満月の夜は溶けていくのよミニトマト。
君のピアスホールが燃えていくのよオリオン。
指先から雪が香る。揺れる夜に、造花についた水滴がとてつもない美しさをもって死んでいった。無音の、無音の、無音の、無音の。深夜二時。優しい愛は要らないと櫛を机に投げる。柔らかい毛布に暖かい皮膚。ブルーライトです。耳鳴り。
まわり続けるレコードに祈ることはもう何も無いからバウムクーヘンを正しく食べる。アールグレイからオレンジが香った。ヌーヴェルヴァーグの映画から美しいピアノが聴こえる。いままで生きていたことが信じられないなぁ。私に心臓があることはフィクションみたいね。地球上、十六年間の歴史に千年後も残っちゃうような素晴らしい出来事はあったんだろうか。いやいや千年後はここに地球は無いわね。私が生まれて二年程はたくさんの写真があります。それから今まで全くないので本当にはもう幽霊になったんじゃないかなと思っているんです。いや、写真なんてなくとも生きていることに変わりないと言うんでしょう。言ってくれ。生きているわ。私。きっとね。
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選出作品
作品 - 20201114_640_12223p
- [佳] 十六歳 - 月屋 (2020-11)
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十六歳
月屋