あなたは目を閉じていた
なにかの償いのように
剥がれてゆく絆さえ
食まれてゆく傷みにまかせて
散りつもるあなたは
やわらかな土になった
そしてもうあなたが見えぬほど
夏は生い茂り
渇いたのどを
風で潤す野ばらを噛んで
飛びたってゆくアゲハ蝶
ぬぐい落とせぬ蜜のように
暮れてゆく夏空で
しずかに燃えています―
最新情報
丘 光平 - 2008年分
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
アゲハ蝶
丘 光平
流れ星のうた
丘 光平
たとえば
一筆の白が
つみかさねてきた黒を
燃やしつくしてしまう そのように
のこり香もなく身投げした夜
あなたは
あなたを辞めたのではなかったのだと
ひとつはふたりに分かれ
ふたつがひとりに帰らぬまま
なにが起こらなかった
なにが聞こえなかった
かわいた夜半の
しずかな皮膚のした
張りつめた水のように
あなたは流れていた
朝の路傍で
丘 光平
朝の路傍で
ことりは眼をつむる、
ことりから飛びたった羽音は
もどってこない
空は黙っていた
空がみたものをことづけるには
まだ
秋が若すぎるからだ
走りさる車や
行きすぎる学生たちの
影をつまびく朝の路傍で
ことりは眼をつむる、雨降るように
おまえをついばむ明るみが
しずかに鳴いている