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作品 - 20200921_164_12122p

  • [佳]  揚巻 - コテ  (2020-09)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


揚巻

  コテ

けさ、
詩を書いている時が活き活きしてるのだが、朝日課になってて、卑猥な詩が得意であったり、仮面を被った知り合いを見つけたら勢いよく話しかけてしまって、とうとうアク禁になった。見れるけどアカウントは削除され、途方に暮れたけど、一体仕方の無い事が宙を回して居るのでああやこうや言ってわがの辛抱をやめてはならない。


七月は過去か、精神科に入院し、色んな事がショックでしかも学生のある時から精神が亀裂していたので甲う頭から心臓が飛び出る、という哀しい状態を抱えて、病棟の年寄りはそれが分かるからあだ名が「傷み」だった。「毎日泣いてんねん。」「お前は脳なしだろう。」といわれて居た。何かしら仲良くなった。

退院した。同じ部屋の人に手紙を書くねと言って、あ、戻って来るかもと言って、別れた。まして精神科だし環境が良いわけではないが看護師さんが格好良かったし、色んな人が居て、そして何人か詩人が叫んでいる。私も病室から詩を叫んだ。それから又各々の新作が作られる。


心を見られるのはごっついストレスだ、慣れてしまえばラクだったんだろう。
バリバリンと平気で割ってくるから、布団の中にぎゅっと丸くなって、後は可笑しいことを考えて、一人で笑って居た。するとたとえば霊感が冴えて、
…暴挙に親しまないこと、暴挙に割れて居ることが精神の輪郭と夜とを生かせる、でも、だの、考えた。

看護師さんに熱を持ったのが、妄想と空想と現実とがわからない。変に好きになった、苦しい、逆さまに横になり、エブィリファイが要る。主を伝え、現実との区別をつけなければならない。ナースセンターは混み合って居るし、そんな愛の告白めいた、用事なので私はじりじりと治療用の算数プリントや色塗りの用紙の裏に書いたメモを握って、皆の視線の中で待たなければいけなかった。「何が書いてあるのだろう?」(その看護師はアイドルで有って、私も優しげなので患者に人気があった。ナメやすい、と言うことかもしれないが。)彼を私が好きなのは一目瞭然で、私はそれを余り気にしなかったが、私の顔がましなので、目立つ様子を思う。十分置きにナースセンターに行って彼と微笑み合い、いきいきと病室に帰るもので、何気なくコーヒーのお湯をそこへ汲みに行ったり、硝子の外から横顔に見惚れ、コロナ自粛で外出も出来なかったので、この日課を楽しく思った。
「すいません看護婦さん。詰所に置いてある私の電気シェーバーを、
私の掌まで持ってきて下さい。」
木村、と云う詩人の声がする。うるさい。
それだけで、病室でもホールでも私は漠漠と夢路に居る事だった。詩が「好き」とは不思議な、宇宙の端っこにおる、様な。云云、その看護師さんと詩をこのひ選べず困り抜いて居る。
ホールの壁に「共生」と書かれた額があり、ナースセンターの中には「佛心」と書かれた額がある。
トイレに逃げ込む。
トイレは、おぶつの箱に千切ったティッシュやおむつが中に入ってる、生理の為だ。若いのは大体私だったので息を詰めた。部屋に帰ると隣室のおばあさんが叫んで居る。多分痛くない、「いたい、いたいいたいいたい…、行って行って行って、引け引け引け、」同じ病室には神が居る。「真っ白な靖子の顔、ピカピカ光ってる、鼻は外人のいってんにばいの高い鼻、ピカピカ光ってる、靖子の白さは月の三万倍、お父ちゃんが用意しといてくれるから心配ないんですって。助けてや、お父ちゃんー」歌曲だ。“天才やった”んちゃうか。
消灯後も話を黙ってして来る。スプーンが線香で、ふりかけがお焼香でそれを部屋の玄関の床にコップを置き、自詩の紙を並べてここにわるい気が入って来ないよう祈ってくれた。私はその横で足元でせっせと絵を描いて居た。
廊下はグレーのデスクとその横の白いテーブルに水色の掛け布団が積まれてる、椅子が置いてあって。向こうの窓は木々の緑が深い、暗過ぎずに、美しく生えている。
 精神科に入院して精神が砕けるのだった。人は人と自分があまり触れ合わないように、というかむしろ私が「とりま」で人がそれを想ってくれ佇んでるのか。窓際の人に話しかけた。年上で人相が良い、スピリチュアルな方だった。まじない師はひとの醜い願いを代行する。占い師はそれが見える。夜何となくそれを感じて傷付いた。笛の音がした。

「助六」とか
「三島由紀夫」の話をおばあさんとした。
私に「揚巻」という名前が付いた。
自殺というワードがどっからともなく、周りに知らされ、真ん中の廊下に立ちおばあさんがわざと咳をした。
知らないふりで明くる日自分の詩やノートを食事の前に見てもらう。
真面目に読む薄水(うすみず)の目の…、
綺麗な手だ、
ノートが床に落ちたが、気にする様子も無く、
拾った。
 己(おのれ)の、目の弧(こ)を私たちは描いてその為に他に関心を無くす、とか、我々の立ち竦みが器用に心を黒く染めた、周りでも珍しい色、そう見えた。
字を読み終えて、テーブルにおばあさんが指で感想を書いた。間抜けで見えなかった。

恋で同性の諍いが有るのを「ヤツ橋」と云う。



 ある日「イケダさんは症状も今ないなら、退院考えれるで。」と看護婦さんが仰って、私は自分の退院を決めた。それを先生に伝えたけど、「誰がそんな事を。」という感じだった。コロナが蔓延しているとニュースで、その頃に私は先生に言及をした。失敗であるが治っても居なかった。その先生は目が見えてないらしい、音で感じ、聞く様子が表れていらっしゃって、私も喋るのを気遣った。カルテに書かれる字も音符みたいだった。病棟から病棟に向かう先生を見かけ、早歩きで(普段、私は音を立てないようにのろのろと心細く歩いて居た、これが却って周りに気を遣わせ迷惑だとわかって、本当にどうしたら良いかわからなくなって、ナースセンター、あの看護師さんに会いに行くか、ボタンを押して「来てください、どなたか話しをしたいです。」(やす子の顔は真っ白))寄った。年寄りが繊細なので困る、とか病気になった訳とか治したい事などを、話し「転院」がその場、口で決まった。結局コロナが理由でよしになった。
退院が決まった。その時は外出こそ出来ないが友達が出来て、生活も良かったし外の好きなともだちはコロナ自粛と家の距離で余り会えず彼氏も亦、一人だし私は「私」のこれからの為にしっかりしなくてはいけないからもっと良くなるように退院するのをもう少し伸ばそうとした。しかし、他の患者に追われたらやはりと言い、看護師さんに相談すれば良かっただの、思うが恋は疑い深くなる為に。


すいません
私は盲目の木村です
依って
目の前はグレー一色で
トイレから部屋へ帰る道が
私の目では不可能です
従って看護婦さん
部屋まで帰る道を教えてください
お願いします



地獄の閻魔大王から通告を受けている
おう木村よ お前は地獄に行く事が100パーセント決定されておる
天国に行くことは 100パーセント有り得ない
フ…

わしはな 地獄から来た幽霊やぞ
地獄から送り返された 幽霊やぞ 






放棄放蕩の技術


俺は精神学的にしんでも生物学的にしなんわ
ハハハ
精神医学的にしんでも生物学的には
しなんわ
いっけいねん以上ここで歩き回っとるわ
せえよ
わかっとるぞ

バーカ あほんだら クズ どアホ
下品

私は自殺したいのにする勇気がないから

理解(ころ)せ! 



わかっとるぞ
過労死するなよ



ハァ
私は盲目の木村です
よって目の前はグレー一色で、
部屋まで行く道が私の目ではわかりません
従って看護婦さん
部屋まで行く道を教えてください
お願いします

高貴公用の技術




病死!
餓死!


歩けよ





一京の一京年以上
歩いとるぞ
フフ








看護婦さん
道を間違えました
道を教えてください


看護婦さん
道を間違えました
道を教えてください
木村茂男


 風 せつなさに去りる。横で、苦衷の間、ナースセンター、「月とピストル頂けますか?」プロチゾラムで眠る天井、優が眼から零れ虹かいな。草合わせの又、捲って愛(あ)い。
自然体で居る時間が私を良くした。この病院が、人の心を信じるとすれば微笑みこそは知らんぷりで敢えて自由にさせてくれるだろう、病室にて心の不潔で、汚い思ひを考察し次に本当に働くこと以外何もすっきりしてしまう事だ。いいか、美(よ)く厳しい人など向こう側に居り愛えない、強くなるとは、光の此んな辛抱。月(父母)に面する唯一の道通り。

文学極道

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