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作品 - 20200504_618_11856p

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こわれていくんだよ

  



我がいとしの、プリンセスのために、歩けなくなってしまいました。行きたいところも、なくなりましたので、いかだを作り、漕ぎだすことにしました。たくさんの木を、切り出さなければなりません。デジタルな場所から、たくさん木を調達します。いかだの準備ができたら、海へ向かって漕ぎだします。世界はとても孤独で悲しいので、いちばん好きな場所に行くという考えは、既にあります。わたしはいかだで難破します。わたしはいかだに溺れます。



古い橋のたもとで、季節はふたたび出逢います。風の喜びが、水面いっぱいにひろがって、私たちはこころが歌うのを聞いていました。それは花のとき、恐れをしらない冬のように、息を潜める音や、暗い夜を過ごし、いつか戻れると信じながら、言葉で作りだした月明かり、こころを灯す昔のように。古い橋のアーチをくぐる、ススキ、夜風にふかれ揺れる船。もみじの子ども眠る秋の、夕暮れを浮かべた日々。私たちは、こころが涙ぐむことを波と呼びました。
それは花のとき、素直すぎた冬のように、古い橋のたもとで、季節はわたしの腕を掴み、あなたの声は、わたしの指先の行方、今もずっと天国を信じて渡ってきます。

こわれていくんだよ

夕日の影に隠れていたんだね。年齢のこと、君がずっとこっちを見てるって。美しいから、みんな悲しいんだよ。永遠なんて幸せよりも脆いから。顔のしわを数えてごらんよ、数に限りもあるだろう。
君が眠っているとき、僕は君の代わりに人生。また、その逆も。いつまで待っても、じかん通りにバスは来ない。逢ったことがないんだ。停留所の場所も、あとで聞いたんだ。君じゃない、ほかの誰かに。だから泣いたりしない。わかりきっていたこと。君が生まれたとき、今日みたいな日が来るって、みんな知っていたんだ。他愛もないはなし。なのにどうしてこんなに悲しいのさ。君がまたいつか逢えるなんて、僕の心で夢をみているからだ。永遠なんかないんだよ。だから、よけいに、こわれていくんだよ。

文学極道

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