ベランダの手すりが、染まっている。
鳥達が歩いている。反射する光。金光の中で、影だけが動いている。
僕はそれにむかって歩く。砂の城。
午後に降った夕立ちのあと。僕らが傘をさしたまま
歩いている。みんなが空を見上げている。人々の水位。
彼女はしゃがんでいる。太陽はすでに、砂に、城が崩れていた。
僕は彼女の手をとって、崩れ落ちた十字架に手をのせる。
ゆうべのうちに雨は止んでしまっていた。
十字架の下の、奥深く濡れてしまった砂の下の、
幾度なく通った歩道の下の、
訪れることの無い映像にまで、二人が重ねあう。
歩いていた。歩道の上を、
足元から灰色に戻っていく。誰よりも遠くなってしまう。
彼女は泣いている。いつまでも目をつむっている。
波が彼女のつま先にふれる。僕にはとどかない。
そこには風がある。砂がある。
そうして波の音があった。二人がいた。
下水道からあふれている。水が反射する色に、海。
それは海。
飴色には、あまりにも過ぎてゆく彼方に、海。
それは海。
白い長靴をはいて歩いている。雲の合間、顔をふせる。
彼女は目をつむっていた。
波は、ようやく僕のもとに届きはじめていた。
アスファルトに、波の音だけが残っていた。
そうして二人、傘を、さしかけたままで。
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作品 - 20050803_115_369p
- [優] プラトニック・スウサイド - Nizzzy (2005-08) ~ ☆
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プラトニック・スウサイド
Nizzzy