んでしまい、橙色の光が山の裏から少しだけ、紫色した空を照している。波が来る。そして去る。波の音、久しぶりに自然の音を聞いた気がする。僕の隣には彼女がいる。彼女の隣には僕がいる。僕の隣には彼女がいる。それだけ。
 
第三編・わたしは貝になりたい?
 
 僕の隣には犯人がいる。
 僕は僕のじゃないみたいな、僕の口を機能させる。
 
あなたが殺したの?
そうだよ
どうしてですか?
ねぇ君って、哲学って信じる
信じるます
好きな哲学者は?
ニーチェ、ドゥルーズとか
それじゃダメだ、そもそも君は哲学についてどれくらい理解しているんだ? 哲学を哲学して、それでも君は哲学を信じるって言ってるのかい? 詩はどうだい?
詩も好きですよ。というか、僕はあなたに彼女を殺されるまで詩人のつもりでした。
でも君は詩人じゃない。
その通りです。僕は詩人じゃない。僕が書いてたのは詩なんかじゃなかった。もっと別の落書きとか、そういうものです。
わたしは詩が嫌いだ。詩は卑怯だ。いつも大事な局面では現れやしない。なぜアウシュビッツには詩人がいないのか、なぜネイティブアメリカンには詩人がいないのか、なぜアイヌには詩人がいないのか、君は答えられるかい? 答えられないなら、詩なんて書くべきじゃない。そうだろ?
そうかもしれません。ところで、あなたはゴダールの映画を観たことがありますか? 彼の映画にその事について言及しているものがあります。あなたは観たことがありますか?
さあ、どうかな忘れてしまった。本当に。言い訳じゃなく、わたしは記憶というものを持っていないんだ。
最近、チェ・ゲバラのアメリカ映画がやってるのは知ってるでしょう。二本あるそうです。二年前ぐらいかな、オリバー・ストーンがフィデル・カストロにインタビューしてドキュメン映画があります。でもそれはアメリカでは上映禁止になったそうです。これについてもっと考えてみるべきじゃないですか?
ちょっと待ちたまえよ、君は何が言いたいんだい?
僕が何を言ってるか分かったとしたら、それは僕の表現が下手だったという事だ。これはグリーンスパンの言葉です。彼は詩人でも哲学者でもない。経済学者です。でもこの言葉って詩だと思いませんか?
ちょっと待て。もはや詩なんてものは存在しない。現代詩ってやつを読んだことがあるだろう? あんなのがもう何十年も続いてるんだ。もう詩なんて存在しないだろ。わたしだって昔は詩を信じてたさ。だがヒッピーがただの金持ちの大学生の集まりだったのと同じことさ。ねぇ君は家畜の動物たちについてどう思う? ただ食べられる為にだけ、生まれ、生かされ、殺される。君が今持ってる缶コーヒーを作る為に一体どれだけのアフリカ人が搾取されてるかのか? これが世界なら、君が詩人だと言うのなら、これが詩の作り出した世界なのかい?
あなたは詩を深く考えすぎですよ。詩なんて無力なもので、詩で何かが変わるわけでも無いし、詩を誰かに伝えようなんて気もない、誰も。ねぇ、最近あまりにも批評家が増えていると思いません? しかも、すごく偉そうなんだ。たとえどんなにひどい詩だって、どんなに素晴らしい批評よりは讃えられるべきだと思わないです? ねぇ、詩っていつからただの文学的技術論になったの? 詩だけがただ唯一の、人に創れるものじゃ無かったのですか? 詩が世界を救える、詩が貧困をなくす、詩が人生の闇に光を照らす、そう考えちゃうのは、やっぱり僕が詩人じゃないからですか?

文学極道

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