深夜、愛情から一番遠い場所で犬の瞳をのぞく
眼球は真冬の夜空にとけそうに蒼く澄んで
眠れないままいつしか眠り
パーティが台無しになる夢を見る
恋人の手が背中に当てられたところで目覚める
毎晩、駐車場で待っていた子猫がいなくなった日を誰も知らない
そんな世界で
わたし、たちは
黒く降る雪を白く隠喩する
(きっと明日の朝も)
食卓ではミルクがつがれ
仔牛たちの瞳からこぼれたひかりをのみこむ
埋葬される無数の春から
凍土の上で眠る冬までを、
金色に実る穂が続く道に
家があると信じていた
今よりも10センチ背が低かった
雨の日には雨音が
少しだけ世界の輪郭をやわらかくして
うそとほんとうの狭間に
泥濘ができていた
愛情から一番遠い場所で
届かない祈りを祈る
朝には小鳥のさえずりが
少しだけ一日を明るくして
(やさしい乾きとちいさな日陰を)
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Lisaco - 2013年分
覚書
Lisaco
平原に咲く花
Lisaco
白く息が凍る
あの朝と同じように
この朝も
雲のない空を見上げれば
梢の先には
まだ生まれない
朝が宿って
生まれる前に
母が埋葬された冬の平原に
咲く花を植えたい
少女の手のひらに
にぎられた種から
発芽する春のように
あなたの瞳に灯る色の
あなたじゃないあなたの瞳にも
等しく灯る
数式の外にある輪環
あるいは、花環
そのなかで、
冬の平原に咲く花の名を知らない
誰も知らなくていい