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作品 - 20050803_115_369p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


プラトニック・スウサイド

  Nizzzy



ベランダの手すりが、染まっている。
鳥達が歩いている。反射する光。金光の中で、影だけが動いている。
僕はそれにむかって歩く。砂の城。

午後に降った夕立ちのあと。僕らが傘をさしたまま
歩いている。みんなが空を見上げている。人々の水位。


彼女はしゃがんでいる。太陽はすでに、砂に、城が崩れていた。
僕は彼女の手をとって、崩れ落ちた十字架に手をのせる。

ゆうべのうちに雨は止んでしまっていた。


十字架の下の、奥深く濡れてしまった砂の下の、
幾度なく通った歩道の下の、
訪れることの無い映像にまで、二人が重ねあう。

歩いていた。歩道の上を、
足元から灰色に戻っていく。誰よりも遠くなってしまう。


彼女は泣いている。いつまでも目をつむっている。
波が彼女のつま先にふれる。僕にはとどかない。

そこには風がある。砂がある。
そうして波の音があった。二人がいた。


下水道からあふれている。水が反射する色に、海。
それは海。

飴色には、あまりにも過ぎてゆく彼方に、海。
それは海。


白い長靴をはいて歩いている。雲の合間、顔をふせる。

彼女は目をつむっていた。
波は、ようやく僕のもとに届きはじめていた。

アスファルトに、波の音だけが残っていた。
そうして二人、傘を、さしかけたままで。

文学極道

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