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村田麻衣子 - 2014年分

選出作品 (投稿日時順 / 全3作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


street#tube

  村田

皿を洗っていてわかるのは、それがとても汚れているのか さほど汚れていないのか
バクテリアの繁殖を、次々と 目に見えないメモガミエナイママそれは誰かの遺書みたい
腕がなくなって初めて 脈をとった とれなかったからだじゅうに血がついてだくだくながれていた玄関で。
塾に行く男の子が通る 同じ柄のコートを着ていて
損なったぶん色彩が 記憶をからめとる あの場所あの匂いに、行くのかもしれない
買い物に行ったら魚が 腸をうばわれてるところだったから帰ってきた

窒息の程度を記された教科書の裏側には、恐怖があるわ あったからそうね、喝采のうらがわには
神経がじょうずにじょうずに捻転されて 翻ったらきみのはなしていることみんなわからなくなるよ
ぼくのはなしているすべてが、
張り巡らされているわきみの平衡かんかくから
ななめ10°この机はかたむいているけれど、この角度をたもっていれば
どこにでもいけるしちっとも似ていないきみは
損なったぶん さしひいて やっぱりすきだから
校庭の外から か細い声だけをあつめた合唱を楽しそうに感じたんけれど内がわからやけにひかる 光を
辿ったり わたしに似ている人を
見つけた抽象絵画の理想しか持たないから風船持たされて
目から外れたアイライン、剥がれかけたペティキュアは欲望を映しださない
化粧をしすぎることなんて怖がらなくていいよ
あなたかわたしか わからないまま殺されてしまうから主語が使われないままの
骨が埋め尽くされるこの国には
陽気にくらそうとする気がないから視力検査のプロポーションがじょうずになって
よく見えなくなる頃にむかう よく見えていた季節に見ていた景色を記憶する
悲しい顔をする義務かのようにおしえられたけれど権利だからこそとてもかなしいかおがきれい

かなしいふりして塗りたくるキャンバス あいしているふりなんて
できないただ 
目はなにかをみたことがない
きみを見てみたかった
かんじないように午後にやっと麻痺してくる「あの、さむくないから傘かしてあげますね。」
細胞はテレビをかんつうしてしかかんじないせまいせまいせまいせかいだし
排卵してシャワー浴びてセックスをする流れがきらいだった 洗いたての排水溝を触られるみたいに つまんない
塩素はきれいになる必要が過去をもたらす 幸福な過去をもたらす 
それは写真ではわからないから、吐ききれないCO2を感じながらセックスした

耳がなくなって 絵画の渦が空にある青と違う色に変色して
わかるんでしょう
わからなくなる しゅんかん
わかるんでしょう
錆ついていて切れなくなったナイフをデリケートに扱うあなた
そうね、指先から透明な血が流れている
生きていく術が、凶器以下で見つかったのね
そういうあなたと バクテリアを交換する。それは毒であるのかわたしを殺すのか
そのどちらでもない
あなたを殺して逃げるためのしゅだんだから わたしは皿を洗い続けている
バクテリアは見えないけれど
権利だからそんなにきれいにならないでいいんだ

海辺の家であるから、汚れていなかった流れ着いたライフカード
って なんかあやしい。笑
残高が増え続けている負債を割り続けていく分母と
今日まで費やされた希望が 201429と記された日記が、流れ着いた
片腕で、あらかた右だったし
あらかた洗い終わってスポンジの汚れがきときとにしてしまう
ジーンズのポケット付近に汚れやすいが着心地がいい
たぶんそれ
高架下を眺めて聴こえる今日最後の悲鳴、それは美しいアナウンス
やけに姿勢がいい人と悪い人が、
同じ方向を向いて倒れこむ寸前。


you

  村田麻衣子

伝わらないと意味がないと
それしかない 噛んだストローが洗面台におっこちていた
コップとか、
病院の冷蔵庫が こんなところにあるなんて
配置が
おかしいし
噛みあとだらけ の
コップが投げ捨てられている。

「苦しい」とか「悲しい」とか
そういう言葉以前であった
投げつけられた
コップを床に みつけた
青い透明なコップはプラスティックだからか傷が
ついているいつも投げつけてしまうから
落っこちている

匙の上にのっている すりつぶされた
ご飯粒が
透けて 
差し込むわずかな
光をあつめ 掬いとられている観測であるその
すべてのきぼうが いいように
すりつぶされて おいしいかおいしくないか
その 生温かな希薄でもふくよかでもない ただおぼつかない
時折匙からこぼれては
冷たくなった 食器の置かれているトレーは。
滅菌されているが
口に入ったものがしばらくその低い沸点を
なだめるようにそう、その子の手はいつも温かだった

大人が子供にうけとらせた
ものがある 
わたしは、宿題がきらいだった
宿命を
あたえてしまう。だってさきに
いなくなってしまうから、
おとなたちは、
生きていてほしいという それで
まちがいなく
続いていく生命はうとましく いとおしく ただくたびれたようでいて
モニター上の心拍は100から120に
少し上がる
お風呂のあとだから
からだがやわらかくなって
すこしだけリハビリをする
時折
母とわたしは120の心拍に
ついて
笑いながら はなした
生温かだった粥がいつも
あふれた匙からこぼれおち それが
冷たくなる

ひねってから
しまった、と思った蛇口が洗面台で流れ続ける
送り出した心臓の血液は、投げつけたコップのようでいて
あのこの感情とは違っていたのかもしれない
憶測であるが
セメントはその流れ出た 違う流れの 力を感じていた

「そろそろ声出して
笑っていいい月齢なんだよ。」と、
母が、わらったかおをちかづける
「おもしろいこともそうそうないか。」と、
疲れた母の 頬の筋が くっきりと見えてきた

あらかじめ決められた
ただひとつの宿命
生きながらえると、
宿題をするにも早いかと、
ソウデハナイコノコハ一生コノママダ。
決別とあきらめをくりかえす
最初に覚えた言葉は
「ママ」だったり「マンマ」だったり
「アンパンマン」
だったり する
商標登録されないがその愛すべき
キャラクターとその家族たちと
はなしたことすべてが
わたしの
壊れた脳細胞のどこかに 蓄積されながら
つみあがっていく
わたしたちがつくりだすせかい
その子供たちがつくりだすせかい
わたしたちの作った つたないつたないせかいのほうに
流れてこんで給水塔の配管のようにつよく
つよく流れ込んでいくそのたぐりよせたらこわれてしまうような
淡い日常を あいしてやまないと、わたしはおもい
そのベルトコンベアーをつくったんだと、笑ったあなたを
たまらなくすきだった

かつてつくりだした世界
こちら側のせかい
駅には分別されたごみが
透けていて
あちら側がきれい、と思う。
捨てられた新聞には、
被害拡大なぜ防げず 
と何のことかわからないから
目を凝らすと 幼児虐待、と書かれていた
透かした向こう側に人々が通り過ぎるから
とらえた光が表面を
生温かに 潜んでいる
廃棄的発想。
向こう側で手をつないでいる 背の高いおんなのこと
背の低いおとこのこが短い髪で にたようなシャツを着ていた
優しいやさしい時間がながれている


つかんで そのこははあくする
離せなくなってしまう大人の指を
傍を離れられなくなってしまう大人と
ついて消えない感触はあの子のものか大人のものか

おなかがすいて くちを もぐもぐしている子を心配そうに見て
こちらのことばのよくわからない 中国人の母だったろうか
おしゃぶりをもって
「これを たべさせて いいですか? 」という
いっしゅんとまどって
いいですよとまよわずに いう

触っている血液が誰のものかわからないまま
流れている 夢をよく見る
いろんな子のところに行っては 出血をさがして
ああちがう ああちがったとわたしは走り
子供はびっくりしたような顔をする
母のものか子のものだったのか
誰のものかわかれないけれど
流れ出している それを探し当て手で押さえて
とめた
泣きながらとめた
なんじかんも もう流れていないのを
確認しようと汚れた ガーゼをはがしたら、また
大量にながれだしてしまった
そうやって目を覚ます


歯が生えた
萌出していたのを見て
痛んでいるようにも見えたから
いたいの?
返答はないけれど心拍数がすこし高かった
きっと誰にも聴こえていなかった
真夜中2時


籠のない日

  村田麻衣子

あの瞬間だけ
存在していたあなたは
監視カメラを覗いている
そのフレームにあなたが浮かびあがる
僕が
記憶の先端
そのぬるぬるとした
かたちになり
そのいつまでも10cm程度
それは小さなあなたの
腕をじたばたとそ
させて大腿は
均されていつまでも滑らか
めりこんだまま
わるい とても悪い
思考がこんがらがったままです
遠くから聴こえる救急車が連れ去った
その日付時間
消滅する
迷子の神様
といなくなって
いたことしか
憶えていない
指をさす
翳が飛行機雲の上昇が終わるあたり
12階の部屋の裏側 とてもきれいなものが
消滅し
空に
堕ちていった
そのように あの時は
歴史を
もたず
去った

もうすでに存在しない
産み終えた母もすでに、母の母を失い
母のことを思いだすのは
母が病んだとき
その日は、餌が得られないのは
しかたなかろう
刈にいかなければならず
わたしといると
二つの異なる映画のヒロイン
ヒーロー
僕であるかのように
喉がからからになったり
くたくたになるまで
働いたりした

使ったことなどないのだろう
いびつな 母の杖を
砕いて
籠をつくった
母はいきており
はつらつと
訪れた


杖は枝の
芽吹く前からそうなるまでの
瞬間を成り立たせて
いる
死んだ眼の少女の映像が時間を経て
やっと、
想像が
更新され大量生産され
違う電極をもつ
産物になる。

花の記憶にも
ぶちあたって
それは過去にとどまっていないから
母は乳房が大きく、
安くくさい看護師の帽子をかぶって
誰かとまじわっていた
後ろ向きでよく見えなくて
誰かの事をいやだと思った
大きい乳房
その質感がわからないのはいやだと
後ろの大腿から
見える膣の ひだが 
あまりに美しく
そこにあたかも存在していた
かのように僕は
滑稽に
ふざけたりした
あなたの意中にあるように
振る舞った
僕の
すべて
赤子は
奥歯で噛む
身体の奥底から欲しているもの
その杖が突き刺さって
地面につけた足の
こそばゆさ
母の立位をたすける
母は湿度そのものであり
あとは美しい建築にあこがれて
そこから離れようとしなかった
やさしさを
僕にほうばらせる
ひとつひとつの存在へと
変化していく
その強さわたし自身に
たわむれる
わたしの悪い癖を知っていた
触ってはいけないところが
あまりに多く雛鳥のように
逃げだしたくもなる
私自身が
そうであったからかもしれない
見てはいけないもの
食べてはいけないものに
晒されて
溢れている素粒子の顔を描き出し
走り出した
違う電極を、与えられて
わなわなと戸惑っている
わたしば
溢れ出ている公園の蛇口を
とめた
得体のしれない衝動を
戦場から日常に
もちさることはできない
その日常に晒されるだけ晒されて
皮膚の未熟性が
ゆういつのつながりとなり
母に触れては
あたたかだった
記憶にぶちあたる
そして光量をあらわすメーターは
振りきれたところで
静止している
だからわたしはあなたの顔によく似ている
あのこにも
よく似ているという
あのこは 母の杖で籠をつくる
あらがったじゅうりょくが
僕のところに
かえって きたかのように
あなたそのものが
突き刺さってとれない

やわらかく砕ける骨が見えるのだという
まだ母は杖など使ったことが
ないというのに
つながった違う存在が
あやうく ふるえている
ここまで あるけたと
地図を見せる
ここまでならいけるわと
軋む
その音は、
聴こえるのだという

文学極道

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