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作品 - 20200921_156_12119p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


水鳥がうまれる

  kale

“Let’s hear it,” said Humpty Dumpty. “I can explain all the poems that ever were invented - and a good many that haven’t been invented just yet.”
Through the Looking-Glass, Chapter 6

「ほら聞いててみなよ」ハンプティダンプティはそう云った。「これまで吟まれたことのあるどんな詩だって説明できるし、これから吟まれるだろうどんな構造の詩についてだって説明できるのさ」
『鏡の国のアリス』第6章より

さあ帰ろう
訪ねたことの
まだ無い国へ

風の運動をみた
谷わたりの日

落ち葉の孤が
空を刳り貫き
枝間の木霊と
孤独を螺旋へ
電子の樹海は
てんぐ巣状に
胴枯れ傾斜し

ピサの斜塔は傾きすぎたから正しい傾斜へ時を戻そう

自らを複製するように
ほら、池の鯉が身を
翻しているよ

雀羅のすきまへ
転がりよじれる
そのぐうぜんを
ひとつの秩序と
引きかえにして

だれもしらない/内がわの
比例して/震える/声量と
くちびると/鼓膜と
ハロー/はろー

これは
愛とか夢とか
希望や勇気
光に溢れる
恐怖の話

20時35分が20時35分に到着した
rain が体の外に降ってきた
聖者たちは異邦を縦断していく
20時35分が20時36分を

秘匿の重なりに
繁茂された花骸
天柩は光の球を
受け止めている

誘惑されて身を委ねてみても
想像より強くこの手を引いてはくれない重力

無重力の感覚は浮遊より落下の直中に

雨粒の時間は案外ゆっくりと
ながれているのかもしれない

羽と翅を繋ぎあわせれば
さいづらう
から人間が燃えていた
花はいつまでも幼く
言い訳をかさねる
から
あやしていた
はぎすはむぐら
ひあもるき
継ぎはぎ
呼びあう
しう
あまら

アップルバーボンで
聴覚は色素を感受している
発熱する blue のゆらぎを
心臓へ中継する日和見器官

光の続きを ながめていた
そこに 構造はあるのだろうか
雨は 降っているのか
メルヒェンの 寿命が
ちいさくなって またひとつ
ちぎれ とぎれ
花湧く 泉に
頭を 浸して
灯は あかるみを
閉じこめた まま
夜道を 照らさず
時間は ちいさく
泥濘に うなだれ
降りつつ 離(か)れつつ

君は君の足もとに君の足あとをそっと置いていく足おと

本質を取り払った装飾に新たな本質が宿る瞬間

      ふ
蕊。心。ぷ。ふ‡
      ふ
      。

わたしたちは謎をてにいれた

謎が謎を呼んで謎はわたしたちを増殖させていく

謎に侵食されてもう詩しか口走れない!

魂が contami を起こしている
音痴になったときだけ
言葉のしゃべれる
代償としての吃音で
趾痕になるはずだった
時間の rain に
別れを告げる
その場所に
波紋だけを
置いていく

花鶏の声から、ほつれた花糸を、透かして承ける、薄紙の天柩、人間、だったのかもしれない、水鳥の、青くうまれる、その場所を。

赤青黒白黄緑を混ぜたなら

光の続きへ
詩人たちが
我さきにと
飛び込んでいく

油を塗られ清潔なまま朽ちていく
シナモンの香りと
紅茶と枕と

レイン,レイン,

詩のはじまりが
俺とは無関係でありますように

世界の終わりが
別離とは無関係でありますように

夢のつづきがまた別な夢のつづきとつなが

スプライサーが故障している

splicer,splicer,splicer,pl

まだ出会うまえの俺たちに
別れの言葉をつなぎあわせても
すぐ剥がれてしまうからあきらめた

潔癖すぎる僕らは咽頭の潰れるまで叫んだ方がいい

一綴の物語から季節が一折ずつ失われ

醜さは隠すより個性と言い張る方が現代社会とよく似合う

最後にのこった Bitter end がどうか

真の狂人は他者を狂人と認識する

詩以外のものでありますように

Happy end なんかにさせねーよ

詩以上のものでありますように

光の続きに波紋がひろがる

文学極道

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