#目次

最新情報


選出作品

作品 - 20200915_056_12115p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


カランコエ

  月屋

海を歩いていく映画の主人公。
波が左右に広がって、天使が翼を伸ばしてゆくようだ。美しすぎる映画のエンドソング。を、電車の中でループしている。あの主人公の横顔が美しくて、つい乗客の横顔をそっと見てしまう。ついでに景色を眺めながら、眠気を帯びていく睫毛。いま林檎が落ちて潰れたら、あっという間に眠ってしまうだろう。
白衣のボタンを一つかけ忘れてしまって、また睡眠不足に気付く時、灰色を感じる。翡翠が砕けたらここは美しくなるだろうか。そんなことになったら燃え尽きて無くなるんだろうけれど。
私の一咫くらいの長さで通り過ぎていく群青が眦を掠める時、きっと美しい声をしている君。セーラー服の襟は炎を纏いながら、私の首へと広がっていく。唇の端から血が流れてほしいと考えながら、君の優しい親友になる。
君は優しいから、私も優しくなるよ。指の爪から蝶が飛び立つような、そんな暖かさを持ちながら君は大人になっていくんだろう。私は、燃えるように大人になりたいと願っている。
どうか、幸せな人生でいてね。いつまでも君の親友です。

文学極道

Copyright © BUNGAKU GOKUDOU. All rights reserved.