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作品 - 20200611_938_11952p

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橋人の唄

  キリン堂

わからないので橋になった
 日が水を背負って
人を背負って歩いていく

ひとは私を上沓、下沓、沓座とよび
その上にかけられた木や土、鉄の上をあるく
家路か旅路か欄干を鳥が遊び歩いて

手を繋ぎ歩くひとびと、馬が繋がれて
牛の背中を追って荷が運ばれていけば
糞が、花が臭い、恋慕のため息が泥む

運ばれていくひとも牛馬もかわりなく
わからない、私と裏腹に彼らはあるく
いずこかへ、私はまた支承とも呼ばれ

やがて排気ガスが臭い
時間が伸びたり縮んだり
町はデコボコ、橋から誰か
飛び降りた落日もあった

ただ背負い続けて溢れるように忘れても

川は遡上する鱗にきらめいて
夜を孤独になく虫の声を聴き
蠢く月たちを見上げて流れる

日が水を背負って
また人を背負って
歩き、つづるのを

背中に
 感じ続けた

幾年も幾年も幾年も

億年の彼方にひとの姿もなく
やがて橋も朽ち後には虫の声
玲瓏と、川の流れに棹差して

支承と呼ばれていたものが川を裂いている
それはもうどこにも行く必要などないのだ

文学極道

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