ジョビとジャバとジョブが飛ぶよ、いまにも堰を切って
古い枯れた井戸から、凡庸なる泉が短歌にのせられて
ふてくされた愚王の口元に戯語(けご)の世界がまどろむ
ぼんやりしているだけでもう、空は熟れすぎてありふれた
実名を隠して飛びまわる点滴しらずの仮病たち
落としたものの不渡りさえ通れば、万事が快調
水槽をなめまわして移ろう貝の弛緩した張力
ぞろぞろと帰ろうとするたびに、反転する磁石席
「一語だって無駄にできない」
一を変えたい。(ジョビ)
どの位置に?(ジャバ)
いちばんふさわしい一に。(ジョビ)
先頭でいいじゃない(ジャバ)
尖頭なんていや。(ジョビ)
どうして?(ジャバ)
だって角みたい。(ジョビ)
一にしか見えないわ(ジャバ)
まるで角の暗号よ!(ジョブ)
((無視)(ムシ))
あなた一角獣でしょ(ジャバ)
でも尖頭じゃない。(ジョビ)
先頭はなに?(ジャバ)
角よ。(ジョビ)
なら「一」ね(ジャバ)
すり替えないで。(ジョビ)
どうして?(ジャバ)
頭の先は角よ。(ジョビ)
だから一角獣でしょ(ジャバ)
そうよ。(ジョビ)
「角」より先に「一」がある(ジャバ)
それは文字よ。(ジョビ)
なにが問題?(ジャバ)
一を変えたいの。(ジョビ)
どの位置まで(ジャバ)
どうして一をずらすの。(ジョビ)
先頭を替えたのはあなたよ(ジャバ)
だって尖頭じゃないもの。(ジョビ)
ほら、はじまった(ジャバ)
そろそろ市場へいきましょう?(ジョブ)
((無視)(ムシ))
だって、頭は丸いの。(ジョビ)
では〇ね(ジャバ)
ゼロになっちゃう。(ジョビ)
一はなに?(ジャバ)
一つの宿命。(ジョビ)
「つの」の宿命?(ジャバ)
一だけを見て。(ジョビ)
位置を見てるわ(ジャバ)
どこにある?(ジョビ)
先頭(ジャバ)
でも尖頭じゃない。(ジョビ)
どうして?(ジャバ)
頭はまるいわ。(ジョビ)
では〇ね(ジャバ)
ゼロになっちゃう。(ジョビ)
一をかえてみたら?(ジャバ)
どの位置に?(ジョビ)
「できない」のあたりに(ジャバ)
それは「できない」。(ジョビ)
どうして?(ジャバ)
「できない」だもの。(ジョビ)
はじめっから、できないの?(ジャバ)
はじめっからあるのは一よ。(ジョビ)
一を一度はなれたら?(ジャバ)
どこまではなれるの。(ジョビ)
不一致まで!(ジョブ)
((無視)(ムシ))
「無駄」のあたりまで(ジャバ)
「無駄」よ。(ジョビ)
無視かい?(ジョブ)
((無視)(ムシ))
「無駄にはできない」とある(ジャバ)
それは「一語」ね。(ジョビ)
どの一語?(ジャバ)
「一」の語よ。(ジョビ)
後生だから聞いて!(ジョブ)
((無視)(ムシ))
あなたひょっとして(ジャバ)
なにかしら?(ジョビ)
一病ね(ジャバ)
一病とは?(ジョビ)
一つの病気(ジャバ)
いちいち気にしてないわ。(ジョビ)
「一」を気にしすぎてる(ジャバ)
でも足りないの。(ジョビ)
一だけでは足りない?(ジャバ)
もっとたくさん。(ジョビ)
こんな語託たくさん! たくさん! たくさん!(ジョブ)
((無視)(ムシ))
あなたひょっとして(ジャバ)
なにかしら?(ジョビ)
一拡充ね(ジャバ)
「一」書く獣かも!。(ジョブ)
((無視)(ムシ))
角がとれたわね(ジャバ)
ありがとう。(ジョビ)
おめでとう(ジャバ)
でも一への想いはつのるばかり・・・。(ジョビ)
語冗談ばっかり!(ジョブ)
ジョビとジャバとジョブが飛ぶよ、いまにも大手をふって
古い枯れた井戸から、凡庸なる泉が担架にのせられて
ふてくされた愚像の口元に不死の世界がまどろむ
ぼんやりしているだけでもう、そらは空きすぎて満ちたりた
実名を隠して飛びまわる天敵しらずの誤用たち
落としたもののすり替えさえしこめば、万事が順調
水槽をなめまわして布教する処女のバブルじみた産卵
やれやれと起きようとするたびに、充溢する夢想癖
(あなた拡充ね!)
(でも一への想いはつのるばかり・・・)
最新情報
選出作品
作品 - 20200523_408_11912p
- [優] 一角獣 - 菊西夕座 (2020-05)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
一角獣
菊西夕座