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作品 - 20200520_307_11901p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


半夏生

  紅茶猫


月曜日.

雨の日は言葉と格闘したくなる
勝ったことなど一度もないけれど
祈るように広場が
急速に縮んで来たら
箱庭のピスタチオに
ししゅうを見せたい


火曜日.

人生の大半を
あくびに費やしているという男に出会った
この間はその大きな口で
星を飲み込みそうになって
慌てて吐き出したら
地面の上で
しゅるしゅる回りながら消えていったって
ショートホープの燃えかすみたいだったって


水曜日.

「モナ・リザ」の絵の前に立つと
人はなぜ疑問符を無限に繰り出すのだろう
見知らぬ星のカードが
紛れ混んでいるかのように
誰かの手元に揺らぐ視線
覗くほど遠くなる
瞳の間取り


木曜日.

吊り橋の真ん中に
ノートを下げて
私を待っている。
卵サンドウィッチに
パセリを入れ忘れたような気がする


金曜日.

1キロ四方の青い空をオーダーしたのに
100均で売っているものと
あまり変わらなかったから
何だかとてもがっかりした
レジで会計する時に
108円出してしまって
自分、時が止まっているなって思った。


土曜日.

駅前の百貨店が潰れて
もう何年になるだろう
エントランスのタイルの隙間から
雑草が勢いよく伸びていた
それと
片方だけの青い靴
小鳥がうずくまるように
人の足の形を忘れていく


日曜日.

詩が詩人を不幸にするのか
詩人が詩を不幸にするのか
雨が降り出して
世界が一枚変わるように

花弁ひとひら裏に表に

砂時計の内に
繰り返される永遠

文学極道

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